【無料】あと0日:真打の始まり
6月1日
ついに今日から真打としての暮らしが始まった。
他協会の披露目などに被らないようにと考えたら残された昇進タイミングは上半期では6月のみだった。梅雨時だから天気の具合が心配だけどこればかりは仕方ない。自分は晴れ男だから、なんとかなると言い聞かせるようにこの日程で昇進することを決断したのだけど、まずは初日の今日、しっかり晴れてくれて最高の門出となった。
昼間には小痴楽兄さんのラジオに出演させてもらって、しかもそれが真打昇進特集で志の輔師匠の昇進時のインタビュー音源などもあったり、と特別な回になっていた。
そして、昇進当日に最初の披露目ができるのも、立川流では当たり前のことじゃないから、色々な巡り合わせに感謝感謝だ。
「生配信で届ける」と決めた時点で会場はユーロライブに絞られた。通常の劇場で安定的に配信環境を整えるのは難しいはずで、その点ユーロライブはシブラクで毎月配信をしているから諸々がスムーズだろうと。
ただそうなると、緞帳がないシブラクでは従来の披露目はできないことになる。幕が開いたら、そこに黒紋付姿の自分や師匠がスタンバイしている、というわぁー!!と一気に華やぐあの演出はできない。加えてYouTubeで生配信するから権利の関係でCD音源を使うことができない。生の出囃子にするにはユーロライブの袖は広さが足りない。
という外枠からの条件で、結果的には笑二には立った状態で司会をやってもらいつつ、画角の関係でそのまま3ショットにすると少し小さくなっちゃうから、途中で2ショットの画角に入り込んでもらう形にしたりと、結果的にとんでもなく砕けた口上になったのはそういう訳だ。「吉笑は相変わらず変わったことをやりたがるなぁ」とネガティブに思われる方もいるかもしれないけど、こっちとしても本当は本式の口上にしたいけど、設備的にできないわけで、だったらその中で一番楽しめる形を探ったということ。
そして、配信が始まっても手元にスマホを置いて配信画面を確認することになった。これは、自主開催の会で、全ての状況を把握しているのが自分だけだったからだ。特に考えられない機材トラブルで、談洲の高座あたりから本当に裏でバタバタしていた。聞くに耐えないノイズが発生しているから下手したらこの体制では配信ができないんじゃないかというところまでのてんやわんやが巻き起こっていた。その時、他に主催者がいたらそこに最終的な責任を取ってもらう形で自分は出役としての振る舞いに集中できるけど、今回は自分が主催だから、配信をするかどうかの決断や、この機材での配信がダメだった場合は、既に告知をしてたくさんの方が楽しみにしておられる以上スマホなどで簡易版になったとしても配信をしてリカバリーすべきだなぁ、とか、既にアーカイブチケットを販売しているからその方々への対応をどうしようかなぁ、とか、そうだ、ちょうどこの配信に合わせてBASEでアーカイブ配信視聴チケットを販売開始したけど、ひとまずそれは非公開にしておかないと、と対処したり、あれこれ対応していた。
配信が始まっても、もし音声トラブルがあったとして、それを最終的に統括して状況判断する役目は自分だから、ということで手元にスマホを置いて確認しながら、という口上になった。結果的には後半は口上こそ、笑二のハンドマイクのボリュームが大きくてちょっと聞き辛さがあったけど、その後の師匠と自分の高座などは問題なく音声も届けられたからよかった。前半はノイズが発生している正規の回線の音チェックはまだしていないけど、撮影カメラで録音していた保険用のマイクは無事に収録できていて、なんとか前半の弟弟子たちの高座も問題なく配信できそうだ。
