<連載 ネットと中傷 第3部 新型コロナ禍の医師>④(最終回)
新型コロナウイルスの感染防止策やワクチンに反対する人たちは、なぜSNSなどで医師への攻撃にまで発展してしまうのか。心理学が専門の筑波大人間系の原田隆之教授に聞いた。
Q 新型コロナウイルス感染防止策に反対する人たちが専門医らを攻撃するケースを、どう分析するか。
A そもそも、感染防止策の自粛で外出や仕事が制限されたり、外出先などでマスクを強要されたりした結果、ストレスをためて文句を言う人たちは増えただろう。
中でも感染防止策やワクチンに反対する人たちは、周りの大多数が感染防止策やワクチン接種に取り組んだために、社会からつまはじきにされたような気持ちになってしまう。その結果、社会に対して敵対心を持つようになる。
恨むべきはウイルスだが、目に見えないウイルスを自分では攻撃できない。だから、人々がこんな目に遭っているのはワクチンやマスクを勧めた医者のせいだと、社会の敵を医者だと思ってしまう。
Q SNSを通じた攻撃が目立つのはなぜか。
A SNSでは、(自分好みの情報ばかり表示される)フィルターバブルや、(似た考えの人とばかりつながって意見が先鋭化する)エコーチェンバーといった現象を通じて、自分の意見が先鋭化しやすい。
新型コロナを巡っても、ワクチンや感染防止策に反対する人には自分好みの情報ばかりが表示される。そして、感染防止策などのストレスからSNSで愚痴を書き込むと、同じ意見を持つ仲間が賛同してくれる。
すると、「自分は間違えていない」「(ストレスの原因になっているものを)攻撃しても良いのだ」と思い込んでしまう。
さらには「自分をひどい目に遭わせた医師は罰を受けて当然。悪には仕返しをしなければいけない」というゆがんだ「報復的正義感」につながっていく。
ネットは匿名で抑制が欠如することもあり、攻撃に至るとみられる。
そして、攻撃的な投稿に対して「いいね」がついたり反響があったりすると(自分を評価してほしいという)承認欲求も満たされて、自分が強い立場になったような気になる。
この快感はなかなかやめられない。薬物もアルコールも一種の快感があるからやめられないのと同じだ。
Q 開示請求で発信者と特定され、警告されてもなお、やめない加害者もいる。
A 面白半分や軽い気持ちで人をばかにするような人は、周りから注意されたり開示請求を受けたりしたら、すぐにやめる傾向にある。
しかし、自分が正しいと信じて「報復的正義感」で誹謗(ひぼう)中傷する人は、...
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