救護騎士団のアルバム:ミレニアムサイエンスとスズラン(1)

救護騎士団のアルバム:ミレニアムサイエンスとスズラン(1)

蒼森ミネ

スズランが歩けるようになってしばらくしたあとの写真だ。

シャーレについて、迎えてくれたユウカさんへと駆けだしている姿。

その後ろにはノアさんと、なんだかしょぼくれ顔のコユキさんだろうか。

そんなコユキさんを苦笑いで先生もいっしょにお出迎えをしてくれていた。

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私達がヘリポートに降り立つと、ヘリコプターはそのまま空へと帰ってゆく。

すっかりと慣れてしまったこのヘリコプターの送迎も何度目だろうか。


私達がシャーレの当番になるたびにスズランは

何かを察しているのか、当番になった私達を恨めし気に見るので

置いていくわけにもいかず、こうして連れてゆくことになるわけだ。

そしてそのたび、こうやってヘリコプターを手配される、というのも定例の流れ。


私達が電車で十分、だと言えば

ならばとツルギ委員長が護衛をと言い出し

それを振り切って電車に乗ればその車両には礼拝の時によく見る顔ばかり

となってしまえば、ヘリコプターで移動するのが最も大袈裟ではないのだから困ったものだ。


「ぱぱー、ゆーかー」


「スズランちゃんいらっしゃい!」


ヘリコプターが飛び去ったのを確認して、私がヘリポートにスズランを降ろすと

スズランは先生とユウカさんの方へと駆けてゆく。

ユウカさんには会うたびに色々なものを頂いていたり、お世話をして頂いたり

とても良くして頂いているのはスズランも理解しているのだろう。


膝をついて視線をあわせてくれているユウカさんへととびついて、頬ずりをしてご挨拶

それを離れて、先生の足へと抱きつくと、先生がスズランを抱き上げる。


「ぱぱー!……ん?」


笑顔のノアさんの隣で、しょぼくれ顔の小柄な女の子。

こちらの方は初めて見る方だが、制服の感じからすると

二人と同じミレニアムサイエンススクールの生徒だろう。


あっちあっち、と指を指して先生にコユキさんへと近づくように促す。

先生がそれに従うと、コユキさんの頭へと手を伸ばし

よしよし、と頭を撫でた。


「…にはは、慰めてくれるんですか?ありがとうございます」


「みねままー、きゅうごー!」


どういうことなのか、と一足遅れて皆さんのもとへとたどり着いた私

スズランが指を指しているのは、コユキさんの頭

なんだかたんこぶになっている様子のそれをつんつんと突く


「いたたたた!いたいですー!」


「あらあら、どこかにぶつけてしまったのですか?」


私はポーチから応急処置用の急冷バックを取り出して

それを空けようとするのをユウカさんが制する


「あー、いいんです!

ちょっとおいたをしたのを叱っただけなので!」


「だめですよ、ユウカさん。頭の怪我はとても怖いものですから。」


「すみません、お手数をおかけしてしまい…」


急冷バッグを割って冷たくなるのを確認し

ハンカチに包んでコユキさんの頭にそっと添えると、そこにスズランも手を重ねる。


「天使みたいな方ですね。先輩達とは大違いです!…あ。」


「コユキー!」


「コユキちゃん?」


なんとなく察してしまうこの3人の関係性。

コユキさんの余計な一言に、ユウカさんは青筋を立てて

ノアさんが笑顔のままですごんでいる。

そんな二人に、私の手から急冷バッグを受け取ると、わたわたと逃げるように駆けだして

それを走って追いかけるユウカさんと、速足で追いかけるノアさん

どちらも私達を置きざって、シャーレの中へと向かってゆく


"行っちゃったね。私達も行こうか。"


「はい。」


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そんな騒動も落ち着いて、私とスズランがコユキさんへの自己紹介を終えた後

いつもなら一緒に遊ぶのかな、と見ていると

なんだか私から離れようとしないスズラン。


コユキさんが私に近づくと、その間に割って入るように私へと抱きつく。

だっこしてお話をしている最中なんて、その翼で私達を遮る始末。


ユウカさんが設置してくれたプレイスペースに降ろそうとしても

ならばと普段なら喜ぶ先生の隣に座らせようとしても

どうにも私から離れてくれはしない。


「あの、この書類をノア先輩からですー」


「ありがとうございます…わっ!」


「わぁあ!?なんですか!?」


デスクについて、スズランを膝に乗せる私にコユキさんが何かの紙を差し出す

しかし、それを受け取る手はスズランの翼に勢いよく阻まれる

驚いて私がスズランを見ても、目を合わせてくれない不貞腐れ顔


「こら、スズラン。お仕事の邪魔をしないでください。

あとでいっぱい遊んであげますから」


「やー。」


「やーではありません、ほら降りてください。」


「やー!」


私に書類を渡しに来ただけのコユキさんには見向きもせず

私を独占しようとするその姿を

先生もユウカさん達もほほえましく見てくれているのだが

それはそれとして、当番のお仕事がはかどらないのも困りもの。


「コユキ、嫌われちゃったわね。」


「なんでそんなこと言うんですかー!

今回ばかりは本当に何もしてないのにー!」


「普段の行いが悪いからよ。」


うわーん、と声を上げるコユキさんをユウカさんがつつく。

あんまり人見知りをする方ではないのに

いいなぜだか特定の方へはこの様子

私が困っているとノアさんがふむ、と顎に手を当てて思案顔。


「スズランちゃんはあんまり人見知りをする方ではないですよね

私達にもすぐに懐いてくれましたし

他の方にも人見知りをしていなかったはずです」


「はい、そうですね。これまで人見知りをしたといえば

レイサさんと、初めてミカさんにお会いした時くらいですね」


思案顔はふむふむもしかして、という表情へと変わる

そして人差し指をぴんと立てて、ユウカさんへと訊ねる


「もしかして、…ユウカちゃん、ゲーム部の皆さんを呼べますか?」


「どうしたの?たぶんモモイとミドリなら呼べば来ると思うけど…」


「はい、私の考えが正しければ

スズランちゃんが離れない理由が分かると思います。」


ふふふ、と私から目を逸らすスズランを見てほほ笑みかける。

なんだか意味ありげなそのほほ笑みに、スズランは「?」を返していた。

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