2024年 お前いったいなにしとったんやSP
タイトルの通り。駆け込みでやるにはだいぶ詰めっ詰めな2024年、浅田がなにをしていたかざっくり振り返ります。
所属について
今年は所属が変わりました。4月2日付けで、Mogura編集部からメタカル最前線編集部へ転籍。さらに、親玉である株式会社Vのあれこれにも首をつっこむ機会を得て、そのあり様に対し「メディア事業部マネージャー」なる肩書が与えられました。御大層な身分ですが、基本的な業務は「みんなを後ろから見守ったりする係」です。メタカル以外にもkaihenとかVRC-JPの動きを見ています。
転籍に至った理由はいくつかあるのですが、やはり「VRChatをガッツリ追いかけたい」という気持ちが高ぶりすぎたのが最も大きな理由ですね。MoguLiveはバーチャル全域を追いかけ、その俯瞰視点は必要だと感じているものの、いや俺は深いとこ行きたいんやと。ちょうどいいタイミングでお声掛けいただいたこともあり、転籍を決断しました。
その裏で、フリーライターとしての活動は引き続き制限なく遂行できました。特に、2024年はこれまでにないメディア様とお仕事をする機会を得て(これはメタカルも含む)、自分の中でも広がりを得られたなぁと感じる一年でした。
ライターとしての一年
とりま各メディアごとのお仕事を振り返ってみます。
メタカル最前線
メタカルでの仕事は執筆以外にも編集、企画、進行、撮影、モデルなどなど、えらい範囲に渡りました。僕名義で執筆したものもありますが、名前を出していないだけで、どこかのフェーズで関与している記事がけっこうあります。まぁ僕だけ書いてもしゃーないですからね。
とはいえ、僕名義の記事もだいぶあったので、いくつかピックアップ。
配信や動画の紹介
一番やりたいことだったし、一番やる必要性を感じたカテゴリ。言わずもがなスタンミ旋風がトリガーですね。とはいえ、配信終了1時間後に叩き上げた弟者上陸レポは正直イカちぃ動きだった。
その一方で、VRChatの魅力が伝わる動画の紹介も、VRChatカルチャーの入口を広げるうえで重要だと思い、メタカル内に「動画で見るVRChat」なる枠を作ってみました。まだ書ける人は少数ですが、今後もちょこちょこ増やしていきたいところ。
イベレポやインタビュー
「このイベントのレポ書いていい?いいよ!ありがとう!」がだいぶやりやすいのがメタカルのいいところ。これまでのフラストレーションを発散させるがごとく、勢いだけの速レポを連打していた思い出。
インタビューもメタカル内でちょこちょこやっていました(別メディアの方が多い)。こちらも、"深み"を掘りやすいのはVRChatに強いメディアならでは。だいぶ好き勝手やらせてもらってたような気もします。マジでありがたい。その分、後半はメインライターを他の人に任せつつ、自分はサポートに回る場面が多かったですね。
あと、ワールドやギミック紹介もたまにやっていました。
アバター・衣装レビュー
「一本まるまるのアバターや衣装レビューやりたいなぁ~」と思っていた昨年から、いきなり夢が叶いました(なお、先に叶えていただいたのはバチャマガさんです。こうちらは後述)。いろんなアバターや衣装に、お仕事で触れる機会を得られたのは幸せな一年だったなと思います。
ちなみに、メタカルでのこれら記事は基本的にワンオペで回す想定です。すでに自分の手順はドキュメント化しており、僕以外の人も制作できる体制を整えています。やっぱ僕以外にもできる人が増えるのがベストですので。
デバイス系
メタカルはそこまでデバイス特化なメディアでもないので、数はほどほどに。
バーチャルライフマガジン
VRChatメディアの老舗・バーチャルライフマガジンさんからも今年はたくさんお仕事をいただきました。というか、2024年はこちらが先でしたな。
特に、大丸松坂屋百貨店アバター全12体レビュー特集では、うち7本の執筆をご依頼いただきました。こちらの案件はカメラマンやモデルとも共同で取り組んだのですが、それぞれの道に通じた人との仕事はやはり刺激になりますね。自分も視野も広がる、とても印象深いお仕事でした。
2023年末に『瑞希』のレビューをご依頼いただいたParyiさんの新作「春香」「rurune」のレビューも担当しました。思えば、2018年ごろは「ぱりぷろの人」として認知していたParyiさんの3DアバターのPR記事を書くって、なかなか不思議なめぐり合わせです。
また、「OGRE」さんの新作衣装レビューも昨年に続き担当する機会に恵まれました。自分も普通に好きなブランドなので、こうした形で少しでもご支援できるのはうれしいことです。
あと、僕のペンネームと下の名が同じ伊ノ本カズラさんの『熨斗目』のレビュー記事では、執筆だけでなくモデルにも挑戦しました。いや難しいぜ。でもめっちゃ楽しかったですね。「彼の中身、我」って言えるようになるとは……
BOOTH
今年は少し特殊な案件として、「BOOTHさんがバチャマガへ寄稿する記事の取材・執筆」をお引き受けするお仕事もいただきました。「なにがあったん」への回答は……いずれできたら。
どのメディアでも、仕掛けるには勇気のいるヘビーなインタビューを担当しましたが、カロリーたっぷりなものの「これはやってよかった」と言える充実した仕事でした。稼働に余裕があればもっとやりたいっすな。
MoguLive
「週刊 気になるVRChat」の連載が9月で終了したこともあり、MoguLiveさんでの執筆は途中から控えめになりました。この連載も続けたかったものの、さすがにマニアックではある。むしろここまで続けさせてくれたことに感謝です……
そして、思い出深いのが「SANRIO Virtual Festival 2024」のコミュニティコラボ全取材。全部で9つあるコミュニティコラボイベントを全部一人で回って取材して記事する、いま振り返ってもトチ狂っとるやつですが、これはもう自分がやりたいからやりきりました。「VRChatをガッツリ追いかけたい」という想いが、まず最初に猛ダッシュした日々でした。このときにできたご縁は、その後もいくつか続いているので、間違いなく自分の中でもベストワークのひとつ。
ちなみにワールドやパレードもレポ担当していました。同じく現地を駆けていたバチャマガチームはある意味戦友のような存在になりました。さて、来年はどうやることやら……
リアルサウンドテック
リアルサウンドテックさんとは今年も懇意にさせていただきました。バーチャル何でも週刊連載「Weekly Virtual News」は今年も続けさせていただいております。ほんとに頭が上がりません。半ばライフワークです。
そして、ヘビー級インタビューもたくさんご依頼いただきました。特にぴちきょさん、PONYOさん、yoikamiさんは、「いずれどこかでガッツリお話を聞きたい」と思っていた人々だったので、ロングインタビューの機会をご提供いただけたことには感謝しかないですね。FZMZインタビューもすごい有意義な時間でした。
Brabe groupの野口代表へのインタビューも(取材自体は2023年でしたが)、お話しのおもしろさはもちろん「あれ?意外と自分と視点近いな?」と感じたので、自分の中で印象深い取材になっています。
あと、デバイスレビューやイベレポもお声掛けいただけてうれしい限り。おかげさまでVision Proを自費購入するに至りましたがな!(ミートアップ行ったらほしくなっちゃった)
KAI-YOU
今年は新たに、KAI-YOUさんが大きなクライアントのひとつになりました。自分にとって「デッカくて遠い存在」だと思っていたので、お仕事いただくことになるとは予想だにしていなかったところ。シンプルにうれしいですね。「StyMore」の取材記事に至っては完全な持ち込みだったのですが、快諾いただけてあなうれしや。
そして、有料メディア「KAI-YOU Premium」でのインタビュー記事も担当することに。ライヴラリから始まり、甘狼このみさん、やみえんさん、スタンミさんと、インタビューのヘビーさで言えば今年随一の案件をいただきました。ライヴラリの件はその後も思うところはありましたが、他御三方へのインタビューはこちらも学びがあるお仕事になりました。
KAI-YOUにおける取材姿勢は、これまでお仕事をいただいたメディアともまた少し毛色が異なっており、その意味でも自分にとって大きな刺激になっています。
MetaStep
それと、今年は新規スタートメディア「MetaStep」さんでもいくつか記事を書きました。ローンチ時点で公開される最初の記事のいくつかを担当しており、これもはじめての経験でした。立ち上げ以後はそこまでご協力できていないのが歯がゆいところ。情報発信だけでなく、事業者への接続も試みるメディアはなかなか希少なので、ぜひご認知いただければ幸いです。
VRChatユーザーとしての一年
「VRChatをガッツリ追いかけたい」は私生活についても同様で、今年は可処分時間のほぼ全てをVRChat方面につぎこみました。おかげでVTuber方面はかなり弱くなったものの、夏に訪れたスタンミ旋風の動向を、現地の温度感とともに観測することができました。いろいろ探索しているうちに、新しい交友関係も広まったように思います。
特に、メタカル所属以後は、なんとなく「知っている」と言われる頻度が増えたようにも感じます。NAGiSAなどのパブリックな場への出没率も高めた影響はありそうですが、遠くから「あの人……たしかライターの……」みたいなヒソヒソ声を聞くこと、MoguLive時代ではほぼなかった気がするので、"近いメディア"に身を置くことの重要性を肌で感じた一年でもありました。おかげさまでエロ布など着られやしないぜ あとバチャマガの人かと言われると微妙に違うぜ
そして僕自身も、「知らないところ」へ顔を出す意識を少しだけ持つようになりました。これはサンリオVfes取材時、様々なコミュニティを渡り歩いた経験が影響していそうです。自分のたむろしてる場にはいない人が、外にはたくさんいる。視野を広げる意味でも、接点の薄いコミュニティへの接触は可能な限りできたらいいなと思った次第です。もちろん、無闇なタッチはよいとは言えないので、距離感を慎重にはかりながら。
その一方で、ライター以外のこともやりたいなと思い始めた一年でもありました。アバター改変は昨年に続きですが、今年は写真に力を注ぎ始めてみました。たぶん昨年よりはうまくなっていそうですが、まだまだ「よい写真」をたくさん生み出すまでの道のりは遠そうです。けれども、表現方法がひとつ増えたことは、純粋に自分にとってたしかな収穫です。
あと、ついにワールドも作り始めました。市販アセットの改変なので「作った」というのはまだおこがましそうですが、どうぶつの森のように自分だけの空間を構築していくのは、アバター改変とはまた違った楽しみがありますねぇ。
2024年、思ったこと
今年思ったことについては、リアルサウンドテックさんの年末鼎談で洗いざらい話したので、基本的にはそちらにまかせます。
ざっくりまとめるならば「マジで大変動すぎて予測なんてもうできん」だし、「もう金盾が唯一のゴールでもないね」あたりですかね。湊あくあさんやにじさんじ1期・2期が卒業に踏み切ったのが、その証拠でしょうと。そして、もうその一報ごとに杞憂するのもおやめなさいと。そんな歳じゃないでしょ!この業界!!って。
話していないこととしては、VRChat界隈の"揺れ"について。スタンミさんというスターが、文字通り全てを引き上げていったことに、「正直おもしろくねえ」とつぶやく人が多くいましたし、その気持ちもだいぶわかる。
僕自身は、現段階ではまだ広げていくべきかなと思っています。人がいない、収益の目もないプラットフォームは、ほぼ確実に消滅してしまう。けれども、そうもそうも言ってられない状況がくる可能性もあるだろうし(2022年のNFTとの勝手な接続論みたいなやつとかね)、その時はまた別の主張となるかもしれません。
正直、ここは状況次第だとは思うので、ある程度は俯瞰しながら判断したいところです。とはいえ、なるようになるはずだし、そんな悪いところへは行かないっすよ。きっと。
来年の話
最後に、来年やりたいことを軽く出して、鬼に笑ってもらいましょう。
- 土地のあるワールド作り:これってなにがベスト?Terrain?GAIA Proって使えるの?
