救護騎士団のアルバム:ミレニアムサイエンススクールの写真(1)

救護騎士団のアルバム:ミレニアムサイエンススクールの写真(1)

朝顔ハナエ

スズランちゃんがおままごとセットを持って

ミレニアムサイエンススクールに訊ねた時の写真だ

トリニティとは違う先進的なその都市群を見上げて驚いた顔をしている。

次はエンジニア部の方々へと、深々と頭を下げている写真。

エンジニア部のお三方がそれぞれ頬を掻いていたり、なんだか照れてる様子。

何かを作るのをじっと見ているスズラン。

何を作っていたのだろうか、ネジを締めるその手をじっと見ていた

―――――――――――――――――――――――――――

スズランはこのおままごとセットがどうしても嬉しかったようで


「これだれの?」


と何度も何度も私達に聞いて来る。

誰の、といえばスズランに贈られたものではあるものの

「スズランちゃんのですよ」と答えても、ちがうちがうと首を横に振る。

しばらく考えたあとに「誰がくれたの?、誰が作ってくれたの?」と言う意味だと察し

先生へと連絡を取ると案外気楽にも


"会いに行ってみる?"


なんて返答が帰ってきて、私達は電車を乗り継いで

ミレニアムサイエンススクールへと向かう事になった。


「気を付けて向かうのですよ。

何かあったらすぐに私も向かいますからね。」


「はーい!」


「本当に…本当に変なことしちゃだめですからね。」


先生と二人で並ぶ私に向かって、心配そうに声をかける二人。

今日はこの二人は別の用事、私は本当はシャーレのお当番だったはずなのだが

先生はミレニアムサイエンススクールへ行く用事があるとのことで

二人で一緒に移動することになっていた。


二人とも、予定の時間が迫っているというのに

わざわざ駅のホームまで出向いて、とても心配そうな顔で

私とスズラン、そして先生を見送っていた


―――――――――――――――――――――――――


摩天楼、と言う言葉が適切な街へと降り立つと

スズランは大きなキャリーケースを押しながら街を見上げる。

このキャリーケースはおままごとセット。


わざわざ持ってくる必要はなかったはずなのだが

エンジニア部の方々に会いに行くときまってからこのケースを離れない。


「ほら、スゥちゃん、ちゃんと前を見て歩きましょうね。」


「あい。……ここ、みれにあむ?」


「はいそうですよ。」


私の肯定にスズランちゃんは足を止めて周囲を見渡す。

トリニティには滅多にない高いビル群は、シャーレの周囲よりも高密度で

空の上に電車が走って、所かまわない電光掲示板が目を奪ってゆく。


"ミレニアムまではモノレールに乗って行こう。歩くにはちょっと遠いからね。"


先生は慣れた様子でエレベーターへと私達を先導する。

透明なガラスのエレベーターが生み出す浮遊感に

スズランはエレベーターの中で翼を小さくはためかせているのは

飛んでいる気分なのだろうか


「たかーいねぇ…」


「なんだかちょっと怖いですね」


ガラス張りのその高所に少し足がすくむ。

そんな私の足にひっしと抱きついて、にーっと笑顔を見せるスズランは

きっと大丈夫だよ、と言っているのだろう。


ポーン、という電子音と共に扉が開かれて

そこにはモノレールが停車する。

続くレールを見て見ると、細い足場で本当に折れないか心配になるが

きっと、頭のいい人が考えて作っているはずだから大丈夫なはず。


さらに不安になる私を見てなのか

スズランはキャリーケースを先生に預け

私の手を引いて、おんぶをして、とせがんでくる。


疲れたのかな、なんておんぶ紐を用意してスズランを背負うと

その大きな翼をさらに大きく広げて、ばっさばっさ

私が振り返ると「飛べるよ、任せて!」と言わんばかりのスズランの笑顔


「ふふ、スゥちゃんの羽があれば高い所も安心ですね!」


「あい!」


私達のやりとりを見ながら、先生が笑う。

ゲートを抜けて、乗り込んだモノレールはもう間もなくして走り出す。


"あれがミレニアムサイエンススクールだよ"


