眺めることしかできない・感想(リンバス8章後夜祭)
リンバスカンパニー8章全編のネタバレを含みます。
びっくりするほどハッピーエンド
あ…あれ…主要キャラクターがほぼ死んでいない…だと…?
これは本当にリンバスカンパニーなのか…?前回なんてドンキホーテの眷属丸ごと死んでいたというのに…
黄金の枝も奪還し…こ、こんなに幸せな終わり方で良いのか…?
チョウ長兄が出てきた時点で度肝は抜かれてました。都市で未だこんな事を堂々と言えるような人が居たのか…でもきっと死ぬんだろうな…と。。(ラスボスじゃなかったですね)
でもチョウ長兄も生き残り、ズーゴンも生き残り、ダイユもバオチャイも(←不穏な終わり方だったけれども、)シーチュンも生き残り、。
な…なんだ…逆に次の章で何かとんでもない事を起こそうとしているのか……?
ホンルの精神開放フェーズ
毎章、リンバスカンパニーの囚人たちは過去に向き合い、それを乗り越えて成長していきます。今回、ホンルの身に何が起きていたか、改めて整理します。
今回、ホンルが変化するきっかけとなった人物は、ダイユとチョウ長兄であったと思います。それぞれ二人は、異なる役割を持っていました。ダイユは「ホンルの苦しみを理解する」役割、チョウ長兄は「ホンルの心を引き出す」役割です。
ホンルにはまともな両親がおらず、ジアムーによる精神的虐待を止めてくれる人間も、彼の苦しみを苦しいねと認めてくれる人間も居ませんでした。これこそが、彼が周囲への働きかけを止めて、意思を外に出すことを諦めたきっかけです。
従って、彼自身の過去のトラウマ、感じている苦しみを周囲に認めてもらう事こそが、彼がトラウマを克服するための第一段階として必要なステップでした。ダイユはコン家滅亡当日の真実を知らず、ホンルに長年恨みを抱いていました。しかし、黄金の枝の力によって強制的に彼女に過去を見せた事で、彼女の誤解を解くことに成功しました。この事実だけでも、彼自身が「自分の心を認められる・周囲からの理解を得る」という成功体験に繋がったでしょう。
しかし、これだけでは彼が自身の心を外に出すことはできません。なぜなら、過去を見られたあの時点では恐らく、「まあ、あの時は辛かったし、周りの人も辛い過去だと認めてくれているけど…今の自分にはどうでもいいかな」と、感情が彼自身が分離した状態であるためです。彼が感情を出すためには、彼自身と感情を結合させる必要が有ります。(イメージとしては、感情の出口のきっかけは出来たものの、感情自体がそもそも出口までとどかない、と言う感じ。)
このためには、彼自身が彼の本当の感情を思い出す必要が有りました。これを成し遂げたのがチョウ長兄です。拳で。急にジャンプじゃん…(感涙)。
彼は家主最終審査で、ホンルと拳を交わしながらも、ホンルが心にもないうわべの発言を何度か繰り返しながらも、彼を信じ、本当の答えが出るまで待ち続けました。かなり力技であるものの、ある意味窮地に追い込んで、彼の底に眠る感情や信念を呼び覚ましたのです。
また、ホンルにとって、チョウのこのな行動は自身に向けられる無条件の信頼であったように感じたはずです。(本当はチョウ自身も根拠を以って彼に信頼を寄せていたのですが。。)この経験は、彼がジアムーに「眺めていさえすれば良い」「眺める事しかできない」と繰り返され、従い続けた事で失った自分の意見への自信の回復にも繋がったでしょう。
このように、幼いころ大人たちの助けを得られず、心を深く閉ざしたホンルが、苦しみを受け入れられる母性、信頼される父性によってその心を取り戻す、という構造で、今回の囚人の成長フェーズは描かれていたのかな、と思います。
あんまり功績を感じられなくなっちゃったダイユ
…と、チョウの存在が大きすぎたせいで(でかすぎる体、でかすぎる心)ダイユがホンルの心の解放に実は一役買っていた事がかすみがちだったのですが…これはホンルの返答が原因なのかな、と思います。ダイユに過去を理解された場面では、ホンルの心は離れたままだったため、ダイユに理解を示されても「うんうん、実はそうだったんだよね(乾)」という返答で終わってしまったのでした…。ただ、彼女の存在はホンルが心を取り戻す過程で確実に重要な存在であったと感じています。