- 作ったワールドの公開
- テーマ性をもった写真作品に挑戦
- Vision Proアプリのレビュー
本年は大変お世話になりました。みなさま、よいお年を!
リアアリス4周年記念!ふたりのリアアリスに、リアアリスのこれまでとこれからを聞いてみた
リアアリス――僕が最も好きなアバターのひとつです。有坂みとさんのアバターブランド『ぷらすわん』より、2020年6月16日に発売されたこのアバターは、いまなお多くの人たちに愛され、リアアリス怪文書部を筆頭に独自のカルチャーを育むまでに至っています。
今年で発売から4周年を迎える長寿アバターでもありますが、ふと、最初期から彼女を見初め、いまなお愛し続けている人たちに、リアアリスについてあらためてお話を聞きたいなと思いました。
今回、リアアリス発売4周年企画も控えているさなか、リアアリス怪文書部部長・西井りいさんと、「リアアリス怪文書美術館」館長(ワールド制作者)のきゅさんに、インタビューを実施しました。不思議な世界を作り出してきたリアアリスは、どんな歩みをたどってきたのか。その足跡を、お二人のお話しからたどっていきましょう。
- リアアリスとの出会い
- ゆっくりと、着実に成長してきたリアアリス・コミュニティ
- リアアリス怪文書の歩みを紐解く
- 初心者案内にも採用…? 「リアアリス怪文書美術館」建設の舞台裏
- 焦らず、ゆっくりと、リアアリスの魅力を伝えていく
リアアリスとの出会い
――まずはじめに、お二人とリアアリスの出会いについてお聞かせください。
きゅ 私はもともと『不思議の国のアリス』が好きで、VRChatを始めた当初も、自作のアリスっぽいアバターで活動していました。
リアアリスとのファーストコンタクトは、VRChatを始めてから半年ぐらい経ったころに出会った、約束さんのパーティクルライブ「可愛くなりたい」でしたね。パーティクルライブを見てから「この子はぜひお迎えしたい!」と思ったんです。そして、お迎えしてから着せた衣装が、いまも着ているものです。
西井りい 僕はVRChatを始めて最初の1ヶ月ぐらいは、Publicインスタンスで過ごしながら、別のサンプルアバターを使っていました。けれどもある日から、Publicでたまにすっごいかわいい子が目の前を横切るようになったんです。なんというか、完全に一目惚れでしたね。
そしてその後、「アバターミュージアム」になんとなく立ち寄ったら、一目惚れしたあのアバターがいたんです。これはもう「運命だ」と思って……こうして出会ったのが、リアアリスだったんです。
あと、きゅさんが先ほど挙げた「可愛くなりたい」には僕も思い入れがあります。あのパーティクルライブには、リアアリス以外にRAIくんという男性アバターが登場しますけど、実は僕がVRChatを始めて2日目ぐらいから使っていたアバターでもあったんです。そういった意味でも運命を感じましたね。
――お二人とも形は少し違うものの、「どこかで偶然出会った」という点で共通しているのがおもしろいですね。
西井りい 当時は「新作アバターが出たらとりあえず買う」という文化も知らなかったので、新作だから買ったわけではなく、ほんとに偶然の出会いから使い始めているんですよね。
――まさに運命の出会いを果たしたお二人ですが、リアアリスに対してどんなところに魅力を感じましたか?
きゅ やはりアリスモチーフであることが、私にとっては大きな魅力ですね。私にとって『不思議の国のアリス』は、10年以上趣味として追いかけている、とても思い入れのある作品なんです。
それでいて、私の中の『不思議の国のアリス』のアリス像とリアアリスちゃんって、ちょっと似通っているところがあったんですよ。元気そうなところとか、ちょっと気の強そうな感じとかが、私の中のアリス像とすごい近くて。
西井りい 自分の場合は、アリスモチーフから連想される「不思議ちゃん」な雰囲気が、けっこう刺さっています。不思議ちゃんって、いろんな行動ができることだと思っているので、そこが自分の性格などに合っているのかなと思うんですよね。
あと、顔がめちゃくちゃ可愛いですね。ありえないっすね。いまだにドキドキするんですよ。リアアリスに囲まれると……
きゅ わかります。きのうも3〜4人くらいのリアアリスに囲まれて、普通にドキドキしていました。みんなかわいい。それでもうちの子が一番だって、未だにずっと思っています(笑)。
――出会った当初から今に至るまで、リアアリスに対するイメージや印象に変化はありましたか?
西井りい 半年ぐらい前から、フェイシャルトラッキングを導入したんですけど、そこから印象が一変しましたね。3年ぐらいリアアリスを使ってきたはずなのに、新しいリアアリスの顔が出てきたんです。特に最近は、自分があくびしている写真とかよく撮られるんですけど、「リアアリスってこんなに表情豊かなんだ!」って驚かされていますね。
――フェイシャルトラッキングを導入してから発見した、「この顔いいな」と感じたリアアリスの表情はなんですか?
西井りい 横目ですね。目が横45度を向いている表情がとてもいいんです。フェイシャルトラッキングを導入してから、より積極的にこうした表情を出して撮影できるようになったので、写真・動画の印象がだいぶ変わってきたかなと思っています。
きゅ 私は逆に、印象などの変化はあまりないですね。というより、3年半ずっと新鮮な気持ちでリアアリスと接しています。「この子はこんな表情も似合うな」、「こんなセリフも似合うだろうな」、「こんなポーズも似合うだろうな」などなど、リアアリスからはずっと新しい魅力に気付かされています。今でも、「うちの子こんな可愛いところあったんだ!」という発見が続いているので、毎日が幸せです。毎日、初恋が起きているようで。
ゆっくりと、着実に成長してきたリアアリス・コミュニティ
――発売から4年経ち、リアアリスを取り巻く界隈の雰囲気はどんな変化があると感じますか?
きゅ 発売からしばらくは、それこそリアアリス怪文書も始まって間もなかったですし、「リアアリスを使っている人がいる!」というだけでワクワクするような、新鮮な日々でした。
それから3年半リアアリスしてきましたが、いろんな人が増えましたし、さまざまな部活動やイベントも立ち上がるようになりました。いわゆる、コミュニティとしての結束力が密になったなと感じますね。
――規模感としては年々大きくなっていると感じますか?
きゅ 私の所感としては、コミュニティの規模が大きくなっている印象はそこまでないですね。ただ、リアアリスから他のアバターになる人、逆に他のアバターからリアアリスになる人がバランスよく現れていて、うまい具合に入れ替わりを重ねながら成長しているように感じます。
――一方、リアアリス怪文書部の部長である西井さんからはどう映っていますか?
西井りい 3年前と比べると、コミュニティが形成されて、かつ僕や周囲のリアアリスのスキルも向上してきて、やりたいことがどんどん形にできるようになってきましたね。
僕はこれまで、「リアアリスユーザーには全員話しかけてフレンドになる」ということを心がけてきたのですが、そこから人間関係が広がるなかで、「あれやってみようよ」という提案がどんどん出てくるようになったんです。最初は、自分ひとりではリアアリス怪文書を投稿する以外はできなかったものが、いまや「リアアリス野球部」のような部活動や、「リアアリス怪文書ウィーク」という企画を次々に立てられるようになりました。
――ゆるやかに、できることが増えてきていると。急激な発展と爆発ではなく、落ち着いた速度で着実に大きくなっているのは、リアアリス界隈の特色と言えそうですね。
西井りい そのスタートがリアアリス怪文書というのもなかなかですけどね(笑)。
リアアリス怪文書の歩みを紐解く
――せっかく話題に挙がったので、リアアリス怪文書のお話に触れられればと思います。まず、リアアリス怪文書という文化の始まりについて、お話しいただければ。
西井りい 2020年11月14日に、自分がリアアリス怪文書の第1号を投稿しました。当時、Twitter(X)に「フリート」という、写真や画像に文字を載せて投稿できる機能が実装されたのがきっかけです。これが面白そうだなと思い、当時リアアリスになりたてで抱いた想いを、かっこいい名言とともに伝えたいなと考えたんです。
――それが「リアアリスか、リアアリス以外か」と。
西井りい ローランドさんの「俺か、俺以外か」が元ネタです。あらためてみるとだいぶ過激ですね(笑)。
そこから、毎日文章を変えて投稿し続けていたところ、フレンドのアプリコットさんがその行動にリアアリス怪文書という名前をつけてくれたんです。さらにハッシュタグまで作ってくれたので、「これいいじゃん」と思って、そこからは毎日ハッシュタグつきでフリートに投稿してきました。
その後、フリートが廃止されたので、文字付きの画像をハッシュタグを添えて投稿する、現在のリアアリス怪文書のフォーマットが確立しました。
――素朴な疑問なのですが、ご友人にリアアリス怪文書と名付けられるまでは、西井さん自身は”それ”をどのようなものだと認識されていたのでしょうか……?
西井りい なんでしょう……振り返ってみても、当時自分が何をしたかったのか、ちょっとわからないんですよね(笑)。ただ、僕はこのアバターを世界一かわいいと思ったんです。そして、その魅力をとにかく伝えたいと思った。その衝動のわけのわからなさが、リアアリス怪文書という名付けの決め手だったのかな……とは思っています。
――その衝動的な行動が、じんわりと広がっていき、いろいろなリアアリスユーザーがリアアリス怪文書を投稿するようになっていきました。その一人がきゅさんだと思いますが、どのようにリアアリス怪文書部を知り、自身も投稿を始めるようになったのでしょうか?
きゅ 私はリアアリスになって2週間ぐらい経った、2021年1月11日にリアアリス怪文書を初投稿しました。きっかけは、リアアリスになってすぐのころ、西井さんとフレンドになり、Twitterで相互フォローになってから、西井さんのフリートが毎日流れてくるようになったことですね。それを見た他のリアアリスちゃんも、おもしろがってハッシュタグをつけて投稿していて、「これは面白そう。私もやってみたいな」と思い、投稿してみたんです。
――ふと、目に入るだけで「なんか面白そう、やってみよう」と思わせるものって、世の中になかなかないと思います。しかもリアアリス怪文書って、けっこうコストかかるフォーマットですよね。
きゅ 写真投稿だけじゃなく、文章も添えるというある種のレギュレーションがありますからね。文章を考えて、文章のレイアウトやフォントサイズも考えた上で、画像に入れて投稿する、となると普通の写真投稿よりもハードルは高いはずなんですけど、ありがたいことにいろんなリアアリスちゃんが挑戦してくれています。
――そんな独特の文化として成熟したリアアリス怪文書ですが、お二人から見て、この文化にはどんな魅力があると考えていますか?
