「即日車検」はなぜ最短45分で終わるのか?――スピード整備を支える指定工場、コスト半額の正体とは
安全性とデメリットに関する考察
即日車検を語るうえで、デメリットやリスクにも触れておく必要がある。最大の懸念は、点検・整備の範囲が 「車検に合格するための最低限」 にとどまる点だ。そのため、経年劣化した部品や将来的な不具合を防ぐための整備が後回しになるリスクがある。 そもそも車検とは、現時点で保安基準に適合しているかどうかを確認する制度であり、今後の安全性や信頼性を保証するものではない。実際、即日車検では消耗が進んだ部品でも、基準をクリアしていれば交換されず、そのまま使われるケースが多い。例えば、ブレーキパッドやタイヤの摩耗が基準値すれすれであっても、即日車検では交換なしで合格となることがある。 さらに、点検項目に含まれない異常や予防的な部品交換については、時間的制約により、十分な説明や提案が行われないケースもある。楽天Car車検の調査でも、 「不具合を見落とされるのではないか」 「将来的なトラブルが心配」 といった不安の声が一定数寄せられている。 即日車検に対応する指定整備工場であっても、部品の在庫がない場合や重度の不具合が見つかった場合には、当日中の完了が難しくなる。再入庫が必要になるケースも珍しくない。特に古い年式の車両や輸入車では、部品の調達に時間がかかり、即日対応が現実的でないこともある。 このように、即日車検はあくまで現在の安全性を確保するための手続きにすぎない。将来的なトラブルへの備えや、経年劣化への対応という観点では、従来型の車検や定期メンテナンスと比べて不十分な側面があるといえる。
安全に活用するために必要な視点
即日車検は、多忙な現代社会や利便性を重視する価値観に応えるサービスである。その一方で、点検・整備はあくまで法定基準を満たす範囲にとどまる。したがって、利用者自身が車両の状態やメンテナンスの重要性を理解し、必要な対応を取ることが不可欠となる。即日車検を終えた後も、 ・消耗部品の交換 ・予防整備 については、改めて専門業者に相談するのが望ましい。とくに年間走行距離が多いユーザーや、長距離運転を行うケースでは注意が必要だ。車検に合格したからといって安心せず、定期的な点検やオイル交換、タイヤ・ブレーキの状態確認を継続することが、安全確保につながる。 自動車検査登録情報協会の統計によれば、2023年12月末時点で、日本国内の四輪車保有台数は7875万6000台に達している。うち、乗用車は6232万台(79%)を占めており、車検対象となる車両数の膨大さがうかがえる。 このような状況下において、即日車検は時間に余裕のない人やコストを抑えたい人にとって、有効な選択肢であることは間違いない。今後も一定の需要拡大が見込まれる。一方で、利便性のみを優先し、必要な整備を後回しにすれば、思わぬ故障や事故につながるリスクも否定できない。 即日車検は、利便性と安全性のバランスを踏まえた上で、賢く活用すべきサービスといえる。
木村義孝(フリーライター)