From:水波流
最近、なかなか読む踏ん切りがつかず積んでいたままの古典的名作を消化していっています。
柴田元幸訳『トム・ソーヤーの冒険』、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を読み終わり、次は『吾輩は猫である』に進めるか? 『罪と罰』を読むのが目標です。
from:葉山海月
『帰ってきたあぶない刑事』柴田恭兵氏のインタビュー。
ユージを演じるにあたって、
すごかったね。楽しかったね。そして
「何も残らなかったね」という感じでのぞんだそうです。
私も、そういう作品を目指したい!
from:中山将平
5月17日と18日に開催されたゲームマーケット2025春での僕らの新刊2冊が、通販開始となりました。
以下のURLより通販サイトBOOTHへ移動していただけます。
ローグライクハーフ『雪剣の頂 勇者の轍』
https://ftbooks.booth.pm/items/6820046
ゲームブック『単眼の巨獣』
https://ftbooks.booth.pm/items/6823989
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■5/25(日)〜5/30(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2025年5月25日(日) 杉本=ヨハネ FT新聞 No.4505
ポロメイア小国家連合「ローグライクハーフ」都市サプリメント
・いよいよ来週の日曜日は、火呂居美智さんによるローグライクハーフ新作シナリオ『蛇禍の悪魔』が配信予定です。
本日はそれに伴いまして、舞台となるポロメイア小国家連合にまつわる「都市サプリメント」を配信いたします!
他地域から独立した独自の文化。
驚異的な辛抱強さを持つ民です。
また、丸々獣の原産地として知られているこの国ならではの文化をお楽しみください。
2025年5月26日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4506
FT書房、サブラインへの挑戦☆
・おかげさまでFT書房から発売中の「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ(以降RLH)」は好評!
それをうけて、チームも成長。
それぞれの制作速度が少しずつ上がりつつあります。
そこで、かねてからFT書房が「こうなりたい」と思っていた姿に向けて、挑戦していくことを決めました。
それは……1年に12冊の作品を出すことです。
もう少し具体的に言うと、8冊の紙の書籍と、4冊の電子書籍を出すことを目指していきます。
そもそも「紙」媒体の本にこだわるFT書房が、電子書籍に本腰を入れたら、どんな展開が待っているのでしょうか?
最初にやりたいのは「ローグライクハーフ」の未書籍化作品を電子書籍化することですが、ゆくゆくはゲームブックの絶版作品なども、やっていきたいと考えております。
軌道に乗ることができれば。
「気軽に遊べる」ことをコンセプトに、手に取りやすい路線を構築できればと考えております。
2025年5月27日(火) 中山将平 FT新聞 No.4507
クトゥルフとゲームブック第96回
・FT書房のイラストレーター、中山氏。
ホラーファン、クトゥルフファンである氏の、あふれんばかりの愛でクトゥルフを語ります。
長らく筆を止めていたのですが、ひさびさの再開です!
題して「ファンタジーの一陣営としてのクトゥルフ」
ファンタジー世界における一つの勢力として描かれる場合のクトゥルフについて考えたいと思います。
ファンタジー世界の「悪魔」との類似点を指摘しつつ、「クトゥルフ」ならではのサムシングを考察します。
2025年5月28日(水) ぜろ FT新聞 No.4508
第2回【戦場の風】ローグライクハーフリプレイ
・テンポのよい語り口で勝負する、ぜろ氏のリプレイ記事、第440回をお届けしました。
今回挑戦する作品は、丹野佑 著「ローグライクハーフ」の『戦場の風』です。
今回の主人公はウォーレン。
ロング・ナリクで当代一と言われた聖騎士と同名の若き騎士です。
国王からの密命は、戦場に置き去りになっている王女コーデリアを救い出し、離脱すること。
主人公のあこがれである聖騎士ウォーレンも戦死したという過酷な戦場。しかも敗色濃厚にもかかわらず、王女はなおも戦いを諦めていないといいます。
この過酷な任務を、なんとしてもやり遂げなければなりません。
ウォーレン様の従者、アンドレ。そして、謎の密偵と会い、とんとん拍子に聖堂の王女にたどり着きますが……。
話はそううまくいきますやら?
お楽しみに!
2025年5月29日(木) 岡和田晃 FT新聞 No.4509
「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.32
・岡和田晃氏による、新しく楽しい読み物満載な「SF Prologue Wave」とのコラボ企画記事です。
今回お届けする作品は、市川大賀氏の『光の国と魔法とおじさんと』(4)です。
衝撃の展開!
「善意だからこそ起こる」「見てはならない風景!」
子ども向けなお話は、今や荒木飛呂彦ばりの真紅のホラー伝説に変わっているっ!
葉山的にはリツイートボタンがあれば、指の骨折れるまで連打せざるをえないッ!
北野武氏風にいうと「この衝撃に、アンタは耐えられるかっ!?」
「腹をえぐられるような感動におちいることウケアイ」とライターのかなでひびき氏が言わざるを得なかったこの痛みに似た感動をぜひ共有していただきたいっ!
これはお願いではないっ! 義務であり命令だ! と言わざるを得ない葉山の衝撃を共有せよ!
2025年5月30日(金) 休刊日 FT新聞 No.4510
休刊日のお知らせ
・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
↓↓
(ジャラル アフサラールさん)
水波流さんがトムソーヤ好きでしたら、映画『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』はご覧になりましたか? アメコミ原作の『ヴィクトリア王朝時代のアベンジャーズ』風映画で、19世紀末に透明人間・ジギル博士・ネモ船長等の有名ヒーローが「超人同盟」を結成し、世界的な陰謀に立ち向かう映画ですが、その中に20代の青年でアメリカの諜報部員になったトム・ソーヤーが登場します。相棒のハックは敵に既に殺された設定ですが(笑)。
(お返事:水波流)
おお、そんな映画があるのですね。知りませんでした。
翻訳者の柴田元幸氏は、トムはハックとちがって常識人でリーダーシップもある事から、普通に大学に入って地元の名士になり、「ワシも若い頃はやんちゃをしたものです。ワッハッハ」みたいな大人になりそうだ、と語られていました。
なんかちょっとエリート感が漂うんですよね笑
この映画の青年スパイになったトムもそんな雰囲気を想像しました。
(忍者福島さん)
ゼビウス、ドラゴンバスターの作者の古川尚美さんは後にバンダイナムコの広報をされていたので、ダメ元でバンダイナムコの株主総会終了後に写真撮影をされていた古川さんにゼビウスのゲームブックにサインをお願いしたら快諾していただいた思い出があります。懐かしいですね。
FC版表ドラゴンバスターのエンディングはゲームブックと同じく王国を去るのですが、裏をクリアすると王国に戻ってくるエンディングになっています。(難易度が高くて僕は見ることができませんでしたが)
FC版と内容がリンクしているのも、古川さんがナムコ社員だったからかもしれません。
あとフリーアクションで遊べるゲームブックは、お〜もりさんの絶海遺跡プラトイムの中での魔法学園探索があったと思いますが、仕掛けがいろいろあって楽しかった記憶があります。
またいつか紹介していただけると嬉しいですね。
(お返事:田林洋一)
古川氏のサイン入りゼビウスをお持ちなのですね! 本当に羨ましいです。ドラゴンバスターは、元祖のファミコン版は傑作だったと思いますが、難易度が非常に高く、私は表の一面も進んでいないかもしれません。色々な裏設定があるのですね! ご指摘、どうもありがとうございます!
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
■FT書房作品の通販はこちらから☆
FT書房 - BOOTH
https://ftbooks.booth.pm
■FT書房YouTubeチャンネルはこちら!
https://www.youtube.com/channel/UCrZg-eTeypwqfjwQ4RNIvJQ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■FT新聞が届かない日があった場合
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
FT新聞は休刊日でも「本日は休刊日です」というメールが必ず届きます。
未着の場合は、まず迷惑メールフォルダを一度、ご確認下さい。
もし迷惑メールにも全く届いていない場合は、それは残念ながらお使いのメールとの相性問題などで未着になっている可能性があります。
このところ各社のメールセキュリティ強化のためか未着のケースが複雑化しております。
未着の場合は、下記ページをご参考頂き、個々のアドレスの受信許可設定をお試しください。
https://ftnews-archive.blogspot.com/p/filtering.html
*10回未着が続いた場合、そのメールアドレスはシステムより自動的に登録解除されます。再度登録する事は可能ですので、未着が続いた場合は、お手数ですがご自身で再登録下さい。
また【バックナンバー保管庫】は公開期間が2週間ありますので、その間にご自身でテキストを保存されたり、自分で自分にコピーしてメールを送られたりする等、ご活用お願いいたします。
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
SPAM注意
(編集・水波)最近SPAM投稿が増えておりますが、見つけ次第手動で削除いたしますので、決してクリックなどされないよう、ご注意下さい。
2025年5月31日土曜日
2025年5月30日金曜日
休刊日のお知らせ FT新聞 No.4510
おはようございます。
本日は、タイトルのとおり休刊日です。
毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
FT新聞編集部一同
■FT新聞へのご投稿はコチラ!
こんな記事はどうかな?というご相談からでもぜひご連絡ください。
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
■FT書房作品の通販はこちらから☆
FT書房 - BOOTH
https://ftbooks.booth.pm
■FT書房YouTubeチャンネルはこちら!
https://www.youtube.com/channel/UCrZg-eTeypwqfjwQ4RNIvJQ
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
本日は、タイトルのとおり休刊日です。
毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
FT新聞編集部一同
■FT新聞へのご投稿はコチラ!
こんな記事はどうかな?というご相談からでもぜひご連絡ください。
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
■FT書房作品の通販はこちらから☆
FT書房 - BOOTH
https://ftbooks.booth.pm
■FT書房YouTubeチャンネルはこちら!
https://www.youtube.com/channel/UCrZg-eTeypwqfjwQ4RNIvJQ
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
2025年5月29日木曜日
「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.32 FT新聞 No.4509
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.32
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
●はじめに(岡和田晃)
大好評の「光の国と魔法とおじさんと」の配信も今回で完結となります。読者の方々からの感想、例えばあーるじぇいさんに「余韻の残る物語」、紫雲ねこさんに「「時と共に失われる純粋さ」をテーマに幕が閉じるかと思いきや、まだ先がある!? 物語の続きが気になりますっ……!」、かなでひびき氏に「読まなければ一生後悔することウケアイ!」、葉山海月氏に「カネを払っても読むべき作品」と評していただいたことは、作者である市川大賀さんにも大きな勇気を与えたようです。
なぜかといえば、市川さん御本人は、2024年にインフルエンザ脳症で意識不明になり、植物人間になりかけ、今も入院して闘病・リハビリを続けておいでという状態だからです。連絡が取れなくなったとき、お見舞いに行ったのですが、ろくに会話もできなかったそのときに比べると、だいぶ恢復していらっしゃいます。
かつて市川さんが大病で入院していたとき、尊敬する平井和正氏がお見舞いに訪れ、「やあ、僕の大ファンのウルフガイが、いま死の淵に立っていると聞きやってきました。ウルフガイなら不死身のはずです。死んではなりません。あなたはこの病気を乗り越えてください。そうしたら一緒に仕事をしましょう」と励ましてくれたそう。その甲斐もあって、見事な復活を遂げました。今回もまた、きっと苦境を乗り切ってくれるに違いありません。
ウェブ上には市川さんの名を冠した膨大なテキストがありますが、活字ですと、『このゲームがすごい! プレイステーション編』(宝島社、1997年)には〈スーパーロボット大戦〉論(「スパロボマスター」名義)、平井和正『ウルフガイ・イン・ソドム』(ハルキ文庫、2000年)の解説(本名)あたりが代表的な仕事になりますでしょうか。近年出版された2冊の単著、『スマホ・SNS時代の多事争論 令和日本のゆくえ』(日本地域社会研究所、2020年)、 『折口裕一郎教授の怪異譚 葛城山 紀伊』(ネクパブ、2022年)では、書き手としてのまた違った顔も見えてきます。チェックしてみてください。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
オリジナル小説「光の国と魔法とおじさんと」(4)
市川大賀
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
あくる日。
おじさんはまる一日、夜が来るまでゆっくりと体をやすめていた。
目覚めると、少し元気が回復していた。
おじさんは、この夜に光の国に帰ると昨夜から決めていた。
同じことばかりだ。
あの光の国でも、この地球でも、同じことばかりがくり返される。
だとしたら、自分は自分が生まれ育ったあの光の国にかえろう。
あの、自分の一生で一番大切だった人と夢をもち、めざしたこの星は、決して夢見たような星ではなかったことがわかったのだ。
ならば帰ろう。
あの人の思い出を、この星に永遠に残して、光の国へ帰ろう。
おじさんの心には、くやしさも悲しさも、すべてなくなっていた。
体がすこしずつ動きはじめていた。
ちゃんと動くようになったら、光の国へ帰る儀式をはじめよう。
そう思っておじさんは、ゆっくりと星空をながめ続けた。
この星へ来ることは、ずっとずっと夢だった。
たった一人愛したあの人と、地球という星へ行ってみよう。
そう夢見て必死にがんばった。
だけど、それもこれも、きっとはかない夢でしかなかったのだ。
この星に来て、たった一人の人を失ったとき、おじさんは果てしないこどくにつつまれた。
自分がここに存在していることを、誰も知らない、誰も気づかない。
その果てしない孤独の時間が永遠に続いていたので、おじさんは、光の国へかえる力とひきかえに、自分の命とひきかえに、この星のひとたちに、この星の子どもたちに、自分がここにいたのだと、覚えてもらう道を選んだのだった。
しかし。
結果は、やはり孤独のままだった。
おじさんは、この星で選んだ道が全部まちがいだったのだろうかと思っていた。
おじさんは、夜空にむけてゆっくりと立ち上がった。
そして、川原のこかげに立てかけておいた、黒い傘をとりだした。
傘をひらき、頭の上にかまえて、石を持った手も空へかかげる。
おじさんは、光の国へ向けて、帰るぎしきをはじめようとしたのだ。
しかし、空にむかって石をかかげようとして、ふっと気になったことがあった。
川原をあがった土手の道に、エンジンをかけたまま止まっている自動車があったのだ。
光の国に帰るぎしきを、いまさら誰に見られても困ることはないおじさんだったが、おじさんには、どうしてもその自動車が気になってしかたなかった。
おじさんは、少し考えて傘をたたみ、石をポケットにしまうと、ゆっくりと川原をのぼった。
見ると、エンジンがかかったままの自動車の運転席には、ハンドルによりかかって目をつぶっている女性がすわっていた。
「どうしたんですか? エンジンかけっぱなしで。だいじょうぶですか?」
おじさんは、運転席のまどをコンコンとノックしながらたずねてみた。
しばらく女性は目をつぶって動かなかったが、おじさんが何度かノックをつづけると、ゆっくり目をひらいて動き出し、ゆっくりとした動作でまどをあけた。
「何か用ですか? わたしのことは放っておいてください……」
女性はじゃまそうにそう言うが、そのことばに力はなかった。
「こんなところでエンジンをかけたまま自動車をとめていては、まわりにもめいわくだし、あなたも危険ですよ」
「放っておいてって言ったでしょう!」
女性はどなった。そしていきなり泣き出してしまった。
「何があったんですか? ふつうじゃないですよ」
おじさんはやさしい声でそう聞いた。
開いた運転席の窓からは、お酒のにおいがたちこめていた。
女性はおそらく、たくさんのお酒を飲んで、自動車を運転してここまで来たのだ。
よっぽどの理由があったのだろう、おじさんはその理由をたずねた。
「死ぬのよわたし。死ななきゃいけないの」
女性は、酔っているとは思えないしんけんな表情で、そう言いきった。
「死ななきゃいけないとは、おだやかじゃないですね。いったいどうしたんですか?」
こういうときは、とにかく会話をしておちつかせなければいけない。
おじさんはそう思って、女性の言うことを否定しないで、続けさせるようにした。
「好きな人がいたの。本当に好きで愛していて、ずっといっしょにいようねって約束してたの。一生を約束していて、本当に好きで……世界で一番大事な人だったの……」
女性は、ボロボロと涙を流しながら言葉を続けた。
「あの人とわたしは、故郷で結婚を約束していた。でもあの人は仕事で東京へひっこししなければいけなくなった。距離がはなれれば、いろいろ心配や不安もふえる。でもわたしとあの人はぜったいにだいじょうぶ。そんな自信が二人にはあった。なのに……それなのに……あの人は変わってしまったの」
「変わってしまった……? 」
「あの人はこの東京で、新しい恋人をつくったの。わたしをうらぎったの」
「それは本当にうらぎったのですか? あなたがごかいしてそう思い込んだのでは?」
「そんなことはなかったわ! あの人はわたしの知らない女性を抱きしめていた!」
おじさんはくちびるをかみしめることしかできなかった。
女性は自分のことばに暗示をかけられたように、うわっと泣き出してしまった。
「愛していたのに! あんなに信じていたのに!」
「だけど……」おじさんはやさしく言葉にした。「だけど、だからといってあなたが何も死ななければいけない理由なんか、ないんじゃないでしょうか」
「もう遅いの! もう何もかも、どうしようもなくなっちゃったの。とりかえしはもうつかないの。わたしは死ななければならないの……」
そうつぶやいて、ハンドルをつかんだまま泣きくずれる女性。
「とりかえしがつかない人生なんて……ないと思うんです」
おじさんはそう言ってあげることしかできなかった。
「時間は元にもどせないけど、失ったものはもどらないけれど、でもそれはきっと、いらないものも大事なものもいっしょで、それでも生きていくんだから、つらい過去がきえないように、失った大事なものも、きっとなくならないんじゃないでしょうか」
「知ったふうなことを言わないでよ!」女性はヒステリックにさけんだ。「あなたに何がわかるのよ! わたしのこと、わたしと彼のことなんか、何も知らないあなたがかってなことを言わないでよ!」
泣きさけぶ女性。
おじさんは、女性からはみえないところで、光る石をぎゅっとにぎりしめていた。
「わたしはずっと、あの人といっしょになることだけを夢みてがんばっていた。仕事もつらかった。心がちぎれそうだった。でも、がんばっていけばいつかきっと、想いがつうじて夢はかなうんだって。それだけを信じてがんばって生きてきた。あの人は、たまに電話をくれたけど、いっしょにがんばろうねっていつも言っていてくれた。二人でがんばって、幸せになろうねって、いつもいつも言ってくれていた。その何日かに数分の時間と言葉だけが、わたしには支えだった。その時間があるから、その時間が生んでくれる夢があるから、心がちぎれそうになるほどさびしい毎日を、がんばってたえてこれたの。それなのに……それなのに!」
女性の必死なことばを聞いていたおじさんは、ふっと自動車のうしろのトランクが開くのをみつけた。
座席のうしろにある、にもつを入れる場所のふたが、少しひらいて動いているのだ。
なんだろう? おじさんはゆっくりと、自動車のうしろに向かって歩いた。
「やめて! そこはあけないで! 見ないで!」
いきおいよくドアをあけて飛びだした女性がさけんだ。
おじさんに向かって走りよってすがりつこうとする。
しかしおじさんは、自分でトランクのふたを開けるまでもなかった。
自動車うしろのトランクの中には、おなかにナイフをさされた男性がつめこまれていた。
「これは……」
ささったナイフから、たくさんの真っ赤な血がながれている男性の体は、まだひくひくと動いているけど、もうすぐ死んでしまうことはおじさんにもわかった。
「見なかったことにして!」
女性はおじさんにすがりついた。
すがりついて「ゆるして」とわんわん泣きつづけた。
おじさんにすがった女性の手は血まみれだった。
おじさんは、途方にくれるしかなかったけれど、くちびるをかみしめて星空を見上げたあと、ゆっくりと、女性と目をあわせるようにしゃがみこんだ。
「だいじょうぶですよ。おちついてください。ぼくにまかせておけばだいじょうぶですから」
おじさんはそう言って、女性の体を抱きしめてあげた。
女性の体はガクガクふるえていたけど、おじさんが抱きしめてあげたら少しふるえがおさまった。
「だいじょうぶですよ」もう一度同じことを言って、おじさんは立ち上がった。「あなたは孤独にはなりません」
おじさんは、女性からはなれてトランクにちかよった。
持っていた光の石を、死にかけている男性の体の上において、そのまま右手をナイフがささっている場所にあてた。
あわい光が、石と右手から発せされ、ナイフと傷口を包み込みはじめた。
この人を死なせちゃいけない、この人をこのまま死なせたら、この女性が一生罪を背おって生きていかなくてはいけなくなる。
何があったにせよ、人が本気で愛したひとのために罪を背おい、残りの一生を生きていかなければいけないなんて、そんな人生はつらすぎる。
だから死なせちゃいけない。死なないでほしい、死なないでくれ。
おじさんは必死にねがいながら、右手に神経を集中させた。
石と光から放たれた光は、どんどん強くなっていって、男性を包んでいく。
まずは、傷口からナイフがすぽっと抜けて、宙を飛んでおじさんの背中のうしろへ落ちた。
そのあと、傷口がふさいできて、体の中の血が増えていく。
まだだ、もうちょっとだ。
おじさんは、自分の命がちぢまっていくことも、石が小さくなっていくことも気づかずに、いっしょうけんめい、その男性を救おうとがんばった。
生きてくれ、生き返ってくれ。君のためだけじゃない、この女性のためにも。
そして、この女性に愛されて幸せになる君のために、生きのびてくれ。
おじさんはそう祈って、力をこめつづけた。
「う……ん……」
やがて、血の気がもどってきた男性が、ひくくうめきはじめた。
状態がよくなってきたのだ。意識がとりもどされかけたのだ。
助かるぞ。助けることができるぞ。
おじさんは、もう小粒ほどの大きさになってしまった石をにぎりしめて、その手を傷口にあてつづけた。
傷口はもうすっかりとふさがって、もとどおりになりかかっていた。
「もう少しだ……」
おじさんは、心臓のうごきが弱くなりつつ、めまいがしつつも男性のためにがんばった。
それはまるで、消えかけた男性の命へ、自分の命をうつしかえるような行ないだった。
おじさんの、必死な努力は成功した。
男性は意識こそはっきりしないものの、ナイフでさされた傷は完全に消え去り、体は健康な状態をとりもどしたのだった。
「これでもう……だいじょうぶだ」
おじさんは、大量の汗を流しながらも、ふうとひといきついて背後の女性に話しかけた。
その直後。
おじさんの背中に、するどい痛みと熱さと、しょうげきが走った。
男性の傷口から放り投げられたナイフが、おじさんの背中に突きさされたのだ。
「え……」
おじさんは何のことか、いっしゅんわからなかったが、少しふりむくと、ナイフをにぎった女性が、自分の背中に体当たりをしているのが見えた。
「この人は……この人はようやく、わたし一人のものになったのに!」
女性はそうさけぶと、さらにぐいっとナイフをおじさんの背中にさしこんだ。
おじさんは声もだせないまま、その場にくずれて倒れた。
女性は、おじさんが倒れたのを見るとすぐに自動車のトランクをしめた。
そして運転席にもどり、ドアをしめ、自動車を急発進させて、その場から走り去ってしまった。
あとには、血まみれのおじさんだけが取り残された。
おじさんは、血まみれの体をひきずって、元の川原まではいつくばってもどってきた。
もう、何も考えていなかった。
誰もうらんではいなかった。誰のことも考えていなかった。
この川原で出会った、誰のことも頭になかった。
この星で失った、大事な人のことも思い出せなかった。
ただ、この川原のこの場所に、戻らなければ。
それだけを考えていた。
血まみれの手には、米粒ほどの大きさになった石がにぎられ、あわく光っていた。
おじさんは、最後の力をふりしぼって、その小さな光の粒を川原の地面にうめた。
おじさんは泣いていた。
大事な人との夢がはたせなかったからか。
出会った人々のことを思って泣いたのか。
最後に光の国へ帰る夢がはたせず泣いたのか。
それは誰にもわからなかった。
おじさんは、血まみれで倒れたまま泣いていた。
もう、立ち上がる体力も、動く力もなくなっていた。
おじさんの心の中では、小さなころにやさしかったお父さんやお母さんがほほえんでいた。
大切だった人もほほえんでいた。
それがおじさんが見た、最後の夢だった。
動かなくなったおじさんを、夜の闇の中で赤い光が包み込んだ。
その赤い光は、まるい形になっておじさんを包み、おじさんを包んだ赤い光の球体は、ゆっくりと空へまいあがった。
やがてその赤い光球は、地面におちる流星の逆回転のように、カーブをえがいて空のかなたへ消えていった。
その夜以降、おじさんの姿を川原で見る人は、誰もいなかった。
あれから何回の、春と秋がくりかえされたのだろう。
年月は重ねられ、人々は生活を送っていた。
かつて「手品のおじさん」と会った川原に、ひとりの青年がおとずれた。
青年は、近くの高校の制服を着ていて、右手に学校のかばんとサッカーボールをさげていた。
青年は、何かを探すような、複雑な表情で川原をみつめていた。
「おういシンイチ! お前そんなところで何をしているんだよ!」
同じ制服を着たもう一人の青年が土手をかけおりてきて声をかけた。
「なんだよショウゾウか」
シンイチとよばれた青年は、ふりむいて笑顔でそうこたえた。
ショウゾウは、シンイチのわきにまでかけよってきて、シンイチと同じ川原を見つめた。
「こんなところでぼーっと立って、何かあるのかよシンイチ」
「おまえさ……」シンイチがぼそぼそと答えた。「おれたちが小学生のころ、ここに昔いた手品のおじさんって覚えているか? ここで毎日、手品を見せてくれていたおじさんなんだけど……」
シンイチのことばに、少し記憶をさぐったショウゾウだったが、答はそっけないものだった。
「いんや、覚えてねぇ。そんな人いたっけ?」
「そうか……」
ショウゾウは、ふりむいた土手の通学路に、同じクラスの女子が歩いているのをみつけると、「おーい!」と声をかけ「悪いなシンイチ、先にいくぞ、また明日な!」と言い、土手をかけのぼって行ってしまった。
シンイチは、ふたたび一人になって、川原を見つめつづけていた。
なぜか涙がでそうになった。
あの日、母親の手をふりはらっておじさんをかばっていれば、今もまだ、おじさんの魔法を見せてもらえていたのかもしれない。
いや、せめて、光の国へ帰るおじさんを、見送れたのかもしれない。
でも、そんな後悔がおそすぎるのを、シンイチはもう知っていた。
おじさんはもう、光の国へ帰ったのだ。
自分が遠いむかし、まだ子どもだったころに、とっくに光の国へ帰ったのだ。
だから泣いてはいけないんだ。
シンイチはそう自分に言いきかせながら、でも、うつむいた自分の顔から、ぽつぽつと涙が川原の地面に落ちるのに気づいていた。
「……?」
シンイチは、涙が落ちるあたりが少し光ったのを目にした。
川原の小石にうもれて、何か光るものを見つけたのだ。
なんだろう。
シンイチが気になって、少し石をどけて見ると、そこには小さな光る石がうめられていた。
シンイチはすぐに思い出した。
おじさんが大切にしていた、あの石だった。
最後に自分の手の中で大きくなった形より、かなり小さくなっているが、まちがいない。
おじさんの持っていたあの石だ。
シンイチはその石の正体に、すぐきづいた。
けれど、シンイチは思った。
おじさんが光の国へ帰るために必要だった石が、どうしてこんなに小さくなって、ここにうめられていたのだろう?
この石は、おじさんが帰るために必要だったのだから、この石がまだここにあるのなら、おじさんは光の国へ帰ってはいないことになるけど、あれから何年も、シンイチも誰もおじさんを見た人はいない。
じゃあ、とシンイチは思った。
おじさんは、ぼくのためにひとかけらだけ、この石の一部を残しておいてくれたんだ。
光の国へかえるとき、ぼくにだけそっと、石の一部をうめて残しておいてくれたんだ。
これは、おじさんからぼくへの、お別れのプレゼントなんだ。
シンイチはそう思うことにした。
そして、米粒くらいの光る石のかけらを、大事そうに両手で包み込んだ。
「おじさん、ありがとう」
いろいろ考えたシンイチは、それだけを誰もいない川原にむかって言った。
川原には、春風がふきこんでいた。
少しはなれた場所では、小学生くらいの小さな男の子が、転んでひざをすりむいたみたいで、わんわん泣いている声が聞こえてきていた。
しかたないなぁ。シンイチはちょっと苦笑いすると、その少年に向かって、歩きだしていた。
【おしまい】
初出:「SF Prologue Wave」
https://prologuewave.club/archives/9809
※リンク先では、蓮鯉氏の素敵なイラストも鑑賞することができます。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.32
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
●はじめに(岡和田晃)
大好評の「光の国と魔法とおじさんと」の配信も今回で完結となります。読者の方々からの感想、例えばあーるじぇいさんに「余韻の残る物語」、紫雲ねこさんに「「時と共に失われる純粋さ」をテーマに幕が閉じるかと思いきや、まだ先がある!? 物語の続きが気になりますっ……!」、かなでひびき氏に「読まなければ一生後悔することウケアイ!」、葉山海月氏に「カネを払っても読むべき作品」と評していただいたことは、作者である市川大賀さんにも大きな勇気を与えたようです。
なぜかといえば、市川さん御本人は、2024年にインフルエンザ脳症で意識不明になり、植物人間になりかけ、今も入院して闘病・リハビリを続けておいでという状態だからです。連絡が取れなくなったとき、お見舞いに行ったのですが、ろくに会話もできなかったそのときに比べると、だいぶ恢復していらっしゃいます。
かつて市川さんが大病で入院していたとき、尊敬する平井和正氏がお見舞いに訪れ、「やあ、僕の大ファンのウルフガイが、いま死の淵に立っていると聞きやってきました。ウルフガイなら不死身のはずです。死んではなりません。あなたはこの病気を乗り越えてください。そうしたら一緒に仕事をしましょう」と励ましてくれたそう。その甲斐もあって、見事な復活を遂げました。今回もまた、きっと苦境を乗り切ってくれるに違いありません。
ウェブ上には市川さんの名を冠した膨大なテキストがありますが、活字ですと、『このゲームがすごい! プレイステーション編』(宝島社、1997年)には〈スーパーロボット大戦〉論(「スパロボマスター」名義)、平井和正『ウルフガイ・イン・ソドム』(ハルキ文庫、2000年)の解説(本名)あたりが代表的な仕事になりますでしょうか。近年出版された2冊の単著、『スマホ・SNS時代の多事争論 令和日本のゆくえ』(日本地域社会研究所、2020年)、 『折口裕一郎教授の怪異譚 葛城山 紀伊』(ネクパブ、2022年)では、書き手としてのまた違った顔も見えてきます。チェックしてみてください。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
オリジナル小説「光の国と魔法とおじさんと」(4)
市川大賀
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
あくる日。
おじさんはまる一日、夜が来るまでゆっくりと体をやすめていた。
目覚めると、少し元気が回復していた。
おじさんは、この夜に光の国に帰ると昨夜から決めていた。
同じことばかりだ。
あの光の国でも、この地球でも、同じことばかりがくり返される。
だとしたら、自分は自分が生まれ育ったあの光の国にかえろう。
あの、自分の一生で一番大切だった人と夢をもち、めざしたこの星は、決して夢見たような星ではなかったことがわかったのだ。
ならば帰ろう。
あの人の思い出を、この星に永遠に残して、光の国へ帰ろう。
おじさんの心には、くやしさも悲しさも、すべてなくなっていた。
体がすこしずつ動きはじめていた。
ちゃんと動くようになったら、光の国へ帰る儀式をはじめよう。
そう思っておじさんは、ゆっくりと星空をながめ続けた。
この星へ来ることは、ずっとずっと夢だった。
たった一人愛したあの人と、地球という星へ行ってみよう。
そう夢見て必死にがんばった。
だけど、それもこれも、きっとはかない夢でしかなかったのだ。
この星に来て、たった一人の人を失ったとき、おじさんは果てしないこどくにつつまれた。
自分がここに存在していることを、誰も知らない、誰も気づかない。
その果てしない孤独の時間が永遠に続いていたので、おじさんは、光の国へかえる力とひきかえに、自分の命とひきかえに、この星のひとたちに、この星の子どもたちに、自分がここにいたのだと、覚えてもらう道を選んだのだった。
しかし。
結果は、やはり孤独のままだった。
おじさんは、この星で選んだ道が全部まちがいだったのだろうかと思っていた。
おじさんは、夜空にむけてゆっくりと立ち上がった。
そして、川原のこかげに立てかけておいた、黒い傘をとりだした。
傘をひらき、頭の上にかまえて、石を持った手も空へかかげる。
おじさんは、光の国へ向けて、帰るぎしきをはじめようとしたのだ。
しかし、空にむかって石をかかげようとして、ふっと気になったことがあった。
川原をあがった土手の道に、エンジンをかけたまま止まっている自動車があったのだ。
光の国に帰るぎしきを、いまさら誰に見られても困ることはないおじさんだったが、おじさんには、どうしてもその自動車が気になってしかたなかった。
おじさんは、少し考えて傘をたたみ、石をポケットにしまうと、ゆっくりと川原をのぼった。
見ると、エンジンがかかったままの自動車の運転席には、ハンドルによりかかって目をつぶっている女性がすわっていた。
「どうしたんですか? エンジンかけっぱなしで。だいじょうぶですか?」
おじさんは、運転席のまどをコンコンとノックしながらたずねてみた。
しばらく女性は目をつぶって動かなかったが、おじさんが何度かノックをつづけると、ゆっくり目をひらいて動き出し、ゆっくりとした動作でまどをあけた。
「何か用ですか? わたしのことは放っておいてください……」
女性はじゃまそうにそう言うが、そのことばに力はなかった。
「こんなところでエンジンをかけたまま自動車をとめていては、まわりにもめいわくだし、あなたも危険ですよ」
「放っておいてって言ったでしょう!」
女性はどなった。そしていきなり泣き出してしまった。
「何があったんですか? ふつうじゃないですよ」
おじさんはやさしい声でそう聞いた。
開いた運転席の窓からは、お酒のにおいがたちこめていた。
女性はおそらく、たくさんのお酒を飲んで、自動車を運転してここまで来たのだ。
よっぽどの理由があったのだろう、おじさんはその理由をたずねた。
「死ぬのよわたし。死ななきゃいけないの」
女性は、酔っているとは思えないしんけんな表情で、そう言いきった。
「死ななきゃいけないとは、おだやかじゃないですね。いったいどうしたんですか?」
こういうときは、とにかく会話をしておちつかせなければいけない。
おじさんはそう思って、女性の言うことを否定しないで、続けさせるようにした。
「好きな人がいたの。本当に好きで愛していて、ずっといっしょにいようねって約束してたの。一生を約束していて、本当に好きで……世界で一番大事な人だったの……」
女性は、ボロボロと涙を流しながら言葉を続けた。
「あの人とわたしは、故郷で結婚を約束していた。でもあの人は仕事で東京へひっこししなければいけなくなった。距離がはなれれば、いろいろ心配や不安もふえる。でもわたしとあの人はぜったいにだいじょうぶ。そんな自信が二人にはあった。なのに……それなのに……あの人は変わってしまったの」
「変わってしまった……? 」
「あの人はこの東京で、新しい恋人をつくったの。わたしをうらぎったの」
「それは本当にうらぎったのですか? あなたがごかいしてそう思い込んだのでは?」
「そんなことはなかったわ! あの人はわたしの知らない女性を抱きしめていた!」
おじさんはくちびるをかみしめることしかできなかった。
女性は自分のことばに暗示をかけられたように、うわっと泣き出してしまった。
「愛していたのに! あんなに信じていたのに!」
「だけど……」おじさんはやさしく言葉にした。「だけど、だからといってあなたが何も死ななければいけない理由なんか、ないんじゃないでしょうか」
「もう遅いの! もう何もかも、どうしようもなくなっちゃったの。とりかえしはもうつかないの。わたしは死ななければならないの……」
そうつぶやいて、ハンドルをつかんだまま泣きくずれる女性。
「とりかえしがつかない人生なんて……ないと思うんです」
おじさんはそう言ってあげることしかできなかった。
「時間は元にもどせないけど、失ったものはもどらないけれど、でもそれはきっと、いらないものも大事なものもいっしょで、それでも生きていくんだから、つらい過去がきえないように、失った大事なものも、きっとなくならないんじゃないでしょうか」
「知ったふうなことを言わないでよ!」女性はヒステリックにさけんだ。「あなたに何がわかるのよ! わたしのこと、わたしと彼のことなんか、何も知らないあなたがかってなことを言わないでよ!」
泣きさけぶ女性。
おじさんは、女性からはみえないところで、光る石をぎゅっとにぎりしめていた。
「わたしはずっと、あの人といっしょになることだけを夢みてがんばっていた。仕事もつらかった。心がちぎれそうだった。でも、がんばっていけばいつかきっと、想いがつうじて夢はかなうんだって。それだけを信じてがんばって生きてきた。あの人は、たまに電話をくれたけど、いっしょにがんばろうねっていつも言っていてくれた。二人でがんばって、幸せになろうねって、いつもいつも言ってくれていた。その何日かに数分の時間と言葉だけが、わたしには支えだった。その時間があるから、その時間が生んでくれる夢があるから、心がちぎれそうになるほどさびしい毎日を、がんばってたえてこれたの。それなのに……それなのに!」
女性の必死なことばを聞いていたおじさんは、ふっと自動車のうしろのトランクが開くのをみつけた。
座席のうしろにある、にもつを入れる場所のふたが、少しひらいて動いているのだ。
なんだろう? おじさんはゆっくりと、自動車のうしろに向かって歩いた。
「やめて! そこはあけないで! 見ないで!」
いきおいよくドアをあけて飛びだした女性がさけんだ。
おじさんに向かって走りよってすがりつこうとする。
しかしおじさんは、自分でトランクのふたを開けるまでもなかった。
自動車うしろのトランクの中には、おなかにナイフをさされた男性がつめこまれていた。
「これは……」
ささったナイフから、たくさんの真っ赤な血がながれている男性の体は、まだひくひくと動いているけど、もうすぐ死んでしまうことはおじさんにもわかった。
「見なかったことにして!」
女性はおじさんにすがりついた。
すがりついて「ゆるして」とわんわん泣きつづけた。
おじさんにすがった女性の手は血まみれだった。
おじさんは、途方にくれるしかなかったけれど、くちびるをかみしめて星空を見上げたあと、ゆっくりと、女性と目をあわせるようにしゃがみこんだ。
「だいじょうぶですよ。おちついてください。ぼくにまかせておけばだいじょうぶですから」
おじさんはそう言って、女性の体を抱きしめてあげた。
女性の体はガクガクふるえていたけど、おじさんが抱きしめてあげたら少しふるえがおさまった。
「だいじょうぶですよ」もう一度同じことを言って、おじさんは立ち上がった。「あなたは孤独にはなりません」
おじさんは、女性からはなれてトランクにちかよった。
持っていた光の石を、死にかけている男性の体の上において、そのまま右手をナイフがささっている場所にあてた。
あわい光が、石と右手から発せされ、ナイフと傷口を包み込みはじめた。
この人を死なせちゃいけない、この人をこのまま死なせたら、この女性が一生罪を背おって生きていかなくてはいけなくなる。
何があったにせよ、人が本気で愛したひとのために罪を背おい、残りの一生を生きていかなければいけないなんて、そんな人生はつらすぎる。
だから死なせちゃいけない。死なないでほしい、死なないでくれ。
おじさんは必死にねがいながら、右手に神経を集中させた。
石と光から放たれた光は、どんどん強くなっていって、男性を包んでいく。
まずは、傷口からナイフがすぽっと抜けて、宙を飛んでおじさんの背中のうしろへ落ちた。
そのあと、傷口がふさいできて、体の中の血が増えていく。
まだだ、もうちょっとだ。
おじさんは、自分の命がちぢまっていくことも、石が小さくなっていくことも気づかずに、いっしょうけんめい、その男性を救おうとがんばった。
生きてくれ、生き返ってくれ。君のためだけじゃない、この女性のためにも。
そして、この女性に愛されて幸せになる君のために、生きのびてくれ。
おじさんはそう祈って、力をこめつづけた。
「う……ん……」
やがて、血の気がもどってきた男性が、ひくくうめきはじめた。
状態がよくなってきたのだ。意識がとりもどされかけたのだ。
助かるぞ。助けることができるぞ。
おじさんは、もう小粒ほどの大きさになってしまった石をにぎりしめて、その手を傷口にあてつづけた。
傷口はもうすっかりとふさがって、もとどおりになりかかっていた。
「もう少しだ……」
おじさんは、心臓のうごきが弱くなりつつ、めまいがしつつも男性のためにがんばった。
それはまるで、消えかけた男性の命へ、自分の命をうつしかえるような行ないだった。
おじさんの、必死な努力は成功した。
男性は意識こそはっきりしないものの、ナイフでさされた傷は完全に消え去り、体は健康な状態をとりもどしたのだった。
「これでもう……だいじょうぶだ」
おじさんは、大量の汗を流しながらも、ふうとひといきついて背後の女性に話しかけた。
その直後。
おじさんの背中に、するどい痛みと熱さと、しょうげきが走った。
男性の傷口から放り投げられたナイフが、おじさんの背中に突きさされたのだ。
「え……」
おじさんは何のことか、いっしゅんわからなかったが、少しふりむくと、ナイフをにぎった女性が、自分の背中に体当たりをしているのが見えた。
「この人は……この人はようやく、わたし一人のものになったのに!」
女性はそうさけぶと、さらにぐいっとナイフをおじさんの背中にさしこんだ。
おじさんは声もだせないまま、その場にくずれて倒れた。
女性は、おじさんが倒れたのを見るとすぐに自動車のトランクをしめた。
そして運転席にもどり、ドアをしめ、自動車を急発進させて、その場から走り去ってしまった。
あとには、血まみれのおじさんだけが取り残された。
おじさんは、血まみれの体をひきずって、元の川原まではいつくばってもどってきた。
もう、何も考えていなかった。
誰もうらんではいなかった。誰のことも考えていなかった。
この川原で出会った、誰のことも頭になかった。
この星で失った、大事な人のことも思い出せなかった。
ただ、この川原のこの場所に、戻らなければ。
それだけを考えていた。
血まみれの手には、米粒ほどの大きさになった石がにぎられ、あわく光っていた。
おじさんは、最後の力をふりしぼって、その小さな光の粒を川原の地面にうめた。
おじさんは泣いていた。
大事な人との夢がはたせなかったからか。
出会った人々のことを思って泣いたのか。
最後に光の国へ帰る夢がはたせず泣いたのか。
それは誰にもわからなかった。
おじさんは、血まみれで倒れたまま泣いていた。
もう、立ち上がる体力も、動く力もなくなっていた。
おじさんの心の中では、小さなころにやさしかったお父さんやお母さんがほほえんでいた。
大切だった人もほほえんでいた。
それがおじさんが見た、最後の夢だった。
動かなくなったおじさんを、夜の闇の中で赤い光が包み込んだ。
その赤い光は、まるい形になっておじさんを包み、おじさんを包んだ赤い光の球体は、ゆっくりと空へまいあがった。
やがてその赤い光球は、地面におちる流星の逆回転のように、カーブをえがいて空のかなたへ消えていった。
その夜以降、おじさんの姿を川原で見る人は、誰もいなかった。
あれから何回の、春と秋がくりかえされたのだろう。
年月は重ねられ、人々は生活を送っていた。
かつて「手品のおじさん」と会った川原に、ひとりの青年がおとずれた。
青年は、近くの高校の制服を着ていて、右手に学校のかばんとサッカーボールをさげていた。
青年は、何かを探すような、複雑な表情で川原をみつめていた。
「おういシンイチ! お前そんなところで何をしているんだよ!」
同じ制服を着たもう一人の青年が土手をかけおりてきて声をかけた。
「なんだよショウゾウか」
シンイチとよばれた青年は、ふりむいて笑顔でそうこたえた。
ショウゾウは、シンイチのわきにまでかけよってきて、シンイチと同じ川原を見つめた。
「こんなところでぼーっと立って、何かあるのかよシンイチ」
「おまえさ……」シンイチがぼそぼそと答えた。「おれたちが小学生のころ、ここに昔いた手品のおじさんって覚えているか? ここで毎日、手品を見せてくれていたおじさんなんだけど……」
シンイチのことばに、少し記憶をさぐったショウゾウだったが、答はそっけないものだった。
「いんや、覚えてねぇ。そんな人いたっけ?」
「そうか……」
ショウゾウは、ふりむいた土手の通学路に、同じクラスの女子が歩いているのをみつけると、「おーい!」と声をかけ「悪いなシンイチ、先にいくぞ、また明日な!」と言い、土手をかけのぼって行ってしまった。
シンイチは、ふたたび一人になって、川原を見つめつづけていた。
なぜか涙がでそうになった。
あの日、母親の手をふりはらっておじさんをかばっていれば、今もまだ、おじさんの魔法を見せてもらえていたのかもしれない。
いや、せめて、光の国へ帰るおじさんを、見送れたのかもしれない。
でも、そんな後悔がおそすぎるのを、シンイチはもう知っていた。
おじさんはもう、光の国へ帰ったのだ。
自分が遠いむかし、まだ子どもだったころに、とっくに光の国へ帰ったのだ。
だから泣いてはいけないんだ。
シンイチはそう自分に言いきかせながら、でも、うつむいた自分の顔から、ぽつぽつと涙が川原の地面に落ちるのに気づいていた。
「……?」
シンイチは、涙が落ちるあたりが少し光ったのを目にした。
川原の小石にうもれて、何か光るものを見つけたのだ。
なんだろう。
シンイチが気になって、少し石をどけて見ると、そこには小さな光る石がうめられていた。
シンイチはすぐに思い出した。
おじさんが大切にしていた、あの石だった。
最後に自分の手の中で大きくなった形より、かなり小さくなっているが、まちがいない。
おじさんの持っていたあの石だ。
シンイチはその石の正体に、すぐきづいた。
けれど、シンイチは思った。
おじさんが光の国へ帰るために必要だった石が、どうしてこんなに小さくなって、ここにうめられていたのだろう?
