カルチャー

2025.06.04 14:15

海の王者「シャチ」の命を守る ソニーが開発した高精細映像伝送の新展開

鴨川シーワールドの勝俣 浩(左)と神戸須磨シーワールドの金野征記(右)

開業前の神戸須磨シーワールドにとっては、勝俣の長年にわたる知見と経験値が必要だったのだ。シャチの日々の健康を守るには、キャリア豊富な人間の目と耳で観察するのが、いちばん安心できると考えたのであろう。

鴨川シーワールドでディスプレイを見る勝俣
鴨川シーワールドでディスプレイを見る勝俣

神戸須磨シーワールドは、鴨川シーワールドを運営する会社「グランビスタ ホテル&リゾート」によって運営されていることもあり、須磨のシャチの飼育担当者は、全員が一度は鴨川での勤務経験がある。シャチの生態や飼育を習熟したうえで、順次、須磨に配属されてきているのだ。

そのため、館長という要職にありながら勝俣も神戸出張を繰り返していた。その勝俣を多忙な日々から解放する方法をひらめいたのは、神戸須磨シーワールドで働くソニーPCLのスタッフだった。

飼育の雰囲気や空気感までを届ける

ソニーPCLは、シャチの生態をデジタル技術で学ぶ場と、シャチの映像を上映するホールの企画からコンテンツ制作までを任されていた。勝俣が最大で月4回も神戸まで出張していることを知ると、ソニーグループが開発している「テレプレゼンスシステム」の導入を彼に提案した。

このシステムでは、複数のカメラとマイク、大画面ディスプレイを組み合わせて、離れた空間をネット経由で繋ぐ。そして高精細の映像とクリアな音声による双方向通信で、リアルなコミュニケーションの場を提供する。

これによって、一般的なウェブ会議サービスでは伝わりにくい雰囲気や空気感までを届けることが可能になる。この仕組みをシャチ個体の遠隔観察に転用しようとする提案だったのだ。

テレプレゼンスシステムの「窓」
神戸須磨シーワールドで使われているテレプレゼンスシステム

一方で、シャチの呼吸音がキャッチできる無線マイク、さらに大水槽を上から俯瞰撮影できる固定カメラの追加設置をカスタマイズ。2画面の映像に加えて、シャチの間近で収録した音声系まで送信できるので、あたかも現地にいるような「体感」が得られるというわけだ。

ソニーPCLからの提案を受けた勝俣だが、肉眼と同じ精度で観察できるのか当初は疑心暗鬼だったという。しかし、今年2月に実証事業としてスタートすると、毎日のようにこのシステムを利用することになった。

勝俣に言わせると「シャチは発熱すると人間と同じく目が『うつろ』になる」という。そんな微妙な異変も、導入されたシステムでは捉えられるとされている。

神戸須磨シーワールドでのエサやりタイム
神戸須磨シーワールドでのエサやりタイム

この遠隔でのシステムの導入以来、毎日、須磨から鴨川の勝俣に映像を送っている金野は、昨年12月に鴨川シーワールドから神戸須磨シーワールドにシャチ部門の責任者として転勤となった人間だ。

シャチの知識も豊富で、若い頃には鴨川でシャチのパフォーマンスを勝俣と一緒に演じていたベテラン。シャチの健康観察も問題なくできるが、遠く離れた勝俣がダブルチェックしてくれるのは「とても心強い」と話す。

実を言うと、須磨にいるステラは、自然の海で生まれたシャチだ。北大西洋のアイスランド沖で捕獲され、勝俣が鴨川シーワールドに就職した翌年の1988年に日本にやってきた。当時の推定年齢は1歳から2歳だったが、そのあと鴨川でメス5頭を出産。いま須磨で一緒にいるランが4番目の娘にあたる。

遠隔とはいえ、新しい環境でステラと娘のランが元気にしているのを心配するのは、勝俣の純粋な親心からなのだ。そんな彼が最先端のテクノロジーを使って、愛する2頭を見守っているというのは、実にいまの時代を反映している。

神戸須磨シーワールドが導入したこのシステムは、希少な動物を抱える動物園や水族館の新しい飼育モデルとして、これからも注目を集めていくことになるだろう。

連載:地方発イノベーションの秘訣
過去記事はこちら>>

文・写真=多名部 重則

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現代は、もはや親世代の常識が通用しない世の中になっている。その背景には、誰も経済成長を予見できない先行き不透明な世相がある。ときには「攻める」ことも大切だが、「財産を守っていく」「今の生活を維持し続ける」という意識が経営者の間で強くなっていると蓮見は感じているようだ。そのためにきちんとした財産防衛と資産運用、経営者一族のキャッシュフローの最大化のためのプランを提供するのが、青山財産の仕事だ。

