自称「コミュニケーション・モンスター」は監督になっても健在 中日の井上語録に注目
中日・井上一樹監督の試合後のコメントが面白い。どんな質問にも、通り一遍の答えではなく、自分の言葉で話そうとするし、何か見出しになるような「キラーワード」を入れようとしてくれる。記事を書く側とすれば、実にありがたい。 これまで多くの監督を取材してきたが、勝った時はともかく、負けた試合後の記者とのやりとりは独特だ。例えば、先発の大野、2番手・根尾が炎上し、今季最多10失点で大敗した5月20日のDeNA戦。敵地での惨敗の後は、監督、選手がまるでお通夜のように帰りのバスに向かい、こちらもなかなか声をかけづらい。だが、井上監督は向こうから近づいてきて「こんな試合の時は誰が口火を切るんや?」と記者をイジり、質問しやすい空気にしてくれた。 分かりにくい、回りくどい質問には「それはつまり、こういうことが聞きたいってこと?」と、逆質問。堅苦しい会見より、会話に近い形を好む。カギカッコの中に別のカギカッコを入れてくることも多く、前述の試合後なら「若手のミスも出るけど、『普段、試合に出ていないからしゃーないわ』じゃダメ。『そこで弱いチームというレッテルを貼られてしまうんだよ』と。そこを『打破しようぜ!』という形でスタートしているのに、ズタズタズタ、ボロボロボロっていくわけにはいかない」という感じだ。 自分は中日の現役時代、コーチ時代、阪神コーチ時代、そして今の監督時代と全て取材させてもらっている。自称「コミュニケーション・モンスター」というキャラクターは昔から変わらない。もちろん、大事なのはチームを勝たせることで、しゃべることじゃない。ただ、中日ファン以外は、監督就任までどんな人物なのかあまり知らなかった人もいると思うので、是非、そのコメント力にも注目してほしい。(記者コラム 山添 晴治)