「貞子が出現する村」はどうなった? 奈良・下北山村、次は”未確認生物”で勝負
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年6月3日 6時10分
当初の狙いのひとつである「村内周遊の促進」では、バイクツーリングの愛好者を中心に、観光客が少なかった民俗資料館などのスポットにも足を運ぶ人が増えるなど効果が見られた。
しかし、村の認知度向上や観光スポット周遊促進などの成果を上げた一方、取り組みを通じて見えた課題は継続性だ。「話題をつくれたが、村を訪れるリピーターを増やす仕組みづくりが重要」と担当者は振り返る。
下北山村には観光協会がなく、観光ガイドなどの人材も不足している。そのため、貞子アプリをきっかけに訪れた観光客に対し、さらに深く村の魅力を伝える体制を整えることが簡単ではなかった。これらは、ほかの観光施策でも共通する構造的な問題でもある。
さらに、「貞子の村巡り」アプリは2025年10月末でサービスが終了する。著作権の関係で、もともと利用期限は3年間と定められていた。
●未確認生物の「つちのこ」を観光資源に
下北山村では、貞子の村巡り以外にもさまざまな観光施策を打ち出している。2026年度には、新たに道の駅が完成予定であり、既存のスポーツ公園、キャンプ場、温泉施設、合宿施設などを統合した総合的な観光拠点として位置付ける計画だ。
また、昭和60年代に下北山村でブームとなった未確認生物「つちのこ」をテーマとした「下北山つちのこパーク」も立ち上がり、自然を活用したアクティビティや、ものづくり体験を提供している。下北山村も立ち上げに関わり、現在は民間と地域おこし協力隊が運営している。
こうした観光施策の成果も見えてきた。2025年5月現在、村の人口は800人を割ったものの、社会増減数(転入者数ー転出者数)は、2023年にプラス14人となった。人口に対する社会増加の比率では、全国の町村で7番目に高い数値を記録した。2024年もプラスとなり、マイナスが続いていた社会増減数が2年連続でプラスに転じた。
背景には各施策に加え、空き家バンクの活用やSNSでの情報発信強化なども挙げられる。移住者からも「いろいろな取り組みをしていて楽しそう」といった声が寄せられており、担当者は「施策を実行したことで、動きのいい村という印象を持ってもらえた」と分析する。
●話題性から持続性へ
2023年には、「日本の滝百選」のひとつである「前鬼・不動七重の滝」へつながる森林浴歩道の整備のため、クラウドファンディングを実施したところ、目標を上回る120万円が集まった。
寄付者の半数はリターンを求めない純粋な寄付であり、村に愛着を持つ人たちの存在が確認できた。もともと、貞子プロジェクト発足時に掲げていた「関係人口の創出」という点においても、成果が出たといえるかもしれない。
「貞子の村巡り」アプリは、累計ダウンロード数が約5200件に上り、村の知名度向上にも確実なインパクトをもたらしたといえる。しかし、その数字以上に価値があったのは、村の「動きのある姿勢」を全国に発信できた点だろう。
社会増減数が2年連続プラスという成果は、貞子アプリだけの効果ではないが、話題性のある取り組みが地域ブランディングの起点となり、移住促進にまで波及する可能性を示した。
10月末で「貞子の村巡り」は終了するが、下北山村の観光・移住促進の取り組みは続く。道の駅建設、つちのこパークなど、一時的な話題で終わらせず、持続的な地域振興につなげられるかが問われる。
(カワブチカズキ)
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