一方、16年前に相続のプロフェッショナル集団としてスタートしたチェスターのもとにも、近年、生前の相続に対する相談が増えているという。そうしたニーズから同社は「生前対策コンサルティング」事業を開始したが、生前対策のソリューションの提示には苦労したと、チェスター 代表社員・荒巻善宏(以下、荒巻)は語る。

「富裕層の財産の承継・運用・管理は高齢化や少子化など社会構造の変化に伴い非常に複雑化しています。特化したエキスパートの存在が欠かせません。にもかかわらず、そうした知見をもった優秀な人材は非常に少ないというのが現状です」

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では具体的にミドル世代の経営者にとっての、早めの財産戦略とはどのようなことなのだろうか。
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「オーナー経営者は、「個人として」「企業経営者として」「株主として」の3つの立場で財産を管理することが必要です。

オーナー経営者はこの3つの立場からトータルで考え、そのなかでどのように財産を貯めて、運用していくかを決めていかなくてはなりません。

企業経営が傾き、いざというときに資金を捻出するのはオーナー経営者です。そのために個人としても資産を築いておかないと事業が立ち行かなくなってしまう。また、なんらかの事情で第三者から株式の買い取りをしなければならない場合、オーナーが自分自身でお金を出して買わなければならないこともあります。経営者として「最後の資金の出し手」としての自覚は常にもっていなければなりません。

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さらに蓮見は運用についての考え方にも言及する。

「運用はギャンブルではありません。経営者の財産は遊ぶためのお金ではなく、必要な資金ですので、リスクを抑えつつもある程度リターンが得られるものを経営者は嗜好するわけです。

グローバルのポートフォリオの状況を見ればわかることですが、全世界で運用されている資産の約85%が株式と債券で占められているように、全世界を対象とした株式と債券での運用が王道だと考えています。不動産、金、未上場会社株式への投資は、オルタナティブ投資といわれ、株式と債券での運用を補完する役割を有しています。したがって、これらも組み入れることによって、より目的に沿った運用が実現できるのです。なかには、仮想通貨に投資するという方もいらっしゃいますが、これは「投資」ではなく「投機」に分類されるものですので、注意が必要です。短期の上げ下げで一喜一憂するものではなく、10~20年かけてパフォーマンスをきちんと上げられる投資対象を選ぶことを心がけるべきでしょう。

財産管理において大切なのは全体を俯瞰して、どのような目的で財産を運用し、財産を貯めていくかです。ミドル世代にはそうした視点が抜けていたり、『周囲が良いと言っているから自分も買う』といった買い方になっていたりすることが多い印象があります」

青山財産のような総合財産コンサルティングは、言うなれば、財産におけるメンターのようなものだと蓮見は説明する。

「健康管理においていつも自分の身体を観てくれる主治医が必要なように、財産においてもメンターが必要になると感じています。経営者の方は日頃、経営に集中されているため、財産の運用や相続・管理に関する、全体最適なプランを描くことは極めて難しいのではないかと思います。また、早めに相談に来ていただくほうが対策は取りやすいものです。ご相談に来られて『あと10年早く相談に来ていれば、こんなに税金を払わなくて良かったのに』と悔やむ方はたくさんおられます」

ドル世代の経営者が情報の断片に惑わされず「自分ごと」として捉えるメリット

財産運用・資産形成はギャンブルではないという話に深くうなずいたのが、チェスターの荒巻だ。

「同世代の経営者との会合によく顔を出すのですが、そうした場では一見富裕層だけが知っている特別な資産運用の手法だと思える情報も入ってきます。『海外の金融機関で資産運用をしたら儲かった』『中古ビルを一棟買い取って不動産経営するのがいいらしい』などなど。ただそうした断片的な情報のみで手を出すと、視野が狭くなってしまい、部分的な対応になってしまうことで思わぬ損失を被ることもあります。

きちんとゴールを定めずに、俯瞰した視点をもたずにやみくもにお金を投資してしまう。そんな経営者も少なくありません。そもそも自身の資産を全体最適化する相談に乗ってくれる会社があること自体知らない方が多いのではないでしょうか」

税理士法人チェスターのもうひとりの代表社員・福留正明(以下、福留)が財産コンサルタントの重要性について付け加える。

「若手経営者においては、事業が軌道に乗ってからはじめて、財産管理や相続の問題を考える場合がほとんどです。そうした人には、自社金融商品を売るために『相続対策になりますよ』とさまざまな業者からの提案があるため、本来の相続・財産コンサルティングが専門でない会社に相談してしまうことも多いようです」

