井上智介

精神科医/産業医

見解AIを使うことで、深い悲しみを癒すプロセスの一助になる可能性はあります。 今でも、心の整理を促すために『故人に向けて手紙を書く』という方法があります。AI故人との対話は、手紙よりも現実感をもって、新しい関係性を作る効果があるかも知れません。 しかし、”弔い”とは、単に思い出し作業ではありません。この世での役割を終えた人と、心のなかでの関わり方を変えて、故人が存在していない世界で、自分の人生を歩むことです。 その関係の再構築をAIが代わりに担うと、もう一度歩き出す力を失わせるかもしれません。さらに、故人の意思がないままAIで再現されると、語る側の都合で美化されるし歪曲されるリスクがあります。それは、既に”その人らしさ”を失っていることでしょう。 命は限りがあるから尊いのではないでしょうか。限りがあるから…その人との今の関係を、今の時間を、大切にしようと思うのではないでしょうか。