この石は、おじさんが帰るために必要だったのだから、この石がまだここにあるのなら、おじさんは光の国へ帰ってはいないことになるけど、あれから何年も、シンイチも誰もおじさんを見た人はいない。
じゃあ、とシンイチは思った。
おじさんは、ぼくのためにひとかけらだけ、この石の一部を残しておいてくれたんだ。
光の国へかえるとき、ぼくにだけそっと、石の一部をうめて残しておいてくれたんだ。
これは、おじさんからぼくへの、お別れのプレゼントなんだ。
シンイチはそう思うことにした。
そして、米粒くらいの光る石のかけらを、大事そうに両手で包み込んだ。
「おじさん、ありがとう」
いろいろ考えたシンイチは、それだけを誰もいない川原にむかって言った。
川原には、春風がふきこんでいた。
少しはなれた場所では、小学生くらいの小さな男の子が、転んでひざをすりむいたみたいで、わんわん泣いている声が聞こえてきていた。
しかたないなぁ。シンイチはちょっと苦笑いすると、その少年に向かって、歩きだしていた。
【おしまい】
初出:「SF Prologue Wave」
https://prologuewave.club/archives/9809
※リンク先では、蓮鯉氏の素敵なイラストも鑑賞することができます。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
2025年5月28日水曜日
第2回【戦場の風】ローグライクハーフリプレイ FT新聞 No.4508
第2回【戦場の風】ローグライクハーフリプレイ
※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「戦場の風」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。
ぜろです。
ローグライクハーフ版d33シナリオ「戦場の風」への挑戦を始めました。
今回の主人公はウォーレン。ロング・ナリクで当代一と言われた聖騎士と同名の若き騎士です。
国王からの密命は、戦場に置き去りになっている王女コーデリアを救い出し、離脱すること。
主人公のあこがれである聖騎士ウォーレンも戦死したという過酷な戦場。しかも敗色濃厚にもかかわらず、王女はなおも戦いを諦めていないといいます。
この過酷な任務を、なんとしてもやり遂げなければなりません。
【ウォーレン レベル10聖騎士 技量点2 生命点8/8 筋力点4/4 従者点7】
【装備】
片手武器
板金鎧(生命点2 防御1)
丸盾(生命点2)
【食料】2
【金貨】0
【持ち物】
【高潔な魂】【全力攻撃】【神の加護】
【未使用経験点】0
●アタック01-2 アンドロがアンドレに
国王は俺に配下をつけてくれた。
弓兵が2名。一般兵が4名。
加えて、軍馬か乗用馬かのどちらかが与えられるという。
俺は迷わず乗用馬を選択した。
軍馬は戦う従者、乗用馬は戦わない従者だ。
となれば、戦う従者である軍馬は、途中でロストするリスクが高いと考えた。
戦わない従者が被害に遭う可能性はあるが、それでも、戦う従者よりは可能性は低いと言えよう。
それに、乗用馬は5つ分の装備品を積むことができる。
ところで、俺だけ馬に乗っていて従者たちが徒歩では、結局ぜんぜん移動速度が出せないと思うのだが。
その点については、シナリオ中にフォローはないようだ。
なので全員に、馬は貸し与えられていることとした。これは設定上そうというだけで、数値上にはなんの影響もしない扱いとする。
でなければ、この時間との勝負となる任務に、国王が就かせるわけがないからだ。
そして今回は、従者の兵士たちの個性はあえて控えめにすることにした。
従者を含めたドラマを展開するのは、この任務のスピード感を削ぐことになるし、他にメインとなる登場人物も多い。
これで準備は整った。
次は、今回のd33シナリオの進め方の確認だ。
一本道モードである。
マップなどは特になく、サイコロを振りランダムにイベントが起きる。
そしてイベントの合間に、〈中間イベント〉が、ラストには〈最終イベント〉が起きることになる。
〈中間イベント〉の出方は少し変わっている。
俺は1から7回目までのランダムイベントを起こしつつ進む。その途中で、コーデリア王女に会うための条件が整ったら、〈中間イベント〉に進む。
コーデリア王女に会えていようがいまいが、8枚目は〈最終イベント〉だ。
ここまで確認できればいいだろう。
俺は入念に準備を整えると、夜明けとともに出発した。
さあ、ここからは、ランダムダンジョンのルールにのっとり、サイコロを振ってイベントを決めていく冒険が始まる。
本リプレイでは、サイコロを振ってイベントが決まったら、次にあるような表記でイベント番号と簡単な内容を示し、話を進めていくことにする。
【13 ロング・ナリク軍】
戦場である金牛の丘。
ここで最初に友軍の陣を発見できたのは幸運だった。
だが、ここにはコーデリア王女はいない。王女は広大な金牛の丘のどこかに分断され、取り残されているのだ。
負傷兵たちの中から、俺に声をかけてくる者がいた。
「君か。王女のもとへ向かおうというのは」
その負傷兵は、アンドレと名乗った。
え。アンドレなの? アンドロじゃなくて?
ゲームブック版ではアンドロだった彼は、名前がアンドレになっていた。
これではもう、アンドロ梅田ネタを出すことができない。アンドロ軍団にも所属できない。
連想するのはベルサイユのばらか、プロレスラーだ。
いや、名前のことはいいんだ。
「俺はウォーレン様の従者だった」
なんと、この戦場で戦死したと聞いている聖騎士ウォーレンのもとにいたのだという。
「ウォーレン様は王女を逃がすため、しんがりとしてウォー・ドレイクを引きつけていたんだ」
なるほど。そういうことだったのか。
それはそれとして、細かい点だが、ゲームブック版では「ウォードレイク」だったのが、「ウォー・ドレイク」と中点がついたな。
そしてアンドレは俺に懇願した。
「俺も一緒に連れていってくれ。俺にはコーデリア様に伝えなければならないことがある」
たしかに、彼を連れて行くことは、王女の説得にかなりプラスに働くに違いない。
というか、彼の言で説得できることを、俺はもう知っている。ゲームブック版をクリアしているからな。
でも、今、従者枠がいっぱいなんだよね。どうしたものか。
と思ったら、注釈があった。
彼は負傷を負って自分では歩けないレベルだ。
そして騎乗生物の従者がいれば、アンドレを連れて行くことができるという。
ただし、騎乗生物には装備品を持たせることができなくなるし、戦闘にも参加できなくなる。
もちろん連れて行くさ。もともと戦闘には参加できないし、持ち物は自分だけでも十分だからな。
それにしてもこれ、牛飼いのジェイコブも同行することになったら、どうなるんだろう。
アンドレを加え、俺たちは自陣をあとにした。
●アタック01-3 ドラッツェン兵と密偵
【21 ドラッツェン兵】
金牛の丘のふもとを出発し、ゆるやかな放牧地を登っていく。
この先には大聖堂がある。王女が無事ならば、そこにいる可能性は高いと思われた。
しかし同時に、敵も同じことを考え、捜索の手をのばしているかもしれない。
そこは、ドラッツェン軍が土地に不案内なことに期待するしかない。
戦場から国王が報告を受け、俺が出立するまでにも日数が経過している。
スマホのような便利な通信手段があるわけではない。事態の把握にも時間がかかるのだ。
まだ無事なら良いのだが……。
ここは見通しの良いなだらかな丘陵だ。
だから、巡回中のドラッツェン兵の姿を、かなり遠くから視認できた。
人数は4人だ。
反応表を振るか?
いや、その必要はない。
ここは戦場。相手はドラッツェン兵。ただちに攻撃する。
弓兵の攻撃で1人、すばやく接近した兵士の攻撃で1人が倒され、ドラッツェン兵は逃走した。
俺? 攻撃外した。言わせんな。
戦利品として、金貨15枚のアクセサリーを得るとある。
こういう時に手に入れるものって、思い出のロケットつきペンダントみたいなもので、敵兵にも待っている家族がいるんだ、みたいな気分にさせられちゃうやつなんだろうな。
だが、俺には使命がある。感傷にひたる暇はない。
この戦闘を通過すると、次のイベントは自動的に決定されるようだ。
では、サイコロを振らずに次のイベントに入ろうか。
【22 密使】
「見てたぜ、兄ちゃん、なかなかやるな」
不意に、近くの茂みから声をかけられた。そこには男が潜んでいた。
み、見てたのか。俺がみっともなく攻撃を外すところを。
謎の人物の出現に、俺たちに緊張が走る。
「いやいや、この集団の前に自分から登場したんだ。何もしないって」
たしかに、俺を含めて7人の前に自ら出てくるのだ。敵意がないか、相当の手練れかのどちらかだろう。
男は、黒いコインを取り出して、これみよがしに俺に見せつけてくる。
なにそれ。くれるの?
「だー。お前、何も聞いてないのか。お前も持ってるだろ。ロング・ナリクの密偵であることを示す符丁だよ」
荷物の中身を改める。たしかに黒いコインがあった。持ち物欄を消費しないアイテムだから見逃していたよ。
「ったく。俺が気づかなかったらどうなっていたことやら」
だいぶ呆れられてしまったようだ。
男は名前を名乗らなかった。ただ自身が、コーデリア王女の密偵であると告げた。
索敵しつつ、分断された軍の位置関係を把握し現状を分析、軍を再結集させるために動いているという。
そしたらあからさまに軍とは別の動きをしている集団を見つけた、と。それが俺たちだ。
「だから、あんたらがロング・ナリクの所属で、何らかの目的をもって姫さんを探してるんだったのはすぐにわかったよ」
俺たちの行動は、戦場ではだいぶ不自然で目立つらしい。
男は、声を低くした。
「いいか。コーデリア殿下は聖堂にかくまわれている。合言葉は『フリージアの花の様子を知りたい』だ。それを司祭に告げろ」
聖堂でこの合言葉を言うことが、中間イベントを起こす条件だという。
とにかく、聖堂に行かないことにははじまらないのだな。
俺たちは聖堂を目指す。聖堂を出せるかは、サイコロ運だ。はたして、出せるだろうか。
●アタック01-4 聖堂の王女
【23 聖堂】
って、いきなり聖堂に到着しちゃったんだけど!
都合が良すぎる。イージーモードすぎないか。
金牛の丘に建てられた聖堂はロング・ナリク式の力強い建築様式で、白く輝く存在感を放つ建造物である。
今、その聖堂は野外病院と化していた。
負傷兵が礼拝堂の広間に並べられ、治療を受けている。負傷者に敵味方は関係ないようだ。
場違いな俺たちに、司祭が声をかけてきた。
「あなたはここにどのような御用でいらしたのかな? そちらの御仁に治療を受けさせるためかな?」
一緒に連れている、負傷兵のアンドレのことを言っている。
俺は答えた。俺はフリージアの花の様子を知るためにやってきたフリージアボーイであると。
司祭ははっと息を呑んだ。
「そうですか、ではあなたがたを、『ガーデン』へ案内しましょう」
司祭の案内で、俺たちは地下への階段を下ってゆく。
【中間イベント】
地下室には、王女と、側近の兵たちがかくまわれていた。
兵たちも負傷しており、王女みずからが治療にあたっている。
俺は、名を名乗った。そして、国王の使いであると、身分を明かした。
「そう。あなた、ウォーレンというのね。あの方と同じ……」
そうだ。俺は聖騎士ウォーレンにあこがれ、騎士になった。
「でも、聖騎士ウォーレンは命を落としました。私を逃がすため、犠牲になって……」
コーデリア王女には、悲愴な覚悟のようなものが見えた。
「だから私は、戦わなければなりません。聖騎士ウォーレンに報いるためにも、ドラッツェンをこの地から追いやらなければならないのです」
「それは違います」
横やりが入る。
俺が連れてきた、アンドレだった。
「……貴方は?」
「俺はアンドレ。聖騎士ウォーレン様の従者です」
「それで、何が違うというのです?」
「簡単なことです。王女が自ら死を選ぶのでは、ウォーレン様が何のために貴女を助けたのか、わからなくなります」
「それは……」
コーデリア王女が少しの間言葉に詰まる。
国王からの言葉を伝えるのは、今だと思った。
「国王からの言葉を伝えます。『この戦いに勝ち目はない。逃げろ』と」
あえて、王女にとってショッキングな言葉を選んだ。
こういうとき、言いにくさのあまり、中途半端にまわりくどい言い方をしてしまうことがあるが、悪手だ。
はっきり伝えないと、伝わらないこともある。受け手がいいように解釈してしまうこともある。
伝える側は伝えたつもりになっていても、受け手との間で齟齬が起きがちなパターンでもある。
「そんな。陛下はこの戦いを捨て、逃げよとおっしゃるのですか?」
ああ。そう言った。
「……それは、できません」
コーデリア王女の悲壮感たっぷりの瞳の色は、変わらない。
理由を聞いてもいいだろうか。
「王族としての誇りが撤退を許さないからです。この戦場を捨ててしまっては、彼の死に報いることができません」
そうか。
ここで「ロング・ナリクの民を守るため」などと言うようなら、俺は王女を見限っていたかもしれない。
俺はこの回答で、王女が少なくとも、戦況が読めていないただの少女ではないことを知った。
少なくとも、勝ち目のない戦いであることを理解している。そのうえで矜持のために戦うと言っているのだ。
だからこそ、悲壮感を漂わせているのだろう。
全滅するとわかっている戦いの理由に「民を守るため」なんて持ちだすとしたら愚かとしか言いようがない。
全滅どころか勝つ気でいるのなら、戦況がまるでわかっていないので、やはり愚か者と呼ばれても仕方あるまい。
しかし王女はそうではなかった。だったら、説得のしようもある。
「コーデリア王女。あなたが戦況を見極められる聡明な方と知り、安心しました」
ここはサイコロによる判定で決定される。失敗するとペナルティは受けるものの、再挑戦が可能だ。
目標値は、5。技量点による判定だ。また、アンドレがいると2点を加えることができる。
俺の技量点は2。アンドレの2点加算を加えると、4。目標値5に届くためには、1以上を出せば良い。
ただ、1はファンブルで自動的失敗になるから、2以上で成功だ。
俺はサイコロを振った。出目は6。クリティカルだった。
これ以上ない成功だ。
「ウォーレン様は、王女様を生かすために犠牲となったのです。みすみす命を落とさせるわけにはまいりません」
「アンドレ、しかし……」
「ウォーレン様の言葉を伝えます。『この国の未来のために、できることをしてほしい』と。王女様、貴女が今、なさろうとしていることは、未来のためになることなのですか?」
この言葉は、コーデリア王女の胸を深くえぐったようだった。
勝てない戦に誇りのために挑むことが、未来を閉ざす行為であることを、王女は理解していた。
「……私が、間違っていました」
コーデリア王女は、自身の非を認めた。
「我が国の未来を思うのなら、私は敵の手に落ちてはならない。国のために戦ってくれる兵たちを、無駄死にさせてはならない」
結局、俺がこれ以上何かを言う必要もなく、アンドレの言葉のみで、王女は説得に応じることになったのだった。
次回、軍を撤退させるための作戦がはじまる。
【ウォーレン レベル10聖騎士 技量点2 生命点8/8 筋力点4/4 従者点7】
【装備】
片手武器
板金鎧(生命点2 防御1)
丸盾(生命点2)
【食料】2
【金貨】0
【持ち物】
0 黒いコイン
1 ロケットつきペンダント(金貨15枚)
【高潔な魂】【全力攻撃】【神の加護】
【未使用経験点】0
【従者】
弓兵 2人
兵士 4人
乗用馬 1頭(装備5つ)※アンドレが同行
■登場人物
ウォーレン 主人公。ロング・ナリクの若き騎士。従者とアンドレ頼みで活躍の場は少ない。
ロング・ナリク王 コーデリア王女の父。主人公に密命をくだす。
聖騎士ウォーレン 主人公のあこがれであり目標。戦場で命を落とす。
コーデリア ロング・ナリクの王女。15歳で初陣。戦場の指揮を執る。
ジャルベッタ ドラッツェン軍の指揮官。冷酷無比との噂。
アンドレ 聖騎士ウォーレンの従者。継戦を主張するコーデリア王女の説得に成功する。
■作品情報
作品名:『戦場の風d33』ローグライクハーフd33シナリオ
著者:丹野佑
初出:FT新聞2024年8月4日(No.4211)号
本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「戦場の風」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。
ぜろです。
ローグライクハーフ版d33シナリオ「戦場の風」への挑戦を始めました。
今回の主人公はウォーレン。ロング・ナリクで当代一と言われた聖騎士と同名の若き騎士です。
国王からの密命は、戦場に置き去りになっている王女コーデリアを救い出し、離脱すること。
主人公のあこがれである聖騎士ウォーレンも戦死したという過酷な戦場。しかも敗色濃厚にもかかわらず、王女はなおも戦いを諦めていないといいます。
この過酷な任務を、なんとしてもやり遂げなければなりません。
【ウォーレン レベル10聖騎士 技量点2 生命点8/8 筋力点4/4 従者点7】
【装備】
片手武器
板金鎧(生命点2 防御1)
丸盾(生命点2)
【食料】2
【金貨】0
【持ち物】
【高潔な魂】【全力攻撃】【神の加護】
【未使用経験点】0
●アタック01-2 アンドロがアンドレに
国王は俺に配下をつけてくれた。
弓兵が2名。一般兵が4名。
加えて、軍馬か乗用馬かのどちらかが与えられるという。
俺は迷わず乗用馬を選択した。
軍馬は戦う従者、乗用馬は戦わない従者だ。
となれば、戦う従者である軍馬は、途中でロストするリスクが高いと考えた。
戦わない従者が被害に遭う可能性はあるが、それでも、戦う従者よりは可能性は低いと言えよう。
それに、乗用馬は5つ分の装備品を積むことができる。
ところで、俺だけ馬に乗っていて従者たちが徒歩では、結局ぜんぜん移動速度が出せないと思うのだが。
その点については、シナリオ中にフォローはないようだ。
なので全員に、馬は貸し与えられていることとした。これは設定上そうというだけで、数値上にはなんの影響もしない扱いとする。
でなければ、この時間との勝負となる任務に、国王が就かせるわけがないからだ。
そして今回は、従者の兵士たちの個性はあえて控えめにすることにした。
従者を含めたドラマを展開するのは、この任務のスピード感を削ぐことになるし、他にメインとなる登場人物も多い。
これで準備は整った。
次は、今回のd33シナリオの進め方の確認だ。
一本道モードである。
マップなどは特になく、サイコロを振りランダムにイベントが起きる。
そしてイベントの合間に、〈中間イベント〉が、ラストには〈最終イベント〉が起きることになる。
〈中間イベント〉の出方は少し変わっている。
俺は1から7回目までのランダムイベントを起こしつつ進む。その途中で、コーデリア王女に会うための条件が整ったら、〈中間イベント〉に進む。
コーデリア王女に会えていようがいまいが、8枚目は〈最終イベント〉だ。
ここまで確認できればいいだろう。
俺は入念に準備を整えると、夜明けとともに出発した。
さあ、ここからは、ランダムダンジョンのルールにのっとり、サイコロを振ってイベントを決めていく冒険が始まる。
本リプレイでは、サイコロを振ってイベントが決まったら、次にあるような表記でイベント番号と簡単な内容を示し、話を進めていくことにする。
【13 ロング・ナリク軍】
戦場である金牛の丘。
ここで最初に友軍の陣を発見できたのは幸運だった。
だが、ここにはコーデリア王女はいない。王女は広大な金牛の丘のどこかに分断され、取り残されているのだ。
負傷兵たちの中から、俺に声をかけてくる者がいた。
「君か。王女のもとへ向かおうというのは」
その負傷兵は、アンドレと名乗った。
え。アンドレなの? アンドロじゃなくて?
ゲームブック版ではアンドロだった彼は、名前がアンドレになっていた。
これではもう、アンドロ梅田ネタを出すことができない。アンドロ軍団にも所属できない。
連想するのはベルサイユのばらか、プロレスラーだ。
いや、名前のことはいいんだ。
「俺はウォーレン様の従者だった」
なんと、この戦場で戦死したと聞いている聖騎士ウォーレンのもとにいたのだという。
「ウォーレン様は王女を逃がすため、しんがりとしてウォー・ドレイクを引きつけていたんだ」
なるほど。そういうことだったのか。
それはそれとして、細かい点だが、ゲームブック版では「ウォードレイク」だったのが、「ウォー・ドレイク」と中点がついたな。
そしてアンドレは俺に懇願した。
「俺も一緒に連れていってくれ。俺にはコーデリア様に伝えなければならないことがある」
たしかに、彼を連れて行くことは、王女の説得にかなりプラスに働くに違いない。
というか、彼の言で説得できることを、俺はもう知っている。ゲームブック版をクリアしているからな。
でも、今、従者枠がいっぱいなんだよね。どうしたものか。
と思ったら、注釈があった。
彼は負傷を負って自分では歩けないレベルだ。
そして騎乗生物の従者がいれば、アンドレを連れて行くことができるという。
ただし、騎乗生物には装備品を持たせることができなくなるし、戦闘にも参加できなくなる。
もちろん連れて行くさ。もともと戦闘には参加できないし、持ち物は自分だけでも十分だからな。
それにしてもこれ、牛飼いのジェイコブも同行することになったら、どうなるんだろう。
アンドレを加え、俺たちは自陣をあとにした。
●アタック01-3 ドラッツェン兵と密偵
【21 ドラッツェン兵】
金牛の丘のふもとを出発し、ゆるやかな放牧地を登っていく。
この先には大聖堂がある。王女が無事ならば、そこにいる可能性は高いと思われた。
しかし同時に、敵も同じことを考え、捜索の手をのばしているかもしれない。
そこは、ドラッツェン軍が土地に不案内なことに期待するしかない。
戦場から国王が報告を受け、俺が出立するまでにも日数が経過している。
スマホのような便利な通信手段があるわけではない。事態の把握にも時間がかかるのだ。
まだ無事なら良いのだが……。
ここは見通しの良いなだらかな丘陵だ。
だから、巡回中のドラッツェン兵の姿を、かなり遠くから視認できた。
人数は4人だ。
反応表を振るか?
いや、その必要はない。
ここは戦場。相手はドラッツェン兵。ただちに攻撃する。
弓兵の攻撃で1人、すばやく接近した兵士の攻撃で1人が倒され、ドラッツェン兵は逃走した。
俺? 攻撃外した。言わせんな。
戦利品として、金貨15枚のアクセサリーを得るとある。
こういう時に手に入れるものって、思い出のロケットつきペンダントみたいなもので、敵兵にも待っている家族がいるんだ、みたいな気分にさせられちゃうやつなんだろうな。
だが、俺には使命がある。感傷にひたる暇はない。
この戦闘を通過すると、次のイベントは自動的に決定されるようだ。
では、サイコロを振らずに次のイベントに入ろうか。
【22 密使】
「見てたぜ、兄ちゃん、なかなかやるな」
不意に、近くの茂みから声をかけられた。そこには男が潜んでいた。
み、見てたのか。俺がみっともなく攻撃を外すところを。
謎の人物の出現に、俺たちに緊張が走る。
「いやいや、この集団の前に自分から登場したんだ。何もしないって」
たしかに、俺を含めて7人の前に自ら出てくるのだ。敵意がないか、相当の手練れかのどちらかだろう。
男は、黒いコインを取り出して、これみよがしに俺に見せつけてくる。
なにそれ。くれるの?
「だー。お前、何も聞いてないのか。お前も持ってるだろ。ロング・ナリクの密偵であることを示す符丁だよ」
荷物の中身を改める。たしかに黒いコインがあった。持ち物欄を消費しないアイテムだから見逃していたよ。
「ったく。俺が気づかなかったらどうなっていたことやら」
だいぶ呆れられてしまったようだ。
男は名前を名乗らなかった。ただ自身が、コーデリア王女の密偵であると告げた。
索敵しつつ、分断された軍の位置関係を把握し現状を分析、軍を再結集させるために動いているという。
そしたらあからさまに軍とは別の動きをしている集団を見つけた、と。それが俺たちだ。
「だから、あんたらがロング・ナリクの所属で、何らかの目的をもって姫さんを探してるんだったのはすぐにわかったよ」
俺たちの行動は、戦場ではだいぶ不自然で目立つらしい。
男は、声を低くした。
「いいか。コーデリア殿下は聖堂にかくまわれている。合言葉は『フリージアの花の様子を知りたい』だ。それを司祭に告げろ」
聖堂でこの合言葉を言うことが、中間イベントを起こす条件だという。
とにかく、聖堂に行かないことにははじまらないのだな。
俺たちは聖堂を目指す。聖堂を出せるかは、サイコロ運だ。はたして、出せるだろうか。
●アタック01-4 聖堂の王女
【23 聖堂】
って、いきなり聖堂に到着しちゃったんだけど!
都合が良すぎる。イージーモードすぎないか。
金牛の丘に建てられた聖堂はロング・ナリク式の力強い建築様式で、白く輝く存在感を放つ建造物である。
今、その聖堂は野外病院と化していた。
負傷兵が礼拝堂の広間に並べられ、治療を受けている。負傷者に敵味方は関係ないようだ。
場違いな俺たちに、司祭が声をかけてきた。
「あなたはここにどのような御用でいらしたのかな? そちらの御仁に治療を受けさせるためかな?」
一緒に連れている、負傷兵のアンドレのことを言っている。
俺は答えた。俺はフリージアの花の様子を知るためにやってきたフリージアボーイであると。
司祭ははっと息を呑んだ。
「そうですか、ではあなたがたを、『ガーデン』へ案内しましょう」
司祭の案内で、俺たちは地下への階段を下ってゆく。
【中間イベント】
地下室には、王女と、側近の兵たちがかくまわれていた。
兵たちも負傷しており、王女みずからが治療にあたっている。
俺は、名を名乗った。そして、国王の使いであると、身分を明かした。
「そう。あなた、ウォーレンというのね。あの方と同じ……」
そうだ。俺は聖騎士ウォーレンにあこがれ、騎士になった。
「でも、聖騎士ウォーレンは命を落としました。私を逃がすため、犠牲になって……」
コーデリア王女には、悲愴な覚悟のようなものが見えた。
「だから私は、戦わなければなりません。聖騎士ウォーレンに報いるためにも、ドラッツェンをこの地から追いやらなければならないのです」
「それは違います」
横やりが入る。
俺が連れてきた、アンドレだった。
「……貴方は?」
「俺はアンドレ。聖騎士ウォーレン様の従者です」
「それで、何が違うというのです?」
「簡単なことです。王女が自ら死を選ぶのでは、ウォーレン様が何のために貴女を助けたのか、わからなくなります」
「それは……」
コーデリア王女が少しの間言葉に詰まる。
国王からの言葉を伝えるのは、今だと思った。
「国王からの言葉を伝えます。『この戦いに勝ち目はない。逃げろ』と」
あえて、王女にとってショッキングな言葉を選んだ。
こういうとき、言いにくさのあまり、中途半端にまわりくどい言い方をしてしまうことがあるが、悪手だ。
はっきり伝えないと、伝わらないこともある。受け手がいいように解釈してしまうこともある。
伝える側は伝えたつもりになっていても、受け手との間で齟齬が起きがちなパターンでもある。
「そんな。陛下はこの戦いを捨て、逃げよとおっしゃるのですか?」
ああ。そう言った。
「……それは、できません」
コーデリア王女の悲壮感たっぷりの瞳の色は、変わらない。
理由を聞いてもいいだろうか。
「王族としての誇りが撤退を許さないからです。この戦場を捨ててしまっては、彼の死に報いることができません」
そうか。
ここで「ロング・ナリクの民を守るため」などと言うようなら、俺は王女を見限っていたかもしれない。
俺はこの回答で、王女が少なくとも、戦況が読めていないただの少女ではないことを知った。
少なくとも、勝ち目のない戦いであることを理解している。そのうえで矜持のために戦うと言っているのだ。
だからこそ、悲壮感を漂わせているのだろう。
全滅するとわかっている戦いの理由に「民を守るため」なんて持ちだすとしたら愚かとしか言いようがない。
全滅どころか勝つ気でいるのなら、戦況がまるでわかっていないので、やはり愚か者と呼ばれても仕方あるまい。
しかし王女はそうではなかった。だったら、説得のしようもある。
「コーデリア王女。あなたが戦況を見極められる聡明な方と知り、安心しました」
ここはサイコロによる判定で決定される。失敗するとペナルティは受けるものの、再挑戦が可能だ。
目標値は、5。技量点による判定だ。また、アンドレがいると2点を加えることができる。
俺の技量点は2。アンドレの2点加算を加えると、4。目標値5に届くためには、1以上を出せば良い。
ただ、1はファンブルで自動的失敗になるから、2以上で成功だ。
俺はサイコロを振った。出目は6。クリティカルだった。
これ以上ない成功だ。
「ウォーレン様は、王女様を生かすために犠牲となったのです。みすみす命を落とさせるわけにはまいりません」
「アンドレ、しかし……」
「ウォーレン様の言葉を伝えます。『この国の未来のために、できることをしてほしい』と。王女様、貴女が今、なさろうとしていることは、未来のためになることなのですか?」
この言葉は、コーデリア王女の胸を深くえぐったようだった。
勝てない戦に誇りのために挑むことが、未来を閉ざす行為であることを、王女は理解していた。
「……私が、間違っていました」
コーデリア王女は、自身の非を認めた。
「我が国の未来を思うのなら、私は敵の手に落ちてはならない。国のために戦ってくれる兵たちを、無駄死にさせてはならない」
結局、俺がこれ以上何かを言う必要もなく、アンドレの言葉のみで、王女は説得に応じることになったのだった。
次回、軍を撤退させるための作戦がはじまる。
【ウォーレン レベル10聖騎士 技量点2 生命点8/8 筋力点4/4 従者点7】
【装備】
片手武器
板金鎧(生命点2 防御1)
丸盾(生命点2)
【食料】2
【金貨】0
【持ち物】
0 黒いコイン
1 ロケットつきペンダント(金貨15枚)
【高潔な魂】【全力攻撃】【神の加護】
【未使用経験点】0
【従者】
弓兵 2人
兵士 4人
乗用馬 1頭(装備5つ)※アンドレが同行
■登場人物
ウォーレン 主人公。ロング・ナリクの若き騎士。従者とアンドレ頼みで活躍の場は少ない。
ロング・ナリク王 コーデリア王女の父。主人公に密命をくだす。
聖騎士ウォーレン 主人公のあこがれであり目標。戦場で命を落とす。
コーデリア ロング・ナリクの王女。15歳で初陣。戦場の指揮を執る。
ジャルベッタ ドラッツェン軍の指揮官。冷酷無比との噂。
アンドレ 聖騎士ウォーレンの従者。継戦を主張するコーデリア王女の説得に成功する。
■作品情報
作品名:『戦場の風d33』ローグライクハーフd33シナリオ
著者:丹野佑
初出:FT新聞2024年8月4日(No.4211)号
本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
2025年5月27日火曜日
クトゥルフとゲームブック第96回 FT新聞 No.4507
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
クトゥルフとゲームブック 第96回
(中山将平)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
おはようございます。
ファンタジー大好き、クトゥルフ神話も大好きなイラストレーター中山将平です。
こんなコンテンツあったの!? と思われる方も多いかと思いますが、実は「クトゥルフとゲームブック」というシリーズ記事も書いています。
長らく筆を止めていたのですが、突然ふつふつと書きたくなったので書いてみることにしました。
題して「ファンタジーの一陣営としてのクトゥルフ」。
ええ、題名の通り、ファンタジー世界における一つの勢力として描かれる場合のクトゥルフについて考えたいと思います。
「そんなことがあるのか!?」と思われるかもしれませんが、実際作りこみの度合いに大きな違いがあるものの、これってよく見かけることのように思います。
トレーディングカードゲームやデジタルカードゲーム、ミニチュアゲームやもちろんTRPGにも、この要素が描かれるのを僕自身見てきました。
(正確には、ミニチュアゲームにおいて見かけた世界観はファンタジーではなくSFが近いものでしたが。)
僕が何を見てきたのか、思い浮かべられる読者の方もきっと多いはずです。
「その連中」について、書いてみたいと思ったんです。
主に、コンテンツの世界観の中でどのような位置づけになっているのかという視点から。
この記事が、ファンタジーを楽しまれている方にとって、そしてクトゥルフを楽しまれている方にとって、有意義なものになれば幸いです。
また、クトゥルフ神話について、いわゆる「食わず嫌い」状態の方にとっても、興味深い記事にできると嬉しいと考えています。
それでは、具体的に見ていきましょう。
◆ 異次元からの勢力
今回お伝えしたい一番大きなこと。
それは単純です。
「クトゥルフ神話的な存在は、ファンタジー世界にも導入し馴染ませうる」ということそのものなのですから。
なんと言っても、クトゥルフ神話に現れる「神話生物」たちの多くは宇宙や異次元など、人の手の及ばないところから現れたことになっている存在です。
逆に言えば、ファンタジー世界の「異次元」から来た存在として描けばかなりの納得感や馴染んだ感覚を感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そうです、だからこそ前回のカエル人の記事で「次元」について書いてみた、という隠れた経緯があったりしました。
異次元から来た謎多き勢力が、邪悪な神を崇めながらファンタジー世界を侵略していく。
僕にはそれ自体が、よくあるプロット(物語の筋道)に思えます。
クトゥルフ神話に語られる「神話生物」たちはファンタジーの主流な怪物と比べると独特な見た目をしていることも多いと感じています。
この要素を導入することで、かえって物語の豊かさが引き立てられるということもきっとあるはずです。
◆ それって悪魔?
一方で、この方法に立ちふさがる大変な問題点があることも語らねばなりません。
それは、「クトゥルフの説明は分かったけど、それって悪魔で良いのではないか」という問いです。
異次元(別世界)から来た、「目的が分からない」存在。
人を襲うことがあり、少なくとも害になることがある存在。
これらの要素は実際にはどれも「悪魔」にも当てはまると思われないでしょうか。
これについて考えていた際、「クトゥルフとは、悪魔である」という言葉が、ふと頭をよぎりました。
そう、この陣営は悪魔と見なすことができ、見なさないこともまたできる存在なのだと、僕は理解しています。
供物が必要な儀式があったり、ときに封印されていたり、人の魂を堕落させることがある。
このあたりも「神話生物」と「悪魔」の両方にいえることではないでしょうか。
しかしながら、もし神話生物を悪魔と定義する場合、また問題が起こってしまうようにも思います。
ファンタジー世界の通常の悪魔との位置取りをどうするかが悩ましいという問題です。
もちろん混合させる手もあるかと思います。
しかし、おそらく多くはそうではなく独立した別勢力としての体裁を守れる形で運用されるのではないでしょうか。
(僕自身も創作スタイルはこちら側かと思っています。)
その際には様々な「特殊化」が行われることが想像に難くありません。
つまり、悪魔との「差別化」のために、神話生物たち限定の共通特徴を作るというお話です。
◆ まとめ
書きたいこと、気づいたことを書いていたら、思いのほか短い内容だったことに気づきました。
クトゥルフの神話生物はファンタジー世界にもなじむことが出来る。
ただし、悪魔との関係性がどうなのか、しっかりと考える必要がある。
今回は、そのようなお話でした。
それでは、今日はそろそろこのあたりで。
良きクトゥルフ・ライフを。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
クトゥルフとゲームブック 第96回
(中山将平)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
おはようございます。
ファンタジー大好き、クトゥルフ神話も大好きなイラストレーター中山将平です。
こんなコンテンツあったの!? と思われる方も多いかと思いますが、実は「クトゥルフとゲームブック」というシリーズ記事も書いています。
長らく筆を止めていたのですが、突然ふつふつと書きたくなったので書いてみることにしました。
題して「ファンタジーの一陣営としてのクトゥルフ」。
ええ、題名の通り、ファンタジー世界における一つの勢力として描かれる場合のクトゥルフについて考えたいと思います。
「そんなことがあるのか!?」と思われるかもしれませんが、実際作りこみの度合いに大きな違いがあるものの、これってよく見かけることのように思います。
トレーディングカードゲームやデジタルカードゲーム、ミニチュアゲームやもちろんTRPGにも、この要素が描かれるのを僕自身見てきました。
(正確には、ミニチュアゲームにおいて見かけた世界観はファンタジーではなくSFが近いものでしたが。)
僕が何を見てきたのか、思い浮かべられる読者の方もきっと多いはずです。
「その連中」について、書いてみたいと思ったんです。
主に、コンテンツの世界観の中でどのような位置づけになっているのかという視点から。
この記事が、ファンタジーを楽しまれている方にとって、そしてクトゥルフを楽しまれている方にとって、有意義なものになれば幸いです。
また、クトゥルフ神話について、いわゆる「食わず嫌い」状態の方にとっても、興味深い記事にできると嬉しいと考えています。
それでは、具体的に見ていきましょう。
◆ 異次元からの勢力
今回お伝えしたい一番大きなこと。
それは単純です。
「クトゥルフ神話的な存在は、ファンタジー世界にも導入し馴染ませうる」ということそのものなのですから。
なんと言っても、クトゥルフ神話に現れる「神話生物」たちの多くは宇宙や異次元など、人の手の及ばないところから現れたことになっている存在です。
逆に言えば、ファンタジー世界の「異次元」から来た存在として描けばかなりの納得感や馴染んだ感覚を感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そうです、だからこそ前回のカエル人の記事で「次元」について書いてみた、という隠れた経緯があったりしました。
異次元から来た謎多き勢力が、邪悪な神を崇めながらファンタジー世界を侵略していく。
僕にはそれ自体が、よくあるプロット(物語の筋道)に思えます。
クトゥルフ神話に語られる「神話生物」たちはファンタジーの主流な怪物と比べると独特な見た目をしていることも多いと感じています。
この要素を導入することで、かえって物語の豊かさが引き立てられるということもきっとあるはずです。
◆ それって悪魔?
一方で、この方法に立ちふさがる大変な問題点があることも語らねばなりません。
それは、「クトゥルフの説明は分かったけど、それって悪魔で良いのではないか」という問いです。
異次元(別世界)から来た、「目的が分からない」存在。
人を襲うことがあり、少なくとも害になることがある存在。
これらの要素は実際にはどれも「悪魔」にも当てはまると思われないでしょうか。
これについて考えていた際、「クトゥルフとは、悪魔である」という言葉が、ふと頭をよぎりました。
そう、この陣営は悪魔と見なすことができ、見なさないこともまたできる存在なのだと、僕は理解しています。
供物が必要な儀式があったり、ときに封印されていたり、人の魂を堕落させることがある。
このあたりも「神話生物」と「悪魔」の両方にいえることではないでしょうか。
しかしながら、もし神話生物を悪魔と定義する場合、また問題が起こってしまうようにも思います。
ファンタジー世界の通常の悪魔との位置取りをどうするかが悩ましいという問題です。
もちろん混合させる手もあるかと思います。
しかし、おそらく多くはそうではなく独立した別勢力としての体裁を守れる形で運用されるのではないでしょうか。
(僕自身も創作スタイルはこちら側かと思っています。)
その際には様々な「特殊化」が行われることが想像に難くありません。
つまり、悪魔との「差別化」のために、神話生物たち限定の共通特徴を作るというお話です。
◆ まとめ
書きたいこと、気づいたことを書いていたら、思いのほか短い内容だったことに気づきました。
クトゥルフの神話生物はファンタジー世界にもなじむことが出来る。
ただし、悪魔との関係性がどうなのか、しっかりと考える必要がある。
今回は、そのようなお話でした。
それでは、今日はそろそろこのあたりで。
良きクトゥルフ・ライフを。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
2025年5月26日月曜日
FT書房、サブラインへの挑戦☆ FT新聞 No.4506
おはようございます、枚方市のスターバックスから杉本です☆
ひとつひとつ、次のステージに向けて。
◆好評御礼!
