救護騎士団のアルバム:ミレニアムサイエンスとスズラン(2)

救護騎士団のアルバム:ミレニアムサイエンスとスズラン(2)

蒼森ミネ

一枚目はスズランが私とモモイさんとミドリさんの間に立って

精一杯の威嚇をしている写真。

きっと本人としては威嚇のつもりで

翼と手を大きく広げて「飛び掛かるぞー!」というポーズ

残念ながら、二人には効果はないようで、きょとんとしている様子。

二枚目は、モモイさんミドリさんと一緒に遊んでいる様子。

人生初のテレビゲーム、ユウカさんも混ざって4人で肩を並べる後ろで

コユキさんがそっとドアを出ようとしている

三枚目は…スズランがボロボロのコユキさんを捕まえて、ユウカさんに褒められているようだ。

――――――――――――――――――――――――


しばらくすると、シャーレの執務室へと入って来る二人の生徒

そっくりな背格好に、そっくりな色違いの服装。

猫を模したその意匠は、なんだか胸にきゅんとくるものがある。


腕の中から私の顔をじっと見るスズランに

いけないいけない、とちょっと顔を引き締めて、できるだけの貞淑な顔。

しかしながら、この二人が私と1、2歳程度しか違わないなんてちょっと信じられない。


「ユウカ―、来たよー」


「どういったご用件ですか?」


ひょこり、とその扉から顔を覗かせる二人。

初対面の私の顔を見て、桃色の子は前に出て、緑色の子は後ろに隠れる。

なるほど性格は正反対のようだ。


「はじめましてー、ミレニアムサイエンススクール

ゲーム開発部のモモイだよー、こっちは妹のミドリ!」


「…よろしくお願いします」


「トリニティ総合学園、救護騎士団団長のミネと申しま…」


と、私が言い終える前に腕の中から飛び降りてスズランが私の前へ出る。

自分の翼を大きく広げて、腰を落として臨戦態勢。

ネズミを捕まえに行くときと同じポーズで二人を出迎えていた。


「…スズラン!」


そんな威嚇のスズランではあるが、二人は怯える様子もなく

きょとんとした顔でスズランと向き合う。

しばらくの沈黙のあと、二人で顔を見合わせてごにょごにょと相談している様子


「あー、この子があの」


「先生の事をパパと呼んだっていう…」


スズランの登録の時以来、キヴォトスを巻き込む大ニュースとなったスズラン

私達が当番になるたびに居合わせた生徒に

同じ反応をされるものでこの反応にも慣れたもの。


さて今回は事情の説明が必要なのだろうか、と思っていると

スズランは二人に囲まれ、追いかけられては逃げ回っているようだ。

すばしっこさを活かして消えるように動いたり、バタバタと走っていたり


それを見ていたコユキさんが私に尋ねる。


「あれ、瞬間移動ですか?」


「そのようなものだとは思うのですが、私達にもよくわからず…

気付いたらとても遠くにいたりするので、目を離せなくて…」


「へぇー…」


なにやら思案顔のコユキさんだが、きっとろくなことは考えていないのだろう。

イタズラを思いついたような顔で「にしし」と含み笑いをしていた。

だけどもそれがユウカさんに見逃してもらえるわけもなく

すぐに首根っこを掴まれて

「お話を聞かせてもらおうかしら?」と連れ去られていった。