もちろん、相続・財産コンサルティングの専門であれば誰でもいいわけではない。経営者個人の趣味嗜好や考え方にしっかりとコミットしたエキスパートでなければ、経営者が納得できる財産の管理・運用は実現できないだろう。

荒巻と福留は2人とも同世代ではあるが、金融資産のポートフォリオの組み方や生命保険で妻子にいくら残すかなど、個々に価値観の違いが多々あるという。つまり一人ひとりがバラバラの価値観をもち、行動しているのが現実なのだ。荒巻が話を続ける。

「自分自身、お金のプロであるはずなのですが、ときどき自分にコンサルタントを入れたいと感じることがあります。自分の価値観に合った客観的で適切なアドバイスをもらえたら、どれだけ助かるかと」

蓮見もそうした悩みは経営者の共通した悩みではないかと頷く。

「自分のところに舞い込むさまざまな提案が、自身の財産プランと合致していないことはわかる。だからといって自身で全体最適化されたプランを組み立てるのは難しいといったケースは優秀な経営者であってもよくあることです。そうしたときに、優先順位を整理して、全体を俯瞰したプランを構築していく私たちのような財産管理のエキスパートのサポートは役立つはずです。こうしたノウハウは長年の積み重ねから得られた独自のものと言えるでしょう」

青山財産ではそうした経営者や個人資産家等に向けて、「富裕層のための財産戦略セミナー2025」(開催日時:7月31日13:00~、場所:JPタワー ホール &カンファレンス/KITTE 4階)と題したセミナーも行う(2025年5月時点)。

相続・資産運用・承継など、具体的な情報がなかなか得られないテーマを1日でまとめて知ることができる絶好の機会になるだろう。

営統合のきっかけと、生まれるシナジー

24年12月に青山財産とチェスターは経営統合を果たした。なぜ2社は手を組んだのだろうか。チェスターの福留が理由を説明する。

「チェスターは相続発生後(死後)の手続きや申告に主軸を置いていたのですが、近年生前のコンサルティングの要望が増えてきたのが、直接のきっかけです。やはり生前対策については、よりノウハウをおもちの青山財産さんのお力を借りて、さらなる成長をしていきたいと考えました」

では青山財産にはどのようなメリットがあるのだろうか。蓮見が語る。

「チェスターさんは青山財産が手薄としていた相続発生後の手続き・申告に豊富なノウハウをおもちです。そして、すでに生前コンサルティングの仕事も受けておられるので、そこに青山財産のノウハウを投じることができると考えています。さらには、相続発生の前後の財産コンサルティングの潜在的なニーズを掘り起こすことで、より多くのお客様のご期待に応えられるようにもなるでしょう。

今回の統合によって、相続というスペシャルなサービスの充実が図られ、そしてそのお客様に対して、相続前後のコンサルティングを提供できるようになったことで、両者にとっての目的であるお客様に長きにわたって良いサービスを提供したいという思いの実現にまた一歩近づけたと感じています」

どちらもこの提携によって生まれるシナジーには大きな期待を抱いている。財産管理のコンサルティングから相続発生後の手続き、さらにはその後の総合財産コンサルティングに至るまで、ワンストップのサービスを質・量ともに従来以上の品質で実現できるからだ。青山財産の掲げる「100年後もあなたのベストパートナーでありたい」という想いは、さらにきめ細やかに進化していくようだ。

  • 蓮見正純(はすみ・まさずみ)

    慶応義塾大学商学部卒業。青山監査法人(現・PwC Japan有限責任監査法人)、山田&パートナーズ会計事務所、三優監査法人を経て、1996年にプロジェストを設立し、代表取締役に就任。2008年に株式会社船井財産コンサルタンツ(現:青山財産ネットワークス)とプロジェストホールディングスを経営統合。青山財産ネットワークス代表取締役社長。公認会計士、税理士の資格を所持。

  • 荒巻善宏(あらまき・よしひろ)

    2004年同志社大学商学部卒業。同年監査法人トーマツ入所。08年に税理士法人チェスターを共同創業、代表社員に就任。公認会計士、税理士等の資格を所持。

  • 福留正明(ふくとめ・まさあき)

    2004年 神戸大学経営学部卒業。同年監査法人トーマツ入所。辻・本郷税理士法人を経て、08年に税理士法人チェスターを共同創業、代表社員に就任。公認会計士、税理士、登録政治資金監査人等の資格を所持。

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