殺意の認定は…埼玉・蕨の郵便局立てこもり犯の判決の行方 裁判員らの判断に注目

埼玉県蕨市の郵便局で令和5年10月、警察官に拳銃を発砲したうえに人質を取って立てこもった事件で、殺人未遂など7つの罪に問われた鈴木常雄被告(88)の裁判員裁判の判決公判が4日、さいたま地裁(佐伯恒治裁判長)で言い渡される。検察側は懲役25年を求刑。鈴木被告側は殺意を否認しており、争点は殺人未遂罪が成立するかだ。裁判員の判断が注目される。

7罪で起訴

鈴木被告が問われているのは殺人未遂のほか、現住建造物等放火、建造物損壊、銃刀法違反、公務執行妨害、器物損壊、監禁致傷の各罪。殺人未遂罪以外は起訴事実を認めている。

起訴されている犯行はすべて5年10月31日。主なものは①戸田市内のアパートの自室にガソリンをまいて放火②同市内の病院の診察室に路上から拳銃1発を発砲し医師と患者に軽傷を負わせる③蕨市内の郵便局で駆けつけた警察官に局内と局外で発砲④局員の女性2人を人質にして立てこもり心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負わせる-とされる。

弾丸は至近通過

このうち殺人未遂の罪に問われているのは②③の事件。②について鈴木被告は被告人質問で「誰かがいたらけがをするかもしれないので窓の上を撃った」と供述。③についても当てるつもりはなかったことを強調した。

殺人未遂罪は殺意がなければ成立しない。ただ、明確な「殺してやる」といった意思がなくても、死亡する可能性が高い行為をすれば殺意が認定されることがある。この事件では弾丸の軌道などがポイントになるとみられる。

②については鈴木被告の供述よりも下の、人の身長の範囲内に着弾。破片で医師と患者が負傷している。③も弾丸は警察官のすぐ近くを通過していた。

狙ったと主張するよりも人に近い場所に着弾していることについて、鈴木被告は「理由は分からない」などと供述していた。

不可解な動機

鈴木被告は4年10月、バイクで郵便局のバイクと接触事故を起こし、同年12月には病院と診察券をめぐってトラブルになっていた。一連の犯行動機が郵便局と病院に対する報復であったことは、検察側・被告側双方で争いがない。

ただ、いずれのトラブルも1年近く解決に向けての交渉をすることはなく犯行に及んでおり、トラブル内容と犯行結果の重大性の乖離(かいり)が大きい。弁護側は最終弁論で「高齢でアンガーコントロールができなくなっている可能性がある」などと主張した。

公判も鈴木被告はキレる態度を見せていた。トラブルとなった郵便局員が検察側証人として出廷した際には、証言している職員に対して「噓つくな、この野郎」などと怒声を浴びせる場面も。

また、最終意見陳述では「検事さんにひと言言いたい。この年で25年も懲役になったら生きていられない」などと言い出し、佐伯裁判長に注意されていた。

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