障害ではない「境界知能」とは?──“闇バイト”受刑者に迫る 後先考えず「金が一気に欲しかった」 生きづらさも『every.特集』
市原青年矯正センターは境界知能のほか、知的障害などがある若年受刑者に特化した全国初の少年刑務所だ。おおむね26歳未満で、刑期は5年以下。初犯や犯罪歴が少ない受刑者たちを収容している。
この施設の特徴は、受刑者が出所した後の社会生活を見据えた環境にある。受刑者たちは、鍵のない個室で生活する。敷地内は、自由に行き来できるようになっている。
また一般的な刑務所のような行進はなく、それぞれが自分のペースで行動。起床時間は自分で管理している。一般社会に近い環境にすることで、受刑者たちが出所後に自立し、生活していく力を養っていくことを目的としている。
昼食は、音楽をかけた部屋でとる。2025年5月現在で33人が収容され、うち10人が境界知能の受刑者だ。
教育専門官
「いつも通りはじめてください」
取材した日に行われていたのは、算数の教科指導だった。出所後の生活を見据え、受刑者たちは小学校の科目を一から学び直している。
体育を除き、勉強についていけなかったという境界知能の受刑者B。「F」の形をした図形の面積を求めようとするが、分からない。
教育専門官
「分かりにくい?」
受刑者B
「分からないです」
教育専門官
「考え方はいろいろあるけど」
受刑者B
「正方形からFを引こうと思ったんだけど…」
教育専門官
「F(の面積)を出さないといけないんだよね? この四角形、この四角形、この四角形、3つを足せば面積が求められる。こっちの方が簡単だと思う」
受刑者B
「ありがとうございます」
面積の求め方を教えてもらう受刑者B。解答時間は、平均よりも倍近くかかってしまう。算数が苦手な境界知能の受刑者は、行動計画や将来設計を立てることも苦手な傾向にあるという。
自分を理解するためのプログラムも行われている。
教育専門官
「犯罪をしない生活とは?」
受刑者B
「犯罪をしないとか、人に迷惑をかけないとか。あとは社会のために役立つとか」
教官の質問に答える受刑者B。すると受刑者Aも、この回答に合わせるかのように「全部言われちゃった」と話す。
境界知能の受刑者の特性について専門家に聞いた。
青山学院大学教育人間科学部の古荘純一教授
「自己弁護できないから言われた通り、こう答えると自分に不利だということが分からない。例えば立場(が)上の人が言ったりすると、そのまま乗っかったりする」