「ゆうこく連合」はなぜダメなのか
原口一博さんが設立した団体には「ゆうこく連合」と「憂国連合市民の会」の二つがあり、「憂国連合市民の会」webサイトによると以下の違いがあるそうです。
ゆうこく連合 = 全国の小選挙区で推薦候補を支援する団体
憂国連合市民の会 = 地方議員を育てる(誰が?)団体
名前と役割が逆になっているような気もしますが、ここでは、ひっくるめて「ゆうこく連合」と呼ぶことにします。
無秩序
意味のない連帯条件
調べてみても「ゆうこく連合」には綱領とか約款のようなものは(まだ)なく、ただ「3つのスローガン」なるものを掲げているだけです。
しかし、当たり前のことだけで、なんの意味もありません。
衰退から成長へ
命を守る
独立自尊
ときどき「このスローガンに共感できない政治家はダメだ!」と詰め寄る残念な人が現れますが、「人間であること」が入会資格のクラブをつくって、入らない人に「お前は人間じゃないのか!」と怒るキ〇ガイと一緒です。
連帯の条件にするなら、これらをどういう手段で実現しようとするのかを表現しなければいけません。たとえば「憲法改正!」とか「日米安保破棄!」とか、大雑把でも方向くらい示さなければ意味がないのです。
なんなら「消費税廃止!」でも「ワクチン接種反対!」でもいいので、なにか言いましょう。それでも幼稚ですが、現状より遥かにましです。
陰謀論的世界観
スローガンに「独立自尊」を謳っています。原口一博さんが遅まきながら自覚したとおり、戦後の日本は冷戦下の「日米安保条約」という対米従属によって統治されており、その構造を脱却しようというのです。
しかし、その一方で「ゆうこく連合」はトランプ氏を支持する「Qアノン」と同じで、悪者は「ディープ・ステート」であり、トランプ大統領の治世で世界は平和の光に包まれるのだ、という陰謀論に親和的です。
及川幸久さんや藤原直哉さんは継続的に「Qアノン」陰謀論を発信しており、それに深く傾倒しているのが原口一博さんです。
もちろん、この世界に「ディープ・ステート」なんてものは存在せず、様々な問題は資本主義システムの仕組みによって起きているのです。しかし、日本では長年の反共カルト教育が行われた結果、多くの人は資本主義そのものを批判的に考えることができません。そのため、原口さんも含めて、その根本問題に目を向けることができない人が、陰謀論に傾倒するのです。
反ワクチンとインチキ医療
また、スローガンに「命を守る」とありますが、「ゆうこく連合」にかかると普遍的な意味を離れて「新型コロナワクチンへの反対」に向かいます。
原口一博さんは、自分が罹患した悪性リンパ腫は新型コロナワクチン接種のせいだと考え、新型コロナのパンデミックは計画されたもの(プランデミック)であり、新型ワクチンの接種は人を実験台にするもの、という陰謀論に囚われています。
そして、この原口さんにすり寄って一儲けを企んでいるらしいのが、エセ医療機器である「メタトロン」を、内海聡さんたちと一緒に売り出していた吉野敏明さんです。
なんと、この吉野さんが「ゆうこく連合」の顧問だそうで、問題になった議員懇談会の場でも挨拶をしています。
吉野さんは、もともと「歯科医」なのですが、最近は怪しい代替医療やスピリチュアル系の事業で稼いでいます。こんな人が顧問でいいのでしょうか。
組織体制
全国の小選挙区で推薦候補を支援する「ゆうこく連合」は、各選挙区の責任者も明らかでないまま、X(旧Twitter)や、LINEオープンチャットなど、SNSのアカウントを全国で立ち上げているようです。
観測する限り、一般の人が、それぞれ勝手に「〇〇県第〇区」のアカウントを作って、人を集めているように見えます。完全に「無秩序」な状態で、これを「大衆市民の自由参加」として肯定的に捉えるのが、「ゆうこく連合」の理念であるようです。
しかし、「組織」というのは階層的な指揮命令系統を有し、その活動に対して階層ごとに責任者を置くものです。
組織ではなく無秩序な「ゆうこく連合」には、責任を持つ人も任命されず、勝手に集まってきた人たちが「仲間ごっこ」をしている状態です。
そこには、必然的に「そういう人」しか集まってきませんし、それは「そういう集団」になります。
悪質な活動を拡大する「ゆうこく連合」
河合ゆうすけまで支持する
こうした無責任かつ無秩序(要するに無分別)な集団ですから、なにが起きるかわからないし、起きたことに責任を負う人もいません。
こうなると、参加する人たちも「そういう人たち」ばかりになるのは当たり前です。
たとえば「埼玉15区ゆうこく連合」は、あの河合ゆうすけさんを支持するそうです。
河合ゆうすけさんというのは「ジョーカー議員」と称して活動し、2024年の都知事選で全裸女性のポスターを掲示したり、埼玉県でクルド人へのヘイトスピーチに参加したりしている、悪質な「お騒がせ系」人物です。
「ゆうこく連合」には、こうした人への応援を窘める人物もおらず、原口一博さんも黙認しているようです。
排外主義を扇動
上記の河合ゆうすけさん支持の背景にも関係しますが、「ゆうこく連合」の人たちには排外主義者が目立ちます。
大衆がナショナリズムを意識するとき、ほぼ必ず台頭するのが「排外主義」や「民族差別」です。
近代社会の啓蒙を受けていない大衆は、「国家」という人工的な共同体について意識すると、由来となった「民族共同体」や「他国との争い」が前景化し、近代秩序の大前提である「人権思想」や「合理的思考」などが吹き飛んでしまうのです。