きゅ 「リアアリス怪文書って何?」と聞かれた際のたとえとして、「リアアリスのラブレター」という表現があって、これは本当に的を得ていると思います。
自分からリアアリスにラブレターを書き、それをいろんな人に見ていただくことで、リアアリスの魅力が伝わる。そこからリアアリスの輪が広がっていくし、リアアリス以外の方からも「リアアリスが面白そうなことをやってるな」と認識してもらえる。魅力だけでなく、そうした認識を持ってもらうための役割もあるんじゃないかなと考えています。
西井りい 自分は、魅力は2つあると思っています。ひとつは、人間にある程度本能的に備わっている、アウトプットしたいという欲求に応えられるところです。アウトプットにもいろいろありますが、好きに文章を書いて発信することも、アウトプットのひとつですよね。
そして、リアアリス怪文書は比較的手軽に発信できる、「アバターを褒めるフォーマット」だと思います。意外と、こういったものって他に見られないんですよね。「アバターの魅力を伝えたい」という欲求に、手軽に応えられることが大きなポイントだと感じています。
もうひとつが、リアアリス怪文書という名前そのものだと思っています。要は、国語力があまり問われないんですよね。リアアリス怪文書のおもしろいところは、国語力がとても高い人が書いても成立すると同時に、「本当に日本語か?」と思ってしまうものでも成立するところなんです。しかも、日本語が崩壊していたほうがそれっぽい。
そういう意味で、「上手さ」という概念はあまりなくて、参入ハードルはあってないようなものかなと思います。国語力とか気にせず、好きなように書いて、発信してもらえればいい。そういうこともあって、僕は意図的にコンテストなどを実施しないようにしています。
きゅ 技巧にこだわるのも全然いいけど、やっぱりリアアリスに対する愛が詰まっているリアアリス怪文書に、我々は親近感をおぼえるんですよね。国語力や写真の上手さは二の次である、という点はこれからも大事にしていきたい感性のひとつですね。
西井りい 個人的に特に記憶に残っているのが、リアアリスが全く写っていない写真に文書を添えて、リアアリス怪文書として投稿していた作品ですね。投稿された方は「これはリアアリスである」ってTwitterで熱弁していて(笑)。まぁでも、それもいいのかなって。
――愛の伝え方は、人それぞれ、と。
西井りい ですね。その方にとっては、空がリアアリスに見えたのかもしれませんから。
――その自由さや、肩ひじを張らなくていい点は重要な要素だと感じました。どこかから流れてきた「なにかわからないもの」に対し、「なんかわからないけど、とにかく自分の想いを書けばよさそう!」と感じさせる空気感が、結果として参入障壁の低さにつながったのかなと。これが意図せず生まれたところが、とてもおもしろいですね。
初心者案内にも採用…? 「リアアリス怪文書美術館」建設の舞台裏
――そんな独特な空気とともに増えていったリアアリス怪文書が展示されているのが、「リアアリス怪文書美術館」だと思います。こちらが建築された経緯について、お聞かせいただければと思います。
きゅ 美術館を建てようという話が持ち上がったのは、2021年の11月ごろ、リアアリス怪文書部が立ち上がって1年ぐらい経ったころですね。「よくこんな部活が1年も続いたよね」という思いもありましたし、作品はあるんだから、美術館として展示したらおもしろいんじゃないかと思い、半ばノリで私が制作に着手しました。
ワールド制作自体は、「Q's Library」に続いて2作目。最初は導線計画に着手しつつ、「クリーンな美術館を作りたい」という思いから、展示するリアアリス怪文書はもちろん、アバター制作者である有坂みとさんに許諾をいただくところから始めました。しかし、制作に時間がかかっていたことに加え、ライティングまわりが一通り終わったころでデータが壊れてしまい……西井さんのもとへ飛行機で飛んでお詫びにいく事態になりました。「すみません、美術館壊しちゃいました」って(笑)。
西井りい 一方の僕は「美術館がんばってくれているのに、いっしょに遊んでくれるんだ!」って無邪気に喜んでいました(笑)。
きゅ その折はお世話になりました……そんなトラブルを経て、予定よりは大幅に時間がかかったのですが、リアアリスの2歳の誕生日の少しあと、2022年6月30日に「リアアリス怪文書美術館」を開館することができました。当時はもう、「完成してホッとした」という気持ちが大きかったですね(笑)。
――いろいろなワールド制作やイベント制作を手掛けている方からも、同じようなことをよく聞きますね。「まずは動いてよかった」とホッとしてから、みんなの反響が耳に入ってくるようになる。
きゅ みんなの作品を預かってる以上、完成させないわけにはいかないですし、責任は感じていました。
――こうして完成した美術館ですが、当時から反響はかなりあったように思います。お二人から見て、公開当時の反響はどのように見えていましたか?
西井りい 一番衝撃的だったのは、初心者案内で使われていることを知ったときですね。「リアアリス」でパブリックサーチをかけていると、ちょくちょく「初心者案内でリアアリス怪文書美術館に行きました!」っていう話を見かけるんですよ。たしかに、美術館としてのクオリティはすごく高いし、一つの文化が詰まっているので、冷静に考えれば納得がいくんですけど、初めて知ったときは「マジか」と思いましたね。
あと、リアアリスを手にしたばかりの人が、改変のアイデアや表情のヒントを探す場所としても成立しているみたいで、「リアアリスになったらここに来よう!」って話も聞きますね。なんというか、一枚の画像から始まったものが、ワールドになり、VRChatの文化のひとつとして入り込んでいるのは、すごく不思議な感覚ですね。
――定番のアバター展示ワールドは数多くありますが、「特定のアバターにひもづくワールド」の定番として、「リアアリス怪文書美術館」は成立している感触がありますね。それがしっかりと外部に波及し、初心者案内という形で届いているのは興味深いです。
西井りい 実際、ここに連れてこられた初心者の方ってどう思うんでしょうね。こっそりついて行ってみたいです。
――館長こと、きゅさんは公開後の反響はどのように見ていましたか?
きゅ 一番たくさん聞く感想は「リアアリスかわいい!」ですけど、次によく聞く感想は「リアアリス、怖い」ですね(笑)。「怖い」というのはおそらく「愛が重たそう」、「この熱量はどこから来ているんだ」というニュアンスだと思います。なにはともあれ、リアアリスの魅力を広めるという当初の役割は、うまく果たせてるのかなと思います。
美術館でリアアリスが好きになって自分もお迎えした、という話も聞きますし、美術館ワールド・展示系ワールドというくくりでも一定の評価をもらっていて、ありがたいお言葉をたくさんいただいています。もともと、リアアリス好きな人たちだけで盛り上がるものかと予測していただけに、いまもちょくちょくお客様に来ていただけているのは、本当にうれしいことです。
――「リアアリス怪文書美術館」はVRChat以外のプラットフォームにも建設されましたよね。あれはどのような流れで誕生したのでしょうか?
西井りい もともと、VRChat以外にもリアアリスのコミュニティがあることは把握していて、リアアリス怪文書も同様に伝来していました。美術館についても、ほかのプラットフォームのリアアリスたちが訪れた後、「じゃあこちらにも建てようか」という流れで美術館がつくられていったみたいです。
――VRChatの美術館に感化されて、連鎖的にみなさんが作られていったのですね。そして、その波及の仕方はリアアリス怪文書そのものの広がりに近しいように感じました。
西井りい それはたしかに。リーチャ隊長も「そんなことやってるのあなたたちだけだよ」と驚かれていましたね。ただリアアリスたちとわちゃわちゃしていただけだったのですが(笑)。
――リーチャ隊長によるマンガも、個人的には驚かされました。あれはどのような経緯で立ち上がったものだったのでしょうか?
西井りい リアアリスの周年記念にはなにかしら企画をしていて、3年目では「リーチャ隊長にマンガ描いてもらうのはいかがですか」ときゅさんに相談して、成立しました。リーチャ隊長も当時、美術館は未訪問だったのですが、ご案内中にとても新鮮な反応をいただいて楽しかったです。2〜3時間はご覧になっていましたね。
きゅ ひとつひとつのリアアリス怪文書をしっかりと見て、ひとつひとつにリアクションを取っていたのが印象的ですね。我々もリアアリス怪文書を目にしすぎて、どうしてもこなれてきてしまっているのですが、リーチャ隊長にとっては全てが新鮮だったご様子でした。「リアアリスって動詞なの!?」とか、「あの漢字を『リアアリス』って読ませるの!?」とか、忘れかけていた「リアアリス怪文書を初めて見たときの感情」を思い出すことができましたね。
西井りい 全てのリアアリス怪文書を見終わったあと、順路の最後に待っていたペデスタルに触れて、速攻でリアアリスになってくれたのも印象深いですね。
焦らず、ゆっくりと、リアアリスの魅力を伝えていく
――ここからは、いよいよ開催が迫る今年のリアアリスお誕生日会について、お話しを聞ければと思います。まず確認なのですが、リアアリスのお誕生日会って毎年開催されてきたのでしょうか?
西井りい 毎年開催されています。1年目は自分ではない方が主催で、それ以後は自分主催ですね。2年目はリアアリスによるステージパフォーマンスをメインに掲げ、3年目は複数のワールドを使った企画を実施、そして今年は企画だけでなく、関わってくれる人も増やしながら開催準備を進めています。
――今年のお誕生日会で、「関わる人を増やす」という取り組みを行おうと考えたのはなぜでしょうか?
