救護騎士団のアルバム:それはいずれ伝説となる

救護騎士団のアルバム:それはいずれ伝説となる

鷲見セリナ

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ゲーム開発部の皆さんに頭を撫でられて嬉しそうに笑っているスズランの写真だ。液晶に表示されているクリアの文字と一緒にピースをしている写真も数枚。


ペらとページをめくると…救護騎士団の3人が必死にノートにかじりついてペンを動かしている様子が。今でも腱鞘炎になりそうなくらいペンを動かしたのも、頭が破裂するくらい問題を解いたのを覚えていて、少し苦い顔になる。


その下には信じられないくらい虚無顔のスズラン。ゲーム開発部の皆さんが揃って目を剥いているあの発言は、私たちに消えぬ衝撃を残した。


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「一旦昼休みにして、私達も休憩しましょうか」

「あ!賛成です〜!私もちょうどお腹すいちゃいました〜!」

占いの館もドリームキャッチャーのおかげか盛況であり、気づけば針は昼過ぎを指していた。お客さんも時間の影響か食事系に流れていき、多少なら店を空けても問題ないだろう。

「じゃあミネ団長に連絡して一緒にご飯食べましょ〜!最近アイドル練習に忙しそうで一緒にご飯食べてないですし!」

「ふふ、そうですね。せっかくですし少し学園も回ってみたいですしね」

言うが早いか、ハナエは団長に連絡をとった。返信はすぐに来た。どうやらスズランと一緒に屋台を回っていたようで、現在は他校のブースの辺にいたようだ。

「それじゃ、早く片付けて合流しましょうか。」



「セリナ、ハナエ。こちらです。」

「セリママー、ハナママー!」

「お待たせしました〜団長!スゥちゃんも!」

ミネ団長に抱かれたスズランの頬をうりうりとこねるハナエに、スズランはきゃ〜と嬉しそうに羽をはためかせている。

スズランの腕には最近意地でも離さないサイリウムと小さなお菓子やら軽食やらがこれでもかと吊るされており、抱えるミネ団長の腕にも同様に…いや、その2倍以上は吊るされていた。

「あの…ミネ団長、それらは…?」

「あぁ、これは私とスズランへと…」

「くれた!」

もうすっかり学園名物と化しているスズランだが、未だに関われていない生徒は意外と多い。そんな子達がみなこぞってスズランに…と自らの受け持ちの商品を次々と…というのがことの真相らしい。

「スゥちゃんは人気者ですね〜」

「当然です。」

「ミネママも!かわいいねー!」

ハナエの言葉にアイドル衣装の団長が力強く頷く。その衣装をこさえた効果もあったのか、以前より救護騎士団…ひいてはミネ団長に対する印象が軟化したのも影響したのだろう。

「あ!その翼はまさに大空をかけるグリフォンではないか!」

聞き覚えのある声に振り向くと、出店の方からアリスさんが手を振っていた。

「!ありねーちゃ!」

「はい!ありねーちゃです!」

「こらスズラン、そんな荷物で走っては…」

ぴょんと団長の腕から飛び降り、ズルズルと袋を引きずりながらアリスさんの元へ走っていき、ぴょんぴょんと飛び跳ねている。道中で袋の中身をぽろぽろこぼしてしまっているのはご愛嬌だ。

「あ、スズランちゃんじゃん!やっほー!」

「こんにちは、覚えてるかな?」

「こ、こんにちは…」

「えっとね〜…ももいと、みどりと…ゆーず!こんちゃー!」

「お!覚えてるね〜!冒険以来だね!せっかくだし遊んでいかない!?」

すごい勢いで会話が進んでいく中で、私たちはようやく落ちた荷物を持って追いついた。

「スズラン、荷物を持っている時はちゃんと荷物も気にかけてあげないと…荷物さんも怪我しちゃいますよ?」

「!!にもつけがした?きゅうご?」

「そうですよ〜、荷物さんもいたーいってなっちゃうのでちゃんと持っててあげてくださいね〜?」

「あい!」

何も祭りで説教することもない、少し注意してゲーム開発部の皆さんの出し物を拝見する。

「…テイルズサガクロニクル…の1と2…これは…お仕事体験…ふむ、料理ゲームもあるんですね…」

少し前に何かしらの賞を取っていたゲームを初めとした複数の制作済みのゲームを販売しているようだった。試遊コーナーもあり、流石ミレニアムと言った所か、なんだか凄そうな設備まであった。複数のソフトの中からスズランはひとつのソフトに興味を持った。