現在はSNSで煽動された「クルド人」の排斥が「ブーム」になっていますが、これは「在日コリアン」などに関しても同様です。
前近代的な人たちは、歴史的な背景や、日本における入国管理行政の問題を考えもせず、単に「異質な人たち」を排除することを「愛国的」だと考えてしまいます。とても危険なことです。
そうした人たちを扇動するのが、実は対米従属や軍国主義を推進する「保守」メディアであったり、差別で小銭を稼ぐ卑しい「インフルエンサー」なのですが、扇動されている人には理解できません。人を差別する「楽しさ」や「いじめる側の一体感」に酔ってしまうのです。これが社会を良くするわけはありません。
これは、ナチスによるユダヤ人攻撃や、ルワンダで起きた部族間のジェノサイド、関東大震災のときの朝鮮人虐殺事件と同じ構図です。歴史の中で虐殺を働いた人たちは、決して「悪い人たち」ではなく、国や共同体を守る「正しい行動」だと信じて、それを行ったのです。
大衆の無秩序な政治参加が破滅を導く
このような「ゆうこく連合」を形成する一般大衆が「応援」と称して各選挙区の候補者に近づき、政治的な影響力を行使しようとしているのが現状です。
「ゆうこく連合」の会合に参加してしまった政治家の人たちに、多くの批判が寄せられたのは当然で、まともな政治家はこの「団体」と距離を置かないといけません。
「ゆうこく連合」の人たちは「裏切られた」とか「失望した」とか言いますが、自分たちの問題に向き合っていないだけです。
ほんとうは原口一博さんが正気に戻るべきなのですが、すっかり藤原直哉さんや及川幸久さんのマインドコントロール下にあるので、それはもう無理だと思います。
原口さんは「ワクチン薬害について言うと”反ワクチン”なのか!」とお怒りですが、医療被害の研究や補償を訴えるだけなら問題ないのです。問題は「ディープステートによるプランデミック」だとか「日本人を実験台にして滅ぼそうとしている」とかいう、陰謀論的な主張にあるのです。
こうした主張に親和的な人たちが強い政治的影響力を持てば、ほんとうに国が滅んでしまいます。
原口一博さんは、井上正康さんらとともに、国連のWHO(世界保健機関)からの脱退を訴えるなど、陰謀論に基づく過激な主張を掲げているのです。
どうするべきなのか
バカではないはずの人も陰謀論に陥る
社会の正しい方向性を模索するには、歴史や社会科学の知見に基づく正しい世界認識が絶対に必要です。さもなければ、歴史修正主義や陰謀論に基づく妄想的な世界観に囚われ、取り返しのつかないことになります。
しかし、原口一博さんを含めて、多くの人が「インフルエンサー」のSNSやYoutubeに頼る時代になってしまいました。こうしたインフルエンサー(及川幸久さんや藤原直哉さんなど)は、それを飯のタネにしながら影響力を広げており、それが「ディープステート陰謀論」や「反ワクチン陰謀論」を蔓延させてきたのです。
本来、人は公教育や読書によって学び、見識を広げ、世界や社会に対する認識を築き上げていきます。ところが、労働者は日々の仕事や生活で忙しく、学生も課題やアルバイトに追われ、そうした時間の余裕はありません。
そういう中で社会への不満や疑問を持ったとき、手軽なSNSやYoutube動画で入手できる「歪んだ世界観」や「陰謀論」ばかりに触れていると、そういう思考を当たり前のことだと受け止めるようになってしまいます。
これは陰謀論者による「マインドコントロール」です。
なぜ陰謀論的世界観が蔓延したのか
過去記事に書いたとおり、原口一博さんは「日米同盟が平和を守っている」という虚構に裏切られ、依存する世界観を失ってしまいました。そもそもアメリカによる世界覇権を守ることが正義なはずはないのですが、戦後冷戦体制下の日本では、国民がそう信じ込まされてきたのです。
ところが、産業や行政の仕組みが複雑に発達した現代社会は、通常の公教育を受けた程度では、個々人がその全体像を考えることさえ難しいです。いきなり「政治に目覚めた」というような人たちが、「ゆうこく連合」のような取り組みに魅了されてしまいがちなのには、こうした背景があると思います。
本来、資本主義世界システムの仕組みを理解するには、マルクスの「資本論」に源流を持つ社会科学が非常に役立つのですが、ずっと反共国家である日本では、しばしばそうした教養が忌避されてきました。
かつては、大学の経済学科に進学する場合でさえ、「あの大学はマル経(マルクス主義経済学)で、あの大学は近経(近代経済学)」だとかいう色付けが行われていたものです。しかし、その両方を学ばなければ、社会や経済の仕組みなんか理解できるはずがないのです。
社会の仕組みや歴史を正しく学んで考えよう
もちろん、現在の世界システムが共産主義に切り替わる世界革命なんて、近い将来には起きません。しかし、資本主義の本質を学ぶことは、システムに人間が押しつぶされないために、とても重要です。これができない人たちが、すぐに「ディープ・ステート」のような陰謀論的世界観に飛びついてしまうのです。
僕は共産主義者でもなく、共産党員でもありませんが、マルクスの資本論以降に展開された社会科学を学ぶことが、今こそ重要だと思っています。
日本人の多くが、労働や娯楽に時間を奪われていますが、決してYoutubeなどで「学ぶ」ことはできません。
「インフルエンサー」に感染するのではなく、きちんと学び、社会に正しく向き合うことでしか、未来を拓くことはできないのです。
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