おかげさまでFT書房から発売中の「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ(以降RLH)」は好評、好調です☆
チームも成長して、執筆、編集、イラスト、デザインの各メンバーが連携しながら、それぞれの専門性を高めながらやっています。
◆月に1冊の「刊行」を目指して。
チームが成長したことによって、それぞれの制作速度が少しずつ上がりつつあります。
そこで私は、かねてからFT書房が「こうなりたい」と思っていた姿に向けて、挑戦していくことを決めました。
それは……1年に12冊の作品を出すことです。
もう少し具体的に言うと、8冊の紙の書籍と、4冊の電子書籍を出すことを目指していきます☆
◆成長限界?
FT書房は「紙の本」を売ることを、基本路線としています。
ここ数年は年に4回ある大きなイベント(夏冬のコミックマーケットと、春秋のゲームマーケット)で、それぞれ2冊ずつの新刊を出しています。
年に8冊ですね☆
売り場のスペースを考えると、そのぐらいまでにとどめておくのがいいと感じています☆
それでも、かなり速い部類に属していると思います。
たとえば、1年間に一度しかイベントに参加されないあなたにとっては、「来るたびに8冊の新刊がある」サークルになるわけです。
おそらくは買い手側の財布や家の置き場も、これよりも多い場合には「速すぎる」と思われるようだと、これまでの経験やお客さんのお話から、感じています。
◆オリジナルの「電子書籍」作品を!
そこでFT書房は、メインラインである「紙の本」に対して、サブラインにあたる「電子書籍」を展開していこう、と決めました。
KindleやPDFによる販売を主とする作品を、年に4冊出すことを予定しています☆
たとえば、RLHのd33シナリオ「戦場の風」は、拠点となるロング・ナリク市がすでに「廃城の秘宝」で扱われているため、紙の本に収録することが難しい状況です。
あくまで一例ですが、これを電子書籍化することなどを検討しています。
◆まとめ。
FT書房ではこれまでにも、電子書籍を出してきました。
ありがたいことにおおむね好評なのですが、今回は新規事業として、しっかりと本腰を入れて取り組んでいこうと考えております☆
最初にやりたいのは「ローグライクハーフ」の未書籍化作品を電子書籍化することですが、ゆくゆくはゲームブックの絶版作品なども、やっていきたいと考えております。
軌道に乗ることができれば。
「気軽に遊べる」ことをコンセプトに、手に取りやすい路線を構築できればと考えております☆
それではまた!
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
ひとつひとつ、次のステージに向けて。
◆好評御礼!
おかげさまでFT書房から発売中の「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ(以降RLH)」は好評、好調です☆
チームも成長して、執筆、編集、イラスト、デザインの各メンバーが連携しながら、それぞれの専門性を高めながらやっています。
◆月に1冊の「刊行」を目指して。
チームが成長したことによって、それぞれの制作速度が少しずつ上がりつつあります。
そこで私は、かねてからFT書房が「こうなりたい」と思っていた姿に向けて、挑戦していくことを決めました。
それは……1年に12冊の作品を出すことです。
もう少し具体的に言うと、8冊の紙の書籍と、4冊の電子書籍を出すことを目指していきます☆
◆成長限界?
FT書房は「紙の本」を売ることを、基本路線としています。
ここ数年は年に4回ある大きなイベント(夏冬のコミックマーケットと、春秋のゲームマーケット)で、それぞれ2冊ずつの新刊を出しています。
年に8冊ですね☆
売り場のスペースを考えると、そのぐらいまでにとどめておくのがいいと感じています☆
それでも、かなり速い部類に属していると思います。
たとえば、1年間に一度しかイベントに参加されないあなたにとっては、「来るたびに8冊の新刊がある」サークルになるわけです。
おそらくは買い手側の財布や家の置き場も、これよりも多い場合には「速すぎる」と思われるようだと、これまでの経験やお客さんのお話から、感じています。
◆オリジナルの「電子書籍」作品を!
そこでFT書房は、メインラインである「紙の本」に対して、サブラインにあたる「電子書籍」を展開していこう、と決めました。
KindleやPDFによる販売を主とする作品を、年に4冊出すことを予定しています☆
たとえば、RLHのd33シナリオ「戦場の風」は、拠点となるロング・ナリク市がすでに「廃城の秘宝」で扱われているため、紙の本に収録することが難しい状況です。
あくまで一例ですが、これを電子書籍化することなどを検討しています。
◆まとめ。
FT書房ではこれまでにも、電子書籍を出してきました。
ありがたいことにおおむね好評なのですが、今回は新規事業として、しっかりと本腰を入れて取り組んでいこうと考えております☆
最初にやりたいのは「ローグライクハーフ」の未書籍化作品を電子書籍化することですが、ゆくゆくはゲームブックの絶版作品なども、やっていきたいと考えております。
軌道に乗ることができれば。
「気軽に遊べる」ことをコンセプトに、手に取りやすい路線を構築できればと考えております☆
それではまた!
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
2025年5月25日日曜日
ポロメイア小国家連合「ローグライクハーフ」都市サプリメント FT新聞 No.4505
おはようございます。
FT新聞編集長の水波です。
いよいよ来週の日曜日は、火呂居美智さんによるローグライクハーフ新作シナリオ『蛇禍の悪魔』が配信予定です。
本日はそれに伴いまして、舞台となるポロメイア小国家連合にまつわる「都市サプリメント」を配信いたします!
◆ポロメイア小国家連合
大陸南東部にある地域で、南西部と比べると乾燥しており、他地域から独立した独自の文化が栄えています。
ポロメイアの人々は貧しいながらも工夫と地道な努力で生き延びる、驚異的な辛抱強さを持つ民です。
この地はまた、丸々獣の原産地として知られています。
↓ 都市サプリメント:ポロメイア小国家連合
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_SUP_Polomeia.txt
↓「アランツァ:ラドリド大陸地図」by 中山将平
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/MAPofARANCIA.png
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
FT新聞編集長の水波です。
いよいよ来週の日曜日は、火呂居美智さんによるローグライクハーフ新作シナリオ『蛇禍の悪魔』が配信予定です。
本日はそれに伴いまして、舞台となるポロメイア小国家連合にまつわる「都市サプリメント」を配信いたします!
◆ポロメイア小国家連合
大陸南東部にある地域で、南西部と比べると乾燥しており、他地域から独立した独自の文化が栄えています。
ポロメイアの人々は貧しいながらも工夫と地道な努力で生き延びる、驚異的な辛抱強さを持つ民です。
この地はまた、丸々獣の原産地として知られています。
↓ 都市サプリメント:ポロメイア小国家連合
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_SUP_Polomeia.txt
↓「アランツァ:ラドリド大陸地図」by 中山将平
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/MAPofARANCIA.png
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
2025年5月24日土曜日
FT新聞1ウィーク! 第641号 FT新聞 No.4504
From:水波流
『トム・ソーヤーの冒険』(柴田元幸訳)、『トム・ソーヤの探偵・探検』(大久保康雄訳)を読了。
『探偵・探検』は翻訳が少なく、ようやく1955年初版で1994年限定復刊したものを入手して読む事ができました。
が……なんというか……あまり翻訳されてないのもわかるな……と。
少年時代『スクウェアのトムソーヤ』をクリアし、学級劇で『愉快な塀塗り』をやったほどのトムソーヤ好きにとっては残念な結果でした。
ちなみにグレッグ・マシューズというオーストラリアの作家が書いた続編『それからのハックルベリー・フィン』は、少し大人になったハックがジムと2人で西部開拓時代のゴールドラッシュに沸く北米大陸を横断するハードボイルドな物語で、これは大変良い出来です。
from:葉山海月
舞台は夜。
家人が「みんな寝ているからたわし捨てて」とのこと。
なぜに皆が寝静まったころを狙って、わざわざ捨てるんだ?
家人曰く
「たわしの『毛』が全部『横になってて』使い物にならないから」
from:中山将平
僕ら5月25日(日)、関西で2つのイベントにサークル参加します!
・「ボドゲフリマ15in三宮」
ブース配置【かまへん02】
開催地:KIITO(兵庫県三宮)
・「関西コミティア73」
ブース配置【C-10】
開催地:インテックス大阪2号館
ぜひ遊びにお越しいただけましたら。
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■5/18(日)~5/23(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2025年5月18日(日) 杉本=ヨハネ FT新聞 No.4498
Re:アランツァワールドガイド Vol.6 ポロメイア小国家連合
・今日配信するのは「アランツァワールドガイド」。
来月のd66シナリオの舞台となる「ポロメイア小国家連合」の再配信です。
大陸南東部にある地域で、南西部と比べると乾燥しており、他地域から独立した独自の文化が栄えています。
2009年にFT書房から刊行されたゲームブック『殉教者の試練』の舞台でもあります。
ぜひ! 本記事での予習を!
2025年5月19日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4499
新連載がはじまるよ!
・2025年の4月なかば、ある方からメールを受け取りました。
「スーパーアドベンチャーゲームについて、解説本を書いたんだ。FT書房から出してくれないか?」
あまりの面白さに、仕事の手を止めて一気読み!
百聞は一見に如かず!
この感激を、皆様にお届け!
その名も、『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』
明日からの記事をお楽しみに!
2024年5月20日(火) 田林洋一 FT新聞 No.4500
『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.1
・早速始まりました新連載!
田林洋一氏による、『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』
1980年代半ばから1992年の間に東京創元社から刊行された「スーパーアドベンチャーゲーム(SAGB)」の一連のゲームブックの解説記事です!
まず手始めに、
1.ナムコのコンピューターゲームの原作 -日本人作家の創世
主な言及作品:『ゼビウス』(1985)『ドラゴンバスター』(1987)
を取り上げます!
大ヒットとなった、海外産ゲームブック「ファイティング・ファンタジー・シリーズ」などが、まったくヒントがなく「死んで覚えろ!」という横スクロールシューティング並みの単方向型(一方通行型)なのに対して、日本ではヒントをちりばめながら読者に生還ルートをうながす双方向移動型のゲームブックが産声を上げた。
そして、ストーリー展開への味付け。などなど、日本産のゲームブックの進化をたどります。
2025年5月21日(水) ぜろ FT新聞 No.4501
第1回【戦場の風】ローグライクハーフリプレイ
・テンポのよい語り口で勝負する、ぜろ氏のリプレイ記事、第439回をお届けしました。
今回挑戦する作品は、丹野佑 著「ローグライクハーフ」の『戦場の風』です。
俺は唐突に、ロング・ナリクの国王から呼び出しを受けた。
それも謁見の間に、ではない。国王の執務室へ、だ。
これはつまり、秘密裏に呼びだされたということ。
「頼む。我が娘を助けてくれ」
ドラッツェンの侵攻に対抗するため、軍を率いて戦場に赴いているはずのコーデリア王女。
彼女が、一人戦場に取り残されたというのだ。
あなたは、戦場へ走り、彼女に戦いを止めさせ、そして連れ帰なければならない!
前回まで紹介してきた、ゲームブック版の『戦場の風』のリメイク作品。かつ、いまだに書籍化されていない。言い換えれば当時FT新聞に登録していたか、期間限定のタイミングで見られた方しかプレイできない作品をレビューしようと思った理由。
それは、ゲームブック版とローグライクハーフ版をプレイし比べてみたい、という欲求に抗えなかったため。
さくっとキャラメイキング。
冒険の始まりです!
2025年5月22日(木) 齊藤飛鳥 FT新聞 No.4502
齊藤飛鳥・小説リプレイvol.33『名付けられるべきではないもの』 その1
・児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによるTRPG小説リプレイをお届けしました。
今回挑戦する作品は『名付けられるべきではないもの』著 水波流
……似我蜂(ジガバチ)は狩人蜂と呼ばれるものの一種で、夏の間、地中に掘った巣穴に毒針で麻痺させた獲物を溜め込む。そうして卵を植え付けられた獲物は、孵化した幼生の餌として生きたまま喰らわれる。やがて幼生は成長し蜂の姿になると、巣穴から外の世界に這い出す……。
この恐怖の生物は、夏になると集落を襲っては部族の者を獲物として攫っていく。
カリウキ氏族の集落を守るため、ヴィドとクワニャウマのコンビが再び立ち上がる!
前回の『常闇の伴侶』と舞台と一部登場人物を引き継ぐ冒険の始まりです!
2025年5月23日(金) 丹野佑 FT新聞 No.4503
Re:ウォークラフト@ファンタジー映画村
・本日は、過去の人気記事を再配信するReシリーズ。
丹野佑氏による『20代からのゲームブック』番外編:ファンタジー映画村です。
今回触れる映画は、『ウォークラフト』
本作は同名のストラテジーゲームを原作とした作品で、オーク族とヒューマン同盟の戦いを長いスパンで描いた戦記物です。
主人公は「人間」ではない!
オークの魅力をたっぷりと詰め込んだ本作!
興味がございましたら是非!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
↓↓
(ジャラル アフサラールさん)
異世界ですが「多元宇宙」最近で言うとマルチバースというのがありますね。現在放送中のアニメだと『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』は最初のファーストガンダムの「ジオンが勝利した世界」を舞台にしています。TRPGですとヨーロッパから来たドラキュラ伯爵と幕末の日本から亡命してきた新撰組が魔都・上海を舞台に戦う『上海退魔行』やパラレルワールドの欧州を舞台にした『キャッスル・ファルケンシュタイン』とかがありますね。
(お返事:中山将平)
いつもご感想をいただき、ありがとうございます。
イフ世界を舞台にしたファンタジーというのもあり得るものですね。
ホラー作品でも楽しそうと感じていました。
(ジャラル アフサラールさん)
ゲームブックの解説本は安田先生の作品除くと 外城 わたるさんの『絶対に読みたいゲームブック40選』ぐらいしか無かったので新しい刺激です。次回も楽しみにしております。頑張ってください。
(お返事:田林洋一)
『絶対に読みたいゲームブック40選』は不勉強ゆえ、その存在すら知りませんでした。私のエッセイでは私なりのオリジナリティを大事にしたいと思います。応援、ありがとうございます!
(シュウ友生さん)
スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.1を拝読しました。素晴らしい内容でした。
「ソーサリー」でゲームブックを知り、「ドルアーガの塔」で心を激しく揺さぶられた者としては、SAGBこそ日本のゲームブックの代表の様な印象を持っていました。
当時FFシリーズにはこの記事にもある様に理不尽な難しさやバタ臭さに若干苦手意識があり、何故SABGの方に惹かれていたのかすっきりと納得できる内容でした。勿論今はFFの雰囲気も大好きですが。
是非続きが読みたいですし、書籍化も熱望します。
(お返事:田林洋一)
私もSAGBは日本屈指のレーベルだと感じておりましたが、FFシリーズも魅力的で、甲乙つけがたいですね。こんな名作が35年も前にあったとは!という思いです。書籍化…私も熱望します(笑)。
(緒方直人さん)
『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.1、面白かったです。欧米産と日本産の違いが深く研究されてて読みごたえがありました。双方向フラグ管理の緻密さに関しては、ここは日本のお家芸と胸を張っていいものなんでしょうかね。ゼビウスは序盤から自由度が高く、今でいうオープンワールドっぽさもあってワクワクしながら遊べた印象があります。瞬間一発勝負も好きでした。負けても戻されるだけで勝つまで殴りに行けばいいだけでしたし。今後の掲載作品についても引き続き楽しみにしております。頑張ってください。
(お返事:田林洋一)
FFシリーズを含めた海外のゲームブックには双方向であれ、単方向であれ、フラグ管理をした作品はあまり見受けられないような気がします。瞬間一発勝負は、不精な私には爽快感がありました! 応援、ありがとうございます!
(蒙太辺土さん)
田林先生こんにちは!
私はゲームブック直撃世代の者ですが、今回の大型連載はまさに俺得な企画で情緒が大変でございます!
記念すべき第一回のテーマが「双方向移動」。
確かにSAGBシリーズと言えば双方向移動の印象が強いです。
双方向システムのゲームブックを初めてプレイした時に受けた"どこにでも行ける"感覚は、当時とても新鮮でした。今で言うところの"オープンワールド"に重なるようなイメージ。
先生のご指摘のように双方向型の場合、(ほぼ)すべてのイベントを見ることができる仕様なので、当時小学生の私は"ページの隅々までしゃぶり尽くせるお得な"作品という認識がぼんやりとあったように思います。
今回の連載の白眉は、先生ご自身のビターな思い出が反映されていることをうかがわせる「ヒントなしの選択によってクリアの是非が変わる」というあたり。
ゲームブック黎明期の"ワイルド"な歯ごたえが思い起こされ思わずニヤリでした。
ゲームブックに限らずですが、昔の洋ゲー=理不尽な即死みたいなイメージがあります。しかしそれが独特の緊張感を生んでいたんだな〜と言うのも、今回の解説を読んで得心した次第です。
昨今では"死にゲー"なんて言い回しもありますが、昔のゲームは基本的に"殺しに来る"ものばかりでした。
おかげで知能と根性とゲームセンスの乏しい私がクリアできたものはほとんどありません(笑)
それでもどういうわけか楽しかったんだよなあ。
先生の精緻な解説、非常に楽しんで読ませていただきました。次回も楽しみにしております!
(お返事:田林洋一)
オープンワールドを作品全体に押し広げたのは、日本人ゲームブック作家の功績と言っていいでしょうね。はい、確かにFFシリーズなどで「ビターな思い出」を味わいましたが(笑)それも海外ゲームブックの良いところなのかもしれません。トライ&エラーで何度も覚える作業は、ファミコンのアクションゲームや海外産ゲームブックではお馴染みでした。次回もご期待ください!
(紫隠ねこさん)
『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』第1回、楽しませて頂きました。
ジャクソンとリビングストンの作品は、おそらくTRPGの1人用アドベンチャーの延長戦上にあって、プレイヤーとの「対決」を重視している印象があります。数多くのデッドエンドを突きつけ、プレイヤーに繰り返し挑戦させることで、一冊の作品を長く遊ばせるという手法をとったのかも知れません。シビアな雰囲気は抜群ですが、ジャクソン&リビングストン作品では、難易度の高さに投げ出しそうになった作品が幾つかあり、個人的にはプレイヤーを選ぶ感じもします(『ソーサリー』は難易度が若干緩和され、他のイジワルな構成のジャクソン作品と比較すると、エンタメとして凄く楽しい作品になったと思います。あれが「彼の最高傑作である」という話も頷けます)。
前置きが長くなりましたが、SAGBの双方向移動型の作品は、入手できなかったクリアフラグも頑張れば見つかるようになっている。正解となるクリアルートを探す要素は、遊んでいるプレイヤー自身も「探索に納得ができる」という点で、ベルトコンベア式の構成よりも、双方向移動型の方が適しているのではないかと私は思っています。
ゲームシステムも、能力値の決め方はファイティング・ファンタジー準拠だったりするのですが、それ以外は作者ごとでゲームシステムが異なり個性がある。作品ごとシステムの違いを表現しているのも、このシリーズの強みですね。
フラグを探す道中におけるストーリーの展開も、国産ゲームブックならではの進化で、アイテムと情報を集めるだけではなく、物語の続きを意識させることで、ゲームプレイの良いアクセントになっていると感じています。SAGBで独自の背景が定まった固定キャラクターが主人公になっているケースが多いのも、物語を魅せるのに一役買っているのかも知れません。
SAGBシリーズを好きな古参のゲームブックファンが多いことは私も知っています。このシリーズの物語とギミックで勝負していくスタイルは、私はまだ正しく評価されていないようにも感じています。第2回ではどのような作品が紹介されるのか、それが楽しみです。長くなってしまいましたが、この先の記事も楽しみにしています!
(お返事:田林洋一)
SAGBが「探索に納得できる」という点は正鵠を得ていますね。それが日本でゲームブックがはやった要因の一つかもしれません。今後の連載でも言及しますが、どうしても海外物は「理不尽な死」が多いと感じておりまして、紫隠ねこさんがご推察されているように「対決」をクローズアップさせているからかもしれません。貴重なご指摘、どうもありがとうございます!
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
■FT書房作品の通販はこちらから☆
FT書房 - BOOTH
https://ftbooks.booth.pm
■FT書房YouTubeチャンネルはこちら!
https://www.youtube.com/channel/UCrZg-eTeypwqfjwQ4RNIvJQ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■FT新聞が届かない日があった場合
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
FT新聞は休刊日でも「本日は休刊日です」というメールが必ず届きます。
未着の場合は、まず迷惑メールフォルダを一度、ご確認下さい。
もし迷惑メールにも全く届いていない場合は、それは残念ながらお使いのメールとの相性問題などで未着になっている可能性があります。
このところ各社のメールセキュリティ強化のためか未着のケースが複雑化しております。
未着の場合は、下記ページをご参考頂き、個々のアドレスの受信許可設定をお試しください。
https://ftnews-archive.blogspot.com/p/filtering.html
*10回未着が続いた場合、そのメールアドレスはシステムより自動的に登録解除されます。再度登録する事は可能ですので、未着が続いた場合は、お手数ですがご自身で再登録下さい。
また【バックナンバー保管庫】は公開期間が2週間ありますので、その間にご自身でテキストを保存されたり、自分で自分にコピーしてメールを送られたりする等、ご活用お願いいたします。
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
『トム・ソーヤーの冒険』(柴田元幸訳)、『トム・ソーヤの探偵・探検』(大久保康雄訳)を読了。
『探偵・探検』は翻訳が少なく、ようやく1955年初版で1994年限定復刊したものを入手して読む事ができました。
が……なんというか……あまり翻訳されてないのもわかるな……と。
少年時代『スクウェアのトムソーヤ』をクリアし、学級劇で『愉快な塀塗り』をやったほどのトムソーヤ好きにとっては残念な結果でした。
ちなみにグレッグ・マシューズというオーストラリアの作家が書いた続編『それからのハックルベリー・フィン』は、少し大人になったハックがジムと2人で西部開拓時代のゴールドラッシュに沸く北米大陸を横断するハードボイルドな物語で、これは大変良い出来です。
from:葉山海月
舞台は夜。
家人が「みんな寝ているからたわし捨てて」とのこと。
なぜに皆が寝静まったころを狙って、わざわざ捨てるんだ?
家人曰く
「たわしの『毛』が全部『横になってて』使い物にならないから」
from:中山将平
僕ら5月25日(日)、関西で2つのイベントにサークル参加します!
・「ボドゲフリマ15in三宮」
ブース配置【かまへん02】
開催地:KIITO(兵庫県三宮)
・「関西コミティア73」
ブース配置【C-10】
開催地:インテックス大阪2号館
ぜひ遊びにお越しいただけましたら。
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■5/18(日)~5/23(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2025年5月18日(日) 杉本=ヨハネ FT新聞 No.4498
Re:アランツァワールドガイド Vol.6 ポロメイア小国家連合
・今日配信するのは「アランツァワールドガイド」。
来月のd66シナリオの舞台となる「ポロメイア小国家連合」の再配信です。
大陸南東部にある地域で、南西部と比べると乾燥しており、他地域から独立した独自の文化が栄えています。
2009年にFT書房から刊行されたゲームブック『殉教者の試練』の舞台でもあります。
ぜひ! 本記事での予習を!
2025年5月19日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4499
新連載がはじまるよ!
・2025年の4月なかば、ある方からメールを受け取りました。
「スーパーアドベンチャーゲームについて、解説本を書いたんだ。FT書房から出してくれないか?」
あまりの面白さに、仕事の手を止めて一気読み!
百聞は一見に如かず!
この感激を、皆様にお届け!
その名も、『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』
明日からの記事をお楽しみに!
2024年5月20日(火) 田林洋一 FT新聞 No.4500
『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.1
・早速始まりました新連載!
田林洋一氏による、『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』
1980年代半ばから1992年の間に東京創元社から刊行された「スーパーアドベンチャーゲーム(SAGB)」の一連のゲームブックの解説記事です!
まず手始めに、
1.ナムコのコンピューターゲームの原作 -日本人作家の創世
主な言及作品:『ゼビウス』(1985)『ドラゴンバスター』(1987)
を取り上げます!
大ヒットとなった、海外産ゲームブック「ファイティング・ファンタジー・シリーズ」などが、まったくヒントがなく「死んで覚えろ!」という横スクロールシューティング並みの単方向型(一方通行型)なのに対して、日本ではヒントをちりばめながら読者に生還ルートをうながす双方向移動型のゲームブックが産声を上げた。
そして、ストーリー展開への味付け。などなど、日本産のゲームブックの進化をたどります。
2025年5月21日(水) ぜろ FT新聞 No.4501
第1回【戦場の風】ローグライクハーフリプレイ
・テンポのよい語り口で勝負する、ぜろ氏のリプレイ記事、第439回をお届けしました。
今回挑戦する作品は、丹野佑 著「ローグライクハーフ」の『戦場の風』です。
俺は唐突に、ロング・ナリクの国王から呼び出しを受けた。
それも謁見の間に、ではない。国王の執務室へ、だ。
これはつまり、秘密裏に呼びだされたということ。
「頼む。我が娘を助けてくれ」
ドラッツェンの侵攻に対抗するため、軍を率いて戦場に赴いているはずのコーデリア王女。
彼女が、一人戦場に取り残されたというのだ。
あなたは、戦場へ走り、彼女に戦いを止めさせ、そして連れ帰なければならない!
前回まで紹介してきた、ゲームブック版の『戦場の風』のリメイク作品。かつ、いまだに書籍化されていない。言い換えれば当時FT新聞に登録していたか、期間限定のタイミングで見られた方しかプレイできない作品をレビューしようと思った理由。
それは、ゲームブック版とローグライクハーフ版をプレイし比べてみたい、という欲求に抗えなかったため。
さくっとキャラメイキング。
冒険の始まりです!
2025年5月22日(木) 齊藤飛鳥 FT新聞 No.4502
齊藤飛鳥・小説リプレイvol.33『名付けられるべきではないもの』 その1
・児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによるTRPG小説リプレイをお届けしました。
今回挑戦する作品は『名付けられるべきではないもの』著 水波流
……似我蜂(ジガバチ)は狩人蜂と呼ばれるものの一種で、夏の間、地中に掘った巣穴に毒針で麻痺させた獲物を溜め込む。そうして卵を植え付けられた獲物は、孵化した幼生の餌として生きたまま喰らわれる。やがて幼生は成長し蜂の姿になると、巣穴から外の世界に這い出す……。
この恐怖の生物は、夏になると集落を襲っては部族の者を獲物として攫っていく。
カリウキ氏族の集落を守るため、ヴィドとクワニャウマのコンビが再び立ち上がる!
前回の『常闇の伴侶』と舞台と一部登場人物を引き継ぐ冒険の始まりです!
2025年5月23日(金) 丹野佑 FT新聞 No.4503
Re:ウォークラフト@ファンタジー映画村
・本日は、過去の人気記事を再配信するReシリーズ。
丹野佑氏による『20代からのゲームブック』番外編:ファンタジー映画村です。
今回触れる映画は、『ウォークラフト』
本作は同名のストラテジーゲームを原作とした作品で、オーク族とヒューマン同盟の戦いを長いスパンで描いた戦記物です。
主人公は「人間」ではない!
オークの魅力をたっぷりと詰め込んだ本作!
興味がございましたら是非!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
↓↓
(ジャラル アフサラールさん)
異世界ですが「多元宇宙」最近で言うとマルチバースというのがありますね。現在放送中のアニメだと『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』は最初のファーストガンダムの「ジオンが勝利した世界」を舞台にしています。TRPGですとヨーロッパから来たドラキュラ伯爵と幕末の日本から亡命してきた新撰組が魔都・上海を舞台に戦う『上海退魔行』やパラレルワールドの欧州を舞台にした『キャッスル・ファルケンシュタイン』とかがありますね。
(お返事:中山将平)
いつもご感想をいただき、ありがとうございます。
イフ世界を舞台にしたファンタジーというのもあり得るものですね。
ホラー作品でも楽しそうと感じていました。
(ジャラル アフサラールさん)
ゲームブックの解説本は安田先生の作品除くと 外城 わたるさんの『絶対に読みたいゲームブック40選』ぐらいしか無かったので新しい刺激です。次回も楽しみにしております。頑張ってください。
(お返事:田林洋一)
『絶対に読みたいゲームブック40選』は不勉強ゆえ、その存在すら知りませんでした。私のエッセイでは私なりのオリジナリティを大事にしたいと思います。応援、ありがとうございます!
(シュウ友生さん)
スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.1を拝読しました。素晴らしい内容でした。
「ソーサリー」でゲームブックを知り、「ドルアーガの塔」で心を激しく揺さぶられた者としては、SAGBこそ日本のゲームブックの代表の様な印象を持っていました。
当時FFシリーズにはこの記事にもある様に理不尽な難しさやバタ臭さに若干苦手意識があり、何故SABGの方に惹かれていたのかすっきりと納得できる内容でした。勿論今はFFの雰囲気も大好きですが。
是非続きが読みたいですし、書籍化も熱望します。
(お返事:田林洋一)
私もSAGBは日本屈指のレーベルだと感じておりましたが、FFシリーズも魅力的で、甲乙つけがたいですね。こんな名作が35年も前にあったとは!という思いです。書籍化…私も熱望します(笑)。
(緒方直人さん)
『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.1、面白かったです。欧米産と日本産の違いが深く研究されてて読みごたえがありました。双方向フラグ管理の緻密さに関しては、ここは日本のお家芸と胸を張っていいものなんでしょうかね。ゼビウスは序盤から自由度が高く、今でいうオープンワールドっぽさもあってワクワクしながら遊べた印象があります。瞬間一発勝負も好きでした。負けても戻されるだけで勝つまで殴りに行けばいいだけでしたし。今後の掲載作品についても引き続き楽しみにしております。頑張ってください。
(お返事:田林洋一)
FFシリーズを含めた海外のゲームブックには双方向であれ、単方向であれ、フラグ管理をした作品はあまり見受けられないような気がします。瞬間一発勝負は、不精な私には爽快感がありました! 応援、ありがとうございます!
(蒙太辺土さん)
田林先生こんにちは!
私はゲームブック直撃世代の者ですが、今回の大型連載はまさに俺得な企画で情緒が大変でございます!
記念すべき第一回のテーマが「双方向移動」。
確かにSAGBシリーズと言えば双方向移動の印象が強いです。
双方向システムのゲームブックを初めてプレイした時に受けた"どこにでも行ける"感覚は、当時とても新鮮でした。今で言うところの"オープンワールド"に重なるようなイメージ。
先生のご指摘のように双方向型の場合、(ほぼ)すべてのイベントを見ることができる仕様なので、当時小学生の私は"ページの隅々までしゃぶり尽くせるお得な"作品という認識がぼんやりとあったように思います。
今回の連載の白眉は、先生ご自身のビターな思い出が反映されていることをうかがわせる「ヒントなしの選択によってクリアの是非が変わる」というあたり。
ゲームブック黎明期の"ワイルド"な歯ごたえが思い起こされ思わずニヤリでした。
ゲームブックに限らずですが、昔の洋ゲー=理不尽な即死みたいなイメージがあります。しかしそれが独特の緊張感を生んでいたんだな〜と言うのも、今回の解説を読んで得心した次第です。
昨今では"死にゲー"なんて言い回しもありますが、昔のゲームは基本的に"殺しに来る"ものばかりでした。
おかげで知能と根性とゲームセンスの乏しい私がクリアできたものはほとんどありません(笑)
それでもどういうわけか楽しかったんだよなあ。
先生の精緻な解説、非常に楽しんで読ませていただきました。次回も楽しみにしております!
(お返事:田林洋一)
オープンワールドを作品全体に押し広げたのは、日本人ゲームブック作家の功績と言っていいでしょうね。はい、確かにFFシリーズなどで「ビターな思い出」を味わいましたが(笑)それも海外ゲームブックの良いところなのかもしれません。トライ&エラーで何度も覚える作業は、ファミコンのアクションゲームや海外産ゲームブックではお馴染みでした。次回もご期待ください!
(紫隠ねこさん)
『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』第1回、楽しませて頂きました。
ジャクソンとリビングストンの作品は、おそらくTRPGの1人用アドベンチャーの延長戦上にあって、プレイヤーとの「対決」を重視している印象があります。数多くのデッドエンドを突きつけ、プレイヤーに繰り返し挑戦させることで、一冊の作品を長く遊ばせるという手法をとったのかも知れません。シビアな雰囲気は抜群ですが、ジャクソン&リビングストン作品では、難易度の高さに投げ出しそうになった作品が幾つかあり、個人的にはプレイヤーを選ぶ感じもします(『ソーサリー』は難易度が若干緩和され、他のイジワルな構成のジャクソン作品と比較すると、エンタメとして凄く楽しい作品になったと思います。あれが「彼の最高傑作である」という話も頷けます)。
前置きが長くなりましたが、SAGBの双方向移動型の作品は、入手できなかったクリアフラグも頑張れば見つかるようになっている。正解となるクリアルートを探す要素は、遊んでいるプレイヤー自身も「探索に納得ができる」という点で、ベルトコンベア式の構成よりも、双方向移動型の方が適しているのではないかと私は思っています。
ゲームシステムも、能力値の決め方はファイティング・ファンタジー準拠だったりするのですが、それ以外は作者ごとでゲームシステムが異なり個性がある。作品ごとシステムの違いを表現しているのも、このシリーズの強みですね。
フラグを探す道中におけるストーリーの展開も、国産ゲームブックならではの進化で、アイテムと情報を集めるだけではなく、物語の続きを意識させることで、ゲームプレイの良いアクセントになっていると感じています。SAGBで独自の背景が定まった固定キャラクターが主人公になっているケースが多いのも、物語を魅せるのに一役買っているのかも知れません。
SAGBシリーズを好きな古参のゲームブックファンが多いことは私も知っています。このシリーズの物語とギミックで勝負していくスタイルは、私はまだ正しく評価されていないようにも感じています。第2回ではどのような作品が紹介されるのか、それが楽しみです。長くなってしまいましたが、この先の記事も楽しみにしています!
(お返事:田林洋一)
SAGBが「探索に納得できる」という点は正鵠を得ていますね。それが日本でゲームブックがはやった要因の一つかもしれません。今後の連載でも言及しますが、どうしても海外物は「理不尽な死」が多いと感じておりまして、紫隠ねこさんがご推察されているように「対決」をクローズアップさせているからかもしれません。貴重なご指摘、どうもありがとうございます!
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
■FT書房作品の通販はこちらから☆
FT書房 - BOOTH
https://ftbooks.booth.pm
■FT書房YouTubeチャンネルはこちら!
https://www.youtube.com/channel/UCrZg-eTeypwqfjwQ4RNIvJQ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■FT新聞が届かない日があった場合
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
FT新聞は休刊日でも「本日は休刊日です」というメールが必ず届きます。
未着の場合は、まず迷惑メールフォルダを一度、ご確認下さい。
もし迷惑メールにも全く届いていない場合は、それは残念ながらお使いのメールとの相性問題などで未着になっている可能性があります。
このところ各社のメールセキュリティ強化のためか未着のケースが複雑化しております。
未着の場合は、下記ページをご参考頂き、個々のアドレスの受信許可設定をお試しください。
https://ftnews-archive.blogspot.com/p/filtering.html
*10回未着が続いた場合、そのメールアドレスはシステムより自動的に登録解除されます。再度登録する事は可能ですので、未着が続いた場合は、お手数ですがご自身で再登録下さい。
また【バックナンバー保管庫】は公開期間が2週間ありますので、その間にご自身でテキストを保存されたり、自分で自分にコピーしてメールを送られたりする等、ご活用お願いいたします。
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
2025年5月23日金曜日
Re:ウォークラフト@ファンタジー映画村 FT新聞 No.4503
FT新聞編集長の水波流です。
本日は、過去の人気記事を再配信するReシリーズ。
丹野佑氏による『20代からのゲームブック』番外編:ファンタジー映画村です。
(2014年2月5日 FT新聞No.391〜2016年11月23日 FT新聞No.1412)
☆★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★☆
(編註:この記事は、過去の人気記事を再配信するReシリーズです。文中のコメントは全て当時のものとなっております)
おはようございます。丹野です。
7月になりました。今年の七夕は雨が降るのか、ドキドキしながら迎えております。
これからは夏本番ですので、とにかく水分補給と長いこと日なたにいないように気を付けたほうがよさそうです。
夏に室内で過ごす時には、エアコンをかける以外に涼しく過ごすコツがあります。
カーテンを閉めることです。
当たり前ですね。
■オークについて
あなたは、オークを知っていますか?
樫の木ではありません。ファンタジー作品に登場するオークといえば、緑色の肌をした、大柄で野蛮な種族で、邪悪な営みを好む……という、あのオークです。
しかし、この「オーク」という存在、考えてみればはっきりしたイメージの中心物があるわけではありません。
「指輪物語」でゴブリンともオークとも呼ばれる存在が登場し、そのイメージが他作品でも繰り返し使われているようなのですが、意外とその描かれ方は様々です。
人間よりも力がある存在であったり、作中では比較的弱いモンスターとして描かれていたり。
日本の創作物では一種独特の扱いを受けている場合も多いようですが、朝ですのでこの話はやめておきましょう。
■オークが主役
さて、なぜいきなりオークの話をしたのかというと、オークが主役のファンタジー映画「ウォークラフト」が公開されているからです。
本作は同名のストラテジーゲームを原作とした作品で、オーク族とヒューマン同盟の戦いを長いスパンで描いた戦記物です。すでに続編の製作が決定しているようです。
世の中にオークを主役としたゲームがあるのにも少し驚きますが、それが大ヒット映画になってしまうのだから恐ろしいですね。
ウォークラフトの中で描かれるオークは、粗野ながらも誇りを重視する偉大な種族です。
それぞれの部族のしきたりを守り、必要とあらば外敵に向かって団結する。その勢いは、ある方法で異世界へ移動して戦争を仕掛けるほどです。勢いありすぎですね。
映画の中では、体重200キロはありそうなオークたちがぶつかったり武器を振り回したり、実在感のあるアクションで人間をバッタバッタと切り倒してくれます。これは正直言って痛快で、異種族とはいえ応援したくなるほどかっこいい。
さらに、さまざまな経緯で、手を取り合えたかもしれないオークとヒューマンたちが大きな戦争へ発展していく、という話ですから、オークが単体で暴れるのではなく、何百人という単位での戦争が見れます。
「ロード・オブ・ザ・リング」などでも、AIを使ってCGキャラクターを何百人も動かした戦争シーンがありますが、それをさらに発展させた大迫力の戦闘は圧巻です。大スクリーンで見る価値あり。
また、今時これだけてらいのないファンタジー世界を堂々と見せてくれるのも好感が持てます。
グリフィンに乗った騎士なんてものが堂々とスクリーンに出てくるとは思ってなかったので得した気分ですね。
なお、ストーリーは原作の展開を大筋でなぞっているらしく、続編ではさらに大規模な戦闘が描かれることが予想されます。
夏は外が暑いので、涼しい映画館で過ごしてみるのも乙なものではないでしょうか。
それではまた。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
本日は、過去の人気記事を再配信するReシリーズ。
丹野佑氏による『20代からのゲームブック』番外編:ファンタジー映画村です。
(2014年2月5日 FT新聞No.391〜2016年11月23日 FT新聞No.1412)
☆★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★☆
(編註:この記事は、過去の人気記事を再配信するReシリーズです。文中のコメントは全て当時のものとなっております)
おはようございます。丹野です。
7月になりました。今年の七夕は雨が降るのか、ドキドキしながら迎えております。
これからは夏本番ですので、とにかく水分補給と長いこと日なたにいないように気を付けたほうがよさそうです。
夏に室内で過ごす時には、エアコンをかける以外に涼しく過ごすコツがあります。
カーテンを閉めることです。
当たり前ですね。
■オークについて
あなたは、オークを知っていますか?
樫の木ではありません。ファンタジー作品に登場するオークといえば、緑色の肌をした、大柄で野蛮な種族で、邪悪な営みを好む……という、あのオークです。
しかし、この「オーク」という存在、考えてみればはっきりしたイメージの中心物があるわけではありません。
「指輪物語」でゴブリンともオークとも呼ばれる存在が登場し、そのイメージが他作品でも繰り返し使われているようなのですが、意外とその描かれ方は様々です。
人間よりも力がある存在であったり、作中では比較的弱いモンスターとして描かれていたり。
日本の創作物では一種独特の扱いを受けている場合も多いようですが、朝ですのでこの話はやめておきましょう。
■オークが主役
さて、なぜいきなりオークの話をしたのかというと、オークが主役のファンタジー映画「ウォークラフト」が公開されているからです。
本作は同名のストラテジーゲームを原作とした作品で、オーク族とヒューマン同盟の戦いを長いスパンで描いた戦記物です。すでに続編の製作が決定しているようです。
世の中にオークを主役としたゲームがあるのにも少し驚きますが、それが大ヒット映画になってしまうのだから恐ろしいですね。
ウォークラフトの中で描かれるオークは、粗野ながらも誇りを重視する偉大な種族です。
それぞれの部族のしきたりを守り、必要とあらば外敵に向かって団結する。その勢いは、ある方法で異世界へ移動して戦争を仕掛けるほどです。勢いありすぎですね。
映画の中では、体重200キロはありそうなオークたちがぶつかったり武器を振り回したり、実在感のあるアクションで人間をバッタバッタと切り倒してくれます。これは正直言って痛快で、異種族とはいえ応援したくなるほどかっこいい。
さらに、さまざまな経緯で、手を取り合えたかもしれないオークとヒューマンたちが大きな戦争へ発展していく、という話ですから、オークが単体で暴れるのではなく、何百人という単位での戦争が見れます。
「ロード・オブ・ザ・リング」などでも、AIを使ってCGキャラクターを何百人も動かした戦争シーンがありますが、それをさらに発展させた大迫力の戦闘は圧巻です。大スクリーンで見る価値あり。
また、今時これだけてらいのないファンタジー世界を堂々と見せてくれるのも好感が持てます。
グリフィンに乗った騎士なんてものが堂々とスクリーンに出てくるとは思ってなかったので得した気分ですね。
なお、ストーリーは原作の展開を大筋でなぞっているらしく、続編ではさらに大規模な戦闘が描かれることが予想されます。
夏は外が暑いので、涼しい映画館で過ごしてみるのも乙なものではないでしょうか。
それではまた。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
2025年5月22日木曜日
齊藤飛鳥・小説リプレイvol.33『名付けられるべきではないもの』 その1 FT新聞 No.4502
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる
TRPG小説リプレイ
Vol.33
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
ローグライクハーフ『名付けられるべきではないもの』リプレイは、前回の『常闇の伴侶』と舞台と一部登場人物が同じというのが嬉しいシナリオです。
《太古の森》で再びどんな冒険を繰り広げられるのか、前回パートナーに選ばなかったヴィドとのからみがあるので、前回の冒険で少なかった彼とのやりとりが増えるではないかヤッターと、本当は年末年始の休みに冒険しようと思っていたのに、我慢できず早々に大はしゃぎで挑んだことを覚えています。
そして、「あ……ありのまま今起こったことを話すぜ……。俺は森でエルフ達と王道ファンタジーを繰り広げていると思ったら、いつの間にか『妖怪ハンター』となっていた……。ちなみに、沢田研二主演の映画『ヒルコ 妖怪ハンター』の方な……」となりました。
前回の『常闇の伴侶』が差別や宗教対立、善悪二元論の骨太なテーマだったのに対し、今回の『名付けられるべきではないもの』も負けずに鉄骨級の骨太テーマでした。
だんだん、クワニャウマの冒険の最大の壁は、物理的に襲ってくる敵ではなく、姿なき概念のようになってきていて、「あれ? クワニャウマ、ちょっぴり京〇堂な冒険をしている……?」と思いもしました^^
なお、『常闇の伴侶』でエルフの少女イェシカを相棒にしたので、今回の冒険に彼女も登場します。
彼女のステータスがわからなかったので、
「ランタン持ちで、持ち物はランタンと筆談用の石板とチョーク。魔犬獣の毛皮のローブを装備。生命点1点・技量点0点」
と、オリジナル設定にしました。
イメージ的には、村から一人で森へ出かけられる行動力があること、20歳前後のクワニャウマの保護欲が燃え上がりそうな年齢であることから、イェシカは10〜12歳くらいと妄想し、戦闘できる従者にはしませんでした。
そういうわけで、前作を知らなくても楽しめるし、知っていたらなお楽しい『名付けられるべきではないもの』リプレイの開幕ですm(__)m
※以下、冒険の核心部分に触れる内容を含みますので、未読の方はご注意下さい。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
ローグライクハーフ
『名付けられるべきではないもの』リプレイ
その1
齊藤(羽生)飛鳥
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
0:プロローグ
わたしは、冒険家乙女のクワニャウマ。
漆黒の髪とイエベ肌に金褐色の瞳が特徴の、強欲乙女だ。
かつては、一人でお金を貪る冒険家だったけれど、今は二人で貪る冒険家だ。
究極の宝、別の言葉で言うと、旅の相棒ができたからだ。
その名は、イェシカ。
エルフの少女だ。
驚くべきことに、このイェシカ。強欲な損得勘定大好き邪悪人間であるわたしに、無償で懐いてくれるは、かわいい笑顔を見せてくれるは、信頼しきってくれるはと、とにかくとてつもなく奇跡的な存在なのだ。全知全能の神がいたとしても、この奇跡の理由は解けまい。
イェシカのお兄さんから旅立ちの餞別に渡された魔犬獣の毛皮を、わたしが犬耳と尻尾付きローブに仕立てた物を装備しているので、今は中身だけでなく、外見にもかわいさに磨きがかかっている。
わたしたちは、一年前の夏至の頃に《太古の森》で出会った。
以来、イェシカと各地を冒険をしてまわっていた。
そしてこのたび、久しぶりにカリウキ氏族の集落へ顔を出したのだった。
それと言うのも、ここには一年前の夏至の頃の冒険で、共に死線をさ迷った仲間たちがいるからだ。
一人は、戦士のゲルダ。
もう一人は、魔術師のヴィド。
ところが、せっかく会えると思ったゲルダは別件で出かけて不在。
ヴィド一人がわたしたちを迎えてくれた。
「久しぶりだな、クワニャウマ。髪切ったか?」
「のびたんで、三つ編みを王冠編みでまとめたの」
「イェシカは、やせたか?」
「背が伸びたの。だから、骨をしっかりさせるために、牛乳を毎日飲ませている」
ヴィドがイェシカに話しかけているのに、なぜわたしが答えているかって?
