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すき家“23時間営業”が問い直す、外食チェーンの限界と未来

ITmedia ビジネスオンライン / 2025年6月2日 8時10分

 牛丼チェーン各社は大手であり、その業態は複合化しているため、上場企業として財務情報を開示してはいるものの、牛丼チェーンのみの損益構造を分離して検証することはできない。また、営業時間帯別の売り上げデータも開示されていない。ただ、概算で考えてみると、深夜帯の営業でも採算は合っているようだ。

 店舗のランニングコストのうち、賃料や冷蔵電気代といった設備関連の固定費は、店を開けていても閉めていても変わらないため、深夜帯の採算は主に人件費に左右される。すき家ではかつて深夜のワンオペが問題となったが、現在では2~3人での運用が可能とされている。すき家の深夜時給は検索すると1625円と出ており、1時間当たりの人件費は3250円~4875円となる。

 牛丼屋の粗利率を7割程度と想定すれば、おおよそ5000円÷70%=約7000円の1時間当たりの売り上げがあれば、採算は取れる計算だ。実際に深夜帯で4万~7万円の売り上げがあるという声もあり、この水準であれば利益も出る。そして、なにより客数の少ない時間帯に清掃や材料管理、翌日の準備などが行えるので、24時間営業でも損はしないと考えられる。

 ただし、この前提は、深夜のアルバイトによる2~3人体制というオペレーションであり、非正規雇用のスタッフが確保できるという環境下で成り立っている体制だという点は忘れてはならない。

●「下がり続けた」賃金

 2000年代以降、デフレが続いた日本では、物価が上がらない一方で賃金は下がり、低位安定が続いたことで、人件費を安く抑えることができた。図表1は2000年代以降の消費者物価指数と名目賃金、実質賃金の推移を時系列で示したものである。日本の賃金が上がっていないという話はよく聞くが、この表を見ると、実際には下がり続けていたことがよく分かる。

 ざっくり言えば、(1)2000~2012年は物価が上がっていないにもかかわらず賃金が下がったため、実質賃金はゆっくり目減り、(2)2013~2020年は物価と賃金がともに緩やかに上昇し、実質賃金は横ばいからやや減少で推移、(3)2021年以降は物価が急上昇し、賃金も上昇傾向にあるが物価上昇に追い付かず、実質賃金の目減りがさらに加速。

 そして現在は、実質賃金が最低水準まで低下した後、賃上げが加速してやや持ち直している状況である。つまり、この四半世紀、われわれの実質的な所得は減り続けており、外食産業などの労働集約的業態も、そうした労働環境を前提に設計されてきた、ということだ。

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