モノレールの中から見えるのはガラス張りの高いビル。

学校と言う言葉についトリニティの学舎のようなものを想像していたが

これは普通の、いやとても高いビルだ。


私とスズランはモノレールの高い視点からも上が見切れない程の高いビルを見上げて

ぽかんと口を空けていた。


そんなビルを横目に私達が駅に降り立つ。

またやっぱりガラス張りのエレベーターを降りるが

今度はスズランがエレベーターの中いっぱいに大きな翼を広げているので安心だ。


エレベーターを降りると、そこには2人の人影。

クールなお姉さんの横には謎のロボット

着崩した服が特徴的なかわいい人。


「先生、待ってたよ。この子が例の?」


"こんにちは、ウタハ。そうだよ。この子がスズラン"


先生の紹介にスズランが一歩前へ出ると

おなじくクールなお姉さんがスズランへと歩み寄る。


「ふふ、そうか。よろしくスズラン。ウタハだ。こっちは雷ちゃん。

それを気に入ってもらえているみたいで嬉しいよ、」


ウタハさんがおじぎをすると、その隣でロボットもおじぎ。

1人と1台、2つのおじぎにスズランはどっちに返したものか混乱しながらも

それぞれへと「こにちゃー、こにちゃー」と頭を下げていた。


「私は豊見コトリです!このVARおままごとセットを作った一人です!」


「ことりー、ヴぇあー?」


「はい、コトリです!

VARとはヴァーチャルオーギュメントリアリティの略で仮想拡張現実のことです!

ホログラム投影技術を従来の2色表現から256色表現まで拡張し

衣服の投影をはじめとして、調理などの表現が可能になりました。

あ!技術的にはホログラムは6万色表現まで可能なのですが

そうすると大型化するため、スーツケースに収まらなくなってしまいます。

そのため、あえて256色表現となっています。しかし同一座標への2色同時描画により

実質的に6万色相当の色表現が可能となっておりますので、色味に違和感は感じにくいと思います

またモーショントレースにはミリ波レーダとステレオカメラの複合、そして超音波測距技術により

見えにくい部分であっても超高精度かつ、高速な追従が可能になっております!

またまた、実際に調理可能レシピにして2万5千もの料理が…」


ただの聞き慣れない言葉に、私にも理解できない言葉の雨が降り注いで

スズランはその言葉を聞きながら左右に揺れる。


理解をしようとしているのか、しようとするのは既に諦めたのか。

ぽかんとした顔でコトリさんの顔を眺めていると

きっと私達が説明を理解していないことを理解してくれたのであろうウタハさんが

まだまだ続く様子の説明を遮って止めてくれた。


「コトリ、ストップ。」


「はっ…!申し訳ありません!ついつい説明に熱が…」


「まあ…立ち話も難だし、部室に案内するよ。

先生から頼まれたものもできているよ。」


"本当?楽しみだなぁ"


ウタハさんが何やらジェスチャーを送ると

隣のロボットがスズランへと背中を向け動きを止める。


目の前来た雷ちゃんの背中に

どうしたのか分からないスズランにウタハさんが脇を抱えて

雷ちゃんの上へと乗せた。


「さあ、部室に行こうか。」


歩き出す私達。

ドローンが飛び交うその敷地内の中

スズランを乗せて進む雷ちゃんの背中?を

スズランは馬に跨るかのように

「いいこねーしゅごいこねー」と撫でていた。


「ふふ、君はいい子だね。」


その言葉と共に、雷ちゃんから音が鳴る

キュウン、シュウンとご機嫌かのような音を鳴らす雷ちゃんに

スズランはニコニコ顔でまたがっていた。




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