それは、イェシカは耳が聞こえず、古代語こそ話せるけれど、わたしたちの言語をまだうまく話せないからだ。
でも、イェシカは人間の言語や読唇術を習得し、相手の唇を読んで何を言われたか理解できる。
だから、イェシカには小さな石板とチョークを持たせ、相手に伝えたいことを文字で見せられるようにしてある。
「イェシカ、冒険者としての暮らしに慣れてきたか?」
そんなヴィドの質問に、だからイェシカは石板に書いて答える。
〈だいぶ。最近は、道端の雑草で野菜炒めを作れるようになった〉
ここから小一時間ほど、わたしは床に座らされ、ヴィドに「イェシカになんてことを教えているんだ!」と、みっちり説教された。
それから、ヴィドは口直しとばかりに話題を変える。
「ジガバチって知ってるか」
残暑の厳しい夏の夜に、ヴィドはランタンの照り返しで出来た影に顔を潜めながらそう語りかけてきた。
怪訝な表情で首を横に振るわたしたちに、ヴィドは腰の革袋からフィザック酒を一口含むとまた口を開いた。
「……この辺りじゃ別に珍しくもねえ虫さ」
似我蜂(ジガバチ)は狩人蜂と呼ばれるものの一種で、夏の間、地中に掘った巣穴に毒針で麻痺させた獲物を溜め込む。そうして卵を植え付けられた獲物は、孵化した幼生の餌として生きたまま喰らわれる。やがて幼生は成長し蜂の姿になると、巣穴から外の世界に這い出す。名前の由来はフーウェイに古くから伝わるまじない言葉で、獲物を運ぶ際の羽や巣穴を掘る際に顎の立てるジガジガという音だとも、この蜂が他の虫を巣穴に入れて「似我似我(我に似よ、我に似よ)」と言い聞かせることでやがて蜂に変化して巣穴から出てくるからだとも言われている。
「———以上、ミン・メーショ・ボー作『一か八かの蜂列伝』参照」
……なんで、出典元まで明かして説明してくれているのに、ヴィドの話が胡散臭く聞こえるんだろう?
わたしはぞっとしない話を聞かされ、なんとも言えない表情を彼に向ける。
「本題はここからだ」
ヴィドはわたしたちの方にちらりと視線を向けると低い声で続けた。
「〈忌まわしき似我蜂〉……俺たちは"あれ"のことをそう呼んでる。夏になると集落を襲っては部族の者を獲物として攫っていきやがる」
イェシカがごくりと喉を鳴らす音が聞こえる。
わたしも、内心、動揺を押さえきれない。
攫う?人間を?……だとしたらいったいどのくらい馬鹿でかい蜂だというのか。
「どうやら光のエルフどもの集落で出やがったらしい。なのにあの野郎、俺たちに〈太古の森〉を調べさせようとしやがらねえんだ。"あれ"はエルフだろうが人間だろうが選んじゃくれねえ。次の獲物になるのは俺たちかも知れねえってのにな」
ヴィドは歯噛みしながらエルフの集落がある遠い森の方角を見やる。
「フーウェイの収穫人たちは、ロングナリクからの救援要請で出払ってる。ゲルダも居ない今、俺は族長と相談して、街の守りを固めなきゃならん」
銀狼のまじない師ヴィドは、そこで言葉を区切って、じっとわたしたちの目を見つめた。
「悪いが、頼まれてくれないか」
わたしも、ヴィドの目を無言で見つめ返す。
ヴィドは、無言で懐から重そうな革袋をテーブルに置く。金貨同士が重なり合って奏でる魅惑の和音が聞こえた。
「もちろん。まかせて、ヴィド!!」
「話が早くて助かるぜ、クワニャウマ」
わたしとヴィドは、互いの拳を軽くコツンとぶつけ合った。
これにて、商談成立!
そういうわけで、わたしとイェシカは一年ぶりに〈太古の森〉へ旅立つことになったのだった。
〈太古の森〉に入ってしばし歩を進めたわたしたちは、昼過ぎになった頃に向こう側から何者かの一団がやって来ることに気づいた。
はっと身構えたわたしに不躾な声が掛けられる。
「警戒したいのはこちらの方なのだがな、外なる者よ」
森の木立から姿を見せたのは、森の統治者である偉大なるエルフ王、カセル・ケリスリオン・フィスティリオンに忠誠を誓う光のエルフたちだ。
「何用があって森に足を踏み入れた」
鋭い口調で問い質してきたのは、エルフらしく顔面偏差値が無駄に高い男だった。
余りにも威圧的な態度に、イェシカが怯える。
ここは、イェシカを安心させるために、実際よりも自然体で振る舞おう。
「初対面の相手に質問する時は、まず自己紹介でしょう? ちなみに、わたしは冒険家乙女のクワニャウマ。趣味は節約、特技は損得勘定。こちらは、わたしの相棒のエルフのイェシカ。耳が聞こえなくて口をきけないので、代わりに挨拶をさせてもらったわ」
本当はイェシカはエルフたちに通じる古代語を話せるけれど、闇エルフ訛りがあったら正体を見破られる危険があるので、わたしは初対面の相手の前ではいつも彼女を口がきけない設定にしていたし、イェシカもそれを承諾してくれていた。
そういうわけで、威圧的な相手に、わたしがいつもと変わらない態度だったのを見て、イェシカが安心した様子を見せる。よかった。
「……俗物どもか」
またも、エルフの男は威圧的な口をきくので、イェシカがびくりと肩を震わせる。唇の動きで何を言われたのか、わかったらしい。イェシカを怖がらせる才能があるのか、こいつ。
「俗物だけど、最低限の礼儀を果たさない高貴なお方よりは上等ね」
しまった。自然体を通り越して、ちょっと態度がでかすぎた。これでは、挑発の域にまで達してしまっている。
これじゃあ、いらん諍いが起きて、イェシカをますます怯えさせてしまう!
「女! このお方をどなたと心得る!」
「畏れ多くも、王家の血筋である太陽の長アノーリオンの御子息ギルサリオン様だ!」
彼の従者と思しきエルフたちが口々に抗議と威嚇混じりで紹介をしてくれた。おかげで、イェシカがまたも怯えてしまった。
でも、責任の一端は、どう考えても、わたしだ。
ここは、友好的に振る舞い、和やかな雰囲気にしてイェシカを安心させよう。
「紹介、ありがとう。お礼にわたしの用事を答えるわ。〈忌まわしき似我蜂〉について調べるために、カリウキ氏族のまじない師ヴィドに派遣されたの」
友好的な口ぶりで愛想を振りまいて答えてみたけれども、ギルサリオンには通じなかったみたいだ。
吐き捨てるように強い口調で応じた。
「はっきり言っておこう、外なる者よ。貴様らの助力など無用。いやそれどころか迷惑なのだ。さっさと森から立ち去ってもらおう」
隊長格の男の言葉に他のエルフたちが油断なく武器を手に掛ける。森の秩序を守る王の直属部隊は、魔法と武器どちらにも長けた恐るべき戦士たちだ。
しかも、厄介なことに、イェシカを怯えさせる才能の塊どもでもある。
しかし、こうなったのも、わたしがことごとく打つ手を間違えているせいだ。落ち着け、クワニャウマ。冷静に考えろ……て、あれ?
「え、警告だけ? 賄賂を払わなくてもいいし、ただであなたたちの手伝いをしないでもいいってこと?」
さんざん威圧してイェシカを怖がらせてきたから、てっきりこの後の台詞は、賄賂をよこせだの、ただ働きしろだのと、難癖をつけてくるかと思っていただけに、ギルサリオンの無欲さは意外だったし、拍子抜けすらした。
「話をよく聞け。我らの邪魔をすることは許さぬ。次に森で見かければ、敵として射られる覚悟をしておくのだな」
身を硬くするイェシカの横をギルサリオンはすり抜けてゆく。イェシカを怖がらせる困った男だけど、無欲なところは敬意を表せる。わたしには、絶対に無理だ。
他のエルフたちがギルサリオンの後に続いたが、最後に一人のエルフがわたしたちの前に立ち止まった。
「兄さんはああ言っているが、この広い森を我らだけで探索するなど無理なこと。君が手を貸してくれると助かるよ」
そう言って柔らかな笑みを浮かべたのは、銀髪のまだ年若いエルフだ。ギルサリオンと、どことなく似ている。
「僕はファラサール。なにか見つけたら、教えてくれ。頼んだよ」
ただで教えないといけないの?
わたしがそう質問するよりも早く、彼は足早に兄たちのあとを追って木立に姿を消した。
金貨1枚の得にもならない頼みだけど、こちらが金貨1枚の損もしない頼みと思えば、悪くないか。
「イェシカ、もう大丈夫。怖いお兄さんたちはどこか行ってくれたから、また顔を合わせないうちに探索をしよう」
わたしが伝えると、イェシカがようやくほっとした顔を見せた。
次からは、もっと対応を考え、イェシカを必要以上に怖がらせる事態を避けよう。
反省をこめた決意を胸に、わたしたちは〈太古の森〉をさらに踏み入った。
(続く)
∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
齊藤飛鳥:
児童文学作家。推理作家。TRPG初心者。ゲームブックは児童向けの読書経験しかなかったところへ、『ブラマタリの供物』『傭兵剣士』などの大人向けのゲームブックと出会い、啓蒙され、その奥深さに絶賛ハマり中。
現在『シニカル探偵安土真』シリーズ(国土社)を刊行中。2024年末に5巻が刊行。
大人向けの作品の際には、ペンネームの羽生(はにゅう)飛鳥名義で発表し、2024年6月に『歌人探偵定家』(東京創元社)を、同年11月29日に『賊徒、暁に千里を奔る』(KADOKAWA)を刊行。2025年5月16日刊行の「小説すばる」6月号(集英社)に、読切『白拍子微妙 鎌倉にて曲水の宴に立ち会うこと』が掲載。
初出:
本リプレイはFT新聞が初出の書き下ろしです。
■書誌情報
ローグライクハーフd33シナリオ
『名付けられるべきではないもの』
著 水波流
2024年12月1日FT新聞配信
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる
TRPG小説リプレイ
Vol.33
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
ローグライクハーフ『名付けられるべきではないもの』リプレイは、前回の『常闇の伴侶』と舞台と一部登場人物が同じというのが嬉しいシナリオです。
《太古の森》で再びどんな冒険を繰り広げられるのか、前回パートナーに選ばなかったヴィドとのからみがあるので、前回の冒険で少なかった彼とのやりとりが増えるではないかヤッターと、本当は年末年始の休みに冒険しようと思っていたのに、我慢できず早々に大はしゃぎで挑んだことを覚えています。
そして、「あ……ありのまま今起こったことを話すぜ……。俺は森でエルフ達と王道ファンタジーを繰り広げていると思ったら、いつの間にか『妖怪ハンター』となっていた……。ちなみに、沢田研二主演の映画『ヒルコ 妖怪ハンター』の方な……」となりました。
前回の『常闇の伴侶』が差別や宗教対立、善悪二元論の骨太なテーマだったのに対し、今回の『名付けられるべきではないもの』も負けずに鉄骨級の骨太テーマでした。
だんだん、クワニャウマの冒険の最大の壁は、物理的に襲ってくる敵ではなく、姿なき概念のようになってきていて、「あれ? クワニャウマ、ちょっぴり京〇堂な冒険をしている……?」と思いもしました^^
なお、『常闇の伴侶』でエルフの少女イェシカを相棒にしたので、今回の冒険に彼女も登場します。
彼女のステータスがわからなかったので、
「ランタン持ちで、持ち物はランタンと筆談用の石板とチョーク。魔犬獣の毛皮のローブを装備。生命点1点・技量点0点」
と、オリジナル設定にしました。
イメージ的には、村から一人で森へ出かけられる行動力があること、20歳前後のクワニャウマの保護欲が燃え上がりそうな年齢であることから、イェシカは10〜12歳くらいと妄想し、戦闘できる従者にはしませんでした。
そういうわけで、前作を知らなくても楽しめるし、知っていたらなお楽しい『名付けられるべきではないもの』リプレイの開幕ですm(__)m
※以下、冒険の核心部分に触れる内容を含みますので、未読の方はご注意下さい。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
ローグライクハーフ
『名付けられるべきではないもの』リプレイ
その1
齊藤(羽生)飛鳥
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
0:プロローグ
わたしは、冒険家乙女のクワニャウマ。
漆黒の髪とイエベ肌に金褐色の瞳が特徴の、強欲乙女だ。
かつては、一人でお金を貪る冒険家だったけれど、今は二人で貪る冒険家だ。
究極の宝、別の言葉で言うと、旅の相棒ができたからだ。
その名は、イェシカ。
エルフの少女だ。
驚くべきことに、このイェシカ。強欲な損得勘定大好き邪悪人間であるわたしに、無償で懐いてくれるは、かわいい笑顔を見せてくれるは、信頼しきってくれるはと、とにかくとてつもなく奇跡的な存在なのだ。全知全能の神がいたとしても、この奇跡の理由は解けまい。
イェシカのお兄さんから旅立ちの餞別に渡された魔犬獣の毛皮を、わたしが犬耳と尻尾付きローブに仕立てた物を装備しているので、今は中身だけでなく、外見にもかわいさに磨きがかかっている。
わたしたちは、一年前の夏至の頃に《太古の森》で出会った。
以来、イェシカと各地を冒険をしてまわっていた。
そしてこのたび、久しぶりにカリウキ氏族の集落へ顔を出したのだった。
それと言うのも、ここには一年前の夏至の頃の冒険で、共に死線をさ迷った仲間たちがいるからだ。
一人は、戦士のゲルダ。
もう一人は、魔術師のヴィド。
ところが、せっかく会えると思ったゲルダは別件で出かけて不在。
ヴィド一人がわたしたちを迎えてくれた。
「久しぶりだな、クワニャウマ。髪切ったか?」
「のびたんで、三つ編みを王冠編みでまとめたの」
「イェシカは、やせたか?」
「背が伸びたの。だから、骨をしっかりさせるために、牛乳を毎日飲ませている」
ヴィドがイェシカに話しかけているのに、なぜわたしが答えているかって?
それは、イェシカは耳が聞こえず、古代語こそ話せるけれど、わたしたちの言語をまだうまく話せないからだ。
でも、イェシカは人間の言語や読唇術を習得し、相手の唇を読んで何を言われたか理解できる。
だから、イェシカには小さな石板とチョークを持たせ、相手に伝えたいことを文字で見せられるようにしてある。
「イェシカ、冒険者としての暮らしに慣れてきたか?」
そんなヴィドの質問に、だからイェシカは石板に書いて答える。
〈だいぶ。最近は、道端の雑草で野菜炒めを作れるようになった〉
ここから小一時間ほど、わたしは床に座らされ、ヴィドに「イェシカになんてことを教えているんだ!」と、みっちり説教された。
それから、ヴィドは口直しとばかりに話題を変える。
「ジガバチって知ってるか」
残暑の厳しい夏の夜に、ヴィドはランタンの照り返しで出来た影に顔を潜めながらそう語りかけてきた。
怪訝な表情で首を横に振るわたしたちに、ヴィドは腰の革袋からフィザック酒を一口含むとまた口を開いた。
「……この辺りじゃ別に珍しくもねえ虫さ」
似我蜂(ジガバチ)は狩人蜂と呼ばれるものの一種で、夏の間、地中に掘った巣穴に毒針で麻痺させた獲物を溜め込む。そうして卵を植え付けられた獲物は、孵化した幼生の餌として生きたまま喰らわれる。やがて幼生は成長し蜂の姿になると、巣穴から外の世界に這い出す。名前の由来はフーウェイに古くから伝わるまじない言葉で、獲物を運ぶ際の羽や巣穴を掘る際に顎の立てるジガジガという音だとも、この蜂が他の虫を巣穴に入れて「似我似我(我に似よ、我に似よ)」と言い聞かせることでやがて蜂に変化して巣穴から出てくるからだとも言われている。
「———以上、ミン・メーショ・ボー作『一か八かの蜂列伝』参照」
……なんで、出典元まで明かして説明してくれているのに、ヴィドの話が胡散臭く聞こえるんだろう?
わたしはぞっとしない話を聞かされ、なんとも言えない表情を彼に向ける。
「本題はここからだ」
ヴィドはわたしたちの方にちらりと視線を向けると低い声で続けた。
「〈忌まわしき似我蜂〉……俺たちは"あれ"のことをそう呼んでる。夏になると集落を襲っては部族の者を獲物として攫っていきやがる」
イェシカがごくりと喉を鳴らす音が聞こえる。
わたしも、内心、動揺を押さえきれない。
攫う?人間を?……だとしたらいったいどのくらい馬鹿でかい蜂だというのか。
「どうやら光のエルフどもの集落で出やがったらしい。なのにあの野郎、俺たちに〈太古の森〉を調べさせようとしやがらねえんだ。"あれ"はエルフだろうが人間だろうが選んじゃくれねえ。次の獲物になるのは俺たちかも知れねえってのにな」
ヴィドは歯噛みしながらエルフの集落がある遠い森の方角を見やる。
「フーウェイの収穫人たちは、ロングナリクからの救援要請で出払ってる。ゲルダも居ない今、俺は族長と相談して、街の守りを固めなきゃならん」
銀狼のまじない師ヴィドは、そこで言葉を区切って、じっとわたしたちの目を見つめた。
「悪いが、頼まれてくれないか」
わたしも、ヴィドの目を無言で見つめ返す。
ヴィドは、無言で懐から重そうな革袋をテーブルに置く。金貨同士が重なり合って奏でる魅惑の和音が聞こえた。
「もちろん。まかせて、ヴィド!!」
「話が早くて助かるぜ、クワニャウマ」
わたしとヴィドは、互いの拳を軽くコツンとぶつけ合った。
これにて、商談成立!
そういうわけで、わたしとイェシカは一年ぶりに〈太古の森〉へ旅立つことになったのだった。
〈太古の森〉に入ってしばし歩を進めたわたしたちは、昼過ぎになった頃に向こう側から何者かの一団がやって来ることに気づいた。
はっと身構えたわたしに不躾な声が掛けられる。
「警戒したいのはこちらの方なのだがな、外なる者よ」
森の木立から姿を見せたのは、森の統治者である偉大なるエルフ王、カセル・ケリスリオン・フィスティリオンに忠誠を誓う光のエルフたちだ。
「何用があって森に足を踏み入れた」
鋭い口調で問い質してきたのは、エルフらしく顔面偏差値が無駄に高い男だった。
余りにも威圧的な態度に、イェシカが怯える。
ここは、イェシカを安心させるために、実際よりも自然体で振る舞おう。
「初対面の相手に質問する時は、まず自己紹介でしょう? ちなみに、わたしは冒険家乙女のクワニャウマ。趣味は節約、特技は損得勘定。こちらは、わたしの相棒のエルフのイェシカ。耳が聞こえなくて口をきけないので、代わりに挨拶をさせてもらったわ」
本当はイェシカはエルフたちに通じる古代語を話せるけれど、闇エルフ訛りがあったら正体を見破られる危険があるので、わたしは初対面の相手の前ではいつも彼女を口がきけない設定にしていたし、イェシカもそれを承諾してくれていた。
そういうわけで、威圧的な相手に、わたしがいつもと変わらない態度だったのを見て、イェシカが安心した様子を見せる。よかった。
「……俗物どもか」
またも、エルフの男は威圧的な口をきくので、イェシカがびくりと肩を震わせる。唇の動きで何を言われたのか、わかったらしい。イェシカを怖がらせる才能があるのか、こいつ。
「俗物だけど、最低限の礼儀を果たさない高貴なお方よりは上等ね」
しまった。自然体を通り越して、ちょっと態度がでかすぎた。これでは、挑発の域にまで達してしまっている。
これじゃあ、いらん諍いが起きて、イェシカをますます怯えさせてしまう!
「女! このお方をどなたと心得る!」
「畏れ多くも、王家の血筋である太陽の長アノーリオンの御子息ギルサリオン様だ!」
彼の従者と思しきエルフたちが口々に抗議と威嚇混じりで紹介をしてくれた。おかげで、イェシカがまたも怯えてしまった。
でも、責任の一端は、どう考えても、わたしだ。
ここは、友好的に振る舞い、和やかな雰囲気にしてイェシカを安心させよう。
「紹介、ありがとう。お礼にわたしの用事を答えるわ。〈忌まわしき似我蜂〉について調べるために、カリウキ氏族のまじない師ヴィドに派遣されたの」
友好的な口ぶりで愛想を振りまいて答えてみたけれども、ギルサリオンには通じなかったみたいだ。
吐き捨てるように強い口調で応じた。
「はっきり言っておこう、外なる者よ。貴様らの助力など無用。いやそれどころか迷惑なのだ。さっさと森から立ち去ってもらおう」
隊長格の男の言葉に他のエルフたちが油断なく武器を手に掛ける。森の秩序を守る王の直属部隊は、魔法と武器どちらにも長けた恐るべき戦士たちだ。
しかも、厄介なことに、イェシカを怯えさせる才能の塊どもでもある。
しかし、こうなったのも、わたしがことごとく打つ手を間違えているせいだ。落ち着け、クワニャウマ。冷静に考えろ……て、あれ?
「え、警告だけ? 賄賂を払わなくてもいいし、ただであなたたちの手伝いをしないでもいいってこと?」
さんざん威圧してイェシカを怖がらせてきたから、てっきりこの後の台詞は、賄賂をよこせだの、ただ働きしろだのと、難癖をつけてくるかと思っていただけに、ギルサリオンの無欲さは意外だったし、拍子抜けすらした。
「話をよく聞け。我らの邪魔をすることは許さぬ。次に森で見かければ、敵として射られる覚悟をしておくのだな」
身を硬くするイェシカの横をギルサリオンはすり抜けてゆく。イェシカを怖がらせる困った男だけど、無欲なところは敬意を表せる。わたしには、絶対に無理だ。
他のエルフたちがギルサリオンの後に続いたが、最後に一人のエルフがわたしたちの前に立ち止まった。
「兄さんはああ言っているが、この広い森を我らだけで探索するなど無理なこと。君が手を貸してくれると助かるよ」
そう言って柔らかな笑みを浮かべたのは、銀髪のまだ年若いエルフだ。ギルサリオンと、どことなく似ている。
「僕はファラサール。なにか見つけたら、教えてくれ。頼んだよ」
ただで教えないといけないの?
わたしがそう質問するよりも早く、彼は足早に兄たちのあとを追って木立に姿を消した。
金貨1枚の得にもならない頼みだけど、こちらが金貨1枚の損もしない頼みと思えば、悪くないか。
「イェシカ、もう大丈夫。怖いお兄さんたちはどこか行ってくれたから、また顔を合わせないうちに探索をしよう」
わたしが伝えると、イェシカがようやくほっとした顔を見せた。
次からは、もっと対応を考え、イェシカを必要以上に怖がらせる事態を避けよう。
反省をこめた決意を胸に、わたしたちは〈太古の森〉をさらに踏み入った。
(続く)
∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
齊藤飛鳥:
児童文学作家。推理作家。TRPG初心者。ゲームブックは児童向けの読書経験しかなかったところへ、『ブラマタリの供物』『傭兵剣士』などの大人向けのゲームブックと出会い、啓蒙され、その奥深さに絶賛ハマり中。
現在『シニカル探偵安土真』シリーズ(国土社)を刊行中。2024年末に5巻が刊行。
大人向けの作品の際には、ペンネームの羽生(はにゅう)飛鳥名義で発表し、2024年6月に『歌人探偵定家』(東京創元社)を、同年11月29日に『賊徒、暁に千里を奔る』(KADOKAWA)を刊行。2025年5月16日刊行の「小説すばる」6月号(集英社)に、読切『白拍子微妙 鎌倉にて曲水の宴に立ち会うこと』が掲載。
初出:
本リプレイはFT新聞が初出の書き下ろしです。
■書誌情報
ローグライクハーフd33シナリオ
『名付けられるべきではないもの』
著 水波流
2024年12月1日FT新聞配信
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
2025年5月21日水曜日
第1回【戦場の風】ローグライクハーフリプレイ FT新聞 No.4501
第1回【戦場の風】ローグライクハーフリプレイ
※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「戦場の風」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。
■ローグライクハーフとは
「ローグライクハーフ」は、TRPGのように遊ぶこともでき、ゲームブックのように遊ぶこともできるという両者の中間のような位置づけのルールです。
1人でもプレイできますし、3人まででTRPGのように遊ぶこともできます。
その内容はランダムダンジョン。サイコロを振ってイベントを決め、起きた出来事に対処します。
同じイベントに行き当たらないような工夫がされているのもポイント高いですね。
簡単に遊ぶには、とても良くできたシステムなのです。
●作品紹介
ぜろです。
今回のリプレイは、いつもと少々違った趣向と言えるかもしれません。
プレイする作品は「ローグライクハーフ」の「戦場の風」です。作者は丹野佑さん。
この作品は2024年8月4日に、FT新聞にて配信されたd33シナリオになります。
そして、ゲームブック版の「戦場の風」のリメイク作品なのです。
普段私は、リプレイ執筆時点で入手可能な作品を、ということを意識しています。
それは、FT新聞がFT書房の情報発信を目的としている以上、少しでも販促に繋がれば、という思いもあります。
そればかりではなく、せっかく面白そうな作品を紹介しても、それが入手不可能では、興味を持ってもらっても、そこ止まりですからね。
FT書房以外の作品を紹介することも、もちろんあります。
それはFT書房ばかりでなく、ゲームブックやローグライクに接する界隈を、少しでも活気づけたいという思いでもあります。
さて、ローグライクハーフ「戦場の風」は、私がこれを書いている時点では、FT新聞への掲載以外、他で公開されておりません。
そのため、当時FT新聞に登録していたか、期間限定のタイミングで見られた方しかプレイできない作品ということになります。
なぜそれをあえて今回リプレイにしたのか。
それは、ゲームブック版とローグライクハーフ版をプレイし比べてみたい、という欲求に抗えなかったためです。
そんなわけで、ゲームブック版「戦場の風」に引き続き、ローグライクハーフ版「戦場の風」をプレイさせていただきます。
実を言うと、あのゲームブック版をローグライクハーフに落とし込むのって、けっこう無理がある場面もあるなって感じているんですよね。
特にそれを感じるのは、牛飼いに扮してドラッツェン軍の陣の中に潜り込む場面。
ローグライクハーフでは、2人プレイか相棒を連れているのでなければ、従者がぞろぞろとついて来るんですよ。
2人とか3人くらいまでなら、まあアリかな、とも思うんですが、さすがに7人も連れているのはどうかと!
そのへん、どういう風になっているのか、気になります。
あと、元々かなりストーリー志向が強く、イベントの順番もがちがちに固まっていたこの作品が、ランダムイベントの塊であるローグライクハーフに、どうやって落とし込めるのか、純粋な興味もありますね。
「王女を見つけるまで」「ウォードレイクの攻略法を見つけるまで」「ラストの脱出行」、みたいに3つに分けたd66シナリオではなく、1回ですべてをやりきるd33シナリオにした、というところなんかも。
掲載されたFT新聞の作者の言葉には、こうあります。
「リメイクにあたって、元の難易度をできるだけ残しつつ、『ローグライクハーフ』らしくスピード感あふれるシナリオとして作成しています。あなたはロング・ナリクの王からの密命を受け、王女コーデリアを救い出すため、混乱を極める戦場へ飛び込みます。疾走感あふれる冒険をお楽しみください。」
なるほど疾走感!
d66ではなく、1回こっきりのd33シナリオにした理由の一端が見えました。
それにしても、「元の難易度をできるだけ残しつつ」ですか。これは怖い。
なにしろゲームブック版「戦場の風」の難易度はかなりのものでしたからね。
ローグライクハーフには仕込めないギミック「パラグラフジャンプ」を多用した凝った難易度設定でした。
そもそも繰り返しプレイを前提としたゲームブックと、1回でクリアできることも想定したローグライクハーフとでは、難易度の基準の置き方が違うと思うのです。
元の難易度を意識しつつも、やたら死にまくる感じじゃないといいな。
それではそろそろ、キャラクターの作成にいきましょうか!
●キャラクター作成
それではここからは、キャラクターの作成に移りましょう。
ローグライクハーフはゲームブックに近いとはいえTRPGにも寄せていますので、他作品でプレイしたキャラクターをこちらに投入することができます。
つまり、初期に「黄昏の騎士」に挑戦した戦士シズや、「あやかし」等で活躍したサクラを、この作品で続投させることが可能です。
特にシズについては、最初のシナリオで登場させて以降、使用していないため、そろそろなんらかの作品に出したいところではあります。
なんてことを考えながらも、今回は新規のキャラクターを作成することにしました。
せっかくゲームブック版で遊んだのですから、そちらで登場したキャラクターをローグライクハーフに登場させるってのもアリですよね。
で、それならクリアした時のキャラクター、ロニーにするのが順当なところですよね。
でも、私が選んだキャラクターは違います。
アタック04に登場した、ウォーレンです。
すごい偶然で、この戦場で命を落とした当代随一の聖騎士ウォーレンと名前がまるかぶりしてしまった人物です。
そのおかげもあり、また、序盤のウォードレイク戦の袋小路からはじめて抜け出した人物でもあり、私にとってはクリアしたロニーより、彼の方が印象深いのです。
名前が同じことから聖騎士にあこがれた少年が騎士を目指し、武勲を立て、聖騎士に叙勲されるといった美しいストーリーに、ぜひしたいものです。
さて、今回は拡張ルールにある、職業を導入してみましょう。
もちろんウォーレンの職業は【聖騎士】です!
なんと、いきなり最初から聖騎士だった!
たった今「美しいストーリー」とか言っていたものがさっそく台無しに。
いえいえ、これはあくまで職業適性とか特性みたいなもの、という理解でいきましょう。
ウォーレンはあくまで、聖騎士を目指す若き騎士です。あるいは聖騎士見習い。
いや、騎士見習いは聞いたことあるけど、聖騎士見習いなんてあるのでしょうか。
気になって「聖騎士見習い」で検索をかけたら、えっちな同人RPGが唯一ヒットしましたので、それ以上深く突っ込むのはやめておきました。
もう自分で設定しておいて最初からツッコミどころ満載なのですが、気にせずいきましょう。
【ウォーレン レベル10聖騎士 技量点2 生命点8/8 筋力点4/4 従者点7】
【装備】
片手武器
板金鎧(生命点2 防御1)
丸盾(生命点2)
【食料】2
【金貨】0
【持ち物】
【高潔な魂】【全力攻撃】【神の加護】
【未使用経験点】0
キャラクターを作成しました。
聖騎士は、戦士系ベースのキャラクターなので、副能力値は筋力点になります。
聖騎士は【高潔な魂】という特殊技能を最初から持っています。
そして他の特殊技能は、戦士系職業が持つ【全力攻撃】【全力防御】のほか、【神の加護】【癒しの光】【神撃】から2つ選択ができます。
私が選んだのは上記のとおり。
【高潔な魂】は、できごとで死亡した従者1人を復活させられるという破格の技能です。従者プレイの多い私のようなプレイヤーにはとてもありがたい。
【全力攻撃】は、戦闘時に筋力点を用いて判定ができるというもの。いざという時頼りになります。
そして【神の加護】。これはなんと【対魔法ロール】を筋力点で行うことができるという、すごい発想の技能です。
だって考えても見てください。筋力点で魔法はじいちゃうんですよ。
「魔法? そんなことより筋肉だ!」みたいなイメージしかできない。
しかもこれ、自分だけじゃなくて、他のキャラクターをかばう形で使うこともできるのです。筋力で。最高か。
あと【癒しの光】はその名の通り回復の効果を持ちますが、自分には使えないという時点でやめました。
2人プレイか、相棒プレイでは役立ちそうです。しかし従者プレイだと、ダメージを受ける時が死亡する時なので、使い道がないんですよ。
【神撃】は追加ダメージを与えられるという強力な技能です。
しかし、対象が【アンデッド】【悪魔】【神霊】に限定されます。
今回の舞台は戦場。敵も人間かウォードレイクが想定されますので、除外しました。
【癒しの光】を取得しなかったことでおわかりかと思いますが、主人公2人体制ではなく、従者プレイで行います。
自分で主人公2人を操るなら、2人分の設定をきちんと詰めたいところ。今回は完全に聖騎士を目指す若き騎士ウォーレンの物語にするつもりなので。
「竜鍵諸島」のように、相棒となるサンプルキャラクターが設定、選択できるようになっていたなら、そちらを選んだかもしれません。
従者については物語の進行に合わせて登場させることにして、挑戦をはじめましょう。
ローグライクハーフ版「戦場の風」はd33シナリオです。
d66シナリオは3回のダンジョンアタックが基本ですが、d33だとそれが1回になります。
この1回でミッションを達成しなければなりません。
プレイを始める前のおことわりを。
「ローグライクハーフ」のルールは、FT新聞誌上の発表も含み、追加要素などもいろいろ発表されています。
しかし忙しい私はあれこれ参照しきれません。
なので私は冊子版の基本ルールと、FT新聞に掲載された「戦場の風」本編を参照にプレイしています。
たまにインターネット上で、ローグライクハーフwikiを参照することもあります。
ローグライクハーフwiki
https://ftbooks.xyz/ftwiki/index.php
さて、私はうっかりさんなので、基本的なところで根本的な勘違いをしたまま、あるいは堂々と間違った解釈をして突き進んでしまうことがあるかもしれません。
だから、私のプレイにとらわれず、みなさんはみなさんのローグライクハーフライフを送ってください。
リプレイの文中では、「プレイヤー視点」と「キャラクター視点」をあまり区別せず、わざと混在させて書くのがいつものスタイルです。
あるときにはキャラクターの心情になりながら、あるときにはメタ視点から眺めつつ進めていきます。
●アタック01-1 ウォーレンと国王からの密命
俺は唐突に、ロング・ナリクの国王から呼び出しを受けた。
それも謁見の間に、ではない。国王の執務室へ、だ。
これはつまり、公式ではなく秘密裏に呼びだされたということ。
俺はウォーレン。ロング・ナリクにて当代一の聖騎士と言われるウォーレンと同名だ。
名前が同じこともあって、俺はいつしか聖騎士ウォーレンにあこがれるようになった。
自分もいつか、聖騎士ウォーレンのようになりたい!
しかし俺はしがない貧乏騎士家の生まれ。そんな機会はないものと思っていた。
それがあるとき偶然、謎の集団に襲撃されて、不利な戦いを強いられている一団に加勢してみれば、それがなんと国王様だったってわけ。
国王は、俺が騎士団の末席に名を連ねていることを知り、その後なにかと目をかけてくれていた。
俺もその期待に応えられるよう研鑽を重ね、ついにレベル10に至った。レベル10になれば、主人公として冒険ができるんだ。
そんな折に、国王からの秘密の招集。いったいなにが起きているのか。
「頼む。我が娘を助けてくれ」
国王の第一声がそれだった。
国王の娘。たしかコーデリア王女だ。年齢は15歳くらいだったはず。
今はドラッツェンの侵攻に対抗するため、軍を率いて戦場に赴いているはず。
「そのとおり。コーデリアは『金牛の丘』の戦場にある。あれは、これが初陣だ」
王女を助けてほしいということは、戦況は芳しくないということか。
「……つい先ほど、ウォーレンが名誉の戦死を遂げ、我が娘は丘に取り残されたという報告が入った」
え。聖騎士ウォーレンが、戦死?!
そんな馬鹿な。あの当代一の聖騎士が。俺のあこがれ、俺の目標。いつか、あの人のようになりたい、その人が……戦死した、と。
「この戦は国境の小競り合いなどではない。ドラッツェンは我らが思っている以上に本気で攻めてきておる」
王女は初陣だという。実質的な指揮は聖騎士ウォーレンが執っていたに違いない。
その人物を失ったとあっては、ロング・ナリクの軍は瓦解したも同然だ。そのうえ王女が丘に取り残されているというのだから。
「撤退すべき局面だ。だが、コーデリアはなおも戦いを続けようとしておる。かような激しい戦に身を置くには、幼すぎたのだ……」
地方の小競り合いで経験を積ませようとしたことが、裏目に出たといったところかな。
「ドラッツェン軍を指揮しているのは、ジャルベッタという女だ。冷酷な軍人だという評判は大陸中にとどろいておる。コーデリアを人質とし、我が国にさらなる要求を突きつけるくらいのことは、当然に狙っておるだろう」
まあ、そうだろうな。戦争は、その戦場の決着のみにあらず、いかに相手から有利な条件を引き出すかまで含めて戦争だからな。
つまり国王が言いたいのは、もはや戦場での勝敗を決する段階ではなく、王女が捕らわれるかどうかの問題になっていると。
王女が敵の手に落ちれば、多大な要求を突きつけられる。応じれば娘のために国を売ったと言われ、応じなければ娘を見殺しにした非情の王とそしられる。
王女がドラッツェンの虜囚になることは、なんとしても避けなければならない。
この状況を聞いたところで、俺を秘密で呼び出したって、嫌な予感しかしないんだけど。
「戦場へ走り、我が娘に戦いを止めさせるのだ。そして、ドラッツェンに捕らえられるよりも早く、この長大なるナリクへとあれを連れ帰れ。我が国の未来を、救いだしてくれ」
やっぱりそうなりるよなー。
おおっぴらに軍を動かすわけにはいかないから、俺を呼んだってことだよな。密命として。
「あれは、我が妻が遺した、たったひとりの娘なのだ……」
それは密命というより、懇願であった。
公にできない任務を胸に秘め、俺は戦場へと向かう。
次回、旅立ったと思ったらいきなり……? さすがランダムイベント。
【ウォーレン レベル10聖騎士 技量点2 生命点8/8 筋力点4/4 従者点7】
【装備】
片手武器
板金鎧(生命点2 防御1)
丸盾(生命点2)
【食料】2
【金貨】0
【持ち物】
【高潔な魂】【全力攻撃】【神の加護】
【未使用経験点】0
■登場人物
ウォーレン 主人公。ロング・ナリクの若き騎士。
ロング・ナリク王 コーデリア王女の父。主人公に密命をくだす。
聖騎士ウォーレン 主人公のあこがれであり目標。戦場で命を落とす。
コーデリア ロング・ナリクの王女。15歳で初陣。戦場の指揮を執る。
ジャルベッタ ドラッツェン軍の指揮官。冷酷無比との噂。
■作品情報
作品名:『戦場の風d33』ローグライクハーフd33シナリオ
著者:丹野佑
初出:FT新聞2024年8月4日(No.4211)号
本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
※本作品はローグライクハーフの規定に基づくリプレイ記事です。ローグライクハーフ「戦場の風」の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。
■ローグライクハーフとは
「ローグライクハーフ」は、TRPGのように遊ぶこともでき、ゲームブックのように遊ぶこともできるという両者の中間のような位置づけのルールです。
1人でもプレイできますし、3人まででTRPGのように遊ぶこともできます。
その内容はランダムダンジョン。サイコロを振ってイベントを決め、起きた出来事に対処します。
同じイベントに行き当たらないような工夫がされているのもポイント高いですね。
簡単に遊ぶには、とても良くできたシステムなのです。
●作品紹介
ぜろです。
今回のリプレイは、いつもと少々違った趣向と言えるかもしれません。
プレイする作品は「ローグライクハーフ」の「戦場の風」です。作者は丹野佑さん。
この作品は2024年8月4日に、FT新聞にて配信されたd33シナリオになります。
そして、ゲームブック版の「戦場の風」のリメイク作品なのです。
普段私は、リプレイ執筆時点で入手可能な作品を、ということを意識しています。
それは、FT新聞がFT書房の情報発信を目的としている以上、少しでも販促に繋がれば、という思いもあります。
そればかりではなく、せっかく面白そうな作品を紹介しても、それが入手不可能では、興味を持ってもらっても、そこ止まりですからね。
FT書房以外の作品を紹介することも、もちろんあります。
それはFT書房ばかりでなく、ゲームブックやローグライクに接する界隈を、少しでも活気づけたいという思いでもあります。
さて、ローグライクハーフ「戦場の風」は、私がこれを書いている時点では、FT新聞への掲載以外、他で公開されておりません。
そのため、当時FT新聞に登録していたか、期間限定のタイミングで見られた方しかプレイできない作品ということになります。
なぜそれをあえて今回リプレイにしたのか。
それは、ゲームブック版とローグライクハーフ版をプレイし比べてみたい、という欲求に抗えなかったためです。
そんなわけで、ゲームブック版「戦場の風」に引き続き、ローグライクハーフ版「戦場の風」をプレイさせていただきます。
実を言うと、あのゲームブック版をローグライクハーフに落とし込むのって、けっこう無理がある場面もあるなって感じているんですよね。
特にそれを感じるのは、牛飼いに扮してドラッツェン軍の陣の中に潜り込む場面。
ローグライクハーフでは、2人プレイか相棒を連れているのでなければ、従者がぞろぞろとついて来るんですよ。
2人とか3人くらいまでなら、まあアリかな、とも思うんですが、さすがに7人も連れているのはどうかと!