それを見送り相も変わらず続くスズランの追いかけっこを見ていると

ノアさんが私の隣でしたり顔。


「やっぱり、予想は当たっていたようですね。」


「何かわかったのですか?」


「スズランちゃん、たぶんママを取られると思ってるんじゃないかな、と。

だからかわいい子は苦手なのかと思いまして。」


確かに、言われてみれば追いかけっこの最中に

ちらりとこちらを見ては二人が距離を取る方に移動している様子。


「なるほど。なんだか照れてしまいますね…」


「きっとママが大好きだから取られたくないんでしょうね。」


ふふ、と優しげにほほ笑むユウカさん。

そんな話をしているうちに、追いかけっこも落ち着いたようで

モモイさんとミドリさんが体力切れでへたり込む中、スズランは私の方へと駆け戻る。


「どうだ!勝ったぞ!」と言いたげな自慢げな顔で

息を切らしながらも私の方へと一直線に駆けて来た。


「まま!」


「おかえりなさい。スズラン。」


息を切らすスズランを抱きかかえると

ふんす!と鼻息を一つ鳴らして、へたりこんだ二人へと目を向ける

そして私に抱きついて、ぎゅっと頭を摺り寄せた。


「大丈夫ですよ、スズラン。

 私は誰かに取られたりしませんから。」


「よかったですね、スズランちゃん。ママはずっといっしょですって。」


「ずっと?」


「ええ、ずっとですよ。あなたは私の大切な雛鳥です」


その言葉にスズランは思案顔。

きっと一生懸命に言葉の意味を考えてくれているのだろう。

ちょっと首をかしげて、もう一度私へと頭をぐりぐり摺り寄せたので

ぎゅっと抱きしめ返して見ると、その顔は笑顔に変わる。


「あそぶ!」


その言葉に腕を緩めると、私の腕からぴょんと飛び降りて

息をきらして床にへたり込む双子の方へと駆けてゆく。


「あそぼ!」


「えー、もういっぱい遊んだじゃーん…まだ追いかけっこするのー」


「私はもう…むりです…。そうだ、ゲームをしましょう…

 ゲームならこんなにきつくない…」


息を切らす二人を見て、呆れ顔のスズランは

腰から下げた水筒を開けてコップへとお茶を注ぐ。


はい、と渡してモモイさんがミドリさんへと渡してそれを飲み干すと

もう一杯とミドリさんが持つコップへとお茶を注ぐ。

今度はミドリさんがモモイさんへとコップを渡して、一息つく二人の

その後ろに立っていたのは先生だった。


"ゲーム、あるよ。"


「先生…それMEEじゃん!なんでそんなレトロゲーなの!?」


「体動かすのはもう…」


「?」


しかしながら、スズランのなんだこの箱、と言う顔に

双子揃って同じ顔で驚き顔のリアクション。

口をあんぐりと開けて、ゲームというものを知らないスズランへ

そして母親たる私へと、信じられないと言う顔をする。


「スズランちゃん、ゲームって知ってる?」


「げー?」


「あの…ゲームとかって…」


「嫌ってなどというわけではないのですが、

 私達はもっておらず、遊んだことはないですね」


スズランへと問いかけるモモイさんと

私へと問いかけるミドリさん。

その答えに、先生へとテレビに繋ぐように指を指す。


「先生!みんなでゲームしよ!」


「ソフトは何がありますか?…子供でも楽しめるものは…」


"ふふ、任せて。"