「これなーに?」

「んー?どれどれ…お!これは最近作ったお勉強ゲームだよ!これを遊ぶだけでメキメキ頭が良くなっちゃう…ハズだよ!」

「あたまきゅうご?」

「救護…というよりは…もっとママたちから褒められるようになる…かな?」

その言葉にスズランの羽がぶわっと広がる。

「ももい!!これやる!」

ふんすふんすと鼻息を荒くして、やる気十分のようだ。

「お!よーし、ちょっと待ってねー」

カチャカチャと機械を操作して、液晶にフォンッという音と共にポップな画面が表示される。どうやら簡単な計算を使うゲームのようで、勉強系というのも納得だった。

「ママみててー」

「スズラン、頑張ってくださいね。」

「スゥちゃんならできますよ〜!」

そっとカメラを構えながらスズランのプレイ開始を待った。簡単な算数程度なら教えたことがあるが、さて。

STARTの文字が表示され、スズランには少し大きいコントローラーをスズランは頑張って操作している。

内容は単純で、自キャラに表示されている数字より小さな数字の敵にに触れると敵を倒してその数字が加算、その繰り返しでボスを倒すという私たちには少し退屈気味なゲームではあったが、本人が楽しんでいるなら問題は無い。あれよあれよという間になんだかユウカさんに似ているようなボスキャラを倒し、gameclear!!の文字がでかでかと表示された。

「できた!」

「スズランちゃんはすごいです!まるで賢者のような賢さですね!」

アリスさんに撫でられながら褒められご満悦のスズランはこちらにピースしながら自慢してくる。絶好のシャッターチャンスに思わずカメラをパシャリ。

「ふふ、楽しかった?」

「これほしい!」

「や、やった…!」

ゲーム開発部の皆さんがこちらをちらと見てくる。やれやれ、随分商売上手な人達だ。スっと財布を出したところで、他のふたりも同じように財布を出していることに気づき、同時に3人の財布の紐を緩ませたことに少しおかしくなり、ふふっと笑う。

「賢者のお母さんたちは懐が広いですね!まるで大賢者です!」

「いえそんな…」

「そうだ!お母さんたちが高難易度クリア出来たらおまけでこのゲームあげ…あげ…割引してあげる!どう!?チャレンジしてみない?」

なんだか踏ん切りがつかなかった提案にスズランがこちらをキラキラとした目で見てくる。

「…いいでしょう。救護騎士団たるもの、勉強が苦手という心の救護もできなくては救護騎士団の名折れと言うものです。見ていなさいスズラン。これが救護騎士団の学力です。」

ミネ団長に火がついてしまったようだ。発言にギョッとしたハナエが1歩後ずさる。

「え!?ちょ、ちょっと私は…」

「ハナエ、貴方もこれを機に数学の苦手を無くしなさい。この間の数学酷い点数だったではないですか。もう少しで赤点と…」

「わ、わ〜!!ダメです!スゥちゃんの前でそんな話しないでください〜!」

頼りある母でいたいのだろうか、ハナエは暴露したミネ団長の隣に慌てて座る。その様子に苦笑しながら私も席に着く。

スズランの前で算数ができない、という無様は晒したくは無いが…高難易度と言ってもあの程度の問題だ。せいぜい桁が増えた程度だろう。そう思っていたうちが私たちの幸せの絶頂だったのだろう。