そのへん、どういう風になっているのか、気になります。
あと、元々かなりストーリー志向が強く、イベントの順番もがちがちに固まっていたこの作品が、ランダムイベントの塊であるローグライクハーフに、どうやって落とし込めるのか、純粋な興味もありますね。
「王女を見つけるまで」「ウォードレイクの攻略法を見つけるまで」「ラストの脱出行」、みたいに3つに分けたd66シナリオではなく、1回ですべてをやりきるd33シナリオにした、というところなんかも。
掲載されたFT新聞の作者の言葉には、こうあります。
「リメイクにあたって、元の難易度をできるだけ残しつつ、『ローグライクハーフ』らしくスピード感あふれるシナリオとして作成しています。あなたはロング・ナリクの王からの密命を受け、王女コーデリアを救い出すため、混乱を極める戦場へ飛び込みます。疾走感あふれる冒険をお楽しみください。」
なるほど疾走感!
d66ではなく、1回こっきりのd33シナリオにした理由の一端が見えました。
それにしても、「元の難易度をできるだけ残しつつ」ですか。これは怖い。
なにしろゲームブック版「戦場の風」の難易度はかなりのものでしたからね。
ローグライクハーフには仕込めないギミック「パラグラフジャンプ」を多用した凝った難易度設定でした。
そもそも繰り返しプレイを前提としたゲームブックと、1回でクリアできることも想定したローグライクハーフとでは、難易度の基準の置き方が違うと思うのです。
元の難易度を意識しつつも、やたら死にまくる感じじゃないといいな。
それではそろそろ、キャラクターの作成にいきましょうか!
●キャラクター作成
それではここからは、キャラクターの作成に移りましょう。
ローグライクハーフはゲームブックに近いとはいえTRPGにも寄せていますので、他作品でプレイしたキャラクターをこちらに投入することができます。
つまり、初期に「黄昏の騎士」に挑戦した戦士シズや、「あやかし」等で活躍したサクラを、この作品で続投させることが可能です。
特にシズについては、最初のシナリオで登場させて以降、使用していないため、そろそろなんらかの作品に出したいところではあります。
なんてことを考えながらも、今回は新規のキャラクターを作成することにしました。
せっかくゲームブック版で遊んだのですから、そちらで登場したキャラクターをローグライクハーフに登場させるってのもアリですよね。
で、それならクリアした時のキャラクター、ロニーにするのが順当なところですよね。
でも、私が選んだキャラクターは違います。
アタック04に登場した、ウォーレンです。
すごい偶然で、この戦場で命を落とした当代随一の聖騎士ウォーレンと名前がまるかぶりしてしまった人物です。
そのおかげもあり、また、序盤のウォードレイク戦の袋小路からはじめて抜け出した人物でもあり、私にとってはクリアしたロニーより、彼の方が印象深いのです。
名前が同じことから聖騎士にあこがれた少年が騎士を目指し、武勲を立て、聖騎士に叙勲されるといった美しいストーリーに、ぜひしたいものです。
さて、今回は拡張ルールにある、職業を導入してみましょう。
もちろんウォーレンの職業は【聖騎士】です!
なんと、いきなり最初から聖騎士だった!
たった今「美しいストーリー」とか言っていたものがさっそく台無しに。
いえいえ、これはあくまで職業適性とか特性みたいなもの、という理解でいきましょう。
ウォーレンはあくまで、聖騎士を目指す若き騎士です。あるいは聖騎士見習い。
いや、騎士見習いは聞いたことあるけど、聖騎士見習いなんてあるのでしょうか。
気になって「聖騎士見習い」で検索をかけたら、えっちな同人RPGが唯一ヒットしましたので、それ以上深く突っ込むのはやめておきました。
もう自分で設定しておいて最初からツッコミどころ満載なのですが、気にせずいきましょう。
【ウォーレン レベル10聖騎士 技量点2 生命点8/8 筋力点4/4 従者点7】
【装備】
片手武器
板金鎧(生命点2 防御1)
丸盾(生命点2)
【食料】2
【金貨】0
【持ち物】
【高潔な魂】【全力攻撃】【神の加護】
【未使用経験点】0
キャラクターを作成しました。
聖騎士は、戦士系ベースのキャラクターなので、副能力値は筋力点になります。
聖騎士は【高潔な魂】という特殊技能を最初から持っています。
そして他の特殊技能は、戦士系職業が持つ【全力攻撃】【全力防御】のほか、【神の加護】【癒しの光】【神撃】から2つ選択ができます。
私が選んだのは上記のとおり。
【高潔な魂】は、できごとで死亡した従者1人を復活させられるという破格の技能です。従者プレイの多い私のようなプレイヤーにはとてもありがたい。
【全力攻撃】は、戦闘時に筋力点を用いて判定ができるというもの。いざという時頼りになります。
そして【神の加護】。これはなんと【対魔法ロール】を筋力点で行うことができるという、すごい発想の技能です。
だって考えても見てください。筋力点で魔法はじいちゃうんですよ。
「魔法? そんなことより筋肉だ!」みたいなイメージしかできない。
しかもこれ、自分だけじゃなくて、他のキャラクターをかばう形で使うこともできるのです。筋力で。最高か。
あと【癒しの光】はその名の通り回復の効果を持ちますが、自分には使えないという時点でやめました。
2人プレイか、相棒プレイでは役立ちそうです。しかし従者プレイだと、ダメージを受ける時が死亡する時なので、使い道がないんですよ。
【神撃】は追加ダメージを与えられるという強力な技能です。
しかし、対象が【アンデッド】【悪魔】【神霊】に限定されます。
今回の舞台は戦場。敵も人間かウォードレイクが想定されますので、除外しました。
【癒しの光】を取得しなかったことでおわかりかと思いますが、主人公2人体制ではなく、従者プレイで行います。
自分で主人公2人を操るなら、2人分の設定をきちんと詰めたいところ。今回は完全に聖騎士を目指す若き騎士ウォーレンの物語にするつもりなので。
「竜鍵諸島」のように、相棒となるサンプルキャラクターが設定、選択できるようになっていたなら、そちらを選んだかもしれません。
従者については物語の進行に合わせて登場させることにして、挑戦をはじめましょう。
ローグライクハーフ版「戦場の風」はd33シナリオです。
d66シナリオは3回のダンジョンアタックが基本ですが、d33だとそれが1回になります。
この1回でミッションを達成しなければなりません。
プレイを始める前のおことわりを。
「ローグライクハーフ」のルールは、FT新聞誌上の発表も含み、追加要素などもいろいろ発表されています。
しかし忙しい私はあれこれ参照しきれません。
なので私は冊子版の基本ルールと、FT新聞に掲載された「戦場の風」本編を参照にプレイしています。
たまにインターネット上で、ローグライクハーフwikiを参照することもあります。
ローグライクハーフwiki
https://ftbooks.xyz/ftwiki/index.php
さて、私はうっかりさんなので、基本的なところで根本的な勘違いをしたまま、あるいは堂々と間違った解釈をして突き進んでしまうことがあるかもしれません。
だから、私のプレイにとらわれず、みなさんはみなさんのローグライクハーフライフを送ってください。
リプレイの文中では、「プレイヤー視点」と「キャラクター視点」をあまり区別せず、わざと混在させて書くのがいつものスタイルです。
あるときにはキャラクターの心情になりながら、あるときにはメタ視点から眺めつつ進めていきます。
●アタック01-1 ウォーレンと国王からの密命
俺は唐突に、ロング・ナリクの国王から呼び出しを受けた。
それも謁見の間に、ではない。国王の執務室へ、だ。
これはつまり、公式ではなく秘密裏に呼びだされたということ。
俺はウォーレン。ロング・ナリクにて当代一の聖騎士と言われるウォーレンと同名だ。
名前が同じこともあって、俺はいつしか聖騎士ウォーレンにあこがれるようになった。
自分もいつか、聖騎士ウォーレンのようになりたい!
しかし俺はしがない貧乏騎士家の生まれ。そんな機会はないものと思っていた。
それがあるとき偶然、謎の集団に襲撃されて、不利な戦いを強いられている一団に加勢してみれば、それがなんと国王様だったってわけ。
国王は、俺が騎士団の末席に名を連ねていることを知り、その後なにかと目をかけてくれていた。
俺もその期待に応えられるよう研鑽を重ね、ついにレベル10に至った。レベル10になれば、主人公として冒険ができるんだ。
そんな折に、国王からの秘密の招集。いったいなにが起きているのか。
「頼む。我が娘を助けてくれ」
国王の第一声がそれだった。
国王の娘。たしかコーデリア王女だ。年齢は15歳くらいだったはず。
今はドラッツェンの侵攻に対抗するため、軍を率いて戦場に赴いているはず。
「そのとおり。コーデリアは『金牛の丘』の戦場にある。あれは、これが初陣だ」
王女を助けてほしいということは、戦況は芳しくないということか。
「……つい先ほど、ウォーレンが名誉の戦死を遂げ、我が娘は丘に取り残されたという報告が入った」
え。聖騎士ウォーレンが、戦死?!
そんな馬鹿な。あの当代一の聖騎士が。俺のあこがれ、俺の目標。いつか、あの人のようになりたい、その人が……戦死した、と。
「この戦は国境の小競り合いなどではない。ドラッツェンは我らが思っている以上に本気で攻めてきておる」
王女は初陣だという。実質的な指揮は聖騎士ウォーレンが執っていたに違いない。
その人物を失ったとあっては、ロング・ナリクの軍は瓦解したも同然だ。そのうえ王女が丘に取り残されているというのだから。
「撤退すべき局面だ。だが、コーデリアはなおも戦いを続けようとしておる。かような激しい戦に身を置くには、幼すぎたのだ……」
地方の小競り合いで経験を積ませようとしたことが、裏目に出たといったところかな。
「ドラッツェン軍を指揮しているのは、ジャルベッタという女だ。冷酷な軍人だという評判は大陸中にとどろいておる。コーデリアを人質とし、我が国にさらなる要求を突きつけるくらいのことは、当然に狙っておるだろう」
まあ、そうだろうな。戦争は、その戦場の決着のみにあらず、いかに相手から有利な条件を引き出すかまで含めて戦争だからな。
つまり国王が言いたいのは、もはや戦場での勝敗を決する段階ではなく、王女が捕らわれるかどうかの問題になっていると。
王女が敵の手に落ちれば、多大な要求を突きつけられる。応じれば娘のために国を売ったと言われ、応じなければ娘を見殺しにした非情の王とそしられる。
王女がドラッツェンの虜囚になることは、なんとしても避けなければならない。
この状況を聞いたところで、俺を秘密で呼び出したって、嫌な予感しかしないんだけど。
「戦場へ走り、我が娘に戦いを止めさせるのだ。そして、ドラッツェンに捕らえられるよりも早く、この長大なるナリクへとあれを連れ帰れ。我が国の未来を、救いだしてくれ」
やっぱりそうなりるよなー。
おおっぴらに軍を動かすわけにはいかないから、俺を呼んだってことだよな。密命として。
「あれは、我が妻が遺した、たったひとりの娘なのだ……」
それは密命というより、懇願であった。
公にできない任務を胸に秘め、俺は戦場へと向かう。
次回、旅立ったと思ったらいきなり……? さすがランダムイベント。
【ウォーレン レベル10聖騎士 技量点2 生命点8/8 筋力点4/4 従者点7】
【装備】
片手武器
板金鎧(生命点2 防御1)
丸盾(生命点2)
【食料】2
【金貨】0
【持ち物】
【高潔な魂】【全力攻撃】【神の加護】
【未使用経験点】0
■登場人物
ウォーレン 主人公。ロング・ナリクの若き騎士。
ロング・ナリク王 コーデリア王女の父。主人公に密命をくだす。
聖騎士ウォーレン 主人公のあこがれであり目標。戦場で命を落とす。
コーデリア ロング・ナリクの王女。15歳で初陣。戦場の指揮を執る。
ジャルベッタ ドラッツェン軍の指揮官。冷酷無比との噂。
■作品情報
作品名:『戦場の風d33』ローグライクハーフd33シナリオ
著者:丹野佑
初出:FT新聞2024年8月4日(No.4211)号
本リプレイは、「ローグライクハーフ」製作に関する利用規約に準拠しています。
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
2025年5月20日火曜日
『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.1 FT新聞 No.4500
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.1
(田林洋一)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
FT新聞の読者のあなた、初めまして、田林洋一と申します。
このたび、ご縁がありまして、1980年代半ばから1992年の間に東京創元社から刊行された「スーパーアドベンチャーゲーム(SAGB)」の一連のゲームブックの解説記事を書かせていただくことになりました。
SAGBは質、量ともに日本を代表するゲームブックのレーベルだと思いますが、1992年に『ギャランス・ハート』が刊行されてからは尻切れトンボのような形で自然消滅してしまいました。SAGBは30年以上前の著作群ですが、今読み返してみても新鮮な試みと楽しさに満ちています。まさに、日本人作家が書いたゲームブックの最高峰のシリーズの1つと言ってもいいと思います。更に、国内で数少ないゲームブック・コンテストも精力的に行うなど、新人作家の発掘にも熱心でした。これらの名作が令和の今に至るまで埋もれているのは非常に惜しい、ゲームブック全般に復刊の動きがある現在だからこそSAGBに心を響かせる読者もいるはずだ、と信念を抱き、「自分でゲームブックが書けないのならば、せめてその解説と紹介をしたい」と強く感じるようになりました。拙い文章ですが、オールドファンには懐かしさとともに「あれは楽しかったよな」という思い出の喚起、ニューカマーには「昭和の時代にこんな素晴らしいゲームブックがあったとは」という新たな境地の開拓の一助になれば幸いです。
「ファイティング・ファンタジー・シリーズ(FFシリーズ)」は既に社会思想社から出版された『ファイティング・ファンタジー・ゲームブックの楽しみ方』で安田均先生が優れた解説をされているので、この記事ではSAGBを中心的に考察しています。なお、「ソーサリー」シリーズと『スティーブ・ジャクソンのファイティング・ファンタジー』については、安田先生が同書で既に扱っておりますので、本連載からは割愛いたします。全13回を予定しており、第1回は斬新的な試みである「双方向移動」を日本のゲームブックに初めて取り入れた『ゼビウス』と『ドラゴンバスター』を中心に解説します。
最後に私事ではありますが、ゲームブック関連でAmazonにて『セイバーズ・クロニクル 精霊と女剣士』というファンタジー小説と、そのスピンオフのゲームブック『クレージュ・サーガ 魔法と長銃の使い手』の2冊を上梓しています。ご興味がおありの方は、是非ともAmazonで検索してみてください。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
1.ナムコのコンピューターゲームの原作 -日本人作家の創世
主な言及作品:『ゼビウス』(1985)『ドラゴンバスター』(1987)
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
古川尚美著『ゼビウス』は、日本人作家による初の本格的なゲームブックであると同時に、「双方向移動」というゲーム的特徴を前面に押し出した初の作品でもある。これまでの(特に海外産)ゲームブックは、スティーブ・ジャクソンとイアン・リビングストンの共著になる『火吹山の魔法使い』を嚆矢とするファイティング・ファンタジー・シリーズが強烈なインパクトを持ってゲームブック界に颯爽と登場した影響からか、ほぼすべてが単方向型(一方通行型)であった。
単方向型のゲームブックは、その名の通り方向先が一方通行的に決定されていることで、ある場所に行ってある道筋の選択肢を選ぶと、再び同じ場所に戻ってこられないという欠点を持っていた。つまり、「右へ行くか、左へ行くか」という選択肢を前にして、もし右に行くことを選択した場合、左に行く道筋とイベントは事実上排除されてしまう。「左に行った場合はどうなるのだろう」という疑問に答え切れない構成になっているのである。実際の冒険やTRPGであれば、「引き返してもう一方の道を探ってみる」という行動が原理的に取れるはずであるのに、欧米産であるファイティング・ファンタジー・ゲームブックのほとんどでは、一度決めた道をベルトコンベアーのように進んでいくしかないのである。
安田均が『ファイティング・ファンタジー ゲームブックの楽しみ方』でも述べているが(p. 103, p. 142)、これは基本的にファイティング・ファンタジー・シリーズのゲームブックがストーリーを重視している(逆に言えば、ゲーム性や自由度を犠牲にしている)ためである。一度決めた道のりを「逆走」できるようにすると、条件分けが複雑になり、辻褄の合わないところが多々出てくるからである。
特にリビングストンの作品で顕著なのだが、単方向型のゲームブックにおいて、この何のヒントも考察の余地もない「右へ行くか、左へ行くか」の選択肢が後々重要なアイテムを取るための決定的な進路になっていたりした。そもそも、こうした偶発的なイベントで、運頼みにのみ裏打ちされた「正しい道のり」を選択しないとクリアできないという理不尽さが備わっていたこともあった。せめて分かれ道の前の冒険や探索において、ある程度のヒントなり手がかりなりが提示してあればこの手の不満はなくなったであろうが、リビングストンも(そしてジャクソンも)「ヒントなしの選択によってクリアの是非が変わる」ことにあまり注意を払っていない。となると、プレイヤーは、ある選択肢を取った際に起こった結果を記憶しておいて、再度同じ作品をプレイするときに今度は別の道を辿るという「繰り返し」が要求されることになる。
この「ヒントなしの選択肢」という点は、安田均が的確に指摘しているように(前掲書、p. 79)、例えばジャクソンの『バルサスの要塞』やリビングストンの『盗賊都市』でも如実に現れている。例えばジャクソンの『バルサスの要塞』では、要塞に侵入する際に「薬草医者」を選択すると、「治療に来た衛兵の名前を教えろ」という理不尽な選択をヒントなしに迫られることになる。同様にリビングストンの『盗賊都市』でも、ほとんどの道筋にヒントがなく、行き当たりばったりに行く先を選択しなければならない。この傾向が顕著なのは、最後のザンバー・ボーンを倒すという決定的かつ重要な場面で、ノーヒントの三択を突きつけられることにも表れている。はずれの選択肢二つを選ぶと、問答無用でゲームオーバーになるため、トライ&エラーで挑むしかない。まさに運の要素が満載である。
なお、安田均はリビングストンの『死のワナの地下迷宮』について、同書を絶賛した上で「選択の際に手がかりが与えられている」(前掲書、p. 77-79)との評を下しているが、間違った選択が即デッドエンドに繋がる『死のワナの地下迷宮』でも、かなりの部分で「繰り返しプレイして選択の是非を覚える」作業が要求されているように思われる。例えば、主人公がダイヤモンドと倒れた戦士が転がっている部屋に到達する場面。ここで「ダイヤモンドを取りに部屋に入る」という選択をすると、即座に死の罠にはまってゲームオーバーになるのだ。事前に「この部屋にはこのような危険がある」という情報は皆無と言っていい。あるとしても、ただぼんやりとした直感に頼らざるを得ない。しかし当然、実際の冒険では、事件の前にご親切にも「ヒント」が置かれていることはまずない。だからこそ、雰囲気が抜群のゲームブックと言えるのだろう。
一方で、『ゼビウス』に始まる一連のSAGBは、ノーヒントによる理不尽な「死」がほとんど影を潜めている。もちろんサイコロを振ることによる運の要素や手がかりがほとんどない状態での選択を強いられることは多々あるが、それによってただちに死に直結することは少ない。双方向移動ということは行動に自由があるのとほぼ同義で、その分だけ行く先に関する情報を数多く手に入れることができることを意味するから、こうした特徴が付随するのはある意味では必然だろう。
さて、この双方向移動型のゲームブックは、日本人作家による作品の特徴かつお家芸ともなっていく。ファイティング・ファンタジー・シリーズ第八巻の『サソリ沼の迷路』が欧米産初の双方向移動の作品であるが、『サソリ沼の迷路』の社会思想社からの翻訳の初版が1986年2月21日で、『ゼビウス』の初版が1985年12月27日だから、微妙な差ではあるが日本における双方向移動の本格的なゲームブックは『ゼビウス』と言っていいだろう。因みに『サソリ沼の迷路』の原書"Scorpion Swamp"は1984年にペンギン・ブックスから出版されているが、『ゼビウス』の著者の古川尚美が『サソリ沼の迷路』の原書を当たっていたかどうかは定かではない。
とにかく、『ゼビウス』はこれまでになかった双方向移動と情報の収集、そして知恵を絞る必要がない直感的かつ気ままな選択を排除したという点でよりゲーム的であり、また、読者にも納得できるような形で物語の展開や結末を提示することに成功したパイオニアなのである。
双方向移動型のゲームブックで重要なのは、マッピングの手法である。現在でこそゲームブックをプレイする際に非常にポピュラーになったマッピングだが、元祖の『火吹山の魔法使い』や「ソーサリー」四部作といった作品が(基本的に)マッピングの手間を取ることなくプレイすることができるのに比べ、『ゼビウス』では作品全体においてマッピングの労が要求される。『火吹山の魔法使い』の後半でかなり複雑な双方向の迷路が登場するが、正直なところ、読者をただ惑わせるばかりで、安田均の言による「意味のある迷路」(前掲書、p. 38)にはなっていない。単に迷路を行ったりきたりさせられるだけの、難易度を上げるためだけの措置であり、ストーリー面に寄与しないどころか、初心者を遠ざけるだけのマイナスの結果になっていると言わざるを得ない。
その点、『ゼビウス』では、ゼビウス星での全ての探索にマッピングが要求される一方、幻惑的な地形やイベントが効果的な形で挟まれており、「うろうろと迷わされる」だけの迷宮になっていない(そもそも、舞台がゼビウス星という広大なもので、迷宮のような閉鎖空間ではない)。それぞれのイベントやアイテムが相互に関連していることもあり、いかにも「探索」という雰囲気を醸し出している。更に言えば、パラグラフ番号と方眼紙を用意してにらめっこをしなくとも、勘の良いプレイヤーならば冒頭の地図と記憶力を頼りにクリアすることも可能なのだ。後述する「ドルアーガの塔」三部作や『スーパー・ブラックオニキス』のような鈴木直人の作品ではマッピングがほぼ不可欠であるのに対し、『ゼビウス』は敢えて言えば「緩い」(記憶力だけでも十分に対処できる)地理的構成で作られていると言えるだろう。
ここで『ゼビウス』のルール的及びストーリー的な特徴を概観しよう。まずルール面での特徴だが、「ソーサリー」四部作や『火吹山の魔法使い』タイプと同じように、(1)敵の戦力ポイントにサイコロ二つの目を加算する、(2)自分の戦力ポイントと使用する武器のポイントにサイコロ二つの目を加算する、(3)両者を比較し、点数が多い方を勝利とする、というシンプルな戦闘システムが導入されている。違いとしては、敵が持っている高い体力ポイントをゴリゴリと削るために、何度も(1)〜(3)の手順を踏まなくてよくなり、一瞬で勝敗が決まるシステムになっていることだ(最後のボス敵ガンプとの戦いは例外的に、敵の体力が戦闘に直接反映されている)。
この方法は(安田均の言を借りれば)瞬間の興奮度こそ高いが(前掲書、p. 26-27)、敵の耐久力が戦闘に反映されないという欠点も併せ持っている。同じ著者による『ドラゴンバスター』や、後述する鈴木直人の傑作SAGB『スーパー・ブラックオニキス』などがこのシステムを(部分的に)採用しているが、考えてみれば敵の体力ポイントが高くてなかなか倒しにくいという側面も「戦力」として考慮に入れると、言わば体力ポイントの能力も戦力ポイントに内在化したとも言える。
その点を踏まえれば、この「一回きりのサイコロ勝負」も味わいがあり、なおかつ無駄にサイコロを振る手間が省けた素晴らしい戦闘システムと言えるだろう。極端な話、例えば敵の体力が一六点あったとしたら、どんなにこちらの技術点(や戦力ポイント)が高かろうと最低八回は上記(1)〜(3)の手続きを踏まねばならず、途中でだれてしまう可能性が高い(ファイティング・ファンタジー・シリーズのほとんどは、一撃で奪える体力ポイントが二点のため)。誰でも一度はしたことがあるであろう、ろくにサイコロも振らずに「勝利した」の選択肢を選ぶという(ルール的に言えばあるまじき)行為も、このシステムの下では激減するだろう。
更に言えば、この瞬間の戦闘判定において仮に負けたとしても直ちに死に直結することは少なく、自分の体力ポイントを何点か削られるだけで済むのだから、その分難易度も低下する。本来、戦闘はどちらかが殺るか殺られるかだけの世界ではないから、古川尚美が積極的に取り入れた「瞬間的戦闘システム」とでも呼ぶべきこのルールは、実は非常に理に適っていることになる。
更に、キャラクターごとに異なる「運」の概念も、ジャクソンやリビングストンはキャラクターの強さとして「運点」を導入しているが、『ゼビウス』をはじめとする他のSAGBでは、キャラクターの特性として「運点」を取り入れているものは少ない(『パンタクル』のような優れた例外はある)。その代わり、『ゼビウス』では主人公は最初に一つ超能力を駆使できるようになっており、ストーリーを進めていくと他の超能力も自然にいくつかは習得できるようになっている。これらの超能力は相対的に役に立つものと立たないものがあるが、少なくともどこかの場面では必ず持っていればプレイヤーに有利になるようになっている。この程度のルール添付ならば、プレイヤーの負担になることもまずないだろう。
こうして、『ゼビウス』は『火吹山の魔法使い』や「ソーサリー」四部作に見られた欠点を補いつつ、戦闘の手順を極力簡素化し、運点などを削った代わりに武器ポイントや超能力を織り交ぜることで、理想的なシステムを構築した。これ以後、SAGBはファイティング・ファンタジー・シリーズの要素も取り入れながらルール面やストーリー面、そしてゲーム面でも独自の発展を見せるようになる。もはや、ジャクソンやリビングストンの後塵を拝するだけではなくなったのである。
次に、SAGBに特有のストーリー展開についても検討してみよう。『ゼビウス』だけに限ったことではないが、多くのSAGBでは主人公が無色透明ではなく強烈に色づけられていることが特徴的である。欧米産のファイティング・ファンタジーのほとんどが「無色透明の君」を主人公としているのに対して、『ゼビウス』では、まず土台となるナムコから発売されたファミコン用シューティングゲーム『ゼビウス』の世界観を受け継いでいる。そしてオリジナルのキャラクターであるポール・ジョーンズ(P・J)を主人公に据え、暗号解読の鍵としても機能する独自の世界を反映する「ゼビ数字」等が登場する事で、よりストーリーを引き締める効果を持っている。
「主人公に個性がある」点をどう評価するかは完全にプレイヤーの好みの問題で、どちらが良いかという優劣をつけることはできないだろう。敢えて言えば、ジャクソンやリビングストンの海外産のゲームブックでは、まさに現実世界に生きる私たち自らが主人公として振る舞えるのに対し、国内産のキャラクターが前面に押し出されたゲームブックでは、「そのキャラクターになりきる」ことができる(こうなると、キャラクターの属性値としての『運』が組み込まれた「無色透明の君」と、逆に属性値となっていない『運』を読者自身が担わなければならないという矛盾が生じることになるが、それについては後述する)。『ゼビウス』ではその後に共同行動を取ることになる重要なサブキャラクターであるカーチャとの絡みを見ることができるが、ゲーム的な扱いは主人公P・Jとは完全に別個である。むしろ、カーチャの登場と共闘は、ストーリーにより味つけをする意味で付与されたものだ。
ストーリー性の濃さという点では、元祖のファミコンソフト『ゼビウス』がそうであるように、コンピューター(アーケード)ゲーム版作者の遠藤雅伸が単なるシューティングゲームに独自の世界観「ファードラウト」を与えることによって、夢幻的な世界を構築することに成功した。ゲームブック版『ゼビウス』では、遠藤雅伸の世界観を更に発展させて独自の「後日談」を設定し、「地球防衛機構MARS」の工作員P・Jを生み出すことで、更に深みを持たせるような工夫が施されている。更に『ゼビウス』の冒頭に「ファードラウト」に関する説明文章を配置し、アナザーストーリーを組み込むことでストーリー面での深みを増そうという意欲的な試みが行われている。
だが、実際にゲームブック版『ゼビウス』をプレイしてみると、「地球のスパイ」という役割こそ負ってはいるものの、ファミコン版と同じく「主人公P・J」が背面に隠れているのは明らかであろう。これは言うなれば「主人公は君だ!」というキャッチフレーズを持つゲームブックと、キャラクター物のファミコンソフトを舞台にしたストーリー展開との相克する特性の結果とも言えよう。
『ゼビウス』と同じシステムを導入した、やはり古川尚美著『ドラゴンバスター』(1987)も同時に見てみよう。『ドラゴンバスター』の初版は1987年12月7日に出ており、この頃にはもうゲームブックの中で双方向移動を取り入れた作品が数多く出版されていた。本拠地ローレンス王国をはじめ、迷宮内も全てが双方向移動で探索が可能で、自由度は極めて高い。戦闘システムも『ゼビウス』をそのまま受け継いだ形になっているが、『ゼビウス』では武器ポイントしか戦力ポイントに加えられなかったのに比べて、『ドラゴンバスター』では、剣の他に盾と防具にまでポイントが与えられ、戦闘の際には戦力ポイントに組み込むことができるシステムになっている。
武器だけでなく防具も含めてそのまま戦力ポイントに包含し、しかも戦闘自体は一発勝負というシステムには賛否両論があるかもしれない。鈴木直人の「ドルアーガの塔」三部作では、武器ポイントと防具ポイントは完全に分けられており、『ドラゴンバスター』とは好対照を成しているが、剣技におけるパリイ(受け流し)のように武器も防御として使えることがあり、同様に盾による攻撃(シールドラッシュと呼ばれる体当たり作戦や、スパイクシールドなどを装備していればその突起による攻撃)も現実的には可能であることを考えれば、それだけで不満を持つのはおかしいだろう。古川尚美の『ゼビウス』でも『ドラゴンバスター』でも、戦闘の際のルールは極めて単純かつ短縮されており、実際の戦闘に不可欠な要素をできるだけ内包し、かつ簡素化するという方針が見て取れる。このルールを採用すれば、強力な武器や防具を手に入れた瞬間に、確実に戦力の底上げに繋がり、見通しは良い。
戦闘に際しては、下敷きになっているファミコンソフト『ドラゴンバスター』と同じく魔法が使え、魔法を使うと消費する魔力ポイントが体力ポイントとは別に用意されている。この魔法は、『ゼビウス』でいう超能力に相当し、冒険の最中で全て覚えられるような仕組みになっている他、呪文を唱える際にはパラグラフ・ジャンプをする必要があるなど、よりゲーム的になっている。魔法自体は(原作を反映してか)どちらかというと攻撃に特化しているが、ここ一番で見せる効果の高さは、いかにも魔法を唱えているという気分を醸し出している。
一方、ストーリーの方も原作を忠実に踏襲しており、「あなた」が王国親衛隊長第一子クロービスとなって愛しのセリア姫を救出するというお馴染みのものになっている。『ゼビウス』が原作のファミコンソフトの外伝的な位置づけだったのに対し、『ドラゴンバスター』は扱いやすい題材だったせいか、特に変わったストーリーの添加はない。ついでに言うと、『ドラゴンバスター』には『ゼビウス』で扱われた賭け事のトランプゲーム(ヘキサカード)やキャラクターが登場するなど、作者の遊び心も存分に生かされている。
いずれにせよ、『ゼビウス』程のインパクトではないが『ドラゴンバスター』も良く練られた佳作に仕上がっており、後に(2004年4月)中河竜都がシステムをそのままに新たにストーリーを大幅に書き換えた『竜の血を継ぐ者』(創土社)という作品を発表している(もっとも、非公式ではあるが「中河竜都」は古川尚美の別名義とされているので、「改稿」と言っていいかもしれない)。この作品では敵のデータがコンピューターゲームの画面のように表示される仕様になっており、魔法の名前が変更されていたり、いくつかのイベントが改変されていたりと、元ネタの『ドラゴンバスター』をプレイした読者でも楽しめるようになっている。
『ゼビウス』は日本人著者による初めての本格的なゲームブックであると同時に、主人公キャラクターの創設、双方向移動、濃密な背景とストーリー展開など、後の日本人作家によるゲームブックの特徴もふんだんに取り込むこととなった。意識してかどうかは分からないが、これ以後の日本人作家のゲームブックやSAGBは、『ゼビウス』のこれらの特徴を多かれ少なかれ受け継いで執筆されていくことになる。
◆書誌情報
『ゼビウス』
古川尚美(著)
東京創元社(1985/12/27)絶版
『ドラゴンバスター』
古川尚美(著)
東京創元社(1987/12/7)絶版
■参考文献
『ファイティング・ファンタジー ゲームブックの楽しみ方』
安田均(著)
社会思想社(1990/8/1)絶版
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.1
(田林洋一)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
FT新聞の読者のあなた、初めまして、田林洋一と申します。
このたび、ご縁がありまして、1980年代半ばから1992年の間に東京創元社から刊行された「スーパーアドベンチャーゲーム(SAGB)」の一連のゲームブックの解説記事を書かせていただくことになりました。
SAGBは質、量ともに日本を代表するゲームブックのレーベルだと思いますが、1992年に『ギャランス・ハート』が刊行されてからは尻切れトンボのような形で自然消滅してしまいました。SAGBは30年以上前の著作群ですが、今読み返してみても新鮮な試みと楽しさに満ちています。まさに、日本人作家が書いたゲームブックの最高峰のシリーズの1つと言ってもいいと思います。更に、国内で数少ないゲームブック・コンテストも精力的に行うなど、新人作家の発掘にも熱心でした。これらの名作が令和の今に至るまで埋もれているのは非常に惜しい、ゲームブック全般に復刊の動きがある現在だからこそSAGBに心を響かせる読者もいるはずだ、と信念を抱き、「自分でゲームブックが書けないのならば、せめてその解説と紹介をしたい」と強く感じるようになりました。拙い文章ですが、オールドファンには懐かしさとともに「あれは楽しかったよな」という思い出の喚起、ニューカマーには「昭和の時代にこんな素晴らしいゲームブックがあったとは」という新たな境地の開拓の一助になれば幸いです。
「ファイティング・ファンタジー・シリーズ(FFシリーズ)」は既に社会思想社から出版された『ファイティング・ファンタジー・ゲームブックの楽しみ方』で安田均先生が優れた解説をされているので、この記事ではSAGBを中心的に考察しています。なお、「ソーサリー」シリーズと『スティーブ・ジャクソンのファイティング・ファンタジー』については、安田先生が同書で既に扱っておりますので、本連載からは割愛いたします。全13回を予定しており、第1回は斬新的な試みである「双方向移動」を日本のゲームブックに初めて取り入れた『ゼビウス』と『ドラゴンバスター』を中心に解説します。
最後に私事ではありますが、ゲームブック関連でAmazonにて『セイバーズ・クロニクル 精霊と女剣士』というファンタジー小説と、そのスピンオフのゲームブック『クレージュ・サーガ 魔法と長銃の使い手』の2冊を上梓しています。ご興味がおありの方は、是非ともAmazonで検索してみてください。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
1.ナムコのコンピューターゲームの原作 -日本人作家の創世
主な言及作品:『ゼビウス』(1985)『ドラゴンバスター』(1987)
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
古川尚美著『ゼビウス』は、日本人作家による初の本格的なゲームブックであると同時に、「双方向移動」というゲーム的特徴を前面に押し出した初の作品でもある。これまでの(特に海外産)ゲームブックは、スティーブ・ジャクソンとイアン・リビングストンの共著になる『火吹山の魔法使い』を嚆矢とするファイティング・ファンタジー・シリーズが強烈なインパクトを持ってゲームブック界に颯爽と登場した影響からか、ほぼすべてが単方向型(一方通行型)であった。
単方向型のゲームブックは、その名の通り方向先が一方通行的に決定されていることで、ある場所に行ってある道筋の選択肢を選ぶと、再び同じ場所に戻ってこられないという欠点を持っていた。つまり、「右へ行くか、左へ行くか」という選択肢を前にして、もし右に行くことを選択した場合、左に行く道筋とイベントは事実上排除されてしまう。「左に行った場合はどうなるのだろう」という疑問に答え切れない構成になっているのである。実際の冒険やTRPGであれば、「引き返してもう一方の道を探ってみる」という行動が原理的に取れるはずであるのに、欧米産であるファイティング・ファンタジー・ゲームブックのほとんどでは、一度決めた道をベルトコンベアーのように進んでいくしかないのである。
安田均が『ファイティング・ファンタジー ゲームブックの楽しみ方』でも述べているが(p. 103, p. 142)、これは基本的にファイティング・ファンタジー・シリーズのゲームブックがストーリーを重視している(逆に言えば、ゲーム性や自由度を犠牲にしている)ためである。一度決めた道のりを「逆走」できるようにすると、条件分けが複雑になり、辻褄の合わないところが多々出てくるからである。
特にリビングストンの作品で顕著なのだが、単方向型のゲームブックにおいて、この何のヒントも考察の余地もない「右へ行くか、左へ行くか」の選択肢が後々重要なアイテムを取るための決定的な進路になっていたりした。そもそも、こうした偶発的なイベントで、運頼みにのみ裏打ちされた「正しい道のり」を選択しないとクリアできないという理不尽さが備わっていたこともあった。せめて分かれ道の前の冒険や探索において、ある程度のヒントなり手がかりなりが提示してあればこの手の不満はなくなったであろうが、リビングストンも(そしてジャクソンも)「ヒントなしの選択によってクリアの是非が変わる」ことにあまり注意を払っていない。となると、プレイヤーは、ある選択肢を取った際に起こった結果を記憶しておいて、再度同じ作品をプレイするときに今度は別の道を辿るという「繰り返し」が要求されることになる。
この「ヒントなしの選択肢」という点は、安田均が的確に指摘しているように(前掲書、p. 79)、例えばジャクソンの『バルサスの要塞』やリビングストンの『盗賊都市』でも如実に現れている。例えばジャクソンの『バルサスの要塞』では、要塞に侵入する際に「薬草医者」を選択すると、「治療に来た衛兵の名前を教えろ」という理不尽な選択をヒントなしに迫られることになる。同様にリビングストンの『盗賊都市』でも、ほとんどの道筋にヒントがなく、行き当たりばったりに行く先を選択しなければならない。この傾向が顕著なのは、最後のザンバー・ボーンを倒すという決定的かつ重要な場面で、ノーヒントの三択を突きつけられることにも表れている。はずれの選択肢二つを選ぶと、問答無用でゲームオーバーになるため、トライ&エラーで挑むしかない。まさに運の要素が満載である。
なお、安田均はリビングストンの『死のワナの地下迷宮』について、同書を絶賛した上で「選択の際に手がかりが与えられている」(前掲書、p. 77-79)との評を下しているが、間違った選択が即デッドエンドに繋がる『死のワナの地下迷宮』でも、かなりの部分で「繰り返しプレイして選択の是非を覚える」作業が要求されているように思われる。例えば、主人公がダイヤモンドと倒れた戦士が転がっている部屋に到達する場面。ここで「ダイヤモンドを取りに部屋に入る」という選択をすると、即座に死の罠にはまってゲームオーバーになるのだ。事前に「この部屋にはこのような危険がある」という情報は皆無と言っていい。あるとしても、ただぼんやりとした直感に頼らざるを得ない。しかし当然、実際の冒険では、事件の前にご親切にも「ヒント」が置かれていることはまずない。だからこそ、雰囲気が抜群のゲームブックと言えるのだろう。
一方で、『ゼビウス』に始まる一連のSAGBは、ノーヒントによる理不尽な「死」がほとんど影を潜めている。もちろんサイコロを振ることによる運の要素や手がかりがほとんどない状態での選択を強いられることは多々あるが、それによってただちに死に直結することは少ない。双方向移動ということは行動に自由があるのとほぼ同義で、その分だけ行く先に関する情報を数多く手に入れることができることを意味するから、こうした特徴が付随するのはある意味では必然だろう。
さて、この双方向移動型のゲームブックは、日本人作家による作品の特徴かつお家芸ともなっていく。ファイティング・ファンタジー・シリーズ第八巻の『サソリ沼の迷路』が欧米産初の双方向移動の作品であるが、『サソリ沼の迷路』の社会思想社からの翻訳の初版が1986年2月21日で、『ゼビウス』の初版が1985年12月27日だから、微妙な差ではあるが日本における双方向移動の本格的なゲームブックは『ゼビウス』と言っていいだろう。因みに『サソリ沼の迷路』の原書"Scorpion Swamp"は1984年にペンギン・ブックスから出版されているが、『ゼビウス』の著者の古川尚美が『サソリ沼の迷路』の原書を当たっていたかどうかは定かではない。
とにかく、『ゼビウス』はこれまでになかった双方向移動と情報の収集、そして知恵を絞る必要がない直感的かつ気ままな選択を排除したという点でよりゲーム的であり、また、読者にも納得できるような形で物語の展開や結末を提示することに成功したパイオニアなのである。
双方向移動型のゲームブックで重要なのは、マッピングの手法である。現在でこそゲームブックをプレイする際に非常にポピュラーになったマッピングだが、元祖の『火吹山の魔法使い』や「ソーサリー」四部作といった作品が(基本的に)マッピングの手間を取ることなくプレイすることができるのに比べ、『ゼビウス』では作品全体においてマッピングの労が要求される。『火吹山の魔法使い』の後半でかなり複雑な双方向の迷路が登場するが、正直なところ、読者をただ惑わせるばかりで、安田均の言による「意味のある迷路」(前掲書、p. 38)にはなっていない。単に迷路を行ったりきたりさせられるだけの、難易度を上げるためだけの措置であり、ストーリー面に寄与しないどころか、初心者を遠ざけるだけのマイナスの結果になっていると言わざるを得ない。
その点、『ゼビウス』では、ゼビウス星での全ての探索にマッピングが要求される一方、幻惑的な地形やイベントが効果的な形で挟まれており、「うろうろと迷わされる」だけの迷宮になっていない(そもそも、舞台がゼビウス星という広大なもので、迷宮のような閉鎖空間ではない)。それぞれのイベントやアイテムが相互に関連していることもあり、いかにも「探索」という雰囲気を醸し出している。更に言えば、パラグラフ番号と方眼紙を用意してにらめっこをしなくとも、勘の良いプレイヤーならば冒頭の地図と記憶力を頼りにクリアすることも可能なのだ。後述する「ドルアーガの塔」三部作や『スーパー・ブラックオニキス』のような鈴木直人の作品ではマッピングがほぼ不可欠であるのに対し、『ゼビウス』は敢えて言えば「緩い」(記憶力だけでも十分に対処できる)地理的構成で作られていると言えるだろう。
ここで『ゼビウス』のルール的及びストーリー的な特徴を概観しよう。まずルール面での特徴だが、「ソーサリー」四部作や『火吹山の魔法使い』タイプと同じように、(1)敵の戦力ポイントにサイコロ二つの目を加算する、(2)自分の戦力ポイントと使用する武器のポイントにサイコロ二つの目を加算する、(3)両者を比較し、点数が多い方を勝利とする、というシンプルな戦闘システムが導入されている。違いとしては、敵が持っている高い体力ポイントをゴリゴリと削るために、何度も(1)〜(3)の手順を踏まなくてよくなり、一瞬で勝敗が決まるシステムになっていることだ(最後のボス敵ガンプとの戦いは例外的に、敵の体力が戦闘に直接反映されている)。
この方法は(安田均の言を借りれば)瞬間の興奮度こそ高いが(前掲書、p. 26-27)、敵の耐久力が戦闘に反映されないという欠点も併せ持っている。同じ著者による『ドラゴンバスター』や、後述する鈴木直人の傑作SAGB『スーパー・ブラックオニキス』などがこのシステムを(部分的に)採用しているが、考えてみれば敵の体力ポイントが高くてなかなか倒しにくいという側面も「戦力」として考慮に入れると、言わば体力ポイントの能力も戦力ポイントに内在化したとも言える。
その点を踏まえれば、この「一回きりのサイコロ勝負」も味わいがあり、なおかつ無駄にサイコロを振る手間が省けた素晴らしい戦闘システムと言えるだろう。極端な話、例えば敵の体力が一六点あったとしたら、どんなにこちらの技術点(や戦力ポイント)が高かろうと最低八回は上記(1)〜(3)の手続きを踏まねばならず、途中でだれてしまう可能性が高い(ファイティング・ファンタジー・シリーズのほとんどは、一撃で奪える体力ポイントが二点のため)。誰でも一度はしたことがあるであろう、ろくにサイコロも振らずに「勝利した」の選択肢を選ぶという(ルール的に言えばあるまじき)行為も、このシステムの下では激減するだろう。
更に言えば、この瞬間の戦闘判定において仮に負けたとしても直ちに死に直結することは少なく、自分の体力ポイントを何点か削られるだけで済むのだから、その分難易度も低下する。本来、戦闘はどちらかが殺るか殺られるかだけの世界ではないから、古川尚美が積極的に取り入れた「瞬間的戦闘システム」とでも呼ぶべきこのルールは、実は非常に理に適っていることになる。
更に、キャラクターごとに異なる「運」の概念も、ジャクソンやリビングストンはキャラクターの強さとして「運点」を導入しているが、『ゼビウス』をはじめとする他のSAGBでは、キャラクターの特性として「運点」を取り入れているものは少ない(『パンタクル』のような優れた例外はある)。その代わり、『ゼビウス』では主人公は最初に一つ超能力を駆使できるようになっており、ストーリーを進めていくと他の超能力も自然にいくつかは習得できるようになっている。これらの超能力は相対的に役に立つものと立たないものがあるが、少なくともどこかの場面では必ず持っていればプレイヤーに有利になるようになっている。この程度のルール添付ならば、プレイヤーの負担になることもまずないだろう。
こうして、『ゼビウス』は『火吹山の魔法使い』や「ソーサリー」四部作に見られた欠点を補いつつ、戦闘の手順を極力簡素化し、運点などを削った代わりに武器ポイントや超能力を織り交ぜることで、理想的なシステムを構築した。これ以後、SAGBはファイティング・ファンタジー・シリーズの要素も取り入れながらルール面やストーリー面、そしてゲーム面でも独自の発展を見せるようになる。もはや、ジャクソンやリビングストンの後塵を拝するだけではなくなったのである。
次に、SAGBに特有のストーリー展開についても検討してみよう。『ゼビウス』だけに限ったことではないが、多くのSAGBでは主人公が無色透明ではなく強烈に色づけられていることが特徴的である。欧米産のファイティング・ファンタジーのほとんどが「無色透明の君」を主人公としているのに対して、『ゼビウス』では、まず土台となるナムコから発売されたファミコン用シューティングゲーム『ゼビウス』の世界観を受け継いでいる。そしてオリジナルのキャラクターであるポール・ジョーンズ(P・J)を主人公に据え、暗号解読の鍵としても機能する独自の世界を反映する「ゼビ数字」等が登場する事で、よりストーリーを引き締める効果を持っている。
「主人公に個性がある」点をどう評価するかは完全にプレイヤーの好みの問題で、どちらが良いかという優劣をつけることはできないだろう。敢えて言えば、ジャクソンやリビングストンの海外産のゲームブックでは、まさに現実世界に生きる私たち自らが主人公として振る舞えるのに対し、国内産のキャラクターが前面に押し出されたゲームブックでは、「そのキャラクターになりきる」ことができる(こうなると、キャラクターの属性値としての『運』が組み込まれた「無色透明の君」と、逆に属性値となっていない『運』を読者自身が担わなければならないという矛盾が生じることになるが、それについては後述する)。『ゼビウス』ではその後に共同行動を取ることになる重要なサブキャラクターであるカーチャとの絡みを見ることができるが、ゲーム的な扱いは主人公P・Jとは完全に別個である。むしろ、カーチャの登場と共闘は、ストーリーにより味つけをする意味で付与されたものだ。
ストーリー性の濃さという点では、元祖のファミコンソフト『ゼビウス』がそうであるように、コンピューター(アーケード)ゲーム版作者の遠藤雅伸が単なるシューティングゲームに独自の世界観「ファードラウト」を与えることによって、夢幻的な世界を構築することに成功した。ゲームブック版『ゼビウス』では、遠藤雅伸の世界観を更に発展させて独自の「後日談」を設定し、「地球防衛機構MARS」の工作員P・Jを生み出すことで、更に深みを持たせるような工夫が施されている。更に『ゼビウス』の冒頭に「ファードラウト」に関する説明文章を配置し、アナザーストーリーを組み込むことでストーリー面での深みを増そうという意欲的な試みが行われている。
だが、実際にゲームブック版『ゼビウス』をプレイしてみると、「地球のスパイ」という役割こそ負ってはいるものの、ファミコン版と同じく「主人公P・J」が背面に隠れているのは明らかであろう。これは言うなれば「主人公は君だ!」というキャッチフレーズを持つゲームブックと、キャラクター物のファミコンソフトを舞台にしたストーリー展開との相克する特性の結果とも言えよう。
『ゼビウス』と同じシステムを導入した、やはり古川尚美著『ドラゴンバスター』(1987)も同時に見てみよう。『ドラゴンバスター』の初版は1987年12月7日に出ており、この頃にはもうゲームブックの中で双方向移動を取り入れた作品が数多く出版されていた。本拠地ローレンス王国をはじめ、迷宮内も全てが双方向移動で探索が可能で、自由度は極めて高い。戦闘システムも『ゼビウス』をそのまま受け継いだ形になっているが、『ゼビウス』では武器ポイントしか戦力ポイントに加えられなかったのに比べて、『ドラゴンバスター』では、剣の他に盾と防具にまでポイントが与えられ、戦闘の際には戦力ポイントに組み込むことができるシステムになっている。
武器だけでなく防具も含めてそのまま戦力ポイントに包含し、しかも戦闘自体は一発勝負というシステムには賛否両論があるかもしれない。鈴木直人の「ドルアーガの塔」三部作では、武器ポイントと防具ポイントは完全に分けられており、『ドラゴンバスター』とは好対照を成しているが、剣技におけるパリイ(受け流し)のように武器も防御として使えることがあり、同様に盾による攻撃(シールドラッシュと呼ばれる体当たり作戦や、スパイクシールドなどを装備していればその突起による攻撃)も現実的には可能であることを考えれば、それだけで不満を持つのはおかしいだろう。古川尚美の『ゼビウス』でも『ドラゴンバスター』でも、戦闘の際のルールは極めて単純かつ短縮されており、実際の戦闘に不可欠な要素をできるだけ内包し、かつ簡素化するという方針が見て取れる。このルールを採用すれば、強力な武器や防具を手に入れた瞬間に、確実に戦力の底上げに繋がり、見通しは良い。
戦闘に際しては、下敷きになっているファミコンソフト『ドラゴンバスター』と同じく魔法が使え、魔法を使うと消費する魔力ポイントが体力ポイントとは別に用意されている。この魔法は、『ゼビウス』でいう超能力に相当し、冒険の最中で全て覚えられるような仕組みになっている他、呪文を唱える際にはパラグラフ・ジャンプをする必要があるなど、よりゲーム的になっている。魔法自体は(原作を反映してか)どちらかというと攻撃に特化しているが、ここ一番で見せる効果の高さは、いかにも魔法を唱えているという気分を醸し出している。
一方、ストーリーの方も原作を忠実に踏襲しており、「あなた」が王国親衛隊長第一子クロービスとなって愛しのセリア姫を救出するというお馴染みのものになっている。『ゼビウス』が原作のファミコンソフトの外伝的な位置づけだったのに対し、『ドラゴンバスター』は扱いやすい題材だったせいか、特に変わったストーリーの添加はない。ついでに言うと、『ドラゴンバスター』には『ゼビウス』で扱われた賭け事のトランプゲーム(ヘキサカード)やキャラクターが登場するなど、作者の遊び心も存分に生かされている。
いずれにせよ、『ゼビウス』程のインパクトではないが『ドラゴンバスター』も良く練られた佳作に仕上がっており、後に(2004年4月)中河竜都がシステムをそのままに新たにストーリーを大幅に書き換えた『竜の血を継ぐ者』(創土社)という作品を発表している(もっとも、非公式ではあるが「中河竜都」は古川尚美の別名義とされているので、「改稿」と言っていいかもしれない)。この作品では敵のデータがコンピューターゲームの画面のように表示される仕様になっており、魔法の名前が変更されていたり、いくつかのイベントが改変されていたりと、元ネタの『ドラゴンバスター』をプレイした読者でも楽しめるようになっている。
『ゼビウス』は日本人著者による初めての本格的なゲームブックであると同時に、主人公キャラクターの創設、双方向移動、濃密な背景とストーリー展開など、後の日本人作家によるゲームブックの特徴もふんだんに取り込むこととなった。意識してかどうかは分からないが、これ以後の日本人作家のゲームブックやSAGBは、『ゼビウス』のこれらの特徴を多かれ少なかれ受け継いで執筆されていくことになる。
◆書誌情報
『ゼビウス』
古川尚美(著)
東京創元社(1985/12/27)絶版
『ドラゴンバスター』
古川尚美(著)
東京創元社(1987/12/7)絶版
■参考文献
『ファイティング・ファンタジー ゲームブックの楽しみ方』
安田均(著)
社会思想社(1990/8/1)絶版
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
2025年5月19日月曜日
新連載がはじまるよ! FT新聞 No.4499
おはようございます、枚方市のスターバックスから杉本です☆
今日は、新しい連載のお話です!
