〈不滅の国産車黄金伝〉カワサキ ゼファー[1989-2009] 全年式/全色アルバム(4バルブ編)
4気筒400ccネイキッドモデルの復活が噂される中、ネイキッドというジャンルを確立させた立役者・カワサキ ゼファー(400)の軌跡を振り返ってみよう。前回の初代・2バルブ車編...
私のゼファーχはこのモデル。
1997年式G2。
ことしで28歳。
あまりに出来が良い二輪なの
で驚いている。ハンドリング
も往年のヤマハのような素晴
らしいハンドリングだ。よく
曲がる。グイグイと曲がる。
シャシとフロントステム周り
のバランス設計が抜群に良い。
シャシフレームとスイングア
ームのしなりを活かした設計。
前輪の接地感は半端ない。
1980年代末期以降から今世紀
初頭までの期間に作られたカ
ワサキの2スト250と4スト400
は、操縦者が手足のように扱
えるので、乗っていて本当に
面白いオートバイだ。「おとこ
なんとか」という虚構のロマ
ンイメージなどは関係ない。
走りそのものに実力が備わっ
ているのだ。
シャケさん(河崎裕之氏)が手掛
けて車作りをしたスズキとヤ
マハの車は非常に出来が良く、
その開発精神が長年引き継が
れてきて、ヤマハとスズキの
二輪はとても良い物がかつて
は作られていた。
ところが、国産4社で一番不
人気メーカーで、メーカーそ
のものが重工の採算重視方針
路線により、1980年代のバイ
クブームの中でも大赤字続き
を理由に二輪部門が消滅させ
られそうになったカワサキの
オートバイ。
だが、ある時期からカワサキ
の二輪そのものが抜群に性能
上の良質性を確保した。
それはまるで天変地異のよう
だった。
結果、世の中をひっくり返す
ほどのエポックメーキングと
なり、カワサキの二輪が爆発
的に売れに売れた。競合他社
の強豪たちはカワサキの真似
をして似たコンセプトのオー
ソドックスバイクを開発製造
販売せざるを得ない状況をカ
ワサキが歴史の中で作った。
それにより天下の大重工の不
採算部門だった川重の二輪部
門は消滅せずに事なきを得た。
だが、記憶を反芻すると、市
販車ベース改造カテゴリーの
レースだったTT-F3でも、常
勝ホンダNSRの牙城を走行実
力で粉砕したのはカワサキだ
ったし、大排気量クラスのレ
ースでも国内外で圧倒的な戦
績を残した。
カワサキに何があったのか。
もっとも、世界グランプリに
おいては250/350クラスでは
1970年代末期~1980年代初
期にはカワサキのワークス
マシンが圧倒的な速さと強
さを示していた。つまり世界
一はカワサキだった。
世界チャンピオンになるには
カワサキの2ストレーサーに
立場上乗れるようになるしか
ないほどの時代があった。
元々、カワサキは公道市販
車に見られた直線のみ性能
が高い直線番長マシンしか
作れないメーカーではなか
ったのだ。
特にレーサーではカワサキ
の2ストがばかっぱやで、
安定した強さを見せていた。
然るに、1980年代末期にカ
ワサキの公道市販車が突如
としてハンドリングがヤマ
ハを凌ぐかのようになった
のも、従前からの二輪作り
のノウハウの蓄積が確実に
社内にあったからだといえ
るだろう。社外秘としての
技術のノウハウが。
特に1990年前後のカワサキ
車のハンドリングは特筆も
ので、実際に乗って操縦す
ると「これ、ヤマハ?」と
思える程の走行実力を示す。
二輪は旋回安定性こそが命
であるのだが、それを体現
しているのがヤマハとカワ
サキだった。スズキは単発
的に良質二輪を出していた。
ホンダはハンドリング、旋
回安定性については論外。
いつまでも良質な旋回性能
をホンダの車が有する事は
レーサーでも公道市販車で
も存在しなかった。エンジ
ンのみはホンダが世界一だ
ったし、これは現代の「確
実に転ぶオートバイ」しか
作れなくなった時代にあっ
てもそうだろう。ホンダの
エンジンは頭抜けている。
カワサキはある時期からヤ
マハと見紛う程の良質旋回
能力の車作りをするように
なった。
だが、時代に反して超絶不
人気メーカーだったので川
崎重工の二輪部門そのもの
が消滅しかけていた、とい
う歴史があり、それを払拭
する事を成し遂げたのがゼ
ファーの登場だった。
つまり、カワサキ自体を消
滅から救ったのが、原点回
帰路線でセンセーショナル
を巻き起こしたゼファーだ
った。
ゼファーは400オンリー。
後に海外からの人気と要請
で大排気量ゼファーも製造
したが、ゼファーという機
種のフラッグシップモデル
は400クラスの機種であり、
それが基軸だ。
そして、1996年、エンジン
内部に手を加えたゼファー
χ(かい、救世主の意味)の
コードナンバーG1が誕生し
た。
さらに翌年1997年に大幅に
改良されたG2が登場し、こ
の構造は製造中止の2008年
最終型まで基本設計に変更
はなかった。
ゼファーχはG2がゼファーχ
の完成形だといえる。
ゼファーシリーズの基本、
基軸は400。そして、改良型
の1気筒4バルブのゼファーχ
の完成形はG2だ。
11年間も基本設計を変えな
いというのは、いかに優れ
た構造を設計しきっていた
かという事であり、カワサキ
の二輪車開発部門の人々に
私は敬意を抱く。
よくぞ良いモノヅクリをし
てくれた、開発者の方々は
本当に良い仕事をしたなぁ、
と。
ゼファーχ。
ギュイギュイと曲がる良い
車だ。