西井りい リアアリスのコミュニティがしっかりと形成されてきた、その中でいろいろな提案をいただけるようになったことが大きいですね。自分もDiscordの使い方にも慣れてきましたし、いろいろなリアアリスたちのスキルも向上しているので、より多くの人を巻き込んだイベントとして楽しみたいなと思った次第です。
特に今年は、増えてきた部活の部長にお声掛けしたら、いろいろなリアアリスたちが集まってきてくれていますね。さらに、別のプラットフォームにいるリアアリスや、VTuberをやっているリアアリスも集まってきてくれています。盛り上げていきたいですね。
――今年のお誕生日会に向けて、意気込みがあればぜひ。
きゅ いままで以上の規模感になりましたし、年を重ねてきている以上、同じことを繰り返すのではなく、新しい試みにも挑戦していきたいです。
どうしても、長く使われてるアバターのコミュニティや、結束力が強いアバターコミュニティは、身内で固まりがちです。なので、もっと対外的に、リアアリス以外のVRChatユーザー、ひいてはVRChatの外の人たちにも、リアアリスの魅力を発信できるイベントにするべく、準備を進めております。
西井りい 多くのリアアリスたちの活躍の場になることを願っています。今年は、ステージインスタンスで初めてステージに立つリアアリスもいますし、バーインスタンスでバーテンダーやDJに挑戦するリアアリスもいます。来場される方はもちろん、イベントに出演する・運営する人も楽しみ、能力を発揮できる場を作っていきたいし、来年以降もそうしていきたいですね。
――最後に、お二人はこれからリアアリスといっしょにどんなことをしていきたいか、お話しうかがえればと思います。
きゅ いまでも、リアアリスは心の底から素敵なキャラクター・アバターだと思っています。そして、ある人がリアアリスになるかどうかは本人が決めることですが、「リアアリスを知っていればなりたかった!」という、知らなかったがゆえに選べなかったということは、できるだけ減らしていきたいです。
より多くの人たちにリアアリスを伝えて、その上で自らリアアリスを選んでほしいし、選んでもらえるような空気感を作っていければなと思っています。
西井りい 引き続き、リアアリスと仲良くしていくのはもちろんですが、同時にリアアリス界隈は4年目を迎えるアバターコミュニティです。そして、長くやっていくって、単純なようで、難しいことだと思っています。
4周年のタイミングで、ありがたいことに新しいリアアリスも増えている感触もあるので、そういった子たちともどんどん仲良くしていきたいですね。定期的にイベントや企画を立てて刺激を得ながらも、みんなと仲良く、のんびりと過ごしていきたいです。
2023年のおしごとライナーノーツ
年の瀬でございますね。本年も大変お世話になりました。
この時期恒例の「一年の振り返り」、どう振り返るか人によってちがうと思うのですが、自分の場合はおそらく「書いた記事」を並べていくのがわかりやすそうです。
とりあえず、以下に今年やった記事などを並べていこうじゃないですか。
- 新しい連載がはじまった
- ことし仕事で書いたもの抜粋
- ボストン茶会事件ワールド
- ALT3レポ
- 「VIVE XR Elite」体験レポ
- 「Japan Empowerment Summit 2023」レポート
- ドットエスティフォトコン
- 「ぽこピーランド」体験レポ
- 宇推くりあさんインタビュー
- 特集「VRで学ぶ」
- 「CatsUdon(カツドン)の日」レポ
- 「遊覧空間」関連取材
- 「RVC」に関するコラム
- 「私立VRC学園」インタビュー
- リアルVket取材
- 「HaritoraXワイヤレス」レビュー
- VRクリエイターズファイル
- 「VRCボクシング大会」取材
- 「Meta Quest 3」先行体験
- 大丸松坂屋百貨店アバター
- メタバースヨコスカ
- 『CIEL LIVE SHOWCASE at VRChat』レポ
- フィオさんインタビュー
- 「プリキュアバーチャルワールド」レポ
- 「Virtual Fashion Collection “Voyage” 2023 Winter.」レポ
- バチャマガさんの記事
- 雑誌のおしごと
- PR・広報のおしごと
- 来年に向けて
新しい連載がはじまった
MoguLiveで「週刊 気になるVRChat」という連載企画がスタートしました。その名の通り、一週間単位でVRChat関連のトピックをひろってまとめる、週刊連載です。
すでにReal Soundテックで「Weekly Virtual News」が走っているというのに週刊連載を増やすという暴挙。冗談抜きで土日に休めなくなりました。土曜日に「週刊 気になるVRChat」、日曜日に「Weekly Virtual News」をそれぞれ仕込むというシャトルランを毎週くり広げています。
大変ではあるんですが、VRChat関連のトピックってめちゃ細かくて、大多数のメディアで単記事として拾いきれないんですよね(これはVTuberにも言えることだけど)。
だけど、取りこぼすにはちょっと惜しい……と感じていたので、連載という形で最低限キャッチできるようにしたかった、というのがあります。それでも全部が全部は"世界"が広く入り組んでいるので厳しいんですが、0が1になっただけでも、今年は進展あったのかなと思いたいところ。
なお、「Weekly Virtual News」は連載スタートから2年が経ちました。めちゃ特異的な連載を続けさせてくれて感謝しかないです、ほんとに。
実は「Weekly Virtual News」の話をもらったことで、初めてライターとしての自信がついたんですよね。その結果、会社を辞め、フリーライターになった次第。この道に踏み出すきっかけとなったマイルストーンが、いまも続いているのが、なかなか不思議な感触です。
ことし仕事で書いたもの抜粋
細々したニュースからでっかい特集までいろいろやりました。全部挙げるとわけわからんことになるので、ザッと抜粋。
ボストン茶会事件ワールド
【VRChat】ボストン茶会事件を追体験できるワールドが公開! 茶箱を海へ投げ捨てろ! - MoguLive https://t.co/a0Dx25jVOJ pic.twitter.com/dgHTN3m29L
— MoguLive (@MoguLiveJP) January 15, 2023
Twitterがアホほどバズった。「こんなことある?」って思いつつ、なんかVRChat知らない人にもリーチしていたのがよかったですね。やはりGIF/動画効果か……
ALT3レポ
2日目に0b4k3さん会入れたのもあり「書くしかねぇ」つって書いたやつ。自分でも書いてて楽しかった記事。冒頭の構成とかやりかっただけ感あるけど。
「VIVE XR Elite」体験レポ
「HTCひさびさにやるやん!」ってなったニューカマー。メガネ型の新鮮さ、軽さ、画質の明瞭さがやっぱよくって、おまけにMR精度も高いというよい体験ができた。
ただ、そのあと自費で購入したものの、やはりエコシステムが未熟なので日常的な利用には向いてないなーというのが正直なところ。取材のときにはビジネス用途でリモートデスクトップ的なこともできるって言ってたけど、結局そのへんのアプデってきたのだろうか。
「Japan Empowerment Summit 2023」レポート
これ完全にビジネス向けのイベントだったんですが、地方創生とメタバースのトークセッションは素直におもしろかったです。「バーチャル大阪」ってやっぱ苦戦してんだとか、「メタバースはコミュニケーションツールであるべき」ってことに首肯したりとか、文科省の黒田さんさてはVRChat民だな?みたいな推察をしたり、とか。
焼津市とVketの取り組みの歴史や、「VIRTUAL SHIZUOKA構想」のお話もシンプルに興味深かった。というか静岡県めっちゃメタバースに気合入れてませんか。すごい。焼津市も「VIRTUAL SHIZUOKA」もいつかみっちりお話聞きたいところ。
ドットエスティフォトコン
MoguLiveがフォトコンテストの審査員として参加し、しおまるさんの応募作品に賞を授与することになりました。蒼ちゃんの愛らしさが引き出されたいい写真です。その後メールインタビューを実施したのですが、「圧倒的彼女感」というコメントに唸らされました。いやほんとにそう。
その後しおまるさんのXをフォローしたのですが、パーソナリティまで詰めた改変がほんとに巧みです。あぁなっていきたいわね……
「ぽこピーランド」体験レポ
「すごいだろうな」とは思ってたけど想像以上すぎた。ワールドのすごさはいまさら語るまでもないけど、個人勢として徹底的におもしろさ・楽しさを追求する姿勢って、VRChatクリエイターと相性がよいのだろうなーと考えるきっかけになりました。「VTuberとVRChatは混ざり合う」と僕が考える最大の論拠です。
その後、ぽんぽこさんと建設班にインタビューする機会も恵まれました。そしてぽんぽこさんとツーショットを撮るという僥倖にも出会うという。こんなことあるんだなぁ。
宇推くりあさんインタビュー
今年のVTuber業界のスターの一人といっても過言ではない。鉄は熱いうちに、ということでかなり早めにインタビューさせていただきました。
当初メールインタビューの予定だったのですが、一回お打ち合わせする機会があり、その語り口がほんとに熱量にあふれていたのが印象的でした。その後、内閣府案件やJAXAコラボなど、一年を通して飛躍していった方です。来年の活躍にも期待ですね!
特集「VRで学ぶ」
だいたい自分が全体的な企画を考えたはじめての特集。個人的に最も注目したい領域の「VR×学び」に、様々な切り口からフォーカスしました。
記事の一覧はこちら。当初は4本だけの予定だったんですが、初手の理系集会取材直後、「ぜひうちにもきてほしい!」という声かけをもらい、いろいろな学び系イベントを回る5本目の企画を急遽立てた、という裏話。結果として、領域の広さを伝える証左も生み出せたような気がします。
「CatsUdon(カツドン)の日」レポ
VRChatコミュニティでぶっちぎりで突き抜けているところのひとつ。TRPGをやるためにほぼマイクラみたいなシステムを作るって何事よ!? というシンプルなおどろきがありました。
そしてこの年、ここからバーチャルパーティーという会社が立ち上がり、大きなVRボドゲ・アナログゲームイベントが開催されるという、怒涛の展開が起こりました。この領域もぜひプッシュしたいところ。
「遊覧空間」関連取材
今年ビビった案件。「あの『VisitoR』がMV制作協力を!?」という衝撃がありましたね。事前にお話はいただいたので、ご関係者にインタビューしつつ、記念ワールドを取材した次第です。ちなみにその後の試写会にも行きましたわよ。
このときにも、最前線に立ってる人は少なからずこの領域に関心を持ち始めているのだなと感じた次第。割と今年一年はずっとそんな所感ですな。
「RVC」に関するコラム
今年アホほど話題になった生成AIネタ。話題になったおかげか一時期かなり継続してアクセスがきていました。いまAIボイスチェンジャーの精度や種類ってどんな感じになっているのかしら。早すぎてぜんぜん追えない。
「私立VRC学園」インタビュー
なんだかんだ気になってたイベント。サンリオも出たしいいタイミングじゃろ!ということで取材をお願いしました。「学園というコミュニティであり、教育機関ではない」というのが興味深いポイントでしたね。たしかに「学校」って巨大な共同体です。
卒業生インタビューも実施できたのはよかった気がします。実際、私立VRC学園の卒業生ってなにかしらしている人が多い。いろいろやりたくなってくる、というのはいい環境ですよね。
リアルVket取材
いいイベントでした。「バーチャルマーケット2023リアルinアキバ」。偶然撮れてしまったサムネ写真も相まって、ほんとに「バーチャルの入口」になっているのもよさげ。ちなみに冬の方も行ってきて、それなりに楽しかったんですが、やっぱサーキットイベントってシンプル疲れるので、アキバ方式がいいな~と思ったり。
「HaritoraXワイヤレス」レビュー
そりゃあもうネチネチといじめてきました。我が家の電波反響的に不安定極まりない環境でやるんだから、もうレビューというよりストレステストと呼ぶべき。
でもやっぱり、ちっちゃいのって正義だなと感じますね。すごく楽。これで専用ドングルを使うと安定性どんな感じなのかしら。「VIVE トラッカー Ultimate」がそこまで感あるので、こっちの仕入れは計画したい。
VRクリエイターズファイル
今年スタート企画。VR方面のクリエイターをターゲットにしたサシのインタビューです。今年2本しか回せてないので、来年はもうちょいいろんな人にアタックできたら……いいな……
「VRCボクシング大会」取材
これも念願叶ってやっと取材できたイベントでした。このときはおむらいす食堂さんを記者にお迎えし、自分は編集やら書き起こしサポートやらを担当していました。お願いして大正解。フィジカルモンスターがいなかったら成り立たん取材でした。
「VRCボクシング大会」も今年さらなる飛躍を見せたイベントだと思います。TV取材、東京タワーでの大会イベントに、イセゲアイドルの「バーチャルファイター」など、注目されるタイミングの多い一年でしたね。eスポーツとしての完成度も随一なので、どんどん広まってほしいところ!