◆SAGBを知っているか。
今から35年近く前のお話です。
かつて、日本で「ゲームブック」と呼ばれるものが、流行した時代がありました。
分岐型の小説で、ゲームであり、物語でもある、不思議な本です。
この時代、いくつかの「シリーズ」が存在しました。
スティーブ・ジャクソンとイアン・リビングストンが中心となった「ファイティング・ファンタジー」。
創元推理文庫から刊行されていた「スーパーアドベンチャーゲーム(SAGB)」。
ジョン・ハービー・ブレナンによるドラゴンファンタジー(グレイルクエスト)のシリーズ。
◆メールを受け取りました。
2025年の4月なかば、私はある方からメールを受け取りました。
日本の東のほうで、大学で教鞭をとっておられる方でした。
「スーパーアドベンチャーゲームについて、解説本を書いたんだ。FT書房から出してくれないか?」
私はまず、驚きました。
たとえ自分の好きなものであっても、1冊の本を書くのは簡単ではありません。
それを、書き上げただけでなく、持ち込みまでする情熱。
情熱にほだされて、読みました。
仕事の手をとめて読みはじめて、そのまま最後まで読んでしまいました。
とても、面白い。
◆売れるの……?
内容は文句なしに面白いものでしたが、だからといってすぐに「出せる」とはなりません。
いちばん気になるのは、スーパーアドベンチャーゲームが、すでに刊行が止まった作品だという点です。
過去には吉里川べおさんのトンネルズ&トロールズのコラム集である『悪魔よそれをとれ』を刊行しましたが、トンネルズ&トロールズは「完全版」が出ていて、言うなれば「現役」なのです。
相談しながら、決めました。
まずは、1000人を越えるFT書房の読者に読んでもらおう。
反響がどのぐらいあるかによって、そこから先を考えよう。
なによりも、この面白いものを読んでもらおうと。
「スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本」
と題して、ゲームブックの流行の一翼を担ったシリーズについて、紹介してまいります☆
明日からの記事をお楽しみに!
それではまた!
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
今日は、新しい連載のお話です!
◆SAGBを知っているか。
今から35年近く前のお話です。
かつて、日本で「ゲームブック」と呼ばれるものが、流行した時代がありました。
分岐型の小説で、ゲームであり、物語でもある、不思議な本です。
この時代、いくつかの「シリーズ」が存在しました。
スティーブ・ジャクソンとイアン・リビングストンが中心となった「ファイティング・ファンタジー」。
創元推理文庫から刊行されていた「スーパーアドベンチャーゲーム(SAGB)」。
ジョン・ハービー・ブレナンによるドラゴンファンタジー(グレイルクエスト)のシリーズ。
◆メールを受け取りました。
2025年の4月なかば、私はある方からメールを受け取りました。
日本の東のほうで、大学で教鞭をとっておられる方でした。
「スーパーアドベンチャーゲームについて、解説本を書いたんだ。FT書房から出してくれないか?」
私はまず、驚きました。
たとえ自分の好きなものであっても、1冊の本を書くのは簡単ではありません。
それを、書き上げただけでなく、持ち込みまでする情熱。
情熱にほだされて、読みました。
仕事の手をとめて読みはじめて、そのまま最後まで読んでしまいました。
とても、面白い。
◆売れるの……?
内容は文句なしに面白いものでしたが、だからといってすぐに「出せる」とはなりません。
いちばん気になるのは、スーパーアドベンチャーゲームが、すでに刊行が止まった作品だという点です。
過去には吉里川べおさんのトンネルズ&トロールズのコラム集である『悪魔よそれをとれ』を刊行しましたが、トンネルズ&トロールズは「完全版」が出ていて、言うなれば「現役」なのです。
相談しながら、決めました。
まずは、1000人を越えるFT書房の読者に読んでもらおう。
反響がどのぐらいあるかによって、そこから先を考えよう。
なによりも、この面白いものを読んでもらおうと。
「スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本」
と題して、ゲームブックの流行の一翼を担ったシリーズについて、紹介してまいります☆
明日からの記事をお楽しみに!
それではまた!
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
2025年5月18日日曜日
Re:アランツァワールドガイド Vol.6 ポロメイア小国家連合 FT新聞 No.4498
おはようございます、編集長の水波流です。
杉本=ヨハネより預かりまして、今日配信するのは「アランツァワールドガイド」。
来月のd66シナリオの舞台となる「ポロメイア小国家連合」の再配信です。
大陸南東部にある地域で、南西部と比べると乾燥しており、他地域から独立した独自の文化が栄えています。
2009年にFT書房から刊行されたゲームブック『殉教者の試練』の舞台でもあります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
薄桜川を左手に見ながら、船は東へと進む。
川を越えたあたりから、熱を含んだ風が甲板のカメル・グラント教授の顔にあたるようになる。
上昇する気温に、カメルの気持ちは自然と上がっていた。
暑い場所を旅するときに気分が高まるのは、もともとは砂漠の生き物であったという先祖の血のせいか。
あるいは単に、彼自身が砂漠の出身だからなのか。
カメル・グラントは聖フランチェスコ市の生物学の権威であり、今はこのアランツァの世界を旅している。
穏やかな海上を船が進む。
やがて見えてくるのは、沿岸にある急な丘、そしてそこに建つ家々と王宮。
白い街壁に囲まれた、ポロメイアの街である。
◆ポロメイア小国家連合。
おはようございます、自宅の書斎から杉本です。
本日は「アランツァワールドガイド」第6弾として、「ポロメイア小国家連合」をお送りいたします。
Kaffaさんによるプレイヤー作d66シナリオ『ゴブリン・ゴブリン』の舞台でもあるこの街がどのような場所なのか(※)。
ラクダ人であり、生物学者であるカメル・グラント教授の旅を通して解説してまいります。
それでは、いってみましょう☆
◆陸路と海路。
ポロメイアの西にある商業都市ナゴールとこの街の間には、定期船が行き来している。
よそ者がポロメイアの街を目指すなら、この海路を使うのがいちばん簡単だ。
陸路を用いてポロメイアに入るのは、意外に難しい。
北から入るなら死霊沼を突っ切るか大きく迂回しなければならないし、西から来るなら何もない平原を延々と歩くよりも、海路のほうがずっと早い。
なお、このような地形上の理由から、この大陸の南東部の都市群は他の地域から独立した存在となっている。
文化的な差異と、人の行き来の量の違い。
それらがこの地域のまとまりを生み、歴史のなかで小国家連合となっていったのだ。
◆丘の上の街ポロメイア。
カメルは連合の中心である、丘の上の街ポロメイアにたどり着く。
日差しは強く暑いが、日陰に入ると涼しい。
ポロメイアは明らかに、この強烈な太陽を意識した街だ。
丘の高低差をそのまま利用して、上の建物が下の建物への日差しを防いでいる。
もっとも高い場所にある王宮が、まずその下にある建物に、直射日光が当たらないようにしている。
密集した建物は互いに影をつくるように、配置されている。
そのことで家のなかが暗くなってしまわないように、建物はどれも白く明るい。
また、道はどこも細く、左右の建物が壁のように日光を遮っている。
道の左右にある壁から頭上にかけて、小屋のような形状の建物がかかっていることもある。
光と熱を避けるための、徹底した工夫。
街の小道はこまごまと建つ建物の間を縫うように走っており、複雑な迷路状をしている。
上がっては下がるその小道は、この街が観光都市ではないことを明確に示している。
強烈なアップダウン。そして、どの道がどこに通じているかを把握することの難しさ。
街で生まれた者であるか、案内人がいないかぎり、すぐに迷ってしまうだろう。
小道の複雑さはおそらく、街に攻め込まれたときに対する備えでもある。
この街の人々は「立体的で複雑な移動」を、子どもの頃から続けているのだと、カメルは思う。
案内人は複雑な小道を迷うことなく歩いて、王宮の前にある広場へと出る。
軍人のひとりが君に誰何するが、聖フランチェスコ市から発行された書状を見せると、それ以上は何も言われない。
広場では〈丸々獣〉の騎兵隊が、かけ声とともに騎乗訓練を行なっている。
駆け上がる風が、カメルの体毛をさわさわとなでていく。
カメルは王宮の前にある広場で荷物を降ろすと、そこから広がる景色に目を移す。
◆よじれ森。
丘の上の広場にいるカメルは、東にある大きな森を眺める。
そこにある「よじれ森」は暗く、人間の手が及ばない。
動きまわる植物が棲息しており、栄養の足りないときは人間型種族も襲うという。
代表的な植物は〈オドリバナ〉で、口から酸を吐き、さらにはツタで絡みつくことで、哀れな犠牲者を身動きできなくさせる。
「よじれ森」に迷い込んだ動物は、たいていの場合はこの〈オドリバナ〉のようなクリーチャーに襲われて、食料とされてしまう。
だが、知恵と運に恵まれたものが生き残って、そこで生活を営み、さらには子孫をなすこともまれにある。
あるとき、ポロメイアの牧場から脱走した豚の群れが、この森に迷い込んだ。
大半は森のなかで食べられてしまったが、生き残った豚が何頭かいた。
豚たちは森のなかにあった{ルビ:ノード}魔力だまり{/ルビ}の影響を受けて、巨大化したという。
ポロメイアの王であるエドガー・ガゼルハイデンはこの豚たちを捕まえて調教し、騎乗生物にすることに成功した。
これが、先ほどからカメルの後ろで声をあげている騎兵隊の乗りもの、〈丸々獣〉である。
◆生きては帰れない砂漠。
「よじれ森」ほど大きくはないものの、森は他にもいくつか存在する。
カメル教授はそれらの大小の森を眺めた後、その南にある広大な{ルビ:れきさばく}礫砂漠{/ルビ}へと視線を注ぐ。
この大陸に存在する、ふたつの砂漠地域のうちのひとつ。
「生きては帰れない砂漠」だ。
もうひとつの砂漠は、カメルの出身地である西方砂漠である。
王宮の前の広場からは、広い砂漠と、そこに建つふたつの塔が小さく見える。
言い伝えによると、この砂漠は自然発生的なものではない。
先に触れたように、「よじれ森」の中心部には森の魔力だまり、フォレスト・ノードが存在すると言われている。
魔力だまりは土地に大きな影響を与える……ポロメイアの南部はかつて、平地のほとんどが森で覆われていたのだ。
そこが砂漠化してしまったのは、その地に召喚された〈悪魔〉が原因だったという。
◆双角塔。
ポロメイア地方の中央部に位置する「生きては帰れない砂漠」は、かつては大きな大きな森だった。
その森には悪に身を堕としたエルフ(闇エルフ)や、悪魔召喚師と呼ばれる悪の魔法使いがいた。
森の性質は〈よじれ森〉とほとんど同じで、動きまわる植物や、人間の肉を求める悪の種族が住み、うかつに歩ける場所ではなかった。
悪の魔法使いたちは長い年月をかけて、ひとつの塔を建てた。
「死者の塔」と呼ばれる、悪魔を召喚する魔法陣を守る強力な塔だった。
そこから溢れ出た悪魔たちは森と、近隣の小都市を滅ぼした。
それらは焦土となり、今では砂漠と化している。
ポロメイア小国家連合は悪魔と悪の種族からなる軍勢に対して、団結して対抗した。
戦が起こり、多くの犠牲者を出した末に、悪の魔法使いたちは討伐された。
ポロメイアの王は「死者の塔」を破壊する代わりに、そこからそれほど離れていない場所に聖職者たちのための塔を作った。
「死者の塔」が持つ{ルビ:けが}穢れ{/ルビ}を最小限に抑えるために、彼らの拠点が必要だったのである。
それは「生者の塔」と呼ばれ、ふたつの塔は合わせて「双角塔」と呼ばれた。
「死者の塔」を敵から奪った当時、これを破壊することがもっとも安全な選択肢だと、誰もが思っていた。
しかし、ポロメイアの王はそうしなかった。
悪魔のいる世界との「門」を開くことで、悪魔をアランツァ世界に召喚しやすくなる。
しかし、その「門」は同時に、悪魔をもといた世界に送り返す送還の儀にも役に立つ。
そう判断した王は、「死者の塔」を自分たちのために守っていくことに決めた。
◆アレス・マイモロー。
「やあ、グラント教授。お待たせして申し訳ない」
汗をかきながら登ってきたのは、人間である。
40歳前後だが痩せ型で、知的な印象を与える学者肌の男だ。
「アレス! 元気そうだな」
カメルは目を細めて再会を喜び、握手を交わす。
アレスはかつて、聖オレニアックスの客員教授として教鞭を執っていた。
カメルのもと同僚というわけだ……歴史学者であり、魔法使いでもある。
◆ビウレス。
「見えるかい、カメル。あの大きな塔が」
アレスはそう言って、「よじれ森」の東に見える、山に寄りかかるようにして倒れた大きな塔の残骸を指差した。
「ああ、なにかあるね。あれは?」
「塔街ビウレスだ。あの倒壊した塔には、いまもたくさんの人が住んでいる」
「倒壊した塔に?」
「ああ。ドワーフと人間が多いな。もともとあの塔は、魔法使いが街として造り、人が住んでいたものだったんだよ。それが、地震がきっかけで崩れたらしい。ところが、山のそばに建てていたものだから、斜めにぴったり寄りかかって、完全には崩壊しなかったんだ……それどころか、ほとんどのフロアが無事だったらしい。歳月とともに、斜めの状態で放置された塔の一階に人が住みはじめた……魔法使いが塔を放棄したことで、塔内に住む『家賃』がタダになったからな。塔の生活は思いのほか安全で、二階から上にも人が次々と『入居』して、やがてはるか上階まで住民で埋め尽くされるようになった。そうして、いつしか『塔街』と呼ばれるようになった」
アレスのていねいな説明に、カメルは礼を言う。
◆コビットの村落。
「ポロメイアで知っておくべき街は、ポロメイアとビウレスのふたつなのか?」
「そうだな。他にもあるが、そのふたつが街としては大きい。他に有名なのは、コビット(小人)の住む村落ぐらいだな」
アレスはそう言って、ビウレスのさらに向こうを指差す。
「ここからはさすがに見えないが、ビウレスのさらに向こうにある草原地帯に、コビットたちが住む村がいくつかある」
カメルはうなずく。ポロメイアにはコビットが多く居住している。
「コビットたちは享楽的で、食事や歌や踊りが大好きだ。この街の宿屋でも、その姿が見られるよ。行ってみるか?」
「ああ。よかったら、案内してくれ」
アレスは裏通りにある大きな古い宿屋に、カメルを連れて行く。
〈獣若亭〉という看板が掲げられている。
扉を開いた瞬間に溢れる喧騒に、カメルは顔をしかめる。
大声で笑い合う客たちの声が、あまりにもうるさかったからだ。
楽しいを通り越して熱狂めいている。
宿の1階が食堂兼酒場になっていて、そこに大勢の客がいる。
そのほとんどが、人間の半分ほどの背丈である。
コビットたちの姿を見て、カメルは息を呑む。
宿にいるこの小さな種族の外見に、驚いたのだ。
◆「スタイリッシュな」コビットたち。
この酒場で宴会をするコビットたち。
ひとりひとり詳細は異なるが、彼らの外見は印象的だった。
羊のような横長の、三日月型の瞳で笑う若い娘。
狼のような体毛が頭から背中へと続く青年が、ガツガツと丸々獣の肉を食らっている(※※)。
頭部に鹿めいた角が生えた中年の男が、羊の瞳を持つ娘を口説いている。
飲み、騒ぎ、歌い、パイプ草をふかし……しまいにはテーブルの上に立って踊る。
乱痴気騒ぎとはこのことだろう。
数時間後、別の宿のテラスで、カメルとアレスは夜空を眺めながら話していた。
「どうだった。〈獣若亭〉は」
「衝撃的だったな。うるさい宿だったよ」
「ははは……そうだな。私も苦手だ」
「しかし、人生を満喫していたな」
「楽しそうだったな。それに、彼らは流行の最先端を行っている、とされているんだ」
カメルは思案する。
「それは、あのコビットたちが動物めいた外見を持っていたことに関係しているのか?」
「そうだ。【獣血】といって、獣の血を打ち込むことでああいった外見になる。魔法を使って、体内に溶け込ませることができるらしい」
不思議なことだ、とカメルは思う。
カメル自身がラクダ人の出身であるためか、獣の血と聞いても抵抗感はない。
「人間やエルフには、あまりない発想だな」
アレスはうなずく。
「『下等な存在』である動物の血を入れることに、抵抗がある者は多いだろうな。だが、コビットたちはあれを『イケてる』と思っている」
アレスが言うには、【獣血】を入れると肉体が獣に近づく。外見が近づくだけでなく、動物と仲良くなりやすくなる。はじめはコビットの狩人や獣使いがこれを取り入れていたが、外見への変化が刺激的だったため、コビットの村落に広まっていったらしい。
「まあ、コビットたちはあれだ、『享楽的』だからな。〈獣若亭〉で見たとおりだ。食べること、飲むこと、ふかすこと、歌うこと……。明るいしタフな種族だが、ついていけないところはあるな」
その後もカメルとアレスは話し続けて、ポロメイアで過ごす夜はふけていった。
◆旅立ち。
カメルは目を覚まして、のびをする。
整えられた土の上に木を組んで、造られたベッド。
そこから降りて、荷物を背負う。
宿屋を出ると、表にアレスが立っている。
その背にはカメルに負けない大きな荷物がある。
「行こうか」
アレスはそう言って、カメルとともに歩きはじめる。
この物静かな男の内側には、いつも激しい情熱が満ちている。
沸騰する直前の、熱い水のように。
昨晩の別れぎわに、アレスは言った。
「しかし、いいな。旅か。俺も旅がしたい。ティーボグに会いたいよ」
アレスは美しい星空を見つめながら、離れて暮らす妻の名前を、口にした。
「私はこの後、トーンを経てロング・ナリク、ドラッツェン、チャマイと旅をする予定だ。ドラッツェンとロング・ナリクの間を無事に通れるかは分からんが」
アレスはこの勇気あるラクダ人の顔を見る。
「ロング・ナリクからドラッツェンを? 本気か?」
「ああ。主だった街はすべて見てまわるつもりだからな」
アレスは嬉しくなる。
ふたつの国は今も戦争中のはずだ。
学問のために、戦争中の国どうしの国境を越えるとは。
「大丈夫かよ。俺も行こうか?」
冗談めかした口調で、アレスは提案した。
「ああ、そうしてくれ」
カメルはテロンと垂れた唇に微笑を浮かべて、物静かにそう答えた。
カメルはアレスという人間を知っていたから、宿屋の扉を開けるとき、そこにアレスが立っているかもしれないと思っていた。
だが、昨日の今日である。
半々だと、思っていた。
だから、嬉しくて、自然と口もとが緩みそうになる。
「通行許可は大丈夫なのか?」
歩きながら、カメルは尋ねる。
「ああ。なんせ俺は地理学者にして、{圏点:小さい黒丸}あの{/圏点}ティーボグの夫だからな」
アレスは懐から通行を許可する書状を取り出して、カメルに見せる。
「いつでも旅に出られる準備はできている」
アレスの妻であるティーボグ・マイモローは、このアランツァでもっとも有名な魔法使いの1人だ。
その年齢はさだかではない。
先に説明したノード研究の第一人者で、今よりもはるかに古い時代に生まれた。
実地調査の最中に、生命の魔力だまりの放射を浴びて、無限に近い寿命を得た人物である。
善い心の持ち主で、それから何百年もの歳月を、この世界のために尽くしてきた。
魔法使いたちの頭である七賢者の筆頭として、チャマイにある魔法学校の学長を務めている。
カメルは優しい微笑をその唇と目もとに浮かべて、アレスとともに歩く。
だが、ほんの数瞬後に、その顔色は青ざめることになる。
「なあ、カメル。昨晩言ったよな。『主だった街はすべて見てまわるつもりだからな』って」
「ああ、言ったよ」
「フアナ・ニクロはどうするんだ」
カメルはギクリとする。
考えないようにしていたことに、明確な輪郭を与えられた気がした。
「死霊たちの街を通らずに、『アランツァの主だった街を見てまわった』とは言えないだろう」
カメルはアレスを見る。
アレスはうなずいて、先ほどの書状を見せる。
「大丈夫だ。ほら、見ろ。お前の相棒の地理学者は、あの死霊都市に足を踏み入れたことがあるぞ」
通行証には通常、街に入るときに記録がつけられる。
フアナ・ニクロに入ったことを示すサインを、カメルは初めて目にした。
「カメル、あなたはきっと、ポロメイアを出る頃に思うんだ。『フアナ・ニクロに寄らずに済ませていいのだろうか』ってな。だが、あそこはひとりで初めて入るには、危険すぎる場所だ」
カメルはアレスの顔を見る。
アレスのまっすぐな瞳と、目が合う。
「一緒に行こう」
この友人が急な旅立ちを決めた理由のひとつが、そこにあると感じたからだ。
「心づよいよ」
カメルがそう言うと、アレスは笑った。
「気にしなくていい。地理学者は折を見て自分の情報を更新するものだからな──生物学者よりもずっと、旅には慣れている」
「ありがとう」とカメルは言う。
「任せておけ」と、アレスは答える。
カメルの背負袋を、アレスは手のひらで叩く。
次の行き先が決まった。
∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
※……「ローグライクハーフ」初のプレイヤー作シナリオ『ゴブリン・ゴブリン』を指す。
↓「ローグライクハーフ」プレイヤー作シナリオのURLはこちら
https://talto.cc/c/rogue_like_half
※※……丸々獣は騎乗用にも食用にもされるが、両者は品種改良が進み、かなり性質が異なる。
参考文献紹介
ポロメイア小国家連合は「ドール三部作」の第三部である『殉教者の試練』に舞台として登場する(現在絶版)。
ただし、カメルが旅をしている時代よりも後年の物語として描かれる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
↓「アランツァ:ラドリド大陸地図」by 中山将平
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/MAPofARANCIA.png
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
杉本=ヨハネより預かりまして、今日配信するのは「アランツァワールドガイド」。
来月のd66シナリオの舞台となる「ポロメイア小国家連合」の再配信です。
大陸南東部にある地域で、南西部と比べると乾燥しており、他地域から独立した独自の文化が栄えています。
2009年にFT書房から刊行されたゲームブック『殉教者の試練』の舞台でもあります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
薄桜川を左手に見ながら、船は東へと進む。
川を越えたあたりから、熱を含んだ風が甲板のカメル・グラント教授の顔にあたるようになる。
上昇する気温に、カメルの気持ちは自然と上がっていた。
暑い場所を旅するときに気分が高まるのは、もともとは砂漠の生き物であったという先祖の血のせいか。
あるいは単に、彼自身が砂漠の出身だからなのか。
カメル・グラントは聖フランチェスコ市の生物学の権威であり、今はこのアランツァの世界を旅している。
穏やかな海上を船が進む。
やがて見えてくるのは、沿岸にある急な丘、そしてそこに建つ家々と王宮。
白い街壁に囲まれた、ポロメイアの街である。
◆ポロメイア小国家連合。
おはようございます、自宅の書斎から杉本です。
本日は「アランツァワールドガイド」第6弾として、「ポロメイア小国家連合」をお送りいたします。
Kaffaさんによるプレイヤー作d66シナリオ『ゴブリン・ゴブリン』の舞台でもあるこの街がどのような場所なのか(※)。
ラクダ人であり、生物学者であるカメル・グラント教授の旅を通して解説してまいります。
それでは、いってみましょう☆
◆陸路と海路。
ポロメイアの西にある商業都市ナゴールとこの街の間には、定期船が行き来している。
よそ者がポロメイアの街を目指すなら、この海路を使うのがいちばん簡単だ。
陸路を用いてポロメイアに入るのは、意外に難しい。
北から入るなら死霊沼を突っ切るか大きく迂回しなければならないし、西から来るなら何もない平原を延々と歩くよりも、海路のほうがずっと早い。
なお、このような地形上の理由から、この大陸の南東部の都市群は他の地域から独立した存在となっている。
文化的な差異と、人の行き来の量の違い。
それらがこの地域のまとまりを生み、歴史のなかで小国家連合となっていったのだ。
◆丘の上の街ポロメイア。
カメルは連合の中心である、丘の上の街ポロメイアにたどり着く。
日差しは強く暑いが、日陰に入ると涼しい。
ポロメイアは明らかに、この強烈な太陽を意識した街だ。
丘の高低差をそのまま利用して、上の建物が下の建物への日差しを防いでいる。
もっとも高い場所にある王宮が、まずその下にある建物に、直射日光が当たらないようにしている。
密集した建物は互いに影をつくるように、配置されている。
そのことで家のなかが暗くなってしまわないように、建物はどれも白く明るい。
また、道はどこも細く、左右の建物が壁のように日光を遮っている。
道の左右にある壁から頭上にかけて、小屋のような形状の建物がかかっていることもある。
光と熱を避けるための、徹底した工夫。
街の小道はこまごまと建つ建物の間を縫うように走っており、複雑な迷路状をしている。
上がっては下がるその小道は、この街が観光都市ではないことを明確に示している。
強烈なアップダウン。そして、どの道がどこに通じているかを把握することの難しさ。
街で生まれた者であるか、案内人がいないかぎり、すぐに迷ってしまうだろう。
小道の複雑さはおそらく、街に攻め込まれたときに対する備えでもある。
この街の人々は「立体的で複雑な移動」を、子どもの頃から続けているのだと、カメルは思う。
案内人は複雑な小道を迷うことなく歩いて、王宮の前にある広場へと出る。
軍人のひとりが君に誰何するが、聖フランチェスコ市から発行された書状を見せると、それ以上は何も言われない。
広場では〈丸々獣〉の騎兵隊が、かけ声とともに騎乗訓練を行なっている。
駆け上がる風が、カメルの体毛をさわさわとなでていく。
カメルは王宮の前にある広場で荷物を降ろすと、そこから広がる景色に目を移す。
◆よじれ森。
丘の上の広場にいるカメルは、東にある大きな森を眺める。
そこにある「よじれ森」は暗く、人間の手が及ばない。
動きまわる植物が棲息しており、栄養の足りないときは人間型種族も襲うという。
代表的な植物は〈オドリバナ〉で、口から酸を吐き、さらにはツタで絡みつくことで、哀れな犠牲者を身動きできなくさせる。
「よじれ森」に迷い込んだ動物は、たいていの場合はこの〈オドリバナ〉のようなクリーチャーに襲われて、食料とされてしまう。
だが、知恵と運に恵まれたものが生き残って、そこで生活を営み、さらには子孫をなすこともまれにある。
あるとき、ポロメイアの牧場から脱走した豚の群れが、この森に迷い込んだ。
大半は森のなかで食べられてしまったが、生き残った豚が何頭かいた。
豚たちは森のなかにあった{ルビ:ノード}魔力だまり{/ルビ}の影響を受けて、巨大化したという。
ポロメイアの王であるエドガー・ガゼルハイデンはこの豚たちを捕まえて調教し、騎乗生物にすることに成功した。
これが、先ほどからカメルの後ろで声をあげている騎兵隊の乗りもの、〈丸々獣〉である。
◆生きては帰れない砂漠。
「よじれ森」ほど大きくはないものの、森は他にもいくつか存在する。
カメル教授はそれらの大小の森を眺めた後、その南にある広大な{ルビ:れきさばく}礫砂漠{/ルビ}へと視線を注ぐ。
この大陸に存在する、ふたつの砂漠地域のうちのひとつ。
「生きては帰れない砂漠」だ。
もうひとつの砂漠は、カメルの出身地である西方砂漠である。
王宮の前の広場からは、広い砂漠と、そこに建つふたつの塔が小さく見える。
言い伝えによると、この砂漠は自然発生的なものではない。
先に触れたように、「よじれ森」の中心部には森の魔力だまり、フォレスト・ノードが存在すると言われている。
魔力だまりは土地に大きな影響を与える……ポロメイアの南部はかつて、平地のほとんどが森で覆われていたのだ。
そこが砂漠化してしまったのは、その地に召喚された〈悪魔〉が原因だったという。
◆双角塔。
ポロメイア地方の中央部に位置する「生きては帰れない砂漠」は、かつては大きな大きな森だった。
その森には悪に身を堕としたエルフ(闇エルフ)や、悪魔召喚師と呼ばれる悪の魔法使いがいた。
森の性質は〈よじれ森〉とほとんど同じで、動きまわる植物や、人間の肉を求める悪の種族が住み、うかつに歩ける場所ではなかった。
悪の魔法使いたちは長い年月をかけて、ひとつの塔を建てた。
「死者の塔」と呼ばれる、悪魔を召喚する魔法陣を守る強力な塔だった。
そこから溢れ出た悪魔たちは森と、近隣の小都市を滅ぼした。
それらは焦土となり、今では砂漠と化している。
ポロメイア小国家連合は悪魔と悪の種族からなる軍勢に対して、団結して対抗した。
戦が起こり、多くの犠牲者を出した末に、悪の魔法使いたちは討伐された。
ポロメイアの王は「死者の塔」を破壊する代わりに、そこからそれほど離れていない場所に聖職者たちのための塔を作った。
「死者の塔」が持つ{ルビ:けが}穢れ{/ルビ}を最小限に抑えるために、彼らの拠点が必要だったのである。
それは「生者の塔」と呼ばれ、ふたつの塔は合わせて「双角塔」と呼ばれた。
「死者の塔」を敵から奪った当時、これを破壊することがもっとも安全な選択肢だと、誰もが思っていた。
しかし、ポロメイアの王はそうしなかった。
悪魔のいる世界との「門」を開くことで、悪魔をアランツァ世界に召喚しやすくなる。
しかし、その「門」は同時に、悪魔をもといた世界に送り返す送還の儀にも役に立つ。
そう判断した王は、「死者の塔」を自分たちのために守っていくことに決めた。
◆アレス・マイモロー。
「やあ、グラント教授。お待たせして申し訳ない」
汗をかきながら登ってきたのは、人間である。
40歳前後だが痩せ型で、知的な印象を与える学者肌の男だ。
「アレス! 元気そうだな」
カメルは目を細めて再会を喜び、握手を交わす。
アレスはかつて、聖オレニアックスの客員教授として教鞭を執っていた。
カメルのもと同僚というわけだ……歴史学者であり、魔法使いでもある。
◆ビウレス。
「見えるかい、カメル。あの大きな塔が」
アレスはそう言って、「よじれ森」の東に見える、山に寄りかかるようにして倒れた大きな塔の残骸を指差した。
「ああ、なにかあるね。あれは?」
「塔街ビウレスだ。あの倒壊した塔には、いまもたくさんの人が住んでいる」
「倒壊した塔に?」
「ああ。ドワーフと人間が多いな。もともとあの塔は、魔法使いが街として造り、人が住んでいたものだったんだよ。それが、地震がきっかけで崩れたらしい。ところが、山のそばに建てていたものだから、斜めにぴったり寄りかかって、完全には崩壊しなかったんだ……それどころか、ほとんどのフロアが無事だったらしい。歳月とともに、斜めの状態で放置された塔の一階に人が住みはじめた……魔法使いが塔を放棄したことで、塔内に住む『家賃』がタダになったからな。塔の生活は思いのほか安全で、二階から上にも人が次々と『入居』して、やがてはるか上階まで住民で埋め尽くされるようになった。そうして、いつしか『塔街』と呼ばれるようになった」
アレスのていねいな説明に、カメルは礼を言う。
◆コビットの村落。
「ポロメイアで知っておくべき街は、ポロメイアとビウレスのふたつなのか?」
「そうだな。他にもあるが、そのふたつが街としては大きい。他に有名なのは、コビット(小人)の住む村落ぐらいだな」
アレスはそう言って、ビウレスのさらに向こうを指差す。
「ここからはさすがに見えないが、ビウレスのさらに向こうにある草原地帯に、コビットたちが住む村がいくつかある」
カメルはうなずく。ポロメイアにはコビットが多く居住している。
「コビットたちは享楽的で、食事や歌や踊りが大好きだ。この街の宿屋でも、その姿が見られるよ。行ってみるか?」
「ああ。よかったら、案内してくれ」
アレスは裏通りにある大きな古い宿屋に、カメルを連れて行く。
〈獣若亭〉という看板が掲げられている。
扉を開いた瞬間に溢れる喧騒に、カメルは顔をしかめる。
大声で笑い合う客たちの声が、あまりにもうるさかったからだ。
楽しいを通り越して熱狂めいている。
宿の1階が食堂兼酒場になっていて、そこに大勢の客がいる。
そのほとんどが、人間の半分ほどの背丈である。
コビットたちの姿を見て、カメルは息を呑む。
宿にいるこの小さな種族の外見に、驚いたのだ。
◆「スタイリッシュな」コビットたち。
この酒場で宴会をするコビットたち。
ひとりひとり詳細は異なるが、彼らの外見は印象的だった。
羊のような横長の、三日月型の瞳で笑う若い娘。
狼のような体毛が頭から背中へと続く青年が、ガツガツと丸々獣の肉を食らっている(※※)。
頭部に鹿めいた角が生えた中年の男が、羊の瞳を持つ娘を口説いている。
飲み、騒ぎ、歌い、パイプ草をふかし……しまいにはテーブルの上に立って踊る。
乱痴気騒ぎとはこのことだろう。
数時間後、別の宿のテラスで、カメルとアレスは夜空を眺めながら話していた。
「どうだった。〈獣若亭〉は」
「衝撃的だったな。うるさい宿だったよ」
「ははは……そうだな。私も苦手だ」
「しかし、人生を満喫していたな」
「楽しそうだったな。それに、彼らは流行の最先端を行っている、とされているんだ」
カメルは思案する。
「それは、あのコビットたちが動物めいた外見を持っていたことに関係しているのか?」
「そうだ。【獣血】といって、獣の血を打ち込むことでああいった外見になる。魔法を使って、体内に溶け込ませることができるらしい」
不思議なことだ、とカメルは思う。
カメル自身がラクダ人の出身であるためか、獣の血と聞いても抵抗感はない。
「人間やエルフには、あまりない発想だな」
アレスはうなずく。
「『下等な存在』である動物の血を入れることに、抵抗がある者は多いだろうな。だが、コビットたちはあれを『イケてる』と思っている」
アレスが言うには、【獣血】を入れると肉体が獣に近づく。外見が近づくだけでなく、動物と仲良くなりやすくなる。はじめはコビットの狩人や獣使いがこれを取り入れていたが、外見への変化が刺激的だったため、コビットの村落に広まっていったらしい。
「まあ、コビットたちはあれだ、『享楽的』だからな。〈獣若亭〉で見たとおりだ。食べること、飲むこと、ふかすこと、歌うこと……。明るいしタフな種族だが、ついていけないところはあるな」
その後もカメルとアレスは話し続けて、ポロメイアで過ごす夜はふけていった。
◆旅立ち。
カメルは目を覚まして、のびをする。
整えられた土の上に木を組んで、造られたベッド。
そこから降りて、荷物を背負う。
宿屋を出ると、表にアレスが立っている。
その背にはカメルに負けない大きな荷物がある。
「行こうか」
アレスはそう言って、カメルとともに歩きはじめる。
この物静かな男の内側には、いつも激しい情熱が満ちている。
沸騰する直前の、熱い水のように。
昨晩の別れぎわに、アレスは言った。
「しかし、いいな。旅か。俺も旅がしたい。ティーボグに会いたいよ」
アレスは美しい星空を見つめながら、離れて暮らす妻の名前を、口にした。
「私はこの後、トーンを経てロング・ナリク、ドラッツェン、チャマイと旅をする予定だ。ドラッツェンとロング・ナリクの間を無事に通れるかは分からんが」
アレスはこの勇気あるラクダ人の顔を見る。
「ロング・ナリクからドラッツェンを? 本気か?」
「ああ。主だった街はすべて見てまわるつもりだからな」
アレスは嬉しくなる。
ふたつの国は今も戦争中のはずだ。
学問のために、戦争中の国どうしの国境を越えるとは。
「大丈夫かよ。俺も行こうか?」
冗談めかした口調で、アレスは提案した。
「ああ、そうしてくれ」
カメルはテロンと垂れた唇に微笑を浮かべて、物静かにそう答えた。
カメルはアレスという人間を知っていたから、宿屋の扉を開けるとき、そこにアレスが立っているかもしれないと思っていた。
だが、昨日の今日である。
半々だと、思っていた。
だから、嬉しくて、自然と口もとが緩みそうになる。
「通行許可は大丈夫なのか?」
歩きながら、カメルは尋ねる。
「ああ。なんせ俺は地理学者にして、{圏点:小さい黒丸}あの{/圏点}ティーボグの夫だからな」
アレスは懐から通行を許可する書状を取り出して、カメルに見せる。
「いつでも旅に出られる準備はできている」
アレスの妻であるティーボグ・マイモローは、このアランツァでもっとも有名な魔法使いの1人だ。
その年齢はさだかではない。
先に説明したノード研究の第一人者で、今よりもはるかに古い時代に生まれた。
実地調査の最中に、生命の魔力だまりの放射を浴びて、無限に近い寿命を得た人物である。
善い心の持ち主で、それから何百年もの歳月を、この世界のために尽くしてきた。
魔法使いたちの頭である七賢者の筆頭として、チャマイにある魔法学校の学長を務めている。
カメルは優しい微笑をその唇と目もとに浮かべて、アレスとともに歩く。
だが、ほんの数瞬後に、その顔色は青ざめることになる。
「なあ、カメル。昨晩言ったよな。『主だった街はすべて見てまわるつもりだからな』って」
「ああ、言ったよ」
「フアナ・ニクロはどうするんだ」
カメルはギクリとする。
考えないようにしていたことに、明確な輪郭を与えられた気がした。
「死霊たちの街を通らずに、『アランツァの主だった街を見てまわった』とは言えないだろう」
カメルはアレスを見る。
アレスはうなずいて、先ほどの書状を見せる。
「大丈夫だ。ほら、見ろ。お前の相棒の地理学者は、あの死霊都市に足を踏み入れたことがあるぞ」
通行証には通常、街に入るときに記録がつけられる。
フアナ・ニクロに入ったことを示すサインを、カメルは初めて目にした。
「カメル、あなたはきっと、ポロメイアを出る頃に思うんだ。『フアナ・ニクロに寄らずに済ませていいのだろうか』ってな。だが、あそこはひとりで初めて入るには、危険すぎる場所だ」
カメルはアレスの顔を見る。
アレスのまっすぐな瞳と、目が合う。
「一緒に行こう」
この友人が急な旅立ちを決めた理由のひとつが、そこにあると感じたからだ。
「心づよいよ」
カメルがそう言うと、アレスは笑った。
「気にしなくていい。地理学者は折を見て自分の情報を更新するものだからな──生物学者よりもずっと、旅には慣れている」
「ありがとう」とカメルは言う。
「任せておけ」と、アレスは答える。
カメルの背負袋を、アレスは手のひらで叩く。
次の行き先が決まった。
∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴
※……「ローグライクハーフ」初のプレイヤー作シナリオ『ゴブリン・ゴブリン』を指す。
↓「ローグライクハーフ」プレイヤー作シナリオのURLはこちら
https://talto.cc/c/rogue_like_half
※※……丸々獣は騎乗用にも食用にもされるが、両者は品種改良が進み、かなり性質が異なる。
参考文献紹介
ポロメイア小国家連合は「ドール三部作」の第三部である『殉教者の試練』に舞台として登場する(現在絶版)。
ただし、カメルが旅をしている時代よりも後年の物語として描かれる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
↓「アランツァ:ラドリド大陸地図」by 中山将平
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/MAPofARANCIA.png
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
2025年5月17日土曜日
FT新聞1ウィーク! 第640号 FT新聞 No.4497
From:水波流
Rebellion Unpluggedに権利が売却されたT&Tですが、いよいよ新版の発表が近づいているようです。
Rebellion公式Discordサーバーでは、T&Tに長らく親しんでいるゲーマーたちが盛んに意見交換をしており、私もM!M!の展開とはまた違った期待をしています。
個人的にはリズ・ダンフォースとアフリカ投げナイフ談義ができて楽しかったり。
せっかくだから旧版の多種多様な武器リストが復活してくれたら嬉しいなぁ。
from:葉山海月
人生で最も痛い事の一つ。
1尿道結石
2自分が正義だと信じたことがちっとも正義にかすりもしなかったこと。
from:中山将平
僕ら今日5/17(土)と明日18(日)、「ゲームマーケット2025春」にサークル参加しています!
