ハーバード大学をめぐってはトランプ政権が「暴力や反ユダヤ主義の助長や中国共産党との協調の責任を問う」として留学生を受け入れるための認定を取り消すなど締めつけを強め、これに対し大学側は措置の撤回を求めて提訴するなど対立が深まっています。
ハーバード大で卒業式 トランプ政権との対立深まる中
アメリカのトランプ政権との対立が深まるなか、ハーバード大学で卒業式が行われ、学長は「ハーバードが持つ最良のものを、あなたを待つ世界に届けてほしい」と卒業生を激励しました。
こうした中、ハーバード大学の卒業式が29日に行われ、ガーバー学長は「絶対的に確信することと意図的に知らないふりをすることは、コインの裏表だ。いずれも価値はなく計り知れない代償を伴う」と述べました。
そして「ハーバードが持つ最良のものを、あなたを待つ世界に届けてほしい」と卒業生を激励しました。
卒業生代表のひとりとして登壇した中国からの留学生は「大学で最も学んだのは不愉快なことも受け入れ、深く耳を傾けて困難なときにも穏やかでいることだ」と述べました。
卒業式のあと、ルクセンブルクからの留学生は卒業式に合わせてアメリカに戻るにあたって「入国管理専門の弁護士と大使館の連絡先を用意して不測の事態に備えました」と話していました。
大学が裁判所に提出した資料によりますと、トランプ政権による一連の措置の影響で精神的な苦痛を訴え、卒業式への出席をためらう留学生もいるとしていました。
州連邦地裁 “留学生受け入れ認可取り消し 差し止め命令継続”
アメリカのハーバード大学が留学生を受け入れるための認定をトランプ政権が取り消すとしていることについて、東部マサチューセッツ州の連邦地方裁判所は29日、新たな命令を出すまで一時、差し止めを継続する方針を示しました。
これによりハーバード大学に在学中の留学生などへの影響は当面、回避された形です。一方、トランプ政権はアメリカ国内の大学への留学希望者を対象にした、学生ビザを審査するための面接の新規受け付けの停止を続けていて、このため留学を控えた各国の学生には深刻な影響が出ています。
ハーバード大学教授 “大学の研究の現場は大きく揺れている”
ハーバード大学の政治学部と統計学部で教授を務める今井耕介さんは、トランプ政権による助成金の一部凍結や留学生を受け入れるための認定を取り消す動きなどによって大学の研究の現場は大きく揺れていると言います。
今井教授の研究室に所属する18人の学生のうち15人は日本や中国、メキシコ、それにヨーロッパ各国などからの留学生だということで、留学生の受け入れができなくなれば深刻な影響が出ると懸念しています。
今井教授は「もし留学生がきょういなくなったら、18人が3人になってしまう。違うバックグラウンドを持つ留学生の多様性が失われると、学問の斬新なアイデアも出なくなる。優秀な学生も研究者も来ないとなると、大学の根本が破壊されてしまう。これからどうなるのか非常に不安だが、自分としては何もできないという無力感が非常にある」と心境を語りました。
また、留学生たちからも将来への不安の声が相次いで寄せられているということですが、今井教授は「今はとにかく集中していい研究をすることだけに力を注ぐようには言っているが、本当に毎日状況が変わっているので難しい」と話し、周りの教職員も含め、対応に苦慮していると説明しました。
そのうえで今井教授は「政治的に介入され、それに立ち向かう中で、どうしても政治に巻き込まれてしまう。大学の外の人から見るとハーバードが政治の一部みたいになって大学の政治的中立性が失われることで長期的な影響があると思う」として、大学側が政治的な党派の対立に巻き込まれ、アメリカ社会の分断がさらに深まることに懸念を示しました。
そして、「日本の社会も10年、20年後にこういう問題が出てくるかもしれない。これを機会に、日本社会をどういう方向に動かしていけばいいかを考えてほしい」と訴えていました。
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