「はいじゃあ、これ!」

「「「…え?」」」

パサッと置かれたのはノートとペン数本、さらに電卓まで取り揃えた本格的な教材たち。いくらゲームといえどこんなに…少し過保護すぎやしないだろうかとゲームの開始を待って…面食らった。

「な、なんですかこの問題〜!?」

目の前に表示されたのは“さんすう”なんていう生易しいかずあそびではなく。

「こ、この難易度は…!!」

それはミレニアムの科学力と言わしめるうちの一端。

私たちの前に立ちはだかったのはもはや暗号となっているレベルの…“数学”という学問であった。



「こ、ここどうでしたっけ…!?」

「落ち着きなさい、これは一昨日教えたところと同じです!復習したんでしょう!?」

「うわぁーん、そんな急に聞かれるなんて思ってなかったんですよぅ!!」

「あれほど復習は大事だと…!くっ、それは後です!」

「冷酷な算術使い監修の高難易度!難易度Tormentです!!制限時間も付いているので頑張ってください大賢者よ!」

ガリガリと3人揃ってノートにかじりつく。1問ずつならともかく、複数問を同時に相手しなくてはならないペースであり、到底1人でクリアさせる気のない難易度である。山勘で数字を取ろうにも、どうやらちゃんと解かないと確実に数字で敗北するプログラムが組まれているらしく、ハナエが1年の範囲、私が2年とハナエの取りこぼし、ミネ団長はその他と何とか抗っているがじりじりと追い詰められる。問題をといては素早くコントローラーを動かして自キャラの数字をあげていく…のだが自キャラの数字すらもうなんだかよく分からない記号になっている。最初のゲームと同じとは思えない難易度にテストプレイをしたのか疑う難易度だが、アリスさんに聞くと

「はい!全知の称号を持つ大賢者がおひとりで試練を突破していました!」と言われたものだからたまらない。スズランはもうなんのこっちゃといったふうであり怪訝な顔をしていた。

「も、もう限界ですー!頭から火が出ちゃいます〜!」

ハナエが目を回してしまったが、ついに最終問題まで来た。制限時間はあとギリギリ1問解けるか、と言ったところ。

グォォン!とユウカさん似のモンスターが吐き出した問題は…

「「「……はい???」」」

難しい問題という次元じゃなかった。これがミレニアムで挙げられている千年難題なんだと言われても信じてしまうくらいには。その難易度に呆気に取られているうちに制限時間オーバーでgameoverの文字がでかでかと表示される。

「あちゃー、残念!!ボーナスはなしですね!!」

「大賢者が突破できませんでした!大丈夫です!次は試練を突破できるはずです!」

「…あ、あの。これはとてもクリアできるようには…」

「えー?でも先輩はクリア出来てたし…」

「お言葉ですが…ミレニアムの全知の方と比べられるとさすがに…」

「言ったでしょお姉ちゃん、ミレニアムのトップレベルを平均にしちゃダメだって…お姉ちゃん二個下でもクリアできてなかったじゃん」

「うるさいなー!」

やいやいと言い合いを始めた2人を横目に、ユズさんがミネ団長におずおずと近づいてくる。

「あ、あの…ど、どうでした…?」

「…私の学力不足を大きく感じました。このままでは私は救護騎士団失格です。」

「ママー…げーむたのしくない?」

ひしっと足に抱きついたスズランを撫でながらミネ団長は続ける。

「いえ…大変画期的なゲームではあるのですが…私にはクリア出来ません…しかし勉学を積んで次は必ず…」

スズランはその時悔しそうな私たちの顔を見て、ふと真顔になった。


スズランは思い出していた。モモイの発言を。

「はーー!?こんなの倒せないじゃん!なんなのこのゲーム!」

「ちょっとお姉ちゃん、スズランちゃんもいるんだし…」

「関係ないよ!もー!このゲームおかしいよ!!こんなの_」



「…くちょげー?」

「「「「「「「!?!?!?!?!?」」」」」」」

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