ブース配置は【J77】、開催地は幕張メッセです。新刊刊行は以下の2冊。
↓RLH雪剣の頂 勇者の轍
https://ftbooks.xyz/shinkanjyoho/sekken
↓GB単眼の巨獣
https://ftbooks.xyz/shinkanjyoho/tangan
また、5/18(日)には「スパコミ32day3(関西)」にも参加予定です!!
ブース配置は【せ50b】、開催地はインテックス大阪です。
ぜひ遊びにお越しいただけましたら。
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■5/11(日)~5/16(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2025年5月11日(日) 杉本=ヨハネ FT新聞 No.4491
アランツァクリーチャー事典 Vol.16
・本日は、アランツァクリーチャー事典の第16回です。
今回のジャンルは『虫類』!
先週に配信となったd66シナリオ『昆虫都市』にも多数登場した虫どもです。
虫嫌いの方も、「虫愛ずる姫君」気分でナウシカなバイブスで。
どうぞお楽しみ下さいませ。
2025年5月12日(月) 杉本=ヨハネ FT新聞 No.4492
6月の「ローグライクハーフ」シナリオは?
・本メルマガ「FT新聞」でも何回かゲームブックを配信させていただいたゲームブック作家、火呂居美智さんから、ご連絡をいただきました。
「ローグライクハーフのシナリオを作ってみたのだが、見てほしい」
そのようなご連絡を受け、4ヵ月。
紆余曲折ありまして、6月の第1日曜日に新作d66シナリオ『蛇禍の悪魔』を配信することを決定しました!
ポロメイア小国家連合を舞台とした作品です。
7月には、自治都市トーンを舞台とした『幽霊屋敷の果実酒』も配信します。
楽しみになさってください!
2025年5月13日(火) 中山将平 FT新聞 No.4493
カエル人が教えてくれたファンタジー創作 第45回 FT新聞 No.4493
・中山氏が創作している『カエルの勇者ケロナイツ』(ファンタジー世界に住まうカエル人たちの活躍を描いたオリジナル作品)。
その創作から、学んだことを書きつづります。今回のテーマは 「多次元構造」
たくさんの世界(次元)が重なって一つのワールドを作っている構造です。
例えば、天界・人間界・地獄界といった多重構造のこと。
善人の魂は死後、上空へ。
悪人の魂は死後、地下へ。
ふつう、そう考えますが、はたしてそれだけでしょうか?
せっかくの多次元構想なのだから、もっと世界を広げたい!
そんな考察です。
どうぞよろしくお願いいたします!
2025年5月14日(水) ぜろ FT新聞 No.4494
第11回【戦場の風】ゲームブックリプレイ
・テンポのよい語り口で勝負する、ぜろ氏のリプレイ記事、第438回をお届けしました。
今回挑戦する作品は、丹野佑・著『戦場の風』です。
戦場に取り残され、なおも戦おうというコーデリア王女を無事に離脱させるため、王命を受けて旅立った主人公。
コーデリア王女を戦場から離脱させるため、王女と相乗りした馬で、戦場を疾走する主人公ロニー。
丘のウォードレイクをまんまとまくことに成功しましたが、そこにもう1頭のウォードレイクが立ちふさがります。
進んだ先のパラグラフは、どうあがいてもゲームオーバーしか待っていない袋小路。
これまでに得てきたパラグラフジャンプを駆使して、ウォードレイクを攻略します!
ゲームブック「戦場の風」もいよいよクライマックスです!
2025年5月15日(木) 岡和田晃 FT新聞 No.4495
「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.31
・岡和田晃氏による、新しく楽しい読み物満載な「SF Prologue Wave」とのコラボ企画記事です。
善良な宇宙人が善行の限りを尽くす。美しきかな少年と異星人との絆。そんな話なのですが……。
「うまい話にゃ穴がある」し「きれいなバラにはとげがある」
その結末の破壊力に、あなたは今すぐにモヒカンヘッドになり、ボンクラ政治家、町のチンピラ、もとい「常識という強権力」に従うイヌども=「悪いオトナ」たちを、片端から処刑せざるをえません!
(つまりは結局自分を処刑するわけですが(笑))
葉山的にも教科書に今すぐ載せるべき傑作!
ライターのかなでひびき氏も絶賛!
「読まなければ一生後悔することウケアイ!」
市川大賀氏の『光の国と魔法とおじさんと』
「カネを払っても読むべき作品」とは、こういう作品の事を言うのです!
2025年5月16日(金) 休刊日 FT新聞 No.4496
休刊日のお知らせ
・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
↓↓
(ぜろさん)
『常闇の伴侶』リプレイ最終回おめでとうございます、お疲れさまでした!
児童心理学とお試し行動のくだりは、児童福祉に携わる者として、とても深く考えさせられるものでした。愛着形成と無差別愛着の違いをさらっと説明しつつ、兄ちゃんにスペシャルタイムの必要性を説くところまで踏み込んでいるところにも感銘を受けました。あ、思っただけで説いてなかった(笑)
そしてまさに今、闇エルフに関わる作品のゲームブックリプレイを書いているところなので、そういう意味でもリンクする部分がありました。
クワニャウマのIQ問題を抱えながらも、それでも最後までちゃんとクワニャウマらしさをきちんと確保したセリフまわしで締めていくところがさすがです。
次はどんな作品のリプレイに進むのでしょうか。楽しみにしています。
(お返事:齊藤飛鳥)
おかげさまで、『常闇の伴侶』リプレイは、無事に最終回までたどり着くことができましたm(_ _)m
クワニャウマ、金貨一枚の得にもならないと思って、兄ちゃんに説いておりません(笑)
闇エルフに関わるゲームブックリプレイ、どのようにリンクするのか、楽しみにしております^^
次回は、同じ冒険者と同じ舞台でローグライクハーフのリプレイとなりますので、お時間ありましたらご笑覧下さいませ。
(忍者福島さん)
出典元を言わないと信憑性が上がるミン・メーショ・ボー(笑)
さて、常闇の伴侶というタイトルの意味通りにイェシカをもらい受けましたね。妹さんを、わたしにください。が、こんなに重要な意味を持つとは。
強欲なクワニャウマの一番の宝がイェシカだったようで、イイリプレイだったなと思いました。
ただし族長とおばば。テメーはダメだ(報酬は払ってもらえたのだろうかw)
(お返事:齊藤飛鳥)
センスと遊び心の塊である民〇書房とは違って、こちらでは不遇な扱いの冒険書作家のミン・メーショ・ボーです(笑)
妹さんをわたしにください(重さLV99)状態になりましたね^^
族長とおばばからの報酬は、ダイスを振る指示がなかったので、どれだけもらえるのかがわからず、『ボーボボ』のつけものネタでお茶を濁しましたf^^
(蒙太辺土さん)
『昆虫都市』プレイしました!
風雲急を告げる導入。虫クリーチャーたちの侵攻を許してしまったチャマイでは市街戦の様相を呈している。興奮せざるを得ない素晴らしいオープニングでした。
特徴あるデカい虫たちとの戦闘はなかなかに厄介で、これも楽しかったです。
固定イベントをめくっていくごとに、いくつかの事情が明らかになっていくのもワクワクする仕掛けでした。
そんな中で、既出ゲームブック作品から"あの娘"のカメオ出演もあったり、"調合室"のコントシーン(笑)も用意されていてサービス満点!
特筆すべきはやはり、チャマイ市内の名所巡りの構造です。こうなると、一纏めとなった『アランツァワールドガイド』への期待もいよいよ膨らみます。
『戦力点』システムは中級シナリオだけあって流石にシビア(個人の感想)で、私の場合は10点で最終イベントを迎えることになってしまいました。"水門"で逃げちゃったのが痛かったな〜(笑)
『昆虫都市』と連なる作品も楽しみにしております!
(お返事:杉本=ヨハネ)
ありがとうございます!
オープニングは冒険そのもののテンションへとつながっていくので、熱いスタートをと特に気合を入れて書きました☆
アランツァワールドガイド、ひとつずつ項目ができあがりつつあります。
時が満ちるタイミングで出すことになると思うので、楽しみにお待ちいただけましたらさいわいです!
展開次第ではありますが、基本的には「水門」のアレを倒すのか、多めの敵と戦うのか、みたいなデザインになっていると思います☆
ゲームブック版『昆虫都市』や、つながりのある作品群もひとつずつ、全力で作っていきます!
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
■FT書房作品の通販はこちらから☆
FT書房 - BOOTH
https://ftbooks.booth.pm
■FT書房YouTubeチャンネルはこちら!
https://www.youtube.com/channel/UCrZg-eTeypwqfjwQ4RNIvJQ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■FT新聞が届かない日があった場合
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
FT新聞は休刊日でも「本日は休刊日です」というメールが必ず届きます。
未着の場合は、まず迷惑メールフォルダを一度、ご確認下さい。
もし迷惑メールにも全く届いていない場合は、それは残念ながらお使いのメールとの相性問題などで未着になっている可能性があります。
このところ各社のメールセキュリティ強化のためか未着のケースが複雑化しております。
未着の場合は、下記ページをご参考頂き、個々のアドレスの受信許可設定をお試しください。
https://ftnews-archive.blogspot.com/p/filtering.html
*10回未着が続いた場合、そのメールアドレスはシステムより自動的に登録解除されます。再度登録する事は可能ですので、未着が続いた場合は、お手数ですがご自身で再登録下さい。
また【バックナンバー保管庫】は公開期間が2週間ありますので、その間にご自身でテキストを保存されたり、自分で自分にコピーしてメールを送られたりする等、ご活用お願いいたします。
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
Rebellion Unpluggedに権利が売却されたT&Tですが、いよいよ新版の発表が近づいているようです。
Rebellion公式Discordサーバーでは、T&Tに長らく親しんでいるゲーマーたちが盛んに意見交換をしており、私もM!M!の展開とはまた違った期待をしています。
個人的にはリズ・ダンフォースとアフリカ投げナイフ談義ができて楽しかったり。
せっかくだから旧版の多種多様な武器リストが復活してくれたら嬉しいなぁ。
from:葉山海月
人生で最も痛い事の一つ。
1尿道結石
2自分が正義だと信じたことがちっとも正義にかすりもしなかったこと。
from:中山将平
僕ら今日5/17(土)と明日18(日)、「ゲームマーケット2025春」にサークル参加しています!
ブース配置は【J77】、開催地は幕張メッセです。新刊刊行は以下の2冊。
↓RLH雪剣の頂 勇者の轍
https://ftbooks.xyz/shinkanjyoho/sekken
↓GB単眼の巨獣
https://ftbooks.xyz/shinkanjyoho/tangan
また、5/18(日)には「スパコミ32day3(関西)」にも参加予定です!!
ブース配置は【せ50b】、開催地はインテックス大阪です。
ぜひ遊びにお越しいただけましたら。
さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■5/11(日)~5/16(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2025年5月11日(日) 杉本=ヨハネ FT新聞 No.4491
アランツァクリーチャー事典 Vol.16
・本日は、アランツァクリーチャー事典の第16回です。
今回のジャンルは『虫類』!
先週に配信となったd66シナリオ『昆虫都市』にも多数登場した虫どもです。
虫嫌いの方も、「虫愛ずる姫君」気分でナウシカなバイブスで。
どうぞお楽しみ下さいませ。
2025年5月12日(月) 杉本=ヨハネ FT新聞 No.4492
6月の「ローグライクハーフ」シナリオは?
・本メルマガ「FT新聞」でも何回かゲームブックを配信させていただいたゲームブック作家、火呂居美智さんから、ご連絡をいただきました。
「ローグライクハーフのシナリオを作ってみたのだが、見てほしい」
そのようなご連絡を受け、4ヵ月。
紆余曲折ありまして、6月の第1日曜日に新作d66シナリオ『蛇禍の悪魔』を配信することを決定しました!
ポロメイア小国家連合を舞台とした作品です。
7月には、自治都市トーンを舞台とした『幽霊屋敷の果実酒』も配信します。
楽しみになさってください!
2025年5月13日(火) 中山将平 FT新聞 No.4493
カエル人が教えてくれたファンタジー創作 第45回 FT新聞 No.4493
・中山氏が創作している『カエルの勇者ケロナイツ』(ファンタジー世界に住まうカエル人たちの活躍を描いたオリジナル作品)。
その創作から、学んだことを書きつづります。今回のテーマは 「多次元構造」
たくさんの世界(次元)が重なって一つのワールドを作っている構造です。
例えば、天界・人間界・地獄界といった多重構造のこと。
善人の魂は死後、上空へ。
悪人の魂は死後、地下へ。
ふつう、そう考えますが、はたしてそれだけでしょうか?
せっかくの多次元構想なのだから、もっと世界を広げたい!
そんな考察です。
どうぞよろしくお願いいたします!
2025年5月14日(水) ぜろ FT新聞 No.4494
第11回【戦場の風】ゲームブックリプレイ
・テンポのよい語り口で勝負する、ぜろ氏のリプレイ記事、第438回をお届けしました。
今回挑戦する作品は、丹野佑・著『戦場の風』です。
戦場に取り残され、なおも戦おうというコーデリア王女を無事に離脱させるため、王命を受けて旅立った主人公。
コーデリア王女を戦場から離脱させるため、王女と相乗りした馬で、戦場を疾走する主人公ロニー。
丘のウォードレイクをまんまとまくことに成功しましたが、そこにもう1頭のウォードレイクが立ちふさがります。
進んだ先のパラグラフは、どうあがいてもゲームオーバーしか待っていない袋小路。
これまでに得てきたパラグラフジャンプを駆使して、ウォードレイクを攻略します!
ゲームブック「戦場の風」もいよいよクライマックスです!
2025年5月15日(木) 岡和田晃 FT新聞 No.4495
「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.31
・岡和田晃氏による、新しく楽しい読み物満載な「SF Prologue Wave」とのコラボ企画記事です。
善良な宇宙人が善行の限りを尽くす。美しきかな少年と異星人との絆。そんな話なのですが……。
「うまい話にゃ穴がある」し「きれいなバラにはとげがある」
その結末の破壊力に、あなたは今すぐにモヒカンヘッドになり、ボンクラ政治家、町のチンピラ、もとい「常識という強権力」に従うイヌども=「悪いオトナ」たちを、片端から処刑せざるをえません!
(つまりは結局自分を処刑するわけですが(笑))
葉山的にも教科書に今すぐ載せるべき傑作!
ライターのかなでひびき氏も絶賛!
「読まなければ一生後悔することウケアイ!」
市川大賀氏の『光の国と魔法とおじさんと』
「カネを払っても読むべき作品」とは、こういう作品の事を言うのです!
2025年5月16日(金) 休刊日 FT新聞 No.4496
休刊日のお知らせ
・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。
↓↓
(ぜろさん)
『常闇の伴侶』リプレイ最終回おめでとうございます、お疲れさまでした!
児童心理学とお試し行動のくだりは、児童福祉に携わる者として、とても深く考えさせられるものでした。愛着形成と無差別愛着の違いをさらっと説明しつつ、兄ちゃんにスペシャルタイムの必要性を説くところまで踏み込んでいるところにも感銘を受けました。あ、思っただけで説いてなかった(笑)
そしてまさに今、闇エルフに関わる作品のゲームブックリプレイを書いているところなので、そういう意味でもリンクする部分がありました。
クワニャウマのIQ問題を抱えながらも、それでも最後までちゃんとクワニャウマらしさをきちんと確保したセリフまわしで締めていくところがさすがです。
次はどんな作品のリプレイに進むのでしょうか。楽しみにしています。
(お返事:齊藤飛鳥)
おかげさまで、『常闇の伴侶』リプレイは、無事に最終回までたどり着くことができましたm(_ _)m
クワニャウマ、金貨一枚の得にもならないと思って、兄ちゃんに説いておりません(笑)
闇エルフに関わるゲームブックリプレイ、どのようにリンクするのか、楽しみにしております^^
次回は、同じ冒険者と同じ舞台でローグライクハーフのリプレイとなりますので、お時間ありましたらご笑覧下さいませ。
(忍者福島さん)
出典元を言わないと信憑性が上がるミン・メーショ・ボー(笑)
さて、常闇の伴侶というタイトルの意味通りにイェシカをもらい受けましたね。妹さんを、わたしにください。が、こんなに重要な意味を持つとは。
強欲なクワニャウマの一番の宝がイェシカだったようで、イイリプレイだったなと思いました。
ただし族長とおばば。テメーはダメだ(報酬は払ってもらえたのだろうかw)
(お返事:齊藤飛鳥)
センスと遊び心の塊である民〇書房とは違って、こちらでは不遇な扱いの冒険書作家のミン・メーショ・ボーです(笑)
妹さんをわたしにください(重さLV99)状態になりましたね^^
族長とおばばからの報酬は、ダイスを振る指示がなかったので、どれだけもらえるのかがわからず、『ボーボボ』のつけものネタでお茶を濁しましたf^^
(蒙太辺土さん)
『昆虫都市』プレイしました!
風雲急を告げる導入。虫クリーチャーたちの侵攻を許してしまったチャマイでは市街戦の様相を呈している。興奮せざるを得ない素晴らしいオープニングでした。
特徴あるデカい虫たちとの戦闘はなかなかに厄介で、これも楽しかったです。
固定イベントをめくっていくごとに、いくつかの事情が明らかになっていくのもワクワクする仕掛けでした。
そんな中で、既出ゲームブック作品から"あの娘"のカメオ出演もあったり、"調合室"のコントシーン(笑)も用意されていてサービス満点!
特筆すべきはやはり、チャマイ市内の名所巡りの構造です。こうなると、一纏めとなった『アランツァワールドガイド』への期待もいよいよ膨らみます。
『戦力点』システムは中級シナリオだけあって流石にシビア(個人の感想)で、私の場合は10点で最終イベントを迎えることになってしまいました。"水門"で逃げちゃったのが痛かったな〜(笑)
『昆虫都市』と連なる作品も楽しみにしております!
(お返事:杉本=ヨハネ)
ありがとうございます!
オープニングは冒険そのもののテンションへとつながっていくので、熱いスタートをと特に気合を入れて書きました☆
アランツァワールドガイド、ひとつずつ項目ができあがりつつあります。
時が満ちるタイミングで出すことになると思うので、楽しみにお待ちいただけましたらさいわいです!
展開次第ではありますが、基本的には「水門」のアレを倒すのか、多めの敵と戦うのか、みたいなデザインになっていると思います☆
ゲームブック版『昆虫都市』や、つながりのある作品群もひとつずつ、全力で作っていきます!
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
■FT書房作品の通販はこちらから☆
FT書房 - BOOTH
https://ftbooks.booth.pm
■FT書房YouTubeチャンネルはこちら!
https://www.youtube.com/channel/UCrZg-eTeypwqfjwQ4RNIvJQ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■FT新聞が届かない日があった場合
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
FT新聞は休刊日でも「本日は休刊日です」というメールが必ず届きます。
未着の場合は、まず迷惑メールフォルダを一度、ご確認下さい。
もし迷惑メールにも全く届いていない場合は、それは残念ながらお使いのメールとの相性問題などで未着になっている可能性があります。
このところ各社のメールセキュリティ強化のためか未着のケースが複雑化しております。
未着の場合は、下記ページをご参考頂き、個々のアドレスの受信許可設定をお試しください。
https://ftnews-archive.blogspot.com/p/filtering.html
*10回未着が続いた場合、そのメールアドレスはシステムより自動的に登録解除されます。再度登録する事は可能ですので、未着が続いた場合は、お手数ですがご自身で再登録下さい。
また【バックナンバー保管庫】は公開期間が2週間ありますので、その間にご自身でテキストを保存されたり、自分で自分にコピーしてメールを送られたりする等、ご活用お願いいたします。
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
2025年5月16日金曜日
休刊日のお知らせ FT新聞 No.4496
おはようございます。
本日は、タイトルのとおり休刊日です。
毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
FT新聞編集部一同
■FT新聞へのご投稿はコチラ!
こんな記事はどうかな?というご相談からでもぜひご連絡ください。
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
■FT書房作品の通販はこちらから☆
FT書房 - BOOTH
https://ftbooks.booth.pm
■FT書房YouTubeチャンネルはこちら!
https://www.youtube.com/channel/UCrZg-eTeypwqfjwQ4RNIvJQ
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
本日は、タイトルのとおり休刊日です。
毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
FT新聞編集部一同
■FT新聞へのご投稿はコチラ!
こんな記事はどうかな?というご相談からでもぜひご連絡ください。
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
■FT書房作品の通販はこちらから☆
FT書房 - BOOTH
https://ftbooks.booth.pm
■FT書房YouTubeチャンネルはこちら!
https://www.youtube.com/channel/UCrZg-eTeypwqfjwQ4RNIvJQ
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
2025年5月15日木曜日
「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.31 FT新聞 No.4495
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.31
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
●はじめに(岡和田晃)
勇気とはいったい何でしょうか。まったく何も関係するところのない他者のために、無償の善意を発揮することは、勇気の発露のひとつのあり方であろうと思います。
バットマンにせよ、ウルトラマンにせよ、アンパンマンにしろ、ヒーローには必ず、そういった性格があります。ヒロインであっても変わりません。ワンダーウーマンやエスパー魔美でも、そういった主題は扱われていました。
ポピュリストの台頭により格差は開く一方、生活保護受給者や野宿者へのバッシングも苛烈をきわめる状況で、人と人との間にあった暖かさは急速に失われ、連帯を培うはずのSNSでは、インフルエンサーの「犬笛」によって人が死に追いやられるのが恒常化しています。
そんな状況からすると、今回の分割掲載第3回が身にしみますね。
大伴昌司や竹内博らの怪獣図鑑や大百科に夢中になった方も、そうではない方も、お愉しみください。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
オリジナル小説「光の国と魔法とおじさんと」(3)
市川大賀
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
川の向こう岸。
幅広の川なので、服の色と背たけぐらいしか見えない距離のむこうがわで、おじさんは一人のホームレスを見つけた。
ホームレスは、よごれまくったコートを着込んだまま、川原でうずくまって転がっている。
次のしゅんかん、おじさんはそのホームレスのそばまで移動していた。
ホームレスはよっぱらってころがっているので、おじさんのしゅんかん移動には気づいていない。
「どうしたんですか」
おじさんがしゃがみながらそうたずねると、ホームレスはうすく目をあけておじさんを見上げた。
「あんた、誰だ。ここらへんじゃみかけない顔だね」
ちょっとあやしむように、ちょっと興味ぶかく、ホームレスはおじさんを見つめつづけた。
「最近、ここに来たんです。そしたらあなたを見かけた。春先になったとはいえ、まだまだ夜は冷えるのに、そんなままで寝ていると病気をこじらせますよ」
その言葉をきいたホームレスは、少しよいがさめたような顔になった。
「あんた、どうしておれの病気のことを?」
もちろんおじさんは魔法でホームレスの病気を感じとったのだが、本当のことを知られてはまずいおじさんは「医学の仕事を昔していましたから」とウソをついた。
「そうかい……。わかっちゃうもんなんだなぁ」ホームレスは苦笑した。「肝臓だよ。もう酒でパンクしてるんだ。体がうまく動かなくなって、仕事がまんぞくにできなくなってから、もう5年もたっちまった」
ホームレスは、さっきまでのおじさんのように、ゆっくり空を見上げた。
「若いときはいきがってたけどよ。年とってこうなっちまうと弱気になってなぁ。本当は、遠いいなかに女房と子どもがいるんだよ。もう10年も会っていない」
ホームレスは、少し鼻をすすってひとりごとのように話し続けた。
おじさんは、黙ってしゃがんでそれを聞いていた。
「思いかえせば、好き勝手ばかりの人生だったよ。支えてくれた女房のことも、守らなきゃいけない家族のことも、かなぐり捨てて自分のやりたいほうだいやっちまってさ。気がつけば、家族とこんな遠くはなれた場所でころがってるんだ」
「帰って顔を見せてあげたらどうですか? いまからでも遅くない」
おじさんがそう言葉をかけると、ホームレスは「ほら、そうきた」と笑って言い返した。
「みんなそうは言うけどよ。誰がどこで電車代を出してくれるっていうんだ。新宿経由で大泉学園ってなわけにゃいかねぇんだぞ? それによ、たとえ電車代が手に入ったとしてもこの体だよ。長年の酒ですっかり体がいかれちまって、いうことなんか聞きゃしねぇ。こんな体で、何時間もの電車なんかにたえられるもんかい」
そうはき捨てるように話すホームレスの顔を、見つめるおじさん。
「ちっ……わかっちゃいるんだよ。もっとこうなる前にいくらでも、改心したり、やりなおすタイミングはあったはずだってな。でも、もう手遅れだよ、何もかも。おれの人生ぁ、最後までこうなんだよ……」
目から涙をこぼすまいと、必死に真上を見上げるホームレス。
おじさんは考えた。ほんの数秒だったけど、目をつぶってしっかり考えた。
そしてゆっくりと、目をあけてホームレスの目を見た。
「家族の顔、お子さんのすがた、もう一度見たいですか? 会いたいですか?」
ホームレスの目から、ぼろぼろと涙があふれでた。
ホームレスはおじさんの目を見ながら、いっきに泣き出した。
「会い……てぇ……」
鼻すすりとしゃっくりの間で、必死にホームレスは声をしぼりだした。
「ひとめ……会いたい……。女房に……子どもに……」
ホームレスの涙は、あおむけのままの顔をつたって耳に流れ込んだ。
そのまますがるようにおじさんの腕をつかむホームレス。
「だいじょうぶ」
おじさんはそれだけを言うと、自分の腕からホームレスの腕をゆっくりはずし、そのまま自分の手を、ホームレスの腹部にあてがった。
おじさんが精神を集中する。
あわい光がおじさんの手からあふれて、ホームレスのおなかにこぼれだす。
涙でぐしゃぐしゃのホームレスには、その光は見えていなかったのかもしれない。
しかし、おじさんの「手当て」の効果が出てきたことは、ホームレス自身が、自分の体の軽さで理解した。
「うそみてぇだ……あんなに全身に広がっていたダルさが消えていく……」
ホームレスの肝臓が治っていくにしたがって、おじさんのエネルギーが急げきに消もうする。
しかし、途中でやめてはなんの意味もない。
途中でやめてしまっては、ホームレスの肝臓はけっきょく悪いままで、おじさんのエネルギーが消もうするだけになってしまう。
それはあの日あのとき、大切な人を守れなかったときの、くり返しになってしまう。
おじさんは、歯をくいしばってがんばった。
ホームレスの涙の願いにこたえるために、全身のエネルギーを送り込んだ。
「軽い……からだが軽いよ! あんたすげぇよ! すごい! なんともないぜ!」
ようやく治療が完了すると、ホームレスはおおよろこびで立ち上がった。
その場でいきおいよく足ぶみをして、ジャンプしたりステップをふんだりする。
いつごろいらいなのかの健康な体を、ホームレスはよろこんでまんきつした。
「こんな体が思いどおりに動くのは何年ぶりだよ! すげぇぜ!」
まるで優勝したチームの野球選手のようなよろこびぐあい。
しかし、おじさんにはまだやることが残っていた。
さっきもホームレスが言っていたように、彼がいなかへ帰って家族と会うには、健康な体だけではなく、お金も必要なのだ。
そのどちらが欠けても、ホームレスをすくってあげることにはならない。
お金を用意する、それもホームレスがいなかへ帰れるまでの金額を。
何もない無から、何かを生み出す魔法は、おじさんの魔法の中でも一番、体力とエネルギーを消もうする技だった。
さいわい、ホームレスはまだ、よろこびにひたってさわいでいる。
魔法を使うなら今しかない、おじさんは手をふところに入れて神経を集中した。
さっきの治療の魔法と連続なので、無理がたたってめまいがしてくる。
しかし、おじさんは必死にがまんをして魔法に力をこめた。
足元がぐらついて、いしきが遠くなりかける。
まだだ、あともう少し、おじさんは自分をがんばらせた。
ほどなく、おじさんのふところの中には、何枚かの一万円札が出現した。
しかし、もう全ての力がここで限界。
早くこのお金を彼にわたして、自分も休まなくてはと思いホームレスにちかづくと、それまでせなかを向けて、ラジオ体操のような運動をしていたホームレスが、けはいに気づいてはっと振り向いて来た。
その目は、しゅんかんてきに、おじさんの手ににぎられたお金に向けられた。
おじさんの手のお金を見つけて、目がいっぱいに開くホームレス。
いいんです、これをどうか使ってください、おじさんはそう言おうとするが、心臓が苦しくて、息もたえだえで言葉にならない。
次のしゅんかん。
ホームレスは目をギラリとかがやかせて、とつぜんおじさんのおなかをなぐった。
「ぐっ! 」
力いっぱいなぐられたので、おじさんがうめき声をあげておなかをおさえる。
魔法の使いすぎで全身に力が入らず、おじさんはよろよろとくずれそうになった。
ホームレスは、こんどはおじさんの足をうしろからけってきた。
思わず、前のめりに倒れ込んでしまうおじさん。
ホームレスはおじさんに近づいてしゃがみこむと、おじさんの手ににぎられていたお金をむしりとった。
一万円札の枚数をかぞえて、目をかがやかせるホームレス。
「この体とこんだけの金があれば、今夜はひさしぶりに、あびるほど酒が飲める!」
ホームレスはそうさけぶと、くずれてうずくまっているおじさんにもう一回けりを入れて、その反動で少しうしろにあとずさり、そのまま走り去っていった。
おじさんはどうすることもできなかった。何をする力も残っていなかった。
ただ。
ただ向かい岸の、いつもの川原にもどらなくてはと、それだけを考えていた。
向かい岸にもどって、ちゃんと待ち続けなければとおじさんは思っていた。
誰を待つの? 何を待つの?
それはおじさんにもわからなかった。
けど、もどらなければいけない。早くもどって待ち続けなければいけない。
そればかりがおじさんの頭のなかで、うずまいていた。
川原のもとの場所で。
おじさんは、さすがに疲れた表情をかくせずに、横になっていた。
ホームレスのことは、あれからどうしたんだろうと心配はしていたけど、おじさんはけっして、うらんだり、だまされたと怒ったりしなかった。
でもそれは、おじさんが光の国から来た聖人君子だったからではなかった。
おじさんだって若いころは、友だちとけんかもした、ウソをついたこともある。
きっと故郷には、おじさんにうらぎられたといまでも思ってる人もいるのだろう。
だからこそ、おじさんはホームレスの人をうらみはしないのだった。
おじさんは、倒れたまま空を見上げた。
そこでおじさんは、誰かの名前をつぶやいたのかもしれない。
そしておじさんは、ポケットの中からきれいでとうめいな石をとりだし見つめた。
それは手のひらに乗るくらいの大きさで、形はちょっとごつごつしていたが、すき通るように透明で、日差しをうけて輝いていた。
おじさんは、あらい呼吸をくりかえしながら、じっとその石を見つめていた。
その石は、魔法を使うたびに小さくなっていって、使い果たすと消えてしまうことは、おじさんしか知らなかった。
さっきのホームレスのできごとで、また石が小さくなったことを、おじさんは確認していた。
後悔はない。
ただ、石が小さくなるにつれて、大切な人との思い出も小さくなっていきそうな気がして、おじさんは悲しい気持ちにつつまれていった。
涙が出そうになって、誰も見ていない今ここでなら、すこし泣こうかともおじさんは思ったが、一番大事な人が、最後に目をつぶる直前に、おじさんに向けて言った「もう泣かないでね」を、思い出しておじさんは、必死にがまんをすることに決めた。
昨日よりも一回り小さくなった石を見つめながら、この石がなくなるまで、あの子たちに魔法をみせてあげられればいいなと、おじさんはそう考えると、少し悲しみがうすらぐのだった。
夜になって。
いつの間にかねむっていたおじさんは目をさました。
手には小さくなった魔法の石がそのままにぎられており、エネルギーは消もうしたままだったが、少し休めたのでひといきがつけたようだった。
「ひとりか……」
手の中の石と夜空を変わりばんこに見つめながら、おじさんが誰に言うでもなくつぶやいた。
見つめる夜空には、そのどこかに光の国があるのかもしれないが、もうおじさんには、その光の国を見つけることはできなくなっていた。
あの日、あのときから。
おじさんは今日のようなことを、何十回もくりかえして来た。
そのたびに石はすり減り、小さくなっていく。
どうせすり減り続けて消えていく運命ならば、せめてそれがむくわれないことではなく、子どもたちの笑顔と引き換えの方がいい。
おじさんが子どもたちに手品というかたちで魔法を見せてあげたのは、そんな理由があった。
「……?」
おじさんは、けはいを感じて振り向いた。
夜のやみの中を、誰かがこちらへ走ってやってくる。
子どもたちのうちの誰かだろうか? 手品を見たくてやってきたのだろうか?
