救護騎士団のアルバム:かわいいもの好きのミネ団長
鷲見セリナペロロさんのきぐるみに抱きついているスズラン。
その隣には、スズランの翼と手を繋いで
ウェーブキャットさんの特大ぬいぐるみを抱えたミネ団長
顔を真っ赤にして、そのぬいぐるみに半分顔をうずもれて
でも、きっと嬉しいのだろう、その不思議な表情だ。
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今日はみんなでお買い物に来た。
特に何か目的のものがあったわけではなく
珍しくミネ団長が「たまの気晴らしに」と言い出して
ショッピングモールへとやってきた私達。
休日ともあって、混雑しているショッピングモール
スズランを抱きかかえるミネ団長を先頭に
目的がないと言うのに、洋服にも小物にも目をくれずに歩いてゆく。
なんだか少し急いでいそうなその足取りを追いかけて
私達が歩くと、吹き抜けの広場には、なんだか疎らな人だかりが出来ていた。
それに興味を示したのはハナエ。
もうすぐ始まりそうなイベントに、興味津々身を乗り出す。
「あら、何かイベントやってますね~」
「そうですね。もしかしてミネ団長…」
私がちらりとミネ団長の方を見ると
フイと目を逸らして、なんだか居心地悪そうだ。
「子供向けのイベントのようでしたから…スズランが喜ぶかと…」
「モモフレンズのイベントですね~
あ、団長が好きなウェーブキャットさんのぬいぐるみもありますよ!」
「別に私はそんな…スズランが喜んでくれれば…」
と言いながらも、それに目を奪われている様子
身の丈以上もありそうなそのぬいぐるみが吊るされていた。
興味を隠そうとはしているものの
ちらり、ちらりとどうしても目が訴える
「…そうですね。スズランも興味津々ですし…」
「ぺろー、ぺろー」
ミネ団長の腕の中、キャラクターの方へと腕を伸ばすスズラン
そういえば、以前モモフレンズのぬいぐるみを貰ってきて以来
いつも抱いて寝ているのだから、嫌いなわけはないのだろう。
いよいよ始まりそうなイベントに目を向けると
その最前列には、どこかで見た事のある人影
ふたつ結びのその髪と、ペロロさんの羽根のついたリュックサック
熱狂するようにとびはねて、その開始を今か今かと待ち望んでいるようだ。
ミネ団長がスズランを降ろすと、手を繋ぐ前に
スズランはそちらの方へと駆けてゆく
疎らな人混みの間を抜けて、その少女の方へと駆けていく。
「こら、スズラン、一人で行ってはいけませんよ!」
追いかける私達のその先で
その少女の足をペシペシ叩き、スズランはご挨拶をしている様子。
「あ、スズランちゃんも来てたんですね!」
「ままきた!」
ミネ団長がスズランに追いついて手を繋ぐ。
疎らでこそあるものの、決して少なくはないその人混みに
私達まで追いかけていくと大変そうかな、なんて思っていると
私の隣で、ハナエが私の袖を引き、クレープ屋さんを指さす
「スゥちゃんは団長が見てくれてますし~
私達は~、甘いものでも食べてちょっとゆっくりしましょ~」
「ハナエ…、いや、そうですね。
もうステージも始まる様子ですから、そっとしておいてあげましょうか。」
私の言葉にハナエは私の腕を引いてクレープ屋さんの方へと向かう
ステージの方では、司会のお姉さんが駆けて出て
イベントのはじまりを伝えていた。
『モモフレンズ体操、はっじまーるよー!』
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私達がベンチに座り、クレープの最後のひとかけらを口に押し込む頃
イベントも終盤に差し掛かっていたようで
景品をかけたビンゴ大会が繰り広げられているようだった。
『27番!…ビンゴの人はいませんか~?
次はー、4番!ビンゴ!ビンゴが出ました!』
そんな風景にのんびりと目を向けていると
壇上に上がってきたのはスズランに手を引かれたミネ団長。
ビンゴシートを片手に、何やら恥ずかしそうに俯きながら
きっとその人垣の中から現れる。
『お子さんと一緒に参加をされてたお母さん!
景品は、こちら特大ウェーブキャットさんだきまくら!』
『あの…はい、ありがとう…ございます』
ステージの上、司会お姉さんに特大のウェーブキャットさんを渡されて
それをスズランに渡そうとしているのだろうけれど
スズランは受け取ろうとせず、ニコニコしているだけ。
遠くて聞き取れはしないもののその表情からは
「まま、うれしーねー」
なんて言っているのが容易に察しが付く。
なんとかスズランに持たせようと頑張っているのだろうけれど
既に、ウェーブキャットさんはミネ団長の好きなもの
と思っているであろうスズランは、頑として受け取ることはなく
困り果てたミネ団長は、耳を真っ赤に
ぎゅっとウェーブキャットさんを抱き上げて
顔を隠すようにうずもれた。
きっとこういうイベント特有なのだろう
大袈裟に祝われるその雰囲気に
イベントに興味のなかった生徒達も気が付いたようで
「あれ、救護騎士団のミネ団長じゃない?」
「ほんとだー。スズランちゃんもいるー」
「なんか意外、ああいうかわいいもの好きなんだね」
「ねー、もっと怖い人かと思ってた」
なんて、通り過ぎる生徒の雑談
私達からすれば、ミネ団長の可愛いもの好きなんて
そんなに隠しきれているものではないとは思っていたのだが
怪我をした時、ともすれば怪我をする時くらいにしか
会う機会のない彼女たちからすれば
厳格なミネ団長のイメージ、というのはやはり強いものだろうか。
物珍しいものを見るように
顔を真っ赤にしてインタビューされているミネ団長を
写真に撮ったり、その横にいるスズランに気が付いて手を振ったり
休日の生徒達がステージ上のミネ団長達へと興味を示す
そして、その存在に気付いたミネ団長の顔はさらに真っ赤になってゆく。
『はーい、では記念撮影でーす、あちらのカメラにむかってー
ペロペロー、ばー!』
こうして、モモフレンズの着ぐるみたちに囲まれて
顔を真っ赤にしたミネ団長の写真が一枚、アルバムに追加されることになった。
そして、それと共に『案外可愛いもの好きのミネ団長』
なんて噂が校内で知れ渡り
「私だってかわいいものが好きです!」
なんて結局開き直るように公言するミネ団長に宛て
治療のお礼に、とかわいいものが送られてくるようになるのだった。