不登校の出口を教えてくれた「ToCo」 #推したい会社
私が推したい会社は、不登校関連のサービスを提供しているToCo(トーコ)という企業です。少し、この1年であったことを振り返ります。
一時の春
2024年の春、都内の私立中学の受験を乗り越えたとき、肩の荷が下りた気がしていました。35歳、シングルマザー、パートとWebデザインの仕事を掛け持ちしながら、長女の受験勉強をサポートしてきた日々は楽ではありませんでした。でも、4月から新しい制服を着て学校に通い始めた娘の姿を見て、「ああ、ようやく一山越えたな」と心の中で安堵していました。
4月から毎朝、早起きしてお弁当を作るのは意外と大変でした。夜更かししがちな娘を起こし、「早くしないと遅れるよ!」なんて急かすのが日課になりつつありました。多少の疲れはあったものの、新しい生活を共にスタートした気持ちで、私自身も頑張ろうと思っていました。
2学期が始まってすぐの朝、いつものように「朝だよ、起きて」と声をかけたのですが、布団から娘は一向に起き上がりません。「早く学校行きなさい」と軽く言った私に、娘は布団の中から聞いたことのないような沈んだ声で「行きたくない」とつぶやきました。その声に、少しだけ嫌な予感がしました。でも、「なんで?」と尋ねても、彼女は一切理由を教えてくれませんでした。
学校の担任の先生に電話をかけてみましたが、特にクラスで目立った問題はないとのこと。「一時的なものだろう」と自分に言い聞かせながらも、娘の態度にはどこか違和感がありました。その時の私は、忙しさにかまけて深く考える余裕がなかったのかもしれません。
不登校への抵抗
娘が学校に行かなくなってから、最初の1週間は「そのうち元に戻るだろう」と思っていました。でも、1週間が2週間になり、2週間が1ヶ月になっても、彼女は一向に部屋から出てこなくなりました。朝起こしても、布団の中から顔を出すことすらありません。そのうち私は、起こすことすら諦めるようになりました。
途中で「このまま中学ずっと不登校になってしまうかも」と思い、行動を始めました。人付き合いをしてこなかった私は、ひたすらインターネットで「不登校 解決」「不登校 相談先」などの言葉を検索して情報を集めました。不登校の子どもをサポートするサービスやフリースクール、カウンセラーなどが数多く出てきましたが、どれが良いのか判断がつきませんでした。それでも、「何かしなければ」という焦りだけが先行して、思いつく限りの手を打ちました。
当時の記録を見返してみると、カウンセラーとの面談18回、学校訪問6回、不登校支援サービスの相談5回とあります。辛かったのは、学校から「シングルマザーの家庭には多いんですよね」と何気なく言われたことでした。私が片親だから娘に辛い思いをさせているのだろうか、自分の子育てが悪かったのだろうか、と悲しく落ち込みました。
あと、特に大変だったのは、不登校サービスSとのやり取りでした。40万円という費用を支払って申し込んだものの、途中で「お子さんには精神疾患の傾向があるため、これ以上の支援はできません」と言われ、打ち切られたのです。返金もありませんでした。
「お子さんが再登校するのは難しいと思います」と言われた時、私は怒りと悲しみでぐちゃぐちゃになりました。
娘はその間も部屋に閉じこもり続け、私は日々の仕事も手につかず、何もかもうまくいかない生活でした。仕事中に娘のことが気になって仕方がない。家に帰ると、閉じられた娘の部屋の扉を見るのが怖い。私たちは、このまま壊れてしまうのではないか、と心が沈んでいました。
ToCoと出会う
そんな中、状況が変わるきっかけが訪れました。それは、数少ないママ友との会話でした。ある日、彼女が「ToCoって知ってる?」と教えてくれたのです。その時の私は、「またお金だけ取られるのではないか」「こんなサービスに頼るのはもう懲りた」と、拒否反応しかありませんでした。でも、彼女の知り合いの不登校の子どもがToCoを利用して、明るくなって登校を再開したという話を聞いて、ぐらりと心が動きました。
「見るだけなら大丈夫」、そんな気持ちが頭をよぎり、次の日にはToCoについて調べている自分がいました。
最初に驚いたのは、ToCoのWebサイトに料金が明記されていたことです。それまで相談した他の不登校支援サービスは、具体的な料金を教えてくれるのは面談の後で、それも数十万円単位の話ばかりでした。それに比べて、ToCoの料金は数万円。正直、「何か裏があるのではないか」と疑いました。ひねくれた気持ちで問い合わせをしてみると、担当者のFさんが「お子様の状態や支援期間で料金は変わりません」と丁寧に説明してくれました。その対応に、少しだけ安心しました。
私はWebデザインの仕事をしているので、ABテストをよくします。Webサイトで異なるパターンを出し分けて、ユーザーの反応で最適な片方を選ぶ手法です。でも、子どもの人生に対してABテストなんてできません。
だから、申し込みをすることに対してすごく迷いました。「また高額請求されるのではないか」「育て方が悪いと責められるのではないか」「娘が余計に追い詰められるのではないか」。そんな不安が頭をぐるぐると巡りました。