そう思っておじさんが目をこらして見ると、やってきたのはシンイチのママだった。
「シンイチ君のお母さん……?」
「シンイチが……」ママはまっさおな顔で叫ぶように言った。「シンイチが行方不明なの!」
えっ! とおじさんは息をのんだ。
ママはおじさんにすがるように叫び続けた。
「ごめんね、ごめんなさい、おじさん! わたしはあの子の気持ちに気づいてあげられなかった! あの子が好きだったのは、手品なんかじゃなかったの! あなたが見せてくれる奇跡だったの! それなのに、わたしはあの子のために、親としてって勝手に思い込んで……。あなたのところへ行くのを、もうやめなさいって強くしかっちゃって……。そしたら……夕飯が終わったら……あの子が行方不明なんです。どこにもいないんです!」
「シンイチ君が……!?」
シンイチが行方不明と聞いて、さすがのおじさんもおどろいてうろたえた。
「わたしが悪いの! シンイチ! おじさん! 許して!」
「お母さんおちついて!」おじさんがママの両肩をつかんだ。「シンイチ君はここへは来ていません。でも、そう遠くへは行っていないでしょう。ぼくもシンイチ君を探します。だからおちついて!」
「おじさん……シンイチを探してください。あの奇跡の手品で探してやってください。あの子は本当に、あなたの手品が大好きだったんです。わたしたち大人には同じでも、わたしやケイ君のパパがやってみせた手品なんて見向きもしなかった。あの子が好きだったのは、手品じゃなくって、あなたの手品だったんです。全てわたしが悪かったんです……。どうか……どうかあの子を探してください! お願いします!」
「いいんですよ。もちろんなんとしても、シンイチ君をさがしましょう」
おじさんは、泣きじゃくるママに強くそう言って、疲れた体をひきずるように歩きはじめた。
川原の上までたどり着き、そこで手にしていた透明な石をみつめる。
「シンイチ君を探すんだ」
石にそういいきかせるおじさん。
おじさんが石を空にむけてかかげると、石はまばゆい光りをはなちはじめた。
光りはやがて、空へのびる一本の光の矢になり、のびた先でカーブをえがいていく。
その先に、シンイチ君がいるのだ、それを知ったおじさんの体は宙にうき、その光の中を、夜空へつきすすむようにものすごいスピードで飛びはじめた。
「シンイチ君、今すぐに君のところへ行くからね」
光りの道のなかを、ちょう高速で飛ぶおじさん。
その手ににぎられている光の石は、どんどん小さくなっていく。
しかしおじさんは、光の石には心配をしないで、光の矢の先を見つめつづけた。
「見つけたぞ! シンイチ君だ」
その光の先に、シンイチ君はいた。
けいしゃのきつい川原の下にたおれている。
そばには自転車もころがっている。
多分、川原ぞいのせまい道を、なれない自転車で急いで走っていて、道からころがり落ちてしまって気を失っているのだろう。
「シンイチ君!」
おじさんは急降下でシンイチ君のところへかけつけると、そのままシンイチ君をだきしめ上げて、ふたたび同じスピードで空へ飛びあがった。
おじさんはシンイチ君をかかえたまま、グングン空をかけあがる。
ママが待っている川原まで、とにかく早く帰らなければ。
おじさんがそう思って飛んでいると、おじさんのうでの中のシンイチが目をさました。
「あれ……ここはどこ?」
「シンイチ君、目がさめたのかな? けがはないのかい? だいじょうぶかい?」
おじさんのやさしい言葉を耳にして、シンイチは今自分がおじさんにだかれながら、空を飛んでいることに、はじめて気がついた。
「おじさん! おじさんがぼくを助けてくれたんだね! すごい! 今、ぼくは空を飛んでいるよ! おじさんすごいよ!」
元気なシンイチの反応をみて、笑顔でほっとするおじさん。
「元気そうだね、本当に良かったよ。君のママが待っているところまですぐだから、おとなしくおじさんにしがみついているんだよ。すぐにとう着するからね」
「うん!」
シンイチは、キラキラした目で返事をすると、おじさんの腕にぎゅっとしがみつきながら、目のまえに広がる星空と、下に広がる夜の町を見つめていた。まちがいない、夢でもない、いまぼくは空を飛んでいるんだ。
シンイチは、土手を自転車で走っていて転んだしゅんかんの恐怖をすっかり忘れて、生まれてはじめて見る景色に心をうばわれていた。
おじさんとシンイチを包む光は、おじさんの手から放たれているのをシンイチは見つけた。
その手の中の石。
その石が、今、自分とおじさんを包んでいる光を発していることをシンイチは知ったが、その意味までは、こうふんしていて気がつけなかった。
そのうち、いつものおじさんの居場所の川原にとう着して、おじさんはスピードと高度をさげておりたった。
いつのまにか、シンイチのママはいなくなっていた。
「ママはたぶん、ママひとりでシンイチ君を探しに行ってるんだろう。待っていればすぐにもどってくるよ。安心していいからね」
おじさんはそう言いながら川原にすわりこんだ、そうとう疲れているようだった。
「おじさん! おじさんの魔法はやっぱりすごいよ! ぼく、いま飛んだんだよね! 空を飛んだんだよね!」
「そうだよ」おじさんは笑って言った。けどその笑顔がものすごくつらそうな笑顔だということに、シンイチは気づく余裕はなかった。
「空を飛んで気持ちよかったかい」
「うん! すごく楽しかった! また飛びたいな! ……あっ」
自分で言ったことばで、シンイチはようやく気づいた。
おじさんが魔法をつかうと、エネルギーが消もうするのだ。
さっきおじさんの手の中で、光る石がどんどん小さくなっていってしまっていたのはきっと、おじさんのエネルギーが少なくなっていったことを表わしていたのだ。
すべてを理解したシンイチは、あわてておじさんのもとにかけよった。
「おじさん、だいじょうぶ!? おじさんごめんね! ぼくのために魔法をつかわせて。だいじょうぶ!? 死んじゃだめだよ! おじさん!」
おじさんは、たくさんの汗をかきながら、がんばって笑顔を作った。
「心配しないでいいよシンイチ君。おじさんはだいじょうぶだから。シンイチ君が無事でいてくれて、それでじゅうぶんだから」
「そんなこと言ったって! おじさんが死んだら意味がないじゃないか! おじさん、もう一度、あの光る石を見せてよ、おじさん!」
おじさんは、少しうつむいて考えたが、決心したような顔で、シンイチににぎったままの右手をさしだし、ゆっくりと開いた。
そこには、指先ほどの大きさにまで小さくなった石が、あわく光りかがやいていた。
それを見たシンイチは、おどろいて言葉がだせなかった。
自分のせいで、自分を助けるために、おじさんの大事な石が、キャンディーくらいに小さくなってしまったことを、シンイチははっきり理解していた。
「あまり自分のせいだなんて、思わないでね」
その気持ちと考えを、全部わかっていたおじさんが、やさしく声をかけた。
「シンイチ君のせいじゃないんだよ。君を助けることを、おじさんが選んだんだから。それにもう、シンイチ君と出会うずっと前にはもう、石のエネルギーはぼくを光の国に帰すだけのぶんは残っていなかったんだって、このあいだ、ちゃんと話しておいただろう? だから、気にしちゃいけないんだよ」
「でも……けど……おじさんが……おじさんまで死んじゃう……」
シンイチは泣き出していた。
自分のしでかしたことがどれだけ大変なことで、とりかえしがつかないのか、それを感じて、シンイチは泣きじゃくりつづけた。
「ごめんなさい……ごめんなさい、おじさん……」
声にならない泣き声で「ごめんなさい」をくりかえすシンイチの頭を、おじさんはやさしくなでてあげた。
おじさんの手に乗っていた、もう小さくなってしまっていた石を、ぎゅっとにぎりしめるシンイチ。
両手で石を包んでにぎり、目をぎゅっとつぶって祈るシンイチ。
すると。
にぎりあわせたシンイチの両手の指のすきまから、まばゆく強い光があふれだし、その光はシンイチとおじさんをてらしはじめた。
「え……?」
あまりの光のまばゆさに、泣くのも忘れたシンイチがゆっくりと手をひらく。
そこには。
シンイチがはじめて見たときよりも、もっと大きな石がかがやいていた。
「おじさん……石が……石が大きくなった!」
おじさんもおどろいた顔で、シンイチの手の上の石を見つめる。
こんなことは、おじさんにも予想外だったのだ。
おじさんの体は、それでも弱っているままだったが、すくなくとも石は、光の国へ帰れるエネルギーをたくわえている大きさには復活している。
奇跡だ、本当の奇跡がおこったのだ。
おじさんはそう思った。
「シンイチ君が、ぼくの石をもとの大きさにもどしてくれたんだね」
そう言われてシンイチは、今、自分がとてもすてきなことをしたのだと気がついた。
自分がしたことが、おじさんの夢をかなえてあげられるのかもしれない。
自分はおじさんにいっぱい、いろんなことをしてもらって助けてもらったけど、自分にも、おじさんを助けてあげられることはあって、それを今できたんだという実感は、シンイチ自身の心を包んで、あたためていた。
「おじさん! やっぱり信じることが勇気だったんだね! 勇気がちからだったんだね!」
「はは……違うよ」
おじさんは、苦しくいきをはきながら小さな声で言った。
「君が、シンイチ君自身が、おじさんのことを大事だと思ってくれた。大切だからと泣いてくれた。それだけでいいんだよ。君が本当に、自分が大事だと思ったものを大事にしたから、今回は、たまたまこの石はその気持ちにこたえてくれた……それだけだよ」
おじさんは、それでもがんばって笑顔をつくってあげた。
シンイチは、手の上で大きく光る石をすっとおじさんに差し出した。
「おじさん、この大きさの石があれば、おじさんは光の国に帰れるの? 元気になって、自分が生まれた光の国に帰れるの?」
シンイチの目から涙がとまらない。
おじさんは、目を細めてその石を受け取った。
「だいじょうぶだよ。これだけあれば十分だよ。おじさんは帰れるよ。だからもう泣かないで。おじさんはね、もう自分のために泣いてもらうのはつらいんだよ。わかってくれた人がわかってくれるだけで、それでいいんだ。おじさんが、ここで大切な人を失ったあと、ここに居つづけてもむだじゃなかったんだって、それで泣くくらいによかったと思えてくれる人がいたんだって、それをわからせてくれただけで、本当にうれしいんだよ。シンイチ君、ありがとうね」
おじさんは、苦しそうな顔をしながらも、ものすごくやさしい顔でそう言った。
シンイチはどうしていいかわからなかった。
何を言ってもうそになりそうで、何をいえばいいのかわからなかった。
泣くしかなかった。
「シンイチ! シンイチなの!?」
川原の向こうから、シンイチのママの声がひびいてきた。
おじさんは、ママの方に向かって立ち上がると、深くおじぎをした。
「シンイチ!」
「ママ!」
シンイチを見つけたママは、おどろいたような、安心したような顔をいっしゅん見せたあと、さけぶような泣き声をあげて、シンイチにかけよって抱きしめた。
「シンイチ! シンイチ! 無事だったのね! ごめんね! 本当にごめんね!」
シンイチを抱きしめたまま、泣きつづける。
ママがこんなにわんわん泣くのは初めてだ、シンイチはちょっと冷静にうけとめた。
けど、それだけ自分はママに心配をかけたのだ。
そして、それを助けてくれたのはおじさんなんだ。
そのことをママにつたえよう、全部おしえてあげよう。
シンイチがそう考えたときだった。
ママは泣いていた顔のままおじさんを見上げ、そして鼻をぐずぐずいわせながら話し始めた。
「今回、シンイチを見つけて助けてくれたことは感謝します。それはお礼をいいます。けれど……けれどもう、わたしたちを巻き込まないでくれませんか? もう、わたしたちにかかわらないでくれませんか。こんなことはもう……いやなんです」
え!? ママは何を言っているの?
シンイチには何がなんだかわからなかった。
ママは何をおじさんに言っているのだろうか? ぼくを助けてくれたんだよ?
かってに夜に自転車にのって、転んで気を失っていたところを助けてくれたのはおじさんだよ。
いっしょに「ありがとう」だけでいいじゃないか。巻き込むって何? ぼくがかってにやったことで、ぼくがおじさんを巻き込んだんだよ。
シンイチはとまどいながらもいっしょうけんめいにそう思った。
しかし、ママはおじさんへ語ることをやめなかった。
「あなたには、子を持つ親の気持ちがわかりますか。子どもを育てる母親が、毎日かかえる不安がわかりますか? あなたはそうやって善意のふりをして、好き勝手をして、子どもをまどわして、だまして、わたしたち親に心配をかける。本当のことを言えば、まわりの子どもたちの親ごさんたちは、みんなあなたのことがどこかこわいんです。どこの誰かもわからない。でも、子どもたちはどんどんなついていく。『ハーメルンの笛吹き』みたいに、あなたがシンイチたちをどこかへ連れていってしまいそうで……。わたしだって不安なんです。もう……もう出ていってください、この町から、この川原から。もし出ていかなくても、わたしたちはもうぜったいに、子どもたちをあなたの元へは行かせないと今日の午後、親同士で話し合って決めました。お願いですからもうかかわらないで……」
「シンイチ君のママさん、いずれぼくはいなくなります。でも、それまではここを動けないんですよ……。ゆるしてください。そして……できればシンイチ君たちが行きたい場所へ行くことを……ゆるしてあげてください」
ママは、そんなおじさんのか細い声には耳を貸さなかった。
「わたしがシンイチをつれて、どこへ行こうとあなたとは関係はないと思うんです。わたしたちが親子なんですから。今のこの子は純粋に手品が好きなんです。それをわたしは大事にしたいんです。だから、あなたのような人に、シンイチをあずけることが不安でたまらないんです!」
違うよママ。ママはケイのパパやミキのパパと、自分がなかよくしたいだけじゃないか。
シンイチはそう思ったけど、それを口に出すことはできなかった。
「シンイチ君のママ……」おじさんは苦しそうに話した。「一日……ください。一日あればいいんです。もうここを離れられる。誰にももう迷惑はかけません。シンイチ君はもう知っているよね、わかるよね。おじさんはもうここにいなくてもいい。ちゃんと帰るべきところへ帰れる、それをシンイチ君はわかってくれるよね」
シンイチは、わざとママに見えるように大きくうなずいてみせた。
おじさんはもう帰るんだ。いなくなっちゃうんだ。
でも、それはおじさんが光の国へ帰れるってことで、それはぼくが家に帰れるのとおなじで、よろこんであげなくちゃいけないんだ。
シンイチは必死に自分にそう言い聞かせた。
だから自分まで泣きそうになることをがまんした。
今、ここで泣いてしまえば、もう永遠におじさんの魔法が見られなくなる。
あの、ねむってる間に見る夢と同じ感覚を、二度と感じられなくなる。
シンイチはそう思って、泣くのを必死にがまんした。
「とにかく、今夜のことはまわりのお父さん、お母さんがたとも話しあわせてください。あなたがこの町に居つづけると、子どもたちの親はみんな不安になるんです」
ママはそう言いきると、シンイチのうでをぐいっと引き寄せた。
シンイチは、全ての力がぬけた体を引っぱられて、ママのうしろについて歩きはじめた。
気になってうしろをふりむいた。
力なく川原にすわりこんでいたおじさんは、いつもの笑顔で手をふっていた。
シンイチも小さく手をふった。
それが、シンイチが見たおじさんの姿の最後だった。
【つづく】
初出:「SF Prologue Wave」
https://prologuewave.club/archives/9799
※リンク先では、蓮鯉氏の素敵なイラストも鑑賞することができます。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.31
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
●はじめに(岡和田晃)
勇気とはいったい何でしょうか。まったく何も関係するところのない他者のために、無償の善意を発揮することは、勇気の発露のひとつのあり方であろうと思います。
バットマンにせよ、ウルトラマンにせよ、アンパンマンにしろ、ヒーローには必ず、そういった性格があります。ヒロインであっても変わりません。ワンダーウーマンやエスパー魔美でも、そういった主題は扱われていました。
ポピュリストの台頭により格差は開く一方、生活保護受給者や野宿者へのバッシングも苛烈をきわめる状況で、人と人との間にあった暖かさは急速に失われ、連帯を培うはずのSNSでは、インフルエンサーの「犬笛」によって人が死に追いやられるのが恒常化しています。
そんな状況からすると、今回の分割掲載第3回が身にしみますね。
大伴昌司や竹内博らの怪獣図鑑や大百科に夢中になった方も、そうではない方も、お愉しみください。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
オリジナル小説「光の国と魔法とおじさんと」(3)
市川大賀
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
川の向こう岸。
幅広の川なので、服の色と背たけぐらいしか見えない距離のむこうがわで、おじさんは一人のホームレスを見つけた。
ホームレスは、よごれまくったコートを着込んだまま、川原でうずくまって転がっている。
次のしゅんかん、おじさんはそのホームレスのそばまで移動していた。
ホームレスはよっぱらってころがっているので、おじさんのしゅんかん移動には気づいていない。
「どうしたんですか」
おじさんがしゃがみながらそうたずねると、ホームレスはうすく目をあけておじさんを見上げた。
「あんた、誰だ。ここらへんじゃみかけない顔だね」
ちょっとあやしむように、ちょっと興味ぶかく、ホームレスはおじさんを見つめつづけた。
「最近、ここに来たんです。そしたらあなたを見かけた。春先になったとはいえ、まだまだ夜は冷えるのに、そんなままで寝ていると病気をこじらせますよ」
その言葉をきいたホームレスは、少しよいがさめたような顔になった。
「あんた、どうしておれの病気のことを?」
もちろんおじさんは魔法でホームレスの病気を感じとったのだが、本当のことを知られてはまずいおじさんは「医学の仕事を昔していましたから」とウソをついた。
「そうかい……。わかっちゃうもんなんだなぁ」ホームレスは苦笑した。「肝臓だよ。もう酒でパンクしてるんだ。体がうまく動かなくなって、仕事がまんぞくにできなくなってから、もう5年もたっちまった」
ホームレスは、さっきまでのおじさんのように、ゆっくり空を見上げた。
「若いときはいきがってたけどよ。年とってこうなっちまうと弱気になってなぁ。本当は、遠いいなかに女房と子どもがいるんだよ。もう10年も会っていない」
ホームレスは、少し鼻をすすってひとりごとのように話し続けた。
おじさんは、黙ってしゃがんでそれを聞いていた。
「思いかえせば、好き勝手ばかりの人生だったよ。支えてくれた女房のことも、守らなきゃいけない家族のことも、かなぐり捨てて自分のやりたいほうだいやっちまってさ。気がつけば、家族とこんな遠くはなれた場所でころがってるんだ」
「帰って顔を見せてあげたらどうですか? いまからでも遅くない」
おじさんがそう言葉をかけると、ホームレスは「ほら、そうきた」と笑って言い返した。
「みんなそうは言うけどよ。誰がどこで電車代を出してくれるっていうんだ。新宿経由で大泉学園ってなわけにゃいかねぇんだぞ? それによ、たとえ電車代が手に入ったとしてもこの体だよ。長年の酒ですっかり体がいかれちまって、いうことなんか聞きゃしねぇ。こんな体で、何時間もの電車なんかにたえられるもんかい」
そうはき捨てるように話すホームレスの顔を、見つめるおじさん。
「ちっ……わかっちゃいるんだよ。もっとこうなる前にいくらでも、改心したり、やりなおすタイミングはあったはずだってな。でも、もう手遅れだよ、何もかも。おれの人生ぁ、最後までこうなんだよ……」
目から涙をこぼすまいと、必死に真上を見上げるホームレス。
おじさんは考えた。ほんの数秒だったけど、目をつぶってしっかり考えた。
そしてゆっくりと、目をあけてホームレスの目を見た。
「家族の顔、お子さんのすがた、もう一度見たいですか? 会いたいですか?」
ホームレスの目から、ぼろぼろと涙があふれでた。
ホームレスはおじさんの目を見ながら、いっきに泣き出した。
「会い……てぇ……」
鼻すすりとしゃっくりの間で、必死にホームレスは声をしぼりだした。
「ひとめ……会いたい……。女房に……子どもに……」
ホームレスの涙は、あおむけのままの顔をつたって耳に流れ込んだ。
そのまますがるようにおじさんの腕をつかむホームレス。
「だいじょうぶ」
おじさんはそれだけを言うと、自分の腕からホームレスの腕をゆっくりはずし、そのまま自分の手を、ホームレスの腹部にあてがった。
おじさんが精神を集中する。
あわい光がおじさんの手からあふれて、ホームレスのおなかにこぼれだす。
涙でぐしゃぐしゃのホームレスには、その光は見えていなかったのかもしれない。
しかし、おじさんの「手当て」の効果が出てきたことは、ホームレス自身が、自分の体の軽さで理解した。
「うそみてぇだ……あんなに全身に広がっていたダルさが消えていく……」
ホームレスの肝臓が治っていくにしたがって、おじさんのエネルギーが急げきに消もうする。
しかし、途中でやめてはなんの意味もない。
途中でやめてしまっては、ホームレスの肝臓はけっきょく悪いままで、おじさんのエネルギーが消もうするだけになってしまう。
それはあの日あのとき、大切な人を守れなかったときの、くり返しになってしまう。
おじさんは、歯をくいしばってがんばった。
ホームレスの涙の願いにこたえるために、全身のエネルギーを送り込んだ。
「軽い……からだが軽いよ! あんたすげぇよ! すごい! なんともないぜ!」
ようやく治療が完了すると、ホームレスはおおよろこびで立ち上がった。
その場でいきおいよく足ぶみをして、ジャンプしたりステップをふんだりする。
いつごろいらいなのかの健康な体を、ホームレスはよろこんでまんきつした。
「こんな体が思いどおりに動くのは何年ぶりだよ! すげぇぜ!」
まるで優勝したチームの野球選手のようなよろこびぐあい。
しかし、おじさんにはまだやることが残っていた。
さっきもホームレスが言っていたように、彼がいなかへ帰って家族と会うには、健康な体だけではなく、お金も必要なのだ。
そのどちらが欠けても、ホームレスをすくってあげることにはならない。
お金を用意する、それもホームレスがいなかへ帰れるまでの金額を。
何もない無から、何かを生み出す魔法は、おじさんの魔法の中でも一番、体力とエネルギーを消もうする技だった。
さいわい、ホームレスはまだ、よろこびにひたってさわいでいる。
魔法を使うなら今しかない、おじさんは手をふところに入れて神経を集中した。
さっきの治療の魔法と連続なので、無理がたたってめまいがしてくる。
しかし、おじさんは必死にがまんをして魔法に力をこめた。
足元がぐらついて、いしきが遠くなりかける。
まだだ、あともう少し、おじさんは自分をがんばらせた。
ほどなく、おじさんのふところの中には、何枚かの一万円札が出現した。
しかし、もう全ての力がここで限界。
早くこのお金を彼にわたして、自分も休まなくてはと思いホームレスにちかづくと、それまでせなかを向けて、ラジオ体操のような運動をしていたホームレスが、けはいに気づいてはっと振り向いて来た。
その目は、しゅんかんてきに、おじさんの手ににぎられたお金に向けられた。
おじさんの手のお金を見つけて、目がいっぱいに開くホームレス。
いいんです、これをどうか使ってください、おじさんはそう言おうとするが、心臓が苦しくて、息もたえだえで言葉にならない。
次のしゅんかん。
ホームレスは目をギラリとかがやかせて、とつぜんおじさんのおなかをなぐった。
「ぐっ! 」
力いっぱいなぐられたので、おじさんがうめき声をあげておなかをおさえる。
魔法の使いすぎで全身に力が入らず、おじさんはよろよろとくずれそうになった。
ホームレスは、こんどはおじさんの足をうしろからけってきた。
思わず、前のめりに倒れ込んでしまうおじさん。
ホームレスはおじさんに近づいてしゃがみこむと、おじさんの手ににぎられていたお金をむしりとった。
一万円札の枚数をかぞえて、目をかがやかせるホームレス。
「この体とこんだけの金があれば、今夜はひさしぶりに、あびるほど酒が飲める!」
ホームレスはそうさけぶと、くずれてうずくまっているおじさんにもう一回けりを入れて、その反動で少しうしろにあとずさり、そのまま走り去っていった。
おじさんはどうすることもできなかった。何をする力も残っていなかった。
ただ。
ただ向かい岸の、いつもの川原にもどらなくてはと、それだけを考えていた。
向かい岸にもどって、ちゃんと待ち続けなければとおじさんは思っていた。
誰を待つの? 何を待つの?
それはおじさんにもわからなかった。
けど、もどらなければいけない。早くもどって待ち続けなければいけない。
そればかりがおじさんの頭のなかで、うずまいていた。
川原のもとの場所で。
おじさんは、さすがに疲れた表情をかくせずに、横になっていた。
ホームレスのことは、あれからどうしたんだろうと心配はしていたけど、おじさんはけっして、うらんだり、だまされたと怒ったりしなかった。
でもそれは、おじさんが光の国から来た聖人君子だったからではなかった。
おじさんだって若いころは、友だちとけんかもした、ウソをついたこともある。
きっと故郷には、おじさんにうらぎられたといまでも思ってる人もいるのだろう。
だからこそ、おじさんはホームレスの人をうらみはしないのだった。
おじさんは、倒れたまま空を見上げた。
そこでおじさんは、誰かの名前をつぶやいたのかもしれない。
そしておじさんは、ポケットの中からきれいでとうめいな石をとりだし見つめた。
それは手のひらに乗るくらいの大きさで、形はちょっとごつごつしていたが、すき通るように透明で、日差しをうけて輝いていた。
おじさんは、あらい呼吸をくりかえしながら、じっとその石を見つめていた。
その石は、魔法を使うたびに小さくなっていって、使い果たすと消えてしまうことは、おじさんしか知らなかった。
さっきのホームレスのできごとで、また石が小さくなったことを、おじさんは確認していた。
後悔はない。
ただ、石が小さくなるにつれて、大切な人との思い出も小さくなっていきそうな気がして、おじさんは悲しい気持ちにつつまれていった。
涙が出そうになって、誰も見ていない今ここでなら、すこし泣こうかともおじさんは思ったが、一番大事な人が、最後に目をつぶる直前に、おじさんに向けて言った「もう泣かないでね」を、思い出しておじさんは、必死にがまんをすることに決めた。
昨日よりも一回り小さくなった石を見つめながら、この石がなくなるまで、あの子たちに魔法をみせてあげられればいいなと、おじさんはそう考えると、少し悲しみがうすらぐのだった。
夜になって。
いつの間にかねむっていたおじさんは目をさました。
手には小さくなった魔法の石がそのままにぎられており、エネルギーは消もうしたままだったが、少し休めたのでひといきがつけたようだった。
「ひとりか……」
手の中の石と夜空を変わりばんこに見つめながら、おじさんが誰に言うでもなくつぶやいた。
見つめる夜空には、そのどこかに光の国があるのかもしれないが、もうおじさんには、その光の国を見つけることはできなくなっていた。
あの日、あのときから。
おじさんは今日のようなことを、何十回もくりかえして来た。
そのたびに石はすり減り、小さくなっていく。
どうせすり減り続けて消えていく運命ならば、せめてそれがむくわれないことではなく、子どもたちの笑顔と引き換えの方がいい。
おじさんが子どもたちに手品というかたちで魔法を見せてあげたのは、そんな理由があった。
「……?」
おじさんは、けはいを感じて振り向いた。
夜のやみの中を、誰かがこちらへ走ってやってくる。
子どもたちのうちの誰かだろうか? 手品を見たくてやってきたのだろうか?
そう思っておじさんが目をこらして見ると、やってきたのはシンイチのママだった。
「シンイチ君のお母さん……?」
「シンイチが……」ママはまっさおな顔で叫ぶように言った。「シンイチが行方不明なの!」
えっ! とおじさんは息をのんだ。
ママはおじさんにすがるように叫び続けた。
「ごめんね、ごめんなさい、おじさん! わたしはあの子の気持ちに気づいてあげられなかった! あの子が好きだったのは、手品なんかじゃなかったの! あなたが見せてくれる奇跡だったの! それなのに、わたしはあの子のために、親としてって勝手に思い込んで……。あなたのところへ行くのを、もうやめなさいって強くしかっちゃって……。そしたら……夕飯が終わったら……あの子が行方不明なんです。どこにもいないんです!」
「シンイチ君が……!?」
シンイチが行方不明と聞いて、さすがのおじさんもおどろいてうろたえた。
「わたしが悪いの! シンイチ! おじさん! 許して!」
「お母さんおちついて!」おじさんがママの両肩をつかんだ。「シンイチ君はここへは来ていません。でも、そう遠くへは行っていないでしょう。ぼくもシンイチ君を探します。だからおちついて!」
「おじさん……シンイチを探してください。あの奇跡の手品で探してやってください。あの子は本当に、あなたの手品が大好きだったんです。わたしたち大人には同じでも、わたしやケイ君のパパがやってみせた手品なんて見向きもしなかった。あの子が好きだったのは、手品じゃなくって、あなたの手品だったんです。全てわたしが悪かったんです……。どうか……どうかあの子を探してください! お願いします!」
「いいんですよ。もちろんなんとしても、シンイチ君をさがしましょう」
おじさんは、泣きじゃくるママに強くそう言って、疲れた体をひきずるように歩きはじめた。
川原の上までたどり着き、そこで手にしていた透明な石をみつめる。
「シンイチ君を探すんだ」
石にそういいきかせるおじさん。
おじさんが石を空にむけてかかげると、石はまばゆい光りをはなちはじめた。
光りはやがて、空へのびる一本の光の矢になり、のびた先でカーブをえがいていく。
その先に、シンイチ君がいるのだ、それを知ったおじさんの体は宙にうき、その光の中を、夜空へつきすすむようにものすごいスピードで飛びはじめた。
「シンイチ君、今すぐに君のところへ行くからね」
光りの道のなかを、ちょう高速で飛ぶおじさん。
その手ににぎられている光の石は、どんどん小さくなっていく。
しかしおじさんは、光の石には心配をしないで、光の矢の先を見つめつづけた。
「見つけたぞ! シンイチ君だ」
その光の先に、シンイチ君はいた。
けいしゃのきつい川原の下にたおれている。
そばには自転車もころがっている。
多分、川原ぞいのせまい道を、なれない自転車で急いで走っていて、道からころがり落ちてしまって気を失っているのだろう。
「シンイチ君!」
おじさんは急降下でシンイチ君のところへかけつけると、そのままシンイチ君をだきしめ上げて、ふたたび同じスピードで空へ飛びあがった。
おじさんはシンイチ君をかかえたまま、グングン空をかけあがる。
ママが待っている川原まで、とにかく早く帰らなければ。
おじさんがそう思って飛んでいると、おじさんのうでの中のシンイチが目をさました。
「あれ……ここはどこ?」
「シンイチ君、目がさめたのかな? けがはないのかい? だいじょうぶかい?」
おじさんのやさしい言葉を耳にして、シンイチは今自分がおじさんにだかれながら、空を飛んでいることに、はじめて気がついた。
「おじさん! おじさんがぼくを助けてくれたんだね! すごい! 今、ぼくは空を飛んでいるよ! おじさんすごいよ!」
元気なシンイチの反応をみて、笑顔でほっとするおじさん。
「元気そうだね、本当に良かったよ。君のママが待っているところまですぐだから、おとなしくおじさんにしがみついているんだよ。すぐにとう着するからね」
「うん!」
シンイチは、キラキラした目で返事をすると、おじさんの腕にぎゅっとしがみつきながら、目のまえに広がる星空と、下に広がる夜の町を見つめていた。まちがいない、夢でもない、いまぼくは空を飛んでいるんだ。
シンイチは、土手を自転車で走っていて転んだしゅんかんの恐怖をすっかり忘れて、生まれてはじめて見る景色に心をうばわれていた。
おじさんとシンイチを包む光は、おじさんの手から放たれているのをシンイチは見つけた。
その手の中の石。
その石が、今、自分とおじさんを包んでいる光を発していることをシンイチは知ったが、その意味までは、こうふんしていて気がつけなかった。
そのうち、いつものおじさんの居場所の川原にとう着して、おじさんはスピードと高度をさげておりたった。
いつのまにか、シンイチのママはいなくなっていた。
「ママはたぶん、ママひとりでシンイチ君を探しに行ってるんだろう。待っていればすぐにもどってくるよ。安心していいからね」
おじさんはそう言いながら川原にすわりこんだ、そうとう疲れているようだった。
「おじさん! おじさんの魔法はやっぱりすごいよ! ぼく、いま飛んだんだよね! 空を飛んだんだよね!」
「そうだよ」おじさんは笑って言った。けどその笑顔がものすごくつらそうな笑顔だということに、シンイチは気づく余裕はなかった。
「空を飛んで気持ちよかったかい」
「うん! すごく楽しかった! また飛びたいな! ……あっ」
自分で言ったことばで、シンイチはようやく気づいた。
おじさんが魔法をつかうと、エネルギーが消もうするのだ。
さっきおじさんの手の中で、光る石がどんどん小さくなっていってしまっていたのはきっと、おじさんのエネルギーが少なくなっていったことを表わしていたのだ。
すべてを理解したシンイチは、あわてておじさんのもとにかけよった。
「おじさん、だいじょうぶ!? おじさんごめんね! ぼくのために魔法をつかわせて。だいじょうぶ!? 死んじゃだめだよ! おじさん!」
おじさんは、たくさんの汗をかきながら、がんばって笑顔を作った。
「心配しないでいいよシンイチ君。おじさんはだいじょうぶだから。シンイチ君が無事でいてくれて、それでじゅうぶんだから」
「そんなこと言ったって! おじさんが死んだら意味がないじゃないか! おじさん、もう一度、あの光る石を見せてよ、おじさん!」
おじさんは、少しうつむいて考えたが、決心したような顔で、シンイチににぎったままの右手をさしだし、ゆっくりと開いた。
そこには、指先ほどの大きさにまで小さくなった石が、あわく光りかがやいていた。
それを見たシンイチは、おどろいて言葉がだせなかった。
自分のせいで、自分を助けるために、おじさんの大事な石が、キャンディーくらいに小さくなってしまったことを、シンイチははっきり理解していた。
「あまり自分のせいだなんて、思わないでね」
その気持ちと考えを、全部わかっていたおじさんが、やさしく声をかけた。
「シンイチ君のせいじゃないんだよ。君を助けることを、おじさんが選んだんだから。それにもう、シンイチ君と出会うずっと前にはもう、石のエネルギーはぼくを光の国に帰すだけのぶんは残っていなかったんだって、このあいだ、ちゃんと話しておいただろう? だから、気にしちゃいけないんだよ」
「でも……けど……おじさんが……おじさんまで死んじゃう……」
シンイチは泣き出していた。
自分のしでかしたことがどれだけ大変なことで、とりかえしがつかないのか、それを感じて、シンイチは泣きじゃくりつづけた。
「ごめんなさい……ごめんなさい、おじさん……」
声にならない泣き声で「ごめんなさい」をくりかえすシンイチの頭を、おじさんはやさしくなでてあげた。
おじさんの手に乗っていた、もう小さくなってしまっていた石を、ぎゅっとにぎりしめるシンイチ。
両手で石を包んでにぎり、目をぎゅっとつぶって祈るシンイチ。
すると。
にぎりあわせたシンイチの両手の指のすきまから、まばゆく強い光があふれだし、その光はシンイチとおじさんをてらしはじめた。
「え……?」
あまりの光のまばゆさに、泣くのも忘れたシンイチがゆっくりと手をひらく。
そこには。
シンイチがはじめて見たときよりも、もっと大きな石がかがやいていた。
「おじさん……石が……石が大きくなった!」
おじさんもおどろいた顔で、シンイチの手の上の石を見つめる。
こんなことは、おじさんにも予想外だったのだ。
おじさんの体は、それでも弱っているままだったが、すくなくとも石は、光の国へ帰れるエネルギーをたくわえている大きさには復活している。
奇跡だ、本当の奇跡がおこったのだ。
おじさんはそう思った。
「シンイチ君が、ぼくの石をもとの大きさにもどしてくれたんだね」
そう言われてシンイチは、今、自分がとてもすてきなことをしたのだと気がついた。
自分がしたことが、おじさんの夢をかなえてあげられるのかもしれない。
自分はおじさんにいっぱい、いろんなことをしてもらって助けてもらったけど、自分にも、おじさんを助けてあげられることはあって、それを今できたんだという実感は、シンイチ自身の心を包んで、あたためていた。
「おじさん! やっぱり信じることが勇気だったんだね! 勇気がちからだったんだね!」
「はは……違うよ」
おじさんは、苦しくいきをはきながら小さな声で言った。
「君が、シンイチ君自身が、おじさんのことを大事だと思ってくれた。大切だからと泣いてくれた。それだけでいいんだよ。君が本当に、自分が大事だと思ったものを大事にしたから、今回は、たまたまこの石はその気持ちにこたえてくれた……それだけだよ」
おじさんは、それでもがんばって笑顔をつくってあげた。
シンイチは、手の上で大きく光る石をすっとおじさんに差し出した。
「おじさん、この大きさの石があれば、おじさんは光の国に帰れるの? 元気になって、自分が生まれた光の国に帰れるの?」
シンイチの目から涙がとまらない。
おじさんは、目を細めてその石を受け取った。
「だいじょうぶだよ。これだけあれば十分だよ。おじさんは帰れるよ。だからもう泣かないで。おじさんはね、もう自分のために泣いてもらうのはつらいんだよ。わかってくれた人がわかってくれるだけで、それでいいんだ。おじさんが、ここで大切な人を失ったあと、ここに居つづけてもむだじゃなかったんだって、それで泣くくらいによかったと思えてくれる人がいたんだって、それをわからせてくれただけで、本当にうれしいんだよ。シンイチ君、ありがとうね」
おじさんは、苦しそうな顔をしながらも、ものすごくやさしい顔でそう言った。
シンイチはどうしていいかわからなかった。
何を言ってもうそになりそうで、何をいえばいいのかわからなかった。
泣くしかなかった。
「シンイチ! シンイチなの!?」
川原の向こうから、シンイチのママの声がひびいてきた。
おじさんは、ママの方に向かって立ち上がると、深くおじぎをした。
「シンイチ!」
「ママ!」
シンイチを見つけたママは、おどろいたような、安心したような顔をいっしゅん見せたあと、さけぶような泣き声をあげて、シンイチにかけよって抱きしめた。
「シンイチ! シンイチ! 無事だったのね! ごめんね! 本当にごめんね!」
シンイチを抱きしめたまま、泣きつづける。
ママがこんなにわんわん泣くのは初めてだ、シンイチはちょっと冷静にうけとめた。
けど、それだけ自分はママに心配をかけたのだ。
そして、それを助けてくれたのはおじさんなんだ。
そのことをママにつたえよう、全部おしえてあげよう。
シンイチがそう考えたときだった。
ママは泣いていた顔のままおじさんを見上げ、そして鼻をぐずぐずいわせながら話し始めた。
「今回、シンイチを見つけて助けてくれたことは感謝します。それはお礼をいいます。けれど……けれどもう、わたしたちを巻き込まないでくれませんか? もう、わたしたちにかかわらないでくれませんか。こんなことはもう……いやなんです」
え!? ママは何を言っているの?
シンイチには何がなんだかわからなかった。
ママは何をおじさんに言っているのだろうか? ぼくを助けてくれたんだよ?
かってに夜に自転車にのって、転んで気を失っていたところを助けてくれたのはおじさんだよ。
いっしょに「ありがとう」だけでいいじゃないか。巻き込むって何? ぼくがかってにやったことで、ぼくがおじさんを巻き込んだんだよ。
シンイチはとまどいながらもいっしょうけんめいにそう思った。
しかし、ママはおじさんへ語ることをやめなかった。
「あなたには、子を持つ親の気持ちがわかりますか。子どもを育てる母親が、毎日かかえる不安がわかりますか? あなたはそうやって善意のふりをして、好き勝手をして、子どもをまどわして、だまして、わたしたち親に心配をかける。本当のことを言えば、まわりの子どもたちの親ごさんたちは、みんなあなたのことがどこかこわいんです。どこの誰かもわからない。でも、子どもたちはどんどんなついていく。『ハーメルンの笛吹き』みたいに、あなたがシンイチたちをどこかへ連れていってしまいそうで……。わたしだって不安なんです。もう……もう出ていってください、この町から、この川原から。もし出ていかなくても、わたしたちはもうぜったいに、子どもたちをあなたの元へは行かせないと今日の午後、親同士で話し合って決めました。お願いですからもうかかわらないで……」
「シンイチ君のママさん、いずれぼくはいなくなります。でも、それまではここを動けないんですよ……。ゆるしてください。そして……できればシンイチ君たちが行きたい場所へ行くことを……ゆるしてあげてください」
ママは、そんなおじさんのか細い声には耳を貸さなかった。
「わたしがシンイチをつれて、どこへ行こうとあなたとは関係はないと思うんです。わたしたちが親子なんですから。今のこの子は純粋に手品が好きなんです。それをわたしは大事にしたいんです。だから、あなたのような人に、シンイチをあずけることが不安でたまらないんです!」
違うよママ。ママはケイのパパやミキのパパと、自分がなかよくしたいだけじゃないか。
シンイチはそう思ったけど、それを口に出すことはできなかった。
「シンイチ君のママ……」おじさんは苦しそうに話した。「一日……ください。一日あればいいんです。もうここを離れられる。誰にももう迷惑はかけません。シンイチ君はもう知っているよね、わかるよね。おじさんはもうここにいなくてもいい。ちゃんと帰るべきところへ帰れる、それをシンイチ君はわかってくれるよね」
シンイチは、わざとママに見えるように大きくうなずいてみせた。
おじさんはもう帰るんだ。いなくなっちゃうんだ。
でも、それはおじさんが光の国へ帰れるってことで、それはぼくが家に帰れるのとおなじで、よろこんであげなくちゃいけないんだ。
シンイチは必死に自分にそう言い聞かせた。
だから自分まで泣きそうになることをがまんした。
今、ここで泣いてしまえば、もう永遠におじさんの魔法が見られなくなる。
あの、ねむってる間に見る夢と同じ感覚を、二度と感じられなくなる。
シンイチはそう思って、泣くのを必死にがまんした。
「とにかく、今夜のことはまわりのお父さん、お母さんがたとも話しあわせてください。あなたがこの町に居つづけると、子どもたちの親はみんな不安になるんです」
ママはそう言いきると、シンイチのうでをぐいっと引き寄せた。
シンイチは、全ての力がぬけた体を引っぱられて、ママのうしろについて歩きはじめた。
気になってうしろをふりむいた。
力なく川原にすわりこんでいたおじさんは、いつもの笑顔で手をふっていた。
シンイチも小さく手をふった。
それが、シンイチが見たおじさんの姿の最後だった。
【つづく】
初出:「SF Prologue Wave」
https://prologuewave.club/archives/9799
※リンク先では、蓮鯉氏の素敵なイラストも鑑賞することができます。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
■今日の新聞に対するお便りはコチラ!
ぜひ、ご感想・お叱りなど一言ご意見ください。m(_ _)m
↓
https://ftbooks.xyz/ftshinbun/report
【FT新聞・バックナンバー保管庫】 *2週間前までの配信記事が閲覧可能です。
https://ftnews-archive.blogspot.com/
【FT新聞のKindle版バックナンバー】 *kindle読み放題また有料購入が可能です。
https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/entity/author/B00OYN7Z84
■FT新聞をお友達にご紹介ください!
https://ftbooks.xyz/ftshinbun
----------------------------------------------------------------
メールマガジン【FT新聞】
編集: 水波流、葉山海月、中山将平
発行責任者: 杉本=ヨハネ (FT書房)
ホームページ: https://ftbooks.xyz/
メールアドレス: sugimotojohn■■hotmail.com(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------------------------
メルマガ解除はこちら
https://ftbooks.xyz/acmailer/reg.cgi?reg=del&email=ryu00minami.2022ft0309news@blogger.com
※飛び先でワンクリックで解除されます。
登録:
投稿 (Atom)