ついに最終章? 地方私鉄に第2・第3の職場を求めた往年の名車・京王帝都電鉄5000系
昭和38(1963)年に登場した京王帝都電鉄(現:京王電鉄)5000系は、曲線ガラスを使用した優美なデザインで鉄道ファンからの人気の高い「名車」だった。昭和43(1968)年の増備車からは、ロングシートの通勤電車としては日本初となる冷房装置を搭載するなど、京王帝都電鉄の近代化にも大きく貢献している。
京王での引退後は、67両が地方私鉄5社に転じ、その中には再譲渡されて第3の職場を見出したものもある。18メートルと手頃な大きさの上に一部は冷房付きと地方私鉄の近代化にはもってこいの条件が揃っていたのがその理由だろう。ただし、軌間はいずれも京王と異なっているため他の車両の足回りと組み合わせての譲渡となった。
地方私鉄の近代化に貢献し、昭和・平成・令和と走り抜けてきた京王5000系だが、製造から60年近くが経過し、さすがに引退する車両も増えてきた。現役を続ける車両にも置き換えの話が出てきており、ついにその活躍も「最終章」に入った感がある。この項では地方私鉄での京王5000系の活躍を振り返ってみよう。
京王5000系が初めて譲渡されたのは、四国は愛媛県の伊予鉄道だった。同社には京王での先輩にあたる2010系が譲渡されて800系となっており、それに続く形で700系として昭和62(1987)年から3両編成8本と2両編成2本の計28両が登場している。足回りは小田急2200形および東武2000系のものを使用し、後に東武のものに統一された。譲渡車の中には車体の幅が狭い初期車も含まれている。2両編成にもう1両増結した珍しい組成が特徴で、かつては朝ラッシュが終わった後に切り離して単行で回送を行っていた。
伊予鉄郊外線の主力として活躍したが、京王3000系を譲り受けた3000系の導入で一部が廃車となっている。さらに自社発注の新型車両7000系による置き換えが進んでおり、令和7(2025)年5月現在は3両編成3本と2両編成2本が残るが、令和9(2027)年2月までに順次引退する予定だ。
終焉迫る伊予鉄道700系(元京王5000系)、2編成の引退で残り5編成に
伊予鉄道700系760編成・764編成が引退 郊外線の主力として活躍した元京王5000系
京王5000系が続いて譲渡されたのは山梨県の富士急行(現:富士山麓電気鉄道)だった。平成6(1994)年から2両編成9本が導入されて1000系となり、在来車のほとんどを置き換えている。足回りは営団3000系のものと組み合わせられた。こちらでも主力として活躍したが、JR205系を譲り受けた6000系へと置き換えが進み、令和7(2025)年5月現在は観光用に改造された「富士登山電車」1205編成のみが残っている。
富士山麓電気鉄道では鶴見線用205系を譲り受けて今年夏の運行開始を目指すことを発表しており、置き換え対象となる可能性の高い「富士登山電車」の去就が注目される。
富士山麓電気鉄道 富士急行線 1000系1001号編成が定期運用から引退
島根県の一畑電車には、平成6(1994)年から翌年にかけ2両編成4本が譲渡されて2100系となった。足回りは営団3000系のものと組み合わせている。4編成のうち最初の2編成(2101・2102)が京王時代のままの3扉で登場した一方、後の2編成(2103・2104)は真ん中の扉が埋められて2扉となり、同じ形式内で差異が生じた。
一畑初の冷房車両として近代化に貢献したが、自社発注の新型車両7000系に置き換わる形で2102編成が引退し、現在は3編成が修繕の上で活躍している。このうちイベント用車両「IZUMO-BATADEN 楯縫」に改造された2103編成以外の2編成(2101・2104)は8000系への置き換えにより引退する予定だ。
一畑電車には平成10(1998)年にも2両編成2本が譲渡されて5000系となった。一畑の近代化の総仕上げとして導入された車両で、転換クロスシートを装備、非貫通化やライトの交換も行われて2100系とはデザインが一新されている。
5009編成は平成26(2014)年に車内の木質化改装が行われ、改装が行われなかった5010編成は令和7(2025)年1月に引退した。残る5009編成も8000系への置き換えが予定されている。
一畑電車5000系(デハ5010+デハ5110)が引退 「出雲大社号」などで活躍した元京王5000系
香川県の高松琴平電鉄には平成9(1997)年に2両編成4本が譲渡されて1100形となった。足回りは京浜急行1000形のものと組み合わせられている。1101・1103の2本は中間車からの改造で、先頭車から運転台を移設した。1105・1107の2本は先頭車を電装している。1107編成のみ行先表示器のLED化と標識灯の撤去が行われて印象が変わったが、他の編成には波及していない。
高松琴平電鉄では今後自社発注の新型車両2000形の導入を計画しており、車齢が60年近い1100形もそう遠くない将来には置き換えの対象となるだろう。
群馬県のわたらせ渓谷鉄道には平成10(1998)年に中間車2両(5020・5070)が譲渡されてわ99形となった。通勤電車からトロッコ客車に改造された珍しい事例で、豊橋鉄道1900系の廃車発生品の台車を履いている。窓が撤去されて大きく広げられたこともあって原型は留めていないが、丸みを帯びた車体にわずかに種車の面影を残している。JRから譲り受けた12系客車に挟み込まれる形でトロッコ列車に用いられており、今のところ引退の予定などはないようだ。
伊予鉄道での役目を終えた700系のうち2両編成1本(モハ713+クハ763)は、平成28(2016)年に千葉県の銚子電気鉄道に再譲渡されて3000形となった。車齢53年での再就職で、銚子電鉄には同じく京王から伊予鉄を経て2000形が入線している。
車齢は60年を超えているが、より車齢の高い2000形も現役ということもあってか、今のところ引退の予定などはない。
富士急行で引退した1000系のうち2両編成1本(モハ1206+モハ1306)は、平成30(2018)年に富士急行の子会社である静岡県の岳南電車に再譲渡されて9000形となった。昭和44(1969)年製と京王5000系の中では車齢が若いものの、車齢49年での再就職で、置き換え対象のモハ7002(昭和48年製)よりも古い。
岳南電車は令和8(2026)年度以降に新型車両の導入を予定しているが、置き換え対象は8000形・7000形(元京王3000系)で、9000形は当分残るものと思われる。
京王帝都電鉄での活躍後、67両が譲渡されて地方私鉄の近代化に貢献した5000系。今なお伊予鉄道で13両、富士山麓電気鉄道で2両、一畑電車で8両、高松琴平電鉄で8両、わたらせ渓谷鉄道で2両、銚子電鉄で2両、岳南電車で2両、実に7社で計37両が現役で活躍している。登場から62年になることを考えれば、よく残っている方だろう。とはいえ、伊予鉄道・富士山麓電気鉄道・一畑電車では置き換えが進行中で、それ以外でも車齢を考えれば余命はそう長くないと思われる。第2・第3の職場で活躍を続ける往年の名車を楽しめるのは今が最後のチャンスと言えそうだ。
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