フジテレビ系列局で11億円の所得隠し指摘…CM架空発注などの裏金、接待費に
NSTは読売新聞の取材に対し、「税務調査を受け、一部見解の相違もあったが、税務当局の修正申告の指導に従い、納税を済ませた」と回答。その上で、「経営責任に鑑(かんが)み、常勤役員は報酬の一部を減額した」と明らかにし、「弁護士、社会保険労務士を入れての社内調査を実施し再発防止策を講じており、引き続きコンプライアンスの徹底に努める」としている。
信頼低下は避けられず
CM制作を巡る多額の不正経理がローカル局で発覚した。公共性の高いテレビ局にとって許されることではなく、視聴者や広告主の信頼低下は避けられない。
民放の経営環境は近年、インターネットの台頭によるテレビ離れや広告収入の減少で大きな変化に直面している。
総務省によると、全年代の平日1日当たりのテレビ視聴平均時間は2023年には135分となり、10年間で2割減った。これに伴って広告費もネットが上回るようになり、その差は広がり続けている。
日本民間放送連盟などによると、民放の収入はCM収入が大半を占める。NSTのようなローカル局は、不動産やイベント事業などの「放送外収入」がキー局に比べて少ない分、広告収入がより重要になる。ローカル局の動向に詳しいテレビ関係者は「広告会社なしにはスポンサーは集まらず、接待という形で必死につなぎとめようとしたのだろう」と話す。
だからといって、不正経理による「営業努力」は通じない。NSTは経営責任に鑑み、常勤役員の報酬を減額したとしているが、不正がなぜ始まったのかや、上層部も把握していたのかについても、報道機関として説明責任があるのではないか。(加藤哲大)