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すき家“23時間営業”が問い直す、外食チェーンの限界と未来

ITmedia ビジネスオンライン / 2025年6月2日 8時10分

 しかし、状況は大きく変わりつつある。ご存じの通り、生産年齢人口は急速に減少しており、人手不足は深刻化している。非正規従業員の安い人件費を前提とした労働集約的ビジネスモデルは、もはや維持が難しくなりつつある。

 すき家や松屋では深夜加算料金を設定するなど、人件費上昇への対応を図っているが、今後も消費者に価格転嫁できるかどうかは不透明である。物価の高騰により、低所得者層の財布には余裕がなくなっており、低価格帯業態では値上げ後に客数が減少する傾向も見られる。実質賃金の底上げが進まなければ、外食の価格転嫁も難しく、稼働率の低い深夜帯の営業は、従来のままの構造では採算が合わなくなるかもしれない。

●チェーンストア型経営で効率化する外食業界

 ただし、こうした環境変化は、私たち労働者にとっては必ずしも悪い話ではないとも思える。

 そもそも、外食チェーンの経営理論は物販チェーンと同様に「チェーンストア理論」を基礎に構築されており、集中化・標準化・マニュアル化をベースに店舗数を拡大することで、収益を極大化するという考え方が基本だ。

 つまり、仕入れや物流などの共通業務を本部で集中処理し、コストを最小化する。店舗はどこも同じ作りで統一し、未経験者でもすぐ作業ができるようマニュアル化することで、店舗を迅速に展開し、チェーンとしての利益を最大化するというものだ。

 ここでは、店舗従業員はマニュアルに従って作業をこなす存在であり、人としての個性などは求められていない。そのため、外食業界ではセルフレジや配膳ロボット、調理ロボットなど、省人化・無人化の試みが数多く実施・導入されている。

 この業界にはブラックなイメージも付きまとい、実際に過去にはブラックな事例もあったが、それは労働集約的構造の下で「形だけの生産性向上」を求めた結果、労働強化が手っ取り早いという構造によるものだったともいえる。

 その意味で、人手不足と人件費高騰という環境は、低賃金労働への依存を不可能とし、AIやロボティクスといったテクノロジーによる代替の転換点になる可能性もある。

●「やらされ仕事」をテクノロジーで無くすことができるか

 チェーンストアが主流でなかった昭和の時代でも、外食産業は厳しい仕事であった。徒弟制度下での長時間労働など過酷な環境は昔から存在したが、外食人としてのキャリアアップや独立といった将来展望が描けるなら、その「厳しさ」には意味があっただろう。

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