ゲーム機をテレビの前に置くと、どこから取り出したやら

BDのようなケースをトランプのようにずらりと広げる。

色とりどりのそのケースは、玩具屋さんやコマーシャルで見たことがある。

しかしなにやらコユキさんと離しているユウカさんから声が上がった。


「ゲームは1時間までですからね!」


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スズランが何やらリモコンをぶんぶん

同じようにモモイさんとミドリさんもぶんぶん。

それにあわせてテレビの中へ動くキャラクターたち。


テレビゲームで遊ぶところなんて初めて間近で見たが

なるほど、体を動かすのならお外で遊べばよいのでは?と疑問が過る。


「わーまけたー」


「ふふ、お姉ちゃんったら本気で負けてる…」


「追いかけっこで疲れてるだけだから!ユウカ、交代!」


「えっ、私!?」


先生とノアさん、ユウカさんが並んで執務をしている様子

なぜだかその隣ではコユキさんは正座させられているようだが。

そんな中でユウカさんはリモコンを渡されて

渋々と楽しみの半分顔でテレビの前へと移動する


「これ操作わからないんだけど…」


「画面に出るし直感操作から大丈夫です」


「え、ちょっとまって…わっ!」


テレビの画面にはGAMESTARTの文字

スズランが真剣な顔でリモコンを振り回す様子を写真に収める。


私にはよくわからないが

スズランとユウカさんは熾烈な争いを繰り広げているようで

カキン、ドカンとテレビの中で争っている。

それに声援を送るモモイさんとミドリさん。


モモイさんはスズランを応援し

ミドリさんはユウカさんを応援し

子供同士で遊んでいるみたいで、なんだか微笑ましいので

帰ったらセリナとハナエにも見せてあげよう。


なんて考えていると、そのフレームの隅では先生とお話するノアさん。

ユウカさんの視線から外れたからかひっそりと部屋を出ようとしているコユキさん。

きっと堂々と出ていれば気にしなかったのだろうけれど

なんだかそのひそひそとした動きが私は気になって口に出してしまう


「コユキさん、お出かけですか?」


「うぇ!?いやあの…にはは…はは…サヨーナラー!!」


その自動ドアが開き切ると、駆けだしたコユキさん。

私の声に気付いたのか、ユウカさんはリモコンを持ったまま駆けだした。


「こら!コユキ!逃がさないわよ!」


きっとそんなユウカさんを真似たのだろう

スズランもなんだか分かっていない様子で駆けだして

とてとてとそのかわいい走り方に見合わない速度で駆けてゆく。


シャーレの中ではあるので、危険はないのだろうけれど

私も念のためにと追いかけて駆けだすと、すぐにユウカさんには追いついた。


「なぜそんなに焦っていらっしゃるのです?」


「あの、コユキは…問題児で…目を離すと何をするか…」


早くも息切れした様子のユウカさんの既に前を走っているスズラン。

それを気にしてか、肩から掛けた銃も撃てない様子。

とはいえ構えてしまっては、置いていかれるのがオチには見える。


そんな中先を行くスズランは

どうにも速い走り方には見えないのに、私達との差は広がって

さらに先のコユキさんとの差は縮まっている。


「とにかく、捕まえればよいのですね?」


「…おねがい…します。」


私が加速してスズランに並ぶと後ろでゼェハァと、足を緩めるユウカさん

ミレニアムサイエンスの方は、ちょっと運動不足ではないだろうか。

普段からもう少し運動しなければ健康によくないのではないだろうか。


いや、ハナエに言わせれば

「ミネ団長とセリナ先輩のほうがおかしいんですー」

なんて言われそうなので、口を挟むのはやめておこう。


「スズラン、鬼ごっこだそうです。」


「おに!」


やっと自分の状況を理解できた!

とばかりに無心に追いかける顔から笑顔に変わったスズランが私の隣から消える。

そしてコユキさんが曲がり角を曲がった先で

ドンガラガシャンと盛大な事故の音と


「え、なんで!?ぎにゃぁあああああ!!」


なんて素っ頓狂な声が聞こえて

なんだか見えた結果を思いながら

私が曲がり角を曲がると、やっぱりというかなんというか

何がどうなったのやらボロボロ姿のコユキさんと

その腕を掴んでニコニコ顔で息を切らしたスズランがいた。


「あらあら、スズラン、怪我はありませんか?」


「コユキつかまえた!」


足を緩める私の方へと、コユキさんを引き摺って歩く。

先ほどの大げさなまでの音に怪我はないかな

とスズランを観察する私へと、捕まえたコユキさんの腕を持ち上げる、


「…わ、さすが救護騎士団の団長さん」


追いついてきたユウカさん

後ろにはノアさんも小走りで駆けてきているようで

ユウカさんの怒り顔と、ノアさんのちょっとだけ怖い笑顔の方へ

捕まえたコユキさんを引きずりながら

「おに!」とハンタースズランが自慢げに獲物を見せつけていた。


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