平凡社版「現代大衆文學全集」と長谷川伸「刺青判官」 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

平凡社版「現代大衆文學全集」と長谷川伸「刺青判官」

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昭和3年刊の平凡社版「現代大衆文學全集第8巻:長谷川伸集」で、1927(昭和2)年5月の第一回配本から毎月一冊、5年間に渡って正編40巻、続編20巻が発行された。いわゆる円本時代の発行で、1冊あたり1円、四六版で1,000ページというボリュームです。勃興期の大衆文学を俯瞰できる全集本です。しかも、大量に印刷出版されたこともあって古書価は安く、この本は地元古書店で500円で買ったもの。高くても1000円ほどで買えるのがうれしい。

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挿絵もふんだんで、上から旦那芸の河野通勢、立野道正は初めて拝見、そして山川秀峰は駆け出しなのか後のタッチとまったく違います。長谷川伸の初期の傑作が網羅されていて、中編「敵討鎗諸共(かたきうちやりもろとも)」や戯曲「蝙蝠(こうもり)安」など、今でも結構読ませてくれます。「敵討」は大正15年、サンデー毎日に連載。挿絵は堂本印象が担当した。当全集では河野通勢の磊落な挿絵がなんとも見事です。

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同じく長谷川伸「刺青(ほりもの)判官」は鷺ノ宮書房刊、昭和23年発行の仙花紙本でネット古本を端値で落札した。昭和8年朝日新聞の初出、挿絵は矢野僑村が担当した。ご存知、遠山の金さんものだが、ここでは現奉行には根岸肥前守鎮衛(しずもり)が、遠山金四郎は今だ旗本の設定である。ただ、この二人とも刺青もので、また同じように町人姿で市井を徘徊している。金さんの恋人お千代さんとの馴れ初めに触れるが、身分の違いから互いに接近を躊躇しておりまする。

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戦後は娯楽が少なく本など出版すればなんでも売れたらしいが、紙不足で印刷ままならずというところ。しかたなく、こうしてワラなどを混ぜて嵩をふかしています。紙質が悪いせいもあって古書価は安いのですが、ごらんごとく独特な味わいがありますから、若い人を中心に少し人気がでてきているようです。それでも、やはりビッグネームはそこそこ価格がつり上がりますが、マイナー本は数百円が相場になります。私は好んで買う口ですが、印刷上がりが悪いので読みづらいですね。装幀は川村秀治。

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