実際にアメリカで日本のコメは安いのか。
最初に調査したのはロサンゼルスです。アメリカ西部カリフォルニア州のロサンゼルス都市圏には、都市別で世界で最も多い6万3000人余りの在留邦人が暮らしています。
日系スーパーマーケットを複数回り、それぞれで最も安く売られていた日本産のコメの価格を調べました。購入したコメは3種類。
備蓄米じゃないのに“安い米” 海外でなぜ?日本のサイトは…
コメの価格高騰が続く中、5キロあたり2000円前後の備蓄米の販売に注目が集まっています。
一方、“日本のコメが2000円台で売られている”とSNSで投稿されていたのがアメリカです。
なぜ、海外で日本のコメが安いのか?
さらに、日本では大幅に値引きしていると表示し、“安いコメ”を買えるとうたう不審なサイトも…
“安いコメ”について調べました。
アメリカ 本当にコメは安い?
▼ひとつめのスーパーでは富山県産の「富富富」が5キロで20ドル99セント、日本円で3000円余り。
▼別の系列のスーパーでは北海道産の「ななつぼし」が5キロで19ドル99セント、2800円余り。
▼3つめのスーパーでは茨城県産の「茨米」が5キロで18ドル99セント、2700円余りでした。
最も安かった「茨米」の精米時期は去年10月でしたが、それと2ドルしか変わらない「富富富」は今年4月に精米されたものでした。
【配信はこちら】“安いコメ” 日本では偽サイトも
サタデーウオッチ9「デジボリ」(5月31日)
配信期限:6月7日(土) 午後10:00 まで
物価が高いNYでは?
これはロサンゼルスだけなのか?
ニューヨークのマンハッタン中心部にある日系のスーパーマーケットも訪ねました。
店によりますと、現地の人の間では価格の安いカリフォルニア米が人気だということですが、日本人の駐在員や日本食が好きなアメリカ人を中心に日本産のコメの需要があるということです。
4月27日には5キロの日本産米が(北海道産米)セール価格で24ドル99セント、日本円でおよそ3600円で販売されていました。
一方、カリフォルニア米は安いもので6.8キロあたり22ドル台で販売されていました。5キロに換算すると16ドル余り、2400円程度となります。
店によりますと、日米ともにコメの仕入れ価格は上がっていて、なかでも日本のコメの仕入れ価格はここ数年で20%ほど上がっているということです。
ただ、アメリカでは長引くインフレで節約志向の強まりが指摘されていることもあり、可能なかぎり価格を抑えていきたいとしています。
ダイノブUSA 竹内久志店長
「コメの仕入れ価格はだいぶ値上がりしてきています。ただ、値上げしてしまうと、客の負担が増えることは目に見えていますので、なかなか値上げには踏み切れません」
ただ、今後はトランプ政権による10%の一律関税によって関税上乗せ分が価格に反映されることが予想されます。
竹内店長
「取引先の業者からは『(通関のための)手数料が今までの2倍、3倍になってきているから、価格に反映させるかもしれない』という話は聞いています。利益はもちろん大事ですが、お客さんがいなければこの商売は成り立たないので最後まで我慢しようと思っています」
アメリカ以外でも安い?
日本からコメの輸出が最も多い香港の状況も取材しました。
去年1年間に香港に輸出されたコメは1万3000トンあまりに上り、2020年に比べ、およそ2倍に増えています。
香港では日本食が人気なほか、スーパーでも日本産のコメが販売され、地元の消費者が購入しています。
香港で日本産のコメを使った弁当店ではランチタイムになると近くの会社に勤める人たちでにぎわい、1日に100食以上売れるということです。
このうち30代の女性は「1週間に1、2回は来ます。日本のコメは甘みがあってふっくらとしていて、まろやかな食感がすばらしいです」と話していました。
弁当店の清水剛 総経理は「仕入れ価格の若干の値上げはあったが、コメは輸出用として契約しているので大きな影響は出ていない」と話していました。
そして、コメの価格を調べてみると、香港の通販サイトでは、日本産のコメが2キロ71香港ドル、日本円でおよそ1300円、5キロに換算すると3200円ほどで販売されています。
このコメを販売している会社では、年間1000トン以上を日本から輸入していて、倉庫を訪ねると、段ボール箱に詰められた日本各地のコメが大量に保管されていました。
現在はおよそ10種類のコメを扱っているということです。
なぜ海外で安い?
