ハーバード大「反ユダヤ主義」対策を強化 国際指針採用
【ワシントン=赤木俊介】学生や教員に対する反ユダヤ主義的な嫌がらせへの対応が不十分だったとして提訴された米ハーバード大学が、原告側のユダヤ系学生団体と和解した。国際的な指針に基づき、反ユダヤ主義の行為への取り締まりを強化する。
ハーバード大が21日に発表した。
米国やイスラエルなど30カ国以上が加盟する国際ホロコースト記憶連盟(IHRA)は、反ユダヤ主義の行為として「ユダヤの民の自決権を否定する行為」「イスラエルの政策をナチスドイツと比較する行為」などを挙げる。
ハーバード大は今後5年間にわたり人種や宗教に基づく差別を禁止する1964年の公民権法第六編(タイトルシックス)に関わる校内調査をまとめた年次報告書を公表し、反ユダヤ主義についてのシンポジウムや教員向けの研修も提供する。
ハーバード大は「(ユダヤ人国家の必要性を訴える)シオニズムの支持者への差別はユダヤ人・イスラエル人に対する差別と同様、大学の反差別方針に反する」といった内容のFAQ(よくある質問)もホームページに掲載する。
同大の広報担当者は声明で「ハーバードでユダヤ系コミュニティーが受け入れられ、尊敬され、成功できるように努める」と表明。原告側の代理人は「和解には大学キャンパスにおける反ユダヤ主義や憎悪と偏見に対抗するための有意義で具体性のあるアクションが盛り込まれている」と述べた。
一方、ハーバード大学の親パレスチナ派学生団体は「IHRAの反ユダヤ主義の定義はパレスチナを支持する声をかき消すために利用されてきた」と反発した。
米大学では2023年10月7日に始まったイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘によって生じた人道危機を巡り、学生による反イスラエル運動が活発化した。ユダヤ人の権利保護団体などは反ユダヤ主義的な嫌がらせ行為が増加しているとの懸念を示してきた。
学生らによる反ユダヤ主義的な行為への対応が不十分だったとして、米連邦議会が調査に乗り出す事態に発展した。結果としてハーバード大やペンシルベニア大学、コロンビア大学など米名門校の学長が相次いで辞任に追い込まれた。著名な卒業生が大学への寄付を見送ると発表し、大学側に圧力がかかったとみられる。
多くの米大学は寄付金で賄う基金が研究や経営の資金源とする。ハーバード大が24年10月に発表した24会計年度(23年7月1日〜24年6月30日)の収支報告によると、同大への寄付総額は3億6800万ドルだった。23年会計年度から1億9300万ドル減った。