「Meta Quest 3」先行体験
今年一番でっかい仕事はたぶんこれ。9月頭にプレス向けの先行体験会が実施され、9月末に解禁というスケジュールでやってました。その間「Quest 3ってどうなるんだろうね~」というおしゃべりに、「どうでしょうねぇ」と返すほかない期間が続きました。
浅田カズラ絶対に許さん #MetaConnect2023 https://t.co/2aPb6FzLoA pic.twitter.com/Jccnq3VYtp
— バーチャル美少女ねむ/Nem⚡今年最も輝いたV@MoguLive VTuber Award 2023 (@nemchan_nel) 2023年9月27日
発表直後にこの顔である。その後、Quest 3ユーザーも地道に増えていて、好感触が多い印象です。MR機能が想像以上にふつうの人にウケてるのはおどろかされましたね。
大丸松坂屋百貨店アバター
今年ビビった案件。「あの大丸松坂屋百貨店さんがぁ!?」という衝撃がありましたね。そして担当者が私立VRC学園の卒業生だったというのも聞いて二度ビビる。おかげさまで龍青くんは発売直後にお迎えいたしました。
メタバースヨコスカ
おなじみ往来さん案件。気合の入り方が違うし、施策の解像度も高い。「どうなってんの!?」と思っていたら、そもそも横須賀市のご担当者が数々のサブカル系案件を手掛けてきた古強者だったという。ワールドを見て、お話を聞き、スカジャンを着て、「すごいことになってきたな」と感じた次第。「VRChatクリエイターとプロクリエイターの共創」という話もおもしろかったですね。
『CIEL LIVE SHOWCASE at VRChat』レポ
間違いなく、タイトル通り。当日は開演までかなりドタバタだったものの、ライブ本編は特にトラブルなく進行し、そのすごさが余すことなく伝わったように思います。神椿がやってきたこともすごいし、関わる面々も「あっ!みんな知っとる!」ってなるのもすごい。そしてこれがVRChatイベントの新たなラインになったとしたら……怖いですね!
フィオさんインタビュー
動く城のフィオ、と聞くと数年前は「雲の上の人」でした。でも今年、偶然VRChatでお会いし、「なんかチャイナ女幹部っぽいルックス好きなんだな」という気づきを得てグッと距離の近い存在になりました。セクシー系トラスちゃんを使う数少ない一人。
そして、あらためて「これまでとこれから」をうかがってみると、「バーチャルの世界で生きていく」という人生のテーマを、その身をもって実践している方なのだな、という認識がはっきりと得られましたね。大変だろうなぁと思いつつも、その道を応援したくなった一人です。
「プリキュアバーチャルワールド」レポ
僕は初代プリキュアをリアタイで眺め、大学生のころにスマプリ全盛期を体験した世代です。それがまさかVRChatに来ようとは。眼前でスマプリチームを拝めようとは。ほんと得も言われぬ感情に包まれました。もちろん当日もみっちり2日間楽しみました。
「Virtual Fashion Collection “Voyage” 2023 Winter.」レポ
年末も年末! 昨年からさらに大きくなったVoyageのレポです。今回はメタバースヨコスカ(往来)のスカジャンや、BEAMSのバーチャル限定服が歩いたり、EXTENTIONの姉妹ブランドが出たりと、マジで"総決算"という心地でしたね。偽りなく、ここがフロンティアなのだと感じさせるビッグイベントになりました。
バチャマガさんの記事
今年はバチャマガさんで、いわゆるPR記事にあたるものもお仕事としていただきました。バチャマガでは衣装やアバターの発売時PRをよく受けているそうで、その一環でメンズアバターブランド「OGRE」さんのPR記事を2本担当しました。自分も好きなブランドなので感慨深い。
そして、今年のVRChatアバターで五指に確実に入るであろう「瑞希」のPR記事も書きましたね。あまりに多機能すぎて「どうまとめる!?どう構成する!?」と、ド深夜にみんなでワイワイしながら考えたのもなつかしいです。注目度が高かったおかげか、月間ランキングの首位に長らくいたそうな。
こうしてみるとまたえらい書いたな自分。ありがたいことです。
雑誌のおしごと
今年の大きな一歩として、はじめて雑誌での記事執筆を行なう機会に恵まれましたね。『ダ・ヴィンチ』2023年12月号のVTuber特集で、「企業タイアップとVTuber」というテーマのコーナー2ページを担当しました。
考察パートと、企業の担当者へのインタビューパート2つ、という構成で、いずれもなんか1ヶ月以内にやったような記憶があります。企画の相談段階からお話はもらっていて、ちょっとだけ方向性などのアドバイスもさせていただきました。
雑誌媒体の進め方はWeb媒体とはちょっと違う感じで、どうなるかと不安ではあったものの、予定通り納品・公開できてよかったですね。なにより、自分の書いたものが紙として残るの、実は専業になってから初な気もするので、思い出深い体験でした。
PR・広報のおしごと
そしてもうひとつ。アバターブランド「moonshot」のPR・広報をする、という異業種なおしごとの機会もいただきました。まず最初は「Virtual Fashion Show 2023」の広報相談だったり、ショップオーナーさんの連絡を担当し、その後新作アバター「nova」のPR広報施策を考えるという、未体験なことにチャレンジしました。
とはいえ、うまくいった感触はあまりなし。アバターの広報って特に難しいな……と思わされました。
これがきっかけで、クリエイターさんとのコネクションも開拓していくという課題が自分の中に生まれました。今年ちゃんとできた気はしないので、来年以降の課題として取り組んでいきたいな……
『22/7 Character’s Theater 2023』にて、moonshotが制作協力させていただきました。
— moonshot (@Moonshot_Verse) 2023年12月23日
担当箇所は、以下となっています。
・22/7メンバーの別衣装コーディネート提案
・素体技術を用いた3Dモデルの着せ替え作業
・3Dモデルのモーションキャプチャ対応…
余談ですが、「moonshot」は先日、22/7というデジタルアイドル声優プロジェクトのイベントにて、「VRChat向け衣装のコーデ提案・セットアップ」ということをやっていたりします。VTuberよりもさらに外にある存在が、VRChatアバターの衣装が着た、ということ。こんな感じの越境的展開を予定しているらしいので、ぜひご期待いただければ……!
来年に向けて
そんなこんなで、今年はライター・編集としても幅が生まれ、さらに未開拓のジャンルにも挑戦する機会を得た一年でした。お仕事以外にもいろいろ声掛けいただき、年収もなんだかんだ増えたような? まっとうな働き方ではないにせよ、いまのところ好きなことで生きていけています。
とはいえ、今年は壁も感じた一年でもありました。特に、メディアごとの限界点もある程度は見えてきて、ひとつのメディアだけに固執すると"フリーライターとしては"あんまよくないなーと思いました。
なので、2024年はもっとお付き合いするメディアさんを増やしていきたいところ。幸い、今年は新たにKAI-YOUさんでも記事執筆を始め(まださほど書けてないが)、ほかにもありがたいことに声掛けいただいているので、新たな縁も大切しながら、やれることをやっていきたいなと思う次第です。
なにはともあれ、本年も多くの方のお世話になり、浅田カズラはやっていけております。来年も引き続きよろしくお願いいたします!
VRライブで"MVの世界"へ飛び込む。「W@×おはよう真夜中 Virtual Music Show」レポ
先日、バーチャルシンガーのおはよう真夜中さんのライブ公演「W@×おはよう真夜中 Virtual Music Show」にお邪魔しました。
「貴方の夜に寄り添う歌を歌いたい」というキャッチコピーが印象的なシンガーさんで、自分がちゃんと遭遇したのは「ALLVERSE」のリハを観覧した際だった気がします。その時に披露されていた『夜歩く』が記憶に残っていますね。いい曲です。
この『夜歩く』のMVは、全編cluster撮影という興味深い映像です。おはよう真夜中さん自身も、clusterを中心に活動を展開している方で、今回のライブもcluster開催でした。
clusterは直近でかなり進化して、VRChatと遜色ない演出を仕込めるようになっていることは、ぱんだ歌劇団の『アラジン』を観覧してからなんとなく察知していました。
ふだんVRChatにいる身としてはややアウェー感ありましたが、おはよう真夜中さんご本人からご招待いただいたこともあり、これもなにかの縁と思ってこっそりお邪魔した次第です。
ライブがそっくりそのままMV
さて、当日来場してみると、眼前にははおはよう真夜中さんに加えて、「立体化した歌詞」などが現れ、足元には浸水の気配が。実は今回のライブ、MVのような演出をライブ公演中にリアルタイムで仕掛けるというのが大きなコンセプトなのだそう。
ステージ上のオブジェクトだけでなく、空間全体の色調を変えたり、参加者の視界を暗転させたりと、演出の種類はかなり豊富。俗に「パーティクルライブ」とも呼ばれる様式をご存知ならば、まさにそれに近いところ。ただ自分の場合、VRChatではそれなりの数を見てきましたが、clusterで目撃したのは初でした。
また、今回のライブは新曲『Leben』のリリースに合わせての開催となったためか、選曲の一つとしてお披露目されました。どちらかと言えば重い内容の楽曲ゆえか、背後へ碑文のように歌詞が浮かぶ演出が採用。シンプルですが、それゆえの重さ、迫力がありました。
12月1日公開のMVでも、このステージ演出の一部が垣間見えます。ちなみに"leben"はドイツ語で「生命」「人生」を意味する言葉。その名を冠する歌をつむぐのは「おはよう真夜中」という名前のアーティスト。貫かれた世界観を感じるところです。
clusterでもここまでできる。アーティストにとってもアリな場所かも
総じて、自分の中で「clusterでのアーティストライブ」のイメージが大きく更新された、よいライブでした。
歌唱楽曲は全5曲。VRライブとしてはそこそこのボリュームです。そのいずれにも、MV的な空間演出が仕掛けられていました。これをオリジナル楽曲を持つバーチャルアーティストが、個人レベルの活動としてやっているのが、なかなかにすごい。
演出のうち、視界の暗転や、「目を閉じる」ような視界エフェクトは、ともすれば「視界ハック」と呼ばれて鬱陶しがられるリスクもあります。しかし"MVのような演出"として、リアルなアーティストパフォーマンスとセットで使えば、むしろいい具合に感じられるのだなぁという発見がありました。個人差はありそうですが、没入体験としては悪くない方向性かもしれません。
なにより、ここはcluster。スマホからも手軽にアクセスできるメタバースです。筆者は息をするようにフルトラVR環境で入場しましたが、観客の大半はデスクトップ/スマホモードだった印象です。それでも空間的な寂しさを感じなかったのは、エモートやギフト機能が充実し、なによりイベントであれば最大500人まで収容できる、clusterならではの強みです。
また、この日は『Leben』のジャケ絵がアクセサリーとして販売されていました。アイテム販売機能を使って「ちょっとしたおみやげ」が用意できるのも、clusterのいいところですよね。
以前よりmemexが実践していましたが、clusterでここまでできるのならば、収容人数や参加ハードルの低さ、おみやげやギフトの存在を加味すれば、バーチャルアーティストの活動場所としてかなり有力な場所なのでは、と感じた次第です。より華美な表現が実現でき得るVRChatとはうまい具合に棲み分けできそうです。
ちなみに本ライブ、本編をあとから「3D立体視映像」として視聴できるよう録画されているらしく、あとからでも今回の没入感マシマシなライブ体験が味わえるかもしれない……とのこと。公開がいつごろになるか不明ですが、どんな感じになるか興味深いところ。今はなきアーカイブ機能のような体験ができたらよさげですね!