それを象徴するように、ラストでレイホンはじめとする追っ手を食い止めるため、チョウ長兄とダイユが軍勢の前に立ちはだかります。個人的にこれが「子供の追いかける心を守る父親と母親」構図であったと考えています。最後に彼ら二人が出てきたのは、やはりこの二人こそが、ホンルの心を解かしたからではないかな、と。
まさかのシーチュンルート
さて、優しい心を取り戻したホンルが行ったことはシーチュンの笑顔を守る事でした。そしてホンルはこれを成し遂げ、おばあ様との禍根に終止符を打ち、エンディングを迎えました。
正直…原作読者にとっては、「シーチュンを守ってハッピーエンド」という絵面はかなり驚きです。おいおい…シーチュンなんて、原作で生き延びてる数少ない少女の一人と言うだけで、目立った接点もほぼ無かったぞ?!と。。
…正直、このシーチュンを原作と重ね合わせていると、色々齟齬が生まれてくると感じています。なので、(他のキャラクターにも言える事ですが)リンバスのシーチュンはあくまでその人として扱うのが良いでしょう。
リンバス8章をプレイする中で、「ダイユの事をもう一度救って、今度は恨みじゃなく感謝を向けられて終わったりするのかな~」等と考えていたのですが、ホンルの成長の集大成である「優しさによって救われる人間」がシーチュンとなったのはなぜか。それは、シーチュン自身がホンルの鏡映しであるからです。
シーチュンは7章で再開してから時折敵対的な言葉を掛ける事も有りましたが、それは余り本心であったとは思えません。彼女は常に、心の底ではホンルの事を敵であるにもかかわらず、心配し続けていました。また、気にしていても仕方がないと言いながらも、ホンルと同じく鴻園の人々を憂い、行動の陰には優しさが有りました。
どんな辛い目に遭ってもシーチュンの根底にある変わらない優しさ、そして家主認定されることで人格を歪められそうになっている彼女…その姿は、ジア・ムーにトラウマを植え付けられる前のホンルと重なった事でしょう。
彼女の優しさが踏みにじられる前にシーチュン救い出す事は、過去に救われなかったホンル自身をも彼女に重ね合わせて救い出し、自身のトラウマにも決着をつける意味合いが有ったように思えます。これが彼のセリフにも繋がってきます。
彼がシーチュンにどうなりたいかを尋ねて、彼女を救い出した事にも、「自分たちの意志で、自分たちが救われたのだ」という意味を感じられます。ダイユだけを救い出して恨みを抱かれた過去と、この1件は非常に対照的に描かれているのです。
8章は「賈宝玉」の物語
さて、リンバス8章の前編をクリアした際、「そうか、原作からかなり改変されているんだな…」と言う感想を持ちましたが、最後までプレイした結果、これはプロムンが紅楼夢を読む中で目を付けた部分と、自分の視点が異なるだけではないか?と思うようになりました。
自分自身は、紅楼夢を読む中で、宝玉や少女たちの繊細な心の揺れや彼らの人間関係の細かい演出に魅力を感じました。しかし、プロムンが8章で描いたのは紅楼夢の物語ではなく、賈宝玉にフォーカスした物語であったように感じました。
原作の中で、大人たちの策略によって望まぬ結婚をして黛玉を失った宝玉は、心が砕けた後、悟りを開いて人間のしがらみを断ち、浮世を離れてしまいました。悟りを開いた宝玉はかねての優しさを失い、無意味な浮世への関心を失ってしまいました。これは宝玉の優しさを愛していた周囲の人間からすると悲劇的な事であったでしょう。
きっと、プロムンもこの部分を「悲劇」として捉えたのであろうと考えています。従って、囚人ホンルのスタート地点は「出家後の宝玉」でした。そして、彼がなぜこのようになってしまったのかを考えると、きっとそれが「大人たちの都合によって本心(黛玉への親愛)を踏みにじられた事」、そして「太虚幻境で定められた未来を見て、諦観を持った事」であったと考えたのでしょう。
しかし、前者の「黛玉への愛を踏みにじられ、大切な人を失った」点にフォーカスを当ててしまうと、ヒースクリフの物語とかなり似通ってしまいます。そこで、両者を併せて「大人たちによって定められた未来により、諦観を持った事」を、ホンルの心が砕けたトリガーとして描いたのではないでしょうか。