国内でコメが品薄になり高値の状態が続いているのに、なぜ海外で安く売られているのか。
国産米などの輸出促進を手がける「全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会」=全米輸に聞きました。
一般的に日本から輸出されるコメは、例年、4月から6月にかけて、生産者とバイヤーの間で売買契約が行われます。
いま海外で出回っているものは、国産米の相場が上昇する前の去年4月から6月に主に契約されたもので、その後の相場の変化が反映されていないということです。
一方、ことし秋に収穫されるコメの輸出に向けた契約は、現在の価格高騰を受けて例年より遅れているということです。
全米輸 細田浩之専務理事
「去年と比べて、国内相場が倍近くになっているが、海外のマーケットで、素直に値上げを受け入れてくれるとはなかなか考えにくく、業者は契約を決めきれない状況になっている」
日本国内では、毎年およそ700万トンあまりのコメが生産されていて、このうち去年、輸出されたのはおよそ4万5000トンと、生産量の1%以下です。
細田さんは国産米の価格高騰を受けて、今後、輸出量が減る可能性があると指摘しています。
「ことしの輸出については、日本産のコメから離れて、競争力があるほかの国のコメにバイヤーがシフトしていく可能性があり、日本からの輸出数量が若干、スローダウンする可能性があると思う」
実際に香港の通販サイトでコメを販売している会社に聞いてみると、いま販売しているコメは、日本国内で値上がりする前の去年春に、農家やJAなどと1年分を固定価格で買い付ける契約を交わしたと説明しています。
一方で、ことしのコメについては、日本の業者との間で買い付けの見通しが立っていないとして先行きへの不安を口にしていました。
香港でコメの輸入販売を行う会社の朱麗儀 総経理
「ことし買い付けるコメについては価格がいくらになるかはもちろん、数量を確保できるかどうかもわかりません。一番心配しているのは一粒も手に入らないことです。今ある“安いコメ”は売れ切れたら終わりなので、できるだけゆっくり市場に出すほかありません」
“安いコメ”が詐欺に?
一方、国内のネットで“安く”売られているコメの中には、注意が必要な場合があります。
それが不自然に安くコメを売るウェブサイトです。例えば、このウェブサイトは10キロ3999円という表示に。
このサイトを調べてみると、運営会社として掲載されていたのは、福島県にあるコメなどをネット販売している業者でした。
問い合わせると、“なりすまし”の被害にあっていました。
なりすまし被害に遭った業者
「(偽サイトは)うちのコメの画像を無断に使って、値段を下げて販売していました。お客さんから『購入したけれど商品が届かない』と連絡がありましたが、うちが発送しないことはまずないので。お米が高くなっている状況で、詐欺の材料にされるのは本当に許せない」
NHKの記者が、この偽サイトでコメを購入しようとすると、個人情報やクレジットカードの情報の入力を求められる仕組みになっていて、クレジットカードの不正利用などの被害につながる可能性があるとみられます。
なりすまし被害にあった業者には、この1か月で「コメが届かない」などの被害の問い合わせがこの1か月で100件以上寄せられていて、客のほとんどがSNS広告を見てだまされたということです。
警察に相談し、ホームページで注意喚起も行っていますが、対応に頭を悩ませています。
なりすまし被害に遭った業者
「今は、安い価格に目が行って、偽サイトから買うという状況が多くあります。うちの従業員も問い合わせに追われています。注意喚起はしていますが、偽サイトの数も多くどこまで広がっているのか分かりません」
注意するポイントは?
こうしたサイトについての相談は急増しています。
国民生活センターによりますと、格安でコメを販売するように装う詐欺サイトに関する相談は、ことし3月から4月末まででおよそ200件にのぼっています。
例えば、20代の男性はインターネット検索で見つけた通販サイトで、10キロ1200円余りで販売されていた国産米を注文しましたが、商品は届かず、サイトに記載されていた連絡先も使われていなかったということです。
国民生活センターでは、価格が通常より不自然に安い場合など、次のような点に注意するよう呼びかけています。
また万一、詐欺サイトにクレジットカード情報を入力してしまった場合は、不正利用されるおそれもあるため、すぐにカード会社に連絡するよう呼びかけています。
【配信はこちら】“安いコメ” 日本では偽サイトも
サタデーウオッチ9 デジボリ
伊原弘将アナウンサーがプレゼン解説
サタデーウオッチ9「デジボリ」(5月31日)
配信期限:6月7日(土) 午後10:00 まで