関連リンク
「ソーシャルVRライフスタイル調査2023」を読んでみた所感(ちょっと辛口)
[2023/11/09: UPDATE] 「ソーシャルVRライフスタイル調査2023」に改題されたので各所へ反映。
これはなに
「ソーシャルVRライフスタイル調査2023」が発表され、案の定、賛否両論な空気がただよってきたので、自分もざっと中身を読んで得た所感をまとめたもの。
ソーシャルVRプレイヤーかつ、業界寄りのライターとして受け止めた「内容に対する感想」が主で、統計・分析手法に関するところは門外漢なので基本的に差し控える。
TL;DR
- おおむね、調査結果と自分の体感は一致する。それらを可視化した意義は大きい。
- 「大きな変化がない」と結論づけられる項目が多かったのはポイントな気がする。
- ライフスタイル調査ではあるが、ジェンダー&セクシャリティ研究と、「特殊な感覚」の観点への設問ウェイトが大きく、バランスを欠く箇所がある。
- 回答者の所属コミュニティ(より細かなもの)の情報がほしい。おそらくそれは"国籍"や"居住自治体"に相当し得ると思う。
- "Lifestyle Survey"に「国勢調査」の訳を与えているのは、この調査内容と調査範囲からするとちょっと乱暴。
- 改題したのでこれは削除。
調査の前提条件まとめ
- 区分は「ライフスタイルとコミュニティ」「アイデンティティ」「コミュニケーション」「経済」「ファントムセンス」の5つ。
- 回答数は2007。77.1%が日本。時点で北アメリカ(11.0%)、ヨーロッパ(5.7%)、アジア(日本以外、5.3%)。
- VRヘッドセットを用いて、直近1年以内に5回以上使ったユーザーだけが回答対象(つまり、スマホユーザーやデスクトップユーザーは対象外)。
各セクションへの所感
Check1:ライフスタイルとコミュニティ
利用プラットフォーム、ユーザー属性、プレイ時間・目的、コミュニティに関する調査項目。
- 全体的に体感と一致。「VRChat」の人口がやはり多く、「cluster」ユーザーがなんか増えている、という話は聞く。
- 「Roblox」をソーシャルVRにカウントするのはちょっとアンフェアかな、とも思った。まぁ入れないよりはいいのだろうけど。
- 「VRChat」ユーザーの20代多い率はなんかわかる。「聞けば20代前半だった」「同い年かと思ったら20代後半」みたいなことが多い。
- 「cluster」が20代>30代>40代というのはちょっと意外。ただ、VRユーザーに限定しているため、実情に沿っている可能性はある。
- 「男性が多い」というのもわかる。聞くコミュニティによってはすーごい変化しそうだけど。
- 「2年間全体で総プレイ時間が増加」というのは、つまり「ソーシャルVR国勢調査に回答する人は継続的にソーシャルVRを遊ぶ人」ということを意味していそう。"2023年現在では"という補記はつくけどね。
- 「バーチャルキャスト」利用者の目的が「動画配信」トップなのはプラットフォームの出自特性を考えりゃそれはそう。ただ、最近は純粋なユーザー交流として楽しむ人も多いとは聞いている。
- いちおう2021年調査と比較すると、「友達との交流」が68%から86%になっている。
- コミュニティ所属についてはそこまでいうことはないが、「音楽関連」項目としてデカいかも?とは思った。DJと演奏・歌とでコミュニティがけっこう違う印象がある。
Check2:アイデンティティ
ユーザーの使用アバターと音声コミュニケーションについての調査。
- 「女性アバターが優勢」というのは、提示されている回答理由だけでなく、「流通数・対応衣装数が多い」というアイデンティティ外の動機も大きそうだね、とは自分の周囲でよく言われていたりする。
- アバター種族は前回から特に異論はない。
- 強いていうと、「アバターの頭身」についても調査するとおもしろそうだなと思った。
- やはり市販品の改変使ってる人が多いのか……という体感一致。
- 「cluster」でオリジナルアバターが多いのはほぼ確実にVRM(VRoid)対応しているから。
- この延長線として、VTuberが活動拠点として出張しやすいのってやっぱ「cluster」よね、という話も(イベント目的が多いという話にもシンクロ)。
- 声については特に言うことなし。AIボイチェン使ってる人はチラホラ増えてるよね。
- 割合が少ないのは技術的に面倒なこと以上に、「RVC」あたりはグラボ動かすのでFPSがモリッと減ってしまい、使いにくいという事情がたぶんある。ラグも問題だけど。
Check3:コミュニケーション
ユーザー同士の心理的・身体的コミュニケーションについての調査。
- 前回に続き、恋愛・性愛への偏りが強い。
- おそらく調査者であるねむちゃんとMilaさんの専門・関心領域がそこであるため、と思われる。
- 本調査が批判的に見られる要因とも考えられる。関心がある人が多い領域なのも事実だが、「触れるな」と思う人が多いのも事実。
- とはいえ、「Just行ってきたわ」「いまAさんとお砂糖してる」と語るユーザーも普通にいるし、目の前でちゅっちゅし始めるユーザーもたしかに見てきたので、「存在しないもの」ではないのはたしか。「それこそここの文化やろ」と語る人も実際見たことがある。
- 距離感、スキンシップなどと合わせて、「対人関係の変化」「性格の変化」「現実への影響」など、より包括的にコミュニケーションについて問う設問へと拡大するのがベターかなと思った。
- 調査結果単体で見ると、恋に落ちた人、恋愛に発展した人、性行為を経験した人の比率があまり変わってないのは、「昨年あたりのメディア露出などで"それ"目的の人が増えたわけではない」という論拠になるか、とは思った。恋も愛も普遍的。
- 「現実でも恋人になった」が増えたのはおもしろい。コロナ禍が明けつつあるためかな。
- 恋愛はともかく、性行為について関心のある人はいると思うので、1トピックにせず、より深い単独調査として切り出すのもアリじゃないかと思った。この設問が理由で回答を拒否する人もいるだろうし。
Check4:経済
ソーシャルVRにまつわるお金のあれこれについての調査。
- 「ソーシャルVRでの観光・商品体験をきっかけに、物理現実の商品を買ったことがあるか」が4割いってるのは興味深い。VRユーザー限定と考えると、VRの没入体験が商品訴求に大きく寄与するということかしら。
- 3Dモデルの支出が多いのは「それはそう」という感じ。
- 「3Dモデルへの支出」はそろそろ1テーマ調査にしてもいいんじゃないかしら(というか自分が見たいし、やりたい)。
- 「ソーシャルVR関連の活動による収入」はちょっとファジーな印象を受けた。クリエイター、パフォーマー、タレントあたりは想定しやすいけど、「ソーシャルVR関連事業への就職・起業」とかは含む?
- あと自分のような文筆業とかってけっこうボーダーラインな気がするぜ。
- 経済圏に関する調査は単独調査でもよさそう……というか、Biz的な関心がいちばん高いのここな気がするよね(何が言いたいかは言うまい)。
Check5:ファントムセンス(VR感覚)
VR体験中に発生する"擬似的な感覚"に関する調査。
- あえて言うと、ここだけかなりテーマがニッチ。
- たぶんねむちゃんの関心テーマな気がするけど、どうでしょ。
- ファントムセンスに限らず、「視力変化」「体の不調」など、「VRを通した身体感覚・体験」みたいにテーマ拡張したほうがいい気もする。ささいな身体の変化もある種のライフスタイルではあるはずなので。
- 「プラットフォームごとにファントムセンスが起こる部位の発生確率が異なる」というのはなぜだろう?
総じて
- 体感と一致するところは多かったので、調査と可視化の意義はある。
- 全体的に、「2年間で大きな変化がない」という結果が多いのは興味深かった。"回答者の範囲"では、全体的なライフスタイルに大きな変化はなく、順調に人口がスケールしている、ということになるかしら。
- 「コミュニケーション」と「ファントムセンス」の設問はややバランスを欠くように感じた。より汎化させた設問への昇華がベターだと思う。
- 「どんな人が回答したのか」について、パーソナリティだけでなく、詳細な所属コミュニティの情報もほしいと思った。
- 総合すると、調査自体の意義はあるが、ジェンダー&セクシャリティ研究、およびファントムセンス研究の側面がまだ強いように感じる。
- 「Lifestyle Survey(ライフスタイル調査)」という英題はまだ妥当だけど、これに「国勢調査(National Census)」という日本語をあてるのは、ちょっと乱暴かな~とも思った。法的な話ではなく、ことばの持つ意味と力の話。
- 「『国境のないひとつの国』になっていってほしい」という願いをこめたいのは理解するけど、こういう調査ってなるべく中立的であったほうが信頼されるはず。
- このへん、ねむちゃんのことなので"あえて"だろうとは思っている。戦略的には特に否定しない。
- 改題されたのでこのへんは削除。
以下駄文
- 別個調査について
- 調査対象をどう増やし、網羅していくか。
- 偏りを減らすべくメディア・コミュニティに協力を仰いだとあるが、記載のある面々(PANORAとかHIKKYとか)は体感だが「人通りの多い繁華街」に通じていて、より"閑静"な場所に住む人の声は回収できていない、ような印象。
- 特に「VRChat」は、コミュニティの細分化が想像の10倍は進んでいて、しかも相互接続が意外とない。「よそは別の世界」という空気を感じることもあるので、「圏外」が(調査者当人たちの想定よりも)多いんじゃないかなーとは考えた。
- 桔梗ちゃんのイイネが17000超なんだから、2000でもまだまだ少ないはず。
- 空気だけじゃなく、そもそもXや大規模Discordサーバーには住んでなく、クローズドなDiscordサーバーやMisskeyにだけ暮らしている人も多い印象。彼らにリーチし、回答をもらうには、本当に草の根までコミュニティに協力を求める必要がありそう。
- うん、めちゃめちゃ無理ゲーに近い。対外広報も対内広報も死ぬほどがんばらないと実現できないんじゃないか。
- 調査テーマの細分化について。
- 「ライフスタイル」という枠組で包括的に質問しているが、たぶん一部トピックはもうちょい設問を充実させた単独調査に切り替えてもいい頃合いじゃないかな……とは思った。
- 特に経済。「現実経済への波及」とか、めちゃ需要ありそう。
- とはいえ、包括的に聞くからこそ見えてくるものもあると思うので、この調査方式が悪いというわけではない。
- 「ライフスタイル」という枠組で包括的に質問しているが、たぶん一部トピックはもうちょい設問を充実させた単独調査に切り替えてもいい頃合いじゃないかな……とは思った。
- そもそもどう回答してもらう?
- たぶん本人たちも悩んでそうだけど、「無償のアンケート」ってよっぽどのものじゃないと回答が集まらない気がする。だって報酬ないんだもの。
- じゃあ「回答したらこれあげる」にすると、報酬目当ての質の悪い回答がくるかもしれないし、そもそもどこからその元手を用意するのか、みたいな話になる。
- いっそ「点」を掘るべきか。
- こういった調査で(範囲はともかく)「面」のデータはとれたので、「点」の情報を掘りまくって、並べて、「実際どうなんだろね」ってことを考えてみるやつ。つまり単独取材である。
- それも「どこ・だれに聞くのか」を分散させないと有効じゃなさそうだけど。
まぁアレっすよ。みんなで手ェ動かしましょうぜ。
大奇祭!「ぽかぽかファンタズム元年」ってなんなんだ!!!
そこの……おまえ……
もう助からないゾ❤
- これはなに
- 「ぽかぽかファンタズム元年」って???
- どんなワールドなの?
- 一週間ぶっ通しでイベント開催!
- このカオスこそ「住人の祝祭」なのだ(と、言えるかもしれない)
- 余談
- 「ぽかぽかファンタズム元年」アクセスはこちら
これはなに
VRChatワールド「ぽかぽかファンタズム元年」を紹介する記事です。きっと!!
※本記事は、後述のクラウドファンディング実施にともない募集された「ファンタズムスキル」に応募したことで発生した、有償依頼記事となります。(詳細はこちら)
「ぽかぽかファンタズム元年」って???