そうして幼い頃のトラウマに向き合う話へと昇華されていった訳ですが…若干、製作者の強いこだわりというか、強い意図の様な物を感じないでもないです、キム・ジフン氏の過去を考えると。。ただ、恐らくこの先の物語の展開(4~6章:友人、恋人の物語 7~9章:家族の物語 10章~:戦争、社会の物語?)を考えて、事象が母親視点の物語となると考えると、この話を挟んでおきたかったのかもしれませんね。
ちなみに、宝玉以外の原作キャラは全く活かされていない
宝玉にフォーカスしたんだろうな…と思ったのは、他にも、宝玉以外のキャラクターに原作の面影が微塵も感じられなかったからです。本当に、名前と立場を若干借りてきた程度ですね。。だからもう…紅楼夢の他キャラクターが好きだった身からしてみると、寂しいですけれど、こういうものだと割り切るしかないですね。
今回の物語がハッピーエンドだったのも、「宝玉はどうしたら救われたのか?」という強い問いが反映されたものだったのかもしれませんね。プロムンが珍しく、原作キャラクターを心から哀れだと思った説。
……今回の物語がめちゃくちゃハッピーエンドになったのって、外部の評価が働いていたりしませんよね…?杞憂であってほしいものの、頼む、プロムン、君ら自身の物語を求めているんだ。それこそ、物語では外の声に耳など傾けず、プロムンの物語を紡いで行ってくれ。。
それから、今回生き残った人々、ちゃんと今後も出てくるのでしょうか…?ダイユの様に、重要なのにストーリーでの功績をあまり目立った形で見られなかったキャラクターも居たので、ちゃんと今後で有効活用されてほしいですね。
蛇足
以下、蛇足を連ねていきます。
老人に感じたシンパシー
例の老人たちが出てきたシーンで、「あれ、これって自分では?」と思った管理人は多かったはず。
特にイシュメール語りしていた老人を見て爆笑してしまいました。いつもの私じゃん。気付かぬうちに奴らの仲間入りしていたのか…?やっぱりあんな勇ましくてかわいい女の子見て惚れないわけないよね…。
うちら強くなったよね~☆彡
何だか、1章でボコされたN社のアイツらに普通に勝てちゃった自分に、驚いたんですよね…。慣れないEGO装備で相手にデバフが掛かっていたのも有ると思いますが。
それにしても、今回バス勢力がかなり上手く行った事も有りますが、黄金の枝も回収しシーチュンも救い出して悠々と立ち去る後方で、慌てて目的の物を追いかけながら飛沫を上げて濡れ鼠状態で慌てていたN社の彼らを考えると…結構面白いですね。1章のアレ、絶対に忘れないからな……。
バオチャイの扱い、酷過ぎる…。
さて、本当にバオチャイ、この子は本当に本当に可哀そうですね。。
ちょっと出だしの挨拶が不穏だっただけで、その後の我々には、家主審査を脱落してまで助けてくれるし、ダイユを護衛に付けてくれるし、身の危険を負ってまでホンルの危険を知らせてくれるわ、よくよく振り返ればめちゃくちゃ良い子だったというのに…。
そりゃないよぉ、ホンル!!助けてくれたんだからさ、優しさ感じ取ってあげようよぉ…(;;) そうか、長年感情を封印してたから、女の子の憧れの気持ちとか恋心とかわからんのか…でもこのまじめな場面でそれ言わなくても!!!ガチになるじゃん!!!!
バオチャイ…原作でもリンバスでも、どこに行っても不憫さが拭えない女…。そんな所を引き継ぐ必要は無いのに…😭
終わりに
メインストーリー後でも味わいは続くものです。今後、ホンルが心を露わにして意見を言うようになったりするのでしょうか…。根が優しいので、今後も滅多な事ではR社ホンルの様に感情を爆発させることは無いのかなと思いますが、今までに見られなかったやり取りなんかが見られるようになる事が、毎度の如く楽しみですね。
そして9章!!9章は個人的にキル・ビルになるに違いないと信じて止まないので、レイホンを見て「あ~こいつが良秀のビルなのか…?」と思っていたのですが、首が吹き飛んでちょっとそうじゃないのかな?と思ったり。またサイドストーリーも見つつ、今後の展開を予想していきたいですね。
ところで良秀、煙草はレイホンに習ったのか?
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