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防耐火に関する法規制は分かりにくい。このため、設計や施工の場面で、思わぬ見落としが発生するリスクがある。住宅検査会社カノムの長井良至代表が、トラブル事例を基に、防耐火の注意点を解説する。(日経アーキテクチュア)

小屋裏の界壁。石こうボードが垂木の下端までしか張られておらず、野地板に達していなかった。音漏れの原因にもなっていたと考えられる(写真:カノム)
小屋裏の界壁。石こうボードが垂木の下端までしか張られておらず、野地板に達していなかった。音漏れの原因にもなっていたと考えられる(写真:カノム)
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 住宅検査を実施していると、建て主の相談内容とは別の法令違反を発見するケースがある。特に多いのが防耐火関連だ。法規制が難解で、違反か否かが判断しにくい。施工する大工や職人が法令違反を認識しにくく、設計のミスを発見できないケースが少なくない。この連載では、法令違反を巡るトラブル事例を解説する。

 第1回は、界壁を取り上げる。建築基準法施行令114条で「建築物の界壁、間仕切り壁及び隔壁」について規定している。ポイントは、「小屋裏または天井裏に達せしめなければならない」という箇所だ。この条文に違反したトラブル事例を紹介する。

 建て主は、3LDKの2世帯からなる長屋を新築した。1世帯に自分と家族が住み、もう1世帯を賃貸に出した。建物が完成し、入居者も決まりひと安心したが、入居して早々、界壁からの音漏れが気になった。賃借人からも指摘された。