【ファURL】
— リーチャ隊長🌱 (@rietzscha) 2023年10月8日
開幕しましたファンタズム。公開デバッグ日を迎えられて運営は感無量です。今からほとんど仕様になります。ボクとしてはとても過ごしやすく、ちゃんと色々動いてて感動してます。変な事が起こったらリスポーンして下さい。https://t.co/TrBtFjrvxT#ぽかぽかファンタズム https://t.co/aVZG08qXO7 pic.twitter.com/KaLPXt7w8c
世紀の奇祭。その最新会場。
真面目に説明すると、VR漫画家・リーチャ隊長と、VRクリエイター・タナベさんが主催する、総合コンテンツ展示イベントです。「送られてきたものはだいたいなんでも展示する」という男気あふれる姿勢ゆえに、毎回想像を絶するいろんなものが出展され、それをタナベさんが想像を絶するベクトルで作ったワールドに、想像を絶するベクトル配置されています。
もともと、上記の二人が2020年に開催した「VR万物のファンタズム」が起源です。その後、2021年開催の「ファンタズムセブン」は「マツコ会議」にも登場して一躍話題に。これを機にVRChatを知ったり、始めたりした人もいたとか、いないとか。
そして2023年オープンの「ファンタズモール」を経て、今回は数えて第4弾。「やりやがった」「確実に寝込む」「コライダーある?」「YSSがテーマ曲???」などの温かい声援とともに、10月8日にオープンしました。
ちなみに、以前「MoguLive」でリーチャ隊長にインタビューした際に、「ファンタズムはバーチャルマーケットのカウンターカルチャーですからね」というコメントをいただいたことがあります。ある程度の出展ハードルがある展示会に対して、なんでも出せる場を。そんな草の根から生まれた祝祭とも言えそうですね(ほんとうに?)。
そんなこんなで開壊を迎えた「ぽかぽかファンタズム元年」のテーマは、「令和のええじゃないか」。毎回そんな気もするけど、まぁそういうならそういうことです。
さらに今回は、アンバサダーの匠さんとコラボし、リアルグッズ発売も実施。さらに、クラウドファンディングをやったり、オープン初週は公式イベントを開いたりと、これまで以上に多角的な取り組みが展開されました。
なお、クラウドファンディングを実施したら想定以上にお金が集まってしまい、いろんな人にお仕事を発注する「ファンタズムスキル」なんて動きも生まれたり。この記事も、「ファンタズムスキル」に応募したあと、「ファンタズム体験記事書いてください!」という有償依頼で書いているものです!
どんなワールドなの?
【ファ】
— リーチャ隊長🌱 (@rietzscha) 2023年10月6日
✨メインエリアソング&各エリア紹介✨
ファンタズム運営が楽曲を依頼したYSS(@VrcYss)がファンタズムの為に作ってくれた曲「FANTA-IZM」をOP風に公開!会場でFullを聴こう!
更に11存在する各エリアもチラ見せ!なんだこれは?大変だったぞ撮るの!!10/8朝、開幕!#ぽかぽかファンタズム pic.twitter.com/uO4qRAAZcy
「救いはないが、頭の中カオスだけが 僕ら輝かせる唯一の希望で」――YSS『FANTA-IZM』より
ぶっちゃけると「言語化無理だな」と思ったので、フォトレポート的に現地の写真を貼っていきます! 健康なときに見よう!!
ファンタジー
💡攻略班メモ:↑↑↓↓→→←←BA
~オープニング~
💡攻略班メモ:つづきは君の目でたしかめてくれ!
病院
ぶくろにしぐち
💡攻略班メモ:実はリスポーン地点はこのエリアの入口。
ハリガネ劇場
💡攻略班メモ:振動と光に気をつけよう!
Thats a thank you world
雑居ビル
💡攻略班メモ:入口がちょっとわかりにくい。本当に「ビルの裏手」から行けるぞ!
レンタルビデオ店
山笠
💡攻略班メモ:逃げろ!!!!!
和室
💡攻略班メモ:乗ってみな・・・飛ぶぜ
竜宮城
💡攻略班メモ:このエリア全体は「バーチャルマーケット」が入稿した「バーチャルマーケット」のデータらしい(?????)(初代会場と思われ)
バーチャルマーケットはファンタズムにバーチャルマーケットを出展しました❗#ぽかぽかファンタズム https://t.co/dLgUUVJ3Wi pic.twitter.com/7398pXOYzg
— VirtualMarket バーチャルマーケット Vket | 12/2~12/17 開催🎊 (@Virtual_Market_) 2023年10月8日
天獄
💡攻略班メモ1:エリアBGMはCROWK feat. あいぽ from AMOKA『砂砂楼閣』だ!!!!!(?????)
👻CROWK Information👑
— CROWK@「砂砂楼閣」配信中/10/20 どりぷら/10/27 ワンマンLive (@CROWK_OFFICIAL) 2023年10月7日
10/8 0時から新曲「砂砂楼閣」配信開始!!#ぽかぽかファンタズム 、“天獄”テーマソング#AMOKA のあいぽ氏との異色コラボ!
異国情緒溢れるBeatの振動。
三人の煙たいフロウが鼓膜を浸食する。
🔻Boothhttps://t.co/fWS0agTaWE
🔻Streamhttps://t.co/VrWnLsnzqG pic.twitter.com/PtMhs96NpY
💡攻略班メモ2:ライブ会場にもなるぞ!!
こんな環境でライブできるわけないだろナメてんのか pic.twitter.com/0icalg6dSW
— YAMADA🕶️ (@yamada_is_aniki) 2023年10月14日
一週間ぶっ通しでイベント開催!
【ファ公式イベントウィーク】
— リーチャ隊長🌱 (@rietzscha) 2023年10月8日
ボクもよく分からないんですけど、この一週間イベントウィークで色々イベントがあります。一応ボクの方でまとめてみました。いや、ボクも分かってないんですけどタナベがいろいろ企画してくれたみたいです。引用元のリンクから詳細が見れます!#ぽかぽかファンタズム https://t.co/gJ4KvHVKUc pic.twitter.com/l3CmoRAjgT
というような狂ったエリアが11個もある「ぽかぽかファンタズム元年」。もう見るだけでもおなかいっぱい! しかし、さらにおもしろいのは公開初週、7日間ぶっ通しで様々なイベントが開催されたということです。
めちゃめちゃ豪華なアーティストやパフォーマーを招いたイベントもあれば、見るからにネジが外れてそうなイベントまで。その一部は配信されており、現在もどんな様子だったか見ることができます。
こうした取り組みは今回が初。なにより毎日やっていたというのが本当にすごいところで、新店舗オープン記念に毎日趣向を変えたパーティーを開いていたようなもの。恐るべきバイタリティですが、これもなんかフワッと生まれた企画らしい、という風のうわさも耳にしました。
現地に招待いただきました
ちなみに、筆者はイベントのひとつ「VRCTalents」にて、現地観客としてご招待いただきました(タナベさんありがとうございます!)
「VRCTalents」の内容はパフォーマーのショーケース。VRChatで活躍している様々なカラーのパフォーマーが集結し、日夜見せているその演目を見せるというものです。
「パフォーマー」とはいっても、この広大なVRChatでは種類がむちゃむちゃ豊富です。ダンス、剣舞、お笑い、音楽といったジャンルはもちろん、フィジカルがすごい人、技術的にすごい人といった方向性まで多種多様。どう魅せ、どう表現するかが、ヘタすると現実のパフォーマー以上に幅広い。
そして、いずれもその技量に驚かされるものばかり! いつでもパフォーマンスの舞台が用意され得る、オンラインで三次元なソーシャル空間で研鑽を積んできた猛者たちだけあり、こういうイベントでも堂々と立っている実力があるのだな……と納得させられるなど。
そのうえで、「ここはファンタズムなので」と言わんばかりにはっちゃける人も多く、総じて「めっちゃすごくてめっちゃカオス」と表現できるイベントでした。マジで脳みそこわれちゃった!
このカオスこそ「住人の祝祭」なのだ(と、言えるかもしれない)
おわかりの通り、まともな相対は一切できない異様な光景が広がり続ける、VRChat屈指のすさまじいワールドです。こんなものがシリーズ化して4ワールドも野放しになっているってマジ? 残念ながらマジ。しかも由緒正しいイベントではあるぜ!
一方で、名状しがたいカオスでありながら、それこそがある意味で「VRChat」というものを表現しているのかな、と感じるところではあります。
筆者自身の所感でもあるのですが、VRChatはとてつもなく広大です。地球人口に遠く及ばないとはいえ、街がいくつか作れる人数はたぶんいる。だって文字通り「全世界」とつながっているのだもの。ゆえに属性も、ルーツも、思想も違う、たくさんの人たちが、思い思いのアバターと名前で、無数の世界を歩いていく……そんな場所です。
先日開催された「VARTISTs」は、そんな不思議な世界に住む人たちの一部を現実に連れてきたイベントです。ここに集まった人々は、ほんとうに"多様"そのものでした。パッと見、一言でくくれぬ人々を囲う、「VR」というキーワード。それも、各々の頭を数百グラムのデバイスで、すっぽりと囲う形で。
そんな世界なのだから、各々がなにかを自由に持ち込めば、カオスになるのはそりゃ当然。それを「ええじゃないか」のノリで集め、カオスそのままに組み上げる。そうしてできあがった会場を見て、訪問者はつぶやくわけです。「とんでもねえ場所に来ちゃったな」と――それ、VRChatに降り立ったときにも、口にしてません?
……という感じで、「万物のファンタズム」シリーズとは、意外とVRChatの原始的なコアが表現される「住人の祝祭」なんじゃないかなと、あらためて思った次第です。VRChatのすべてではないですが、"多く"がここにある。「いま、この世界になにがあるのか」を指し示す場所として、「ぽかぽかファンタズム元年」を見てみるのもおもしろいかもしれませんね。
まぁそんなこと考えてないかもしれないけど!! ええじゃないですか。「なにを見出すか」も自由なのが、きっと"ファンタズム"なのだから――
余談
悪ノリで投げたうちの日奈美あやの写真集のポスターもあったゾ❤ pic.twitter.com/H08bkdL18B
— 浅田カズラ✑バーチャルライター (@asada_kadura_vb) 2023年10月8日
僕も出展していました。バーチャルグラビアアイドル・日奈美あやの1stオフィシャルデジタル写真集『暑華』の表紙ポスターです。
日奈美あやちゃんにも会場に来てもらい、ポスターの前で記念撮影してもらいました。かわいいですね。
※日奈美あやについては、後日公開予定の記事「日奈美あやって何者? いま注目のバーチャルグラビアアイドルに電撃インタビュー!」にて紹介予定です。ご期待ください。
あと、ラスボスもいるんですよ。みなさん出会えましたか?
おはようございます
— VR蕎麦屋タナベ嫁が1番VR2番 (@sobatang1) 2023年10月16日
11/4にHIKKYオフィスでぽかぽかファンタズムの打ち上げリアルイベントするんすけどVR会場も用意するんでどうせなら繋げたいよねぇ(ニヤァ)
ゆる募
こんなことしてみたい
こんなことできるよ
ワイこれできるで!
ってアイデア、人物大募集
リプお待ちし!https://t.co/ZwFqWa5pP1
そして、11月4日にはHIKKYのオフィスで打ち上げが開かれるらしいです。HIKKYのさわえみかさんがきっかけで生まれちゃったイベントらしいですよ! 本当に大丈夫か???