と、主催者としての負担が大きすぎたこともあって、演者として感極まるというようなことは本当に自分でもびっくりするくらいなかった。NHK新人落語大賞で優勝したとき、最後のコメントで昨年の二葉さんのコメントをサンプリングして、「じじいども、見たか!」って言ったらどかーんとウケるだろうなぁと直前まで考えていたくせに、いざたい平師匠から「コメントをお願いします」と振られた際に、これまでのちょっとしんどかったこととかが渦巻いて「うぅぅっ」って泣いちゃったくらいに、本来の自分は感動しやすいタイプだから目に涙が浮かんだりするだろうなぁと思っていたけど、そんなことも一切なく。ただいつもの賑やかな会の感じで口上は終わって、師匠の高座中も配信が無事か逐一確認していた。
ただ高座の時間だけは相変わらず落語に没頭できて、ゾーンから番頭さんを出そうとする定吉が、大縄跳びの際いつ入っていいか分からない小学生、みたいな状態になるというこれまでになかったクダリが自然に出てきたりと、のびのびとした高座を勤めさせてもらった。
たぶん本当の意味での披露目は24日からの座・高円寺で始まるのだろう。こっちも自分が最終的な責任者になるのは今日と変わらないけど、ただ複雑なオペレーションを要する配信などはなく、通常の落語会仕様だから、わりと演者としての役割に集中できると思う。感極まるとしたら初日と千秋楽がやっぱり濃厚だろうか。
去年の4月1日から書いてきたこの「真打前夜」は2日の23時59分で無料公開を停止する。昨日の生配信も既に非公開にしている。せっかく素材があるのだから公開し続けたら全員に優しいのに、と思わなくもないけど、一方で終わりがあるからこそ胸に迫るものがあるのではないか。昨日の生配信も20時から21時15分という、あの瞬間にしか見られないからこそ、待機画面のスライドショーからヒリヒリした臨場感があったはずで。
この真打前夜は今後は有料マガジンとしてそっと残しておくことになる。たぶんまだ落語に出会っていない未来の後輩が、僕が「談笑の真打トライアルはどんな感じだったのか?披露目はどんな感じだったのか?」と必死で調べたように、「吉笑師匠の披露目はどんな感じだったのか?」と調べる過程で辿り着くマガジンだろう。購読してみて27万字という膨大な記録の量にまずは驚いて、貪るように読んで、それで少しでも「自分も頑張ろう!」と前向きな刺激を与えられたら本望だ。
2024年4月1日、一番初めに書いた文章でこのマガジンを終えたい。
一方で、クローズドな環境での発信が多いわりに外部に向けての発信が少なくなってきていたことは自覚していて、せっかくだったら一生に一度しかない真打昇進を控えたこのタイミングの全力疾走や試行錯誤や自問自答の日々の様子を外側に向けても書き殴ってみることにした。自分にまつわるあらゆることを全て書き残す羅房日誌とは違って、基本的には真打昇進にまつわることに絞った内容で、なおかつ当然ながら誰に読まれてもよい内容のみを書くことになるけど、伴走者気分で応援しながら読んで頂けたら嬉しい。そして、何かに向かって挑戦している人にとってはこちらが伴走者になれるような、眠たい夜にもう一踏ん張りする気力を与えられるような、そんな役割を担えたら嬉しいなぁと思っている。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
また、どこかで!



コメント
1吉笑師匠、改めて、真打昇進、おめでとうございます。
昨日は会場まで伺っておりました。
プロデューサー、現場にかかる責任者、そして演者。
あまりにもなすべきミッションの多様さと、莫大な仕事量。
(披露目に関係する仕事量もあまりに多くあったこと、推察致しております。
それらすべてを吉笑師匠ご自身が引き受けられていました。
「お気の毒な状況」ということ以上に、これを克服され、さらに前を向かれ、歩き続ける意志を師匠の中にみました。
どうか、唯一無二である師匠が「本当にカッコいい師匠」と変貌し、大いなる時代構築に尽力される師匠の邁進をお祈りしています。
いよいよ始まった披露目です。
ご健康をお祈り申し上げます。
個人的には心からの感謝を申し上げます。
本当にありがとうございました。
そして、真打昇進、おめでとうございます!