米企業の4割、「LGBTQ月間」の活動縮小 トランプ政権で萎縮
【ニューヨーク=西邨紘子】LGBTQなどの性的少数者への理解と人権を考える6月の「プライド月間」にちなんだキャンペーンや販促活動などを控える企業が米国で増えている。米調査会社が発表した経営幹部への聞き取り調査で、関連の活動を前年より「減らす」という回答は39%、「増やす」という回答はゼロだった。
反DEI(多様性、公平性、包摂性)を推し進めるトランプ米政権や保守派の活動家の標的となることへの懸念が背景にある。
米調査会社グラビティー・リサーチが2025年3月27日から4月4日にかけて、49の大企業の経営幹部を対象に聞き取り調査した。回答者の61%は、関連活動を見直す理由のトップにトランプ政権を挙げた。保守派の活動家、共和党の政治家の影響が続いた。
企業がこれまで、プライド月間を支持する活動を広げてきた背景には、従業員の支持やサポートがあった。回答者の65%は、活動縮小に対する社内の反発に対応する戦略の策定などを進めていると答えた。
LGBTQなど性的少数者への差別・偏見の解消や権利向上を呼びかける「プライド月間」は、1970年代に米国で始まった。近年は世界に広がり、各地でイベントなどが開かれている。
米国では数年前まで、消費財メーカーなどがプライドをテーマとしたキャンペーンやグッズ販売を積極化していた。
だが、ここ数年で米国ではLGBTQへの支持を巡り、社会の分断が深刻化。23年にはトランスジェンダーの俳優をビール「バドライト」の広告に起用した業界大手アンハイザー・ブッシュ(AB)に保守派層が強く反発し、不買運動を展開。バドライトの売り上げが大きく減少した。
これを受け、企業がLGBTQなどへのサポートに慎重になる動きが強まった。24年のプライド月間には、消費者の反発を懸念する企業が相次ぎグッズ販売やキャンペーン活動を縮小した。
25年に入り、トランプ政権がDEI施策を採用する企業への攻撃を強めていることも、企業の「プライド月間」離れを加速させている。
米ニューヨーク・タイムズ紙は5月、ニューヨーク市の目玉イベント「プライド・パレード」の企業寄付者の4分の1が、景気の不透明感とトランプ政権の報復への懸念を理由に、今年の支援を中止もしくは縮小したと報じた。パレードの主催団体は同紙に対し、寄付の減少により、同団体が年間を通して進めるLGBTQなどの支援活動に影響が避けられないと話した。
ただ、性的少数者へのサポート自体は継続しているという企業も多い。
グラビティーは、多くの企業がプライド関連のキャンペーンやSNSへの投稿、多様性を象徴する虹色グッズの販売などの対外的な取り組みから距離を置く一方で、性的少数者のサポートなど職場でのイニシアチブは維持しているとした。米社会の分断が深まる中、企業のプライド月間への取り組みが「消滅ではなく再構築されている」(同社)と分析した。
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