「ぽかぽかファンタズム元年」アクセスはこちら
VR Artists in Shimokitazawa ERA. (Yes, It`s #VARTISTs !)
リアルライブイベント「VARTISTs」の開催から、およそ1週間ほど経った。
伝説の夜だった。間違いなく、「バーチャルな音楽」の最前線であり、到達点だった。たぶんこれから先10年は語り草にするだろう。「あの夜、下北沢ERAにいた」と。
詳細なレポートについては、「メタカル最前線」が100点のレポ記事を上げたので、僕からレポート記事を強いて書くことはしない。
ここから書き連ねるのは、あの夜がいかに楽しかったことと、大きな可能性を感じたこと、それだけである。
下北沢、知らん
下北沢、自分の人生に縁のない街だったので、駅降りた瞬間の「知らん空気」にちょっと気圧され、和ドレスっぽいものを着た女性が「ガールズバンドでーす!」と呼びかけているのを見てさらに気圧される
— 浅田カズラ✑バーチャルライター (@asada_kadura_vb) 2023年9月24日
前置きとなるが、僕は人生でこれまで下北沢という場所に行ったことがなかった。新宿駅から電車にそこそこの時間揺られて、初めて降り立った瞬間、なにか巨大な波濤のようなものが全身に叩きつけられた。
知らん。この街、知らん。なんなのだここは。
鉄棒をハンマーで叩きながら「オーダーリングつくりまーす!」と呼び込みをする女性
— 浅田カズラ✑バーチャルライター (@asada_kadura_vb) 2023年9月24日
なにもかもが異界だった。無数の店舗たちに定められたトンマナはなく、むしろ「定めない」ことが唯一のトンマナなのでは、と感じられる。そして、取り扱う品々の、ものめずらしさたるや。半径1.5mで完結する引きこもりにの世界には存在しないものであふれている街だった。
なにをしている店かわからない。なにを目的に集まった人かもわからない。無数の"未知"が転がるその光景は、はじめてVRChatの世界に降り立ったあのときと似ているな、と感じた。
前入りから1時間ほどのさんぽを経て、たどりついた「下北沢ERA」には、すでにたくさんの人々であふれていた。なぜか彼らに対しては、「知っている」という感情を抱いた。
下北沢ERAで"はじめまして"
会場となった下北沢ERAは、キャパ200人ほどのほどよいサイズのライブハウスだった。
ビルの裏手階段をのぼり、たどりついた会場を前に「意外とこじんまり」という印象を抱いた。それは別によい。重大なことは、このハコに収容人数ギリギリまで参加してくる、という事実である。
事実、続々とあらわれる来場者たちによって、ハコはみるみると埋め尽くされていった。上階に休憩室がなかったら、もう少し過酷な環境になっていたことだろう。
自分は人付き合いがさほど多くないタイプなので、いわゆるオフ会に顔を出すことがあまりない。会場内の照度が引くことを差し引いても、多くの人とは初対面だった――"リアル"では。
「あっ!あなたが◯◯さん!」
そんな変化球の"はじめまして"を、会場の各所で耳にした。極めて不思議な空間だった。初対面であるが、初対面ではない。それは、まったくもって矛盾ではない。
やがて、様々な交流によってあたたまり始めたなか、(たぶん)ビビさんのアナウンスとともに、「VARTISTs」の幕が上がった。
StrollZ
素晴らしい音だった。
サックス、ピアノ、ドラム、ベースによるインストバンド構成で、合計5曲が演奏された。ジャジーなインストゥルメンタルは、VRChatで聞いても間違いなく心地よいものだっただろう。
だが、ここはリアルのライブハウス。マジの音響設備が整った、「音を聞かせるための施設」である。体が震えた。比喩ではなく、物理的に。ステージから放たれた音圧をまに、ただただ意味もなく笑顔になっていった。
今回初お披露目の楽曲まで持ってきたのも本気度が段違いだった。スタッフのSUSABIさん提供の楽曲というのだからニクいセレクトだ。かと思ったら、K.ᴗ.Ambientflowさんの『星』のカバーが飛び出し、オーディエンスからは静かに歓声が上がった。豪華だ。あまりにも豪華な選曲だ。
「メタカル最前線」でも記されていたけど、いわゆる「VRChat音楽勢」の横のつながりが形となったようなステージだったように思う。毎週オープンマイクイベントが開かれるという、かなり特異的な環境下で育った音楽のつながりを、極上の音響とともに体感できたあの時間はとても貴重なものだった。
CROWK
ブチ上がっていた。
いま勢いのあるVR発ヒップホップユニット。ほんの少しマイクを握らせれば、韻を見事に踏むMCトークを叩きつけ、秒速でハコの空気を支配する。最前列にはいかにもな治安をただよわせる人々。さっきの「StrollZ」の余韻すら呑み込みかねない力があった。
「VARTSTs」参加者へのリスペクトを述べながら、「ヒップホップこそ最強」という声を高らかに叩きつける姿は、とてつもなくかっこよかった。ただただ強烈な自信があふれかえっており、その自信にふさわしいパフォーマンスを見せてきた。jentagawaさんのDJもあいまって、30分間ほぼノンストップに盛り上げてきたのは驚異的だった。
そして、完全に油断したところに音声だけ現れた潮成実。完璧なコラボだった。最高にかっこいいアーティストが並び立つとどうなりますか。アガるに決まってるでしょうて。もうひたすらに絶叫していた。
バチャマガの取材記事で、二人はかつて「リアルライブをする」ことが夢だと語っていた。その記事が公開されていたのは2021年。2年で叶えているのだ。そんな積み上げた末に夢を叶えた二人だからこそ、その"生き様"を堂々と見せつけられたステージが、ただただ熱く感じられた。
JOHNNY HENRY
堂々たるステージだった。
すでに幾度かのリアルライブを体験している彼らにとって、「VARTSTs」のステージももはや「慣れ親しんだステージ」になっていたように思う。VRライブのように、楽しそうに、どこか肩の力を抜きながらも悠然と立つ姿は、あの空気に最もなじんでいたようにすら感じた。
「どう楽しんでも構わない」というスタンスは崩さない、ある意味ではゆるい空気感をただよわせながらも、一度曲が始まれば切れ味のあるロックサウンドがこだまする。そして、ボーカルのYAMADAのアニキがシャウトし、ハーモニカを鳴らすたびに、ブルースが響く。ライブハウスで聞きたい"音"が全てそこにあった。
ラストはやはり『愛にすべてを』。最近のジョニヘのライブではやはりこれでシメるのが通例になりつつある。最高だ。だっていい曲だもの。だってみんなで歌えるのだもの。殊にこの日の「下北沢ERA」には、出演者と観客との間にタイムラグは存在しない。「愛にすべてを」と皆で唱和することに、なんの理由もテクもいらないのだ。みんなで声出すしかあるめぇよ。
ライブ中に4周年記念リアルライブの開催までサプライズで打ち込みつつも、「応募ページが有効リンクになっていない」というやらかしまではさむという、ある意味でおいしい展開まであった「JOHNNY HENRY」のステージ。まるで「ずっと前に聞いたような」心地すらあった、心地よい時間が流れていた。
PHAZE
最高の時間だった。
ボーカルのビビさんがドイツからはるばる来日したことで実現したのが、この日の「PHAZE」のステージであり、そして「VARTSTs」そのものだった。アバターに合わせた衣装まで引っ提げてきたビビさんの姿は、ここがリアルでもありバーチャルでもあるのだということを、誰よりも示していたように思う。
そのステージはまさに圧巻だった。生歌唱と思えない歌声と、思わず体が動いてしまう演奏。「PHAZE」の世界観が眼前に顕現していた。ときにいたずらっぽく。ときにシンフォニックに。様々な顔を見せるサウンドを表現する言葉が思いつかない。ただただワクワクさせられた、その事実だけは本物だ。
そしてとにかく、ビビさんが楽しそうだったのが印象的だ。心の底からあのステージを満喫していたし、シェルさんとディズさんからも同じノリと気迫が伝わってきた。そして合間、「日本に来てほんとうによかった……!」と涙ぐみながら語るビビさんの姿に、こちらもウルッときた。今日が初めての「リアルで会った瞬間」と思えない演奏を見せてもらっただけに、「VRChat」という空間がどれだけのものを編み上げてきたかが、自ずと推し量れる。
VRは、距離を超える。それを誰よりも示していただろう。開演前に「リハの時点でめっちゃ仕上がってる、ヤバい」という話も共演者から耳にしていたが、全く嘘偽りない評価だった。トリにふさわしい、誰よりもこの下北沢での時間を待ち望んでいた人たちによる、全力のステージがそこにあった。
歴史に残る時間
始まる前から「すばらしいライブになるだろう」と思っていた。大きな勘違いだった。「とてつもなくすばらしいライブ」だった。いろいろなバーチャル系の現場に足を運んでいたつもりだったが、「VARTISTs」は誇張抜きで3本の指に入る素晴らしいリアルライブだった。
まず、音楽イベントとしてとてつもない満足感があった。ライブハウスの音がよかったのはもちろん。すさまじかったのは、楽曲のほとんどがオリジナル楽曲だったことだろう。トップレイヤーのVTuberですら、オリジナル曲を半数以上持ち込める人はなかなかいない。「VRChatの音楽アーティスト」が、とてつもない練度と資産を持つプレイヤーであることを、語らずとも示していた。
そしてなにより、あの場の空気感は唯一無二だった。あの日、「下北沢ERA」にいた人々は様々だった。大人しそうな青年もいれば、やんちゃな兄ちゃんもいて、おしゃれな女性もいた。少し歳を重ねた人もいたし、中には海外の人もいた。「これはなんの集団か」と尋ねられれば、一瞬回答に窮するくらいには多種多様だった。
だが、全員ある共通点を持つ。「VRChatユーザーである」ということだ。
全世界からアクセスできるソーシャルVRの世界に、日本だけでも、これだけいろいろな人がいるのだ。住む世界も、境遇も、きっと違う。だけど、「VRの世界で生きている」という一点だけで、自然と心が通うような、そんな心地すらあった。もちろんそれは、出演者たちもまた同じだろう。
まったくバラバラな人たちが、「VRChat」の世界で出会い、集まり、他愛のない交流を重ね、人によってはなにかを始める。そうして熟した親交をもとに、現実の世界に集まる――「VARTISTs」が実現したのは、そんな瞬間だったはずだ。
「結局リアルかよ」と思う人もいるかもしれない。「VRだけでいい」という人だっているだろう。だけど、本当はそこまで二元論で語れるものではないのだ。リアルも、バーチャルも、ともに人が生きる場所であり、そこに一切の差異も、優劣も、本来はないのだ。
リアルでバラバラに存在した人たちが、バーチャルで出会い、ともになにかを育み、リアルでそれを確認する。そして、リアルで得たものをまたバーチャルへ持ち帰り、再びなにかを育む。大きなサイクルだ。その円環を渡り歩いていく人々にとって、「リアルとバーチャルの境界」は、すでに融けてなくなりつつあるはずだ。
そんなロマンチックなことを、恥ずかしさもなく言える。それほどの熱量が宿ったイベントだった。「絶対に歴史に残る」と誰かが言った。同感だ。心の底から断言できる。
「VARTISTs」は、間違いなく、これまでの「バーチャルの音楽」に関わるイベントの最前線であり、到達点だった。
それだけ言えれば、少なくともいまのところは満足だ。