排ガス被害巡り、国と自動車メーカーの賠償認めず 公調委の責任裁定
1970年代後半以降、ディーゼル車の排ガスでぜんそくなどを発症したとして、患者158人が国と自動車メーカー7社に計約1億6千万円の損害賠償を求め、国の公害等調整委員会に申請した責任裁定で、公調委は2日、申請を棄却した。
申請側代理人の西村隆雄弁護士は「残念な結果だった」と述べ、民事提訴する方向で検討していると明らかにした。
裁定は、75年以降、大気汚染により疾病を発症、増悪させる危険な状況にあったとは認められないと指摘。ディーゼル車に対する国の排ガス規制は著しく合理性に欠けたとまでは言えないとし、メーカーの製造・販売は不法行為に該当しないと判断した。
申請書などによると、患者は東京や大阪、神奈川など6都府県に在住。排ガスでぜんそくや気管支炎などを発症したとして、慰謝料として1人当たり100万円の損害賠償を請求した。
大気汚染公害を巡っては、東京都の患者による訴訟をきっかけに、都が医療費助成を開始するなどしたが、大半の自治体には助成制度がない。患者の一部は2019年に制度創設を求めて公調委に調停を申請。21年に不調となり、22年に責任裁定を申請した。
2日、東京都内で記者会見した申請人の石川牧子さん(69)は「ずっと治療を続けなければならない患者にとって医療費助成は欠かせない。申請が認められず残念だが、諦めるわけにはいかない」と訴えた。
環境省の担当者は「裁定書の内容を精査している段階でコメントできない。今後も患者の方の意見や要望を丁寧に受け止めていく」としている。〔共同〕