最終的に申し込みを決めた理由は、サービス内容よりもFさんの人柄でした。「この人なら信じられるかもしれない」、そう感じて、ToCoという会社ではなく、この人に人生の一部を託してみようと思ったのです。
再登校への道
ToCoに申し込んだ後、まずオンラインでアンケートに答えました。それは彼女にとって、初めて自分の不安や気持ちを言葉にする機会だったのかもしれません。数日後、アンケートを基に分析された「不登校カルテ」を受け取りました。そこには、娘が不登校になった原因がいくつかのパターンに分類され、具体的な支援の方向性が記されていました。
カルテには、娘の不登校の原因が4つのパターンに分類されていました。「学校が辛くて不登校になっている場合」「学校以外に興味があって不登校になっている場合」などです。娘の場合は、いじめのような明確なトラブルではなく、学校での人間関係や評価されるプレッシャーが重なり、「自分の居場所がない」と感じたことが原因だという分析が示されていました。
カルテを見て、正直「こんなことまで分かるのか」と驚きました。ですが、それ以上に驚いたのは、その後に提案された「家庭でできる再登校プログラム」の内容です。それは、親が子どもにどんな言葉をかけるべきか、どのタイミングでどんな行動をすればよいか、具体的なステップが丁寧に記されていました。
そのアドバイスを読んで、今までの私は「学校に行きなさい」「何が嫌なの?」と無意識に命令や詰問ばかりしたことに気づきました。プログラムの内容に納得はしつつも、実践に移すのは簡単ではありませんでした。私自身を信じられなくなっていたからです。
それでも、Fさんが何度も励ましてくれました。「焦らなくて大丈夫」「少しずつ信頼関係を取り戻しましょう」と、私の小さな進歩を褒めてくれました。その言葉は、とても温かく、嬉しいものでした。
私たちが得たもの
プログラムを始めて2ヶ月ほど経った頃、娘に少しずつ変化が現れ始めました。それまでは一日中カーテンを閉め切った部屋で過ごしていた娘が、リビングに顔を出すようになったのです。「何か食べる?」と聞くと、小さく「うん」と返事をしてくれる。その小さな変化が、私には大きな希望に思えました。
ある日、夕飯を一緒に食べている時、娘がぽつりと話し始めました。
「学校で、クラスメイトに馬鹿にされたことがあったの。それを周りの子が笑ってた。先生も何も言わなかった」
私は、ただ「そうだったんだね。とても辛かったね」と返しました。以前の私なら、「そんなの気にすることない」「言い返せばいいじゃない」とアドバイスしていたかもしれません。でも、この時は、娘の気持ちを否定せずに受け止めることが大事だとわかっていました。
その後も、娘は少しずつ自分の気持ちを話してくれるようになり、ついに「学校に行ってみようかな」と自分から言い出しました。
再登校初日、私は娘を家の玄関まで見送りました。背中を見送りながら、「またすぐ帰ってきてもいい、無理しなくていい」と心の中で何度もつぶやいていました。ところが娘は、その日を無事に乗り越え、その翌日も登校を続けました。
登校して1週間ほど経ったある夜、娘が「私のお母さんが、お母さんでよかった」と下を向きながら言いました。娘の前では堪えたものの、一人になって思い切り泣きました。
ToCoについて
私がToCoを推す理由は、娘が再登校できたこともありますが、それ以上に私自身が大きな変化を得られたからです。私はこの数ヶ月で「親としての接し方」を見直すことができました。それまでは、どこか「親が正しい」「子どもは従うべき」という固定観念に縛られていました。でも、ToCoのプログラムを通じて学んだのは、子どもの気持ちを尊重し、彼ら自身が問題を乗り越える力を育むことが大切だということでした。子どもを冷たい雨から遠ざけるのではなく、傘を与えてあげること。
もしToCoに出会っていなかったら、私は娘との関係をもっと悪化させていたかもしれません。そして、娘が自分の道を選ぶ手助けをできなかったと思います。
登校を選んだ娘が、もし登校を選ばなかったとしても、ToCoからもらった価値は変わりません。親として子どもの気持ちに寄り添い、家庭での信頼関係を築く方法を教えてくれたことが、私が得た無形の価値です。
家族のあり方はそれぞれバラバラですが、「親として子どもの気持ちをどう尊重して、社会と接することができる土台作りを手伝えるか」という知識がアップデートされることは、人生を変える力があります。同じ世界でも、頭の中が変わるだけでここまで色合いが変わるのかと思うと、やはり新しい視点を与えてくれる人や企業はありがたい存在だと実感します。その意味で、私の推しはToCoです。
コメント
1野乃花結さま
こんにちは。noteコンテスト事務局です。
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お手数をおかけして恐縮ですが、ご確認とご返信をいただけますでしょうか。
よろしくお願いいたします。