救護騎士団のアルバム:クリスマスパーティーの思い出

救護騎士団のアルバム:クリスマスパーティーの思い出

蒼森ミネ

正義実現委員会のクリスマスパーティーに参加させてもらった時の写真だ

大量に積まれたケーキの箱の山とその前で胸を張るスズラン

ホールケーキをまるごと食べているハスミさんと、それを見て呆れ顔のツルギさん

真っ赤なチキンを食べようとするスズランを止めようとしているハナエと先生

何かケンカをしていたのか、正義実現委員会と生徒会の生徒が

二人正座させられてスズランに怒られているようだ

―――――――――――――――――――――


「はしゅ、おっきいのね!」


スズランが元気よくハスミさんを指さして言う

すると、まだまだケーキを運び込んでいる様子の生徒会の生徒から

カットされたケーキではなく、ホールケーキがまるごとハスミさんに渡される


「さすがに私でもこの量は…」


「いらない?」


「いただきます…」


ホールケーキとフォークを渡されてもくもくと食べ始めたハスミさん

それでも味はなかなかだったようで、一口めを口に入れると

ぱっと表情が明るくなった。


「みねまま、ちゅるぎもね、けーきあげて!」


「はい、今切っていますからね。」


お皿に一切れを乗せて、スズランへと渡すと

とてとてとツルギ委員会のもとへケーキを届ける。

そのお皿を受け取ったツルギさんは、周囲を見渡しながらも


「…あ゛、あ゛、あ゛あ゛りがとう」


なんて顔を真っ赤にしながらお礼を言っていた。

私がその隣にいたマシロさんにもケーキを渡すと

小さくぺこりと頭を下げて食べ始める。


その2人を見ながら、スズランは何かを求めているようで

じっと二人を見つめては、ぎゅっと手を握って小さく背伸びを繰り返していた。


「……おいし?」


「はい、とってもおいしいですよ。ね、ツルギ先輩」


「…とっても…おいしいよ。上手に、できたね…よかったね…」


ツルギさんの優しい言葉に、驚いたり黄色い声を上げたり

周囲のリアクションについつい恥ずかしくなったのか

ツルギ先輩は手近なテーブルのテーブルクロスの中に隠れてしまう。


それでもスズランは大満足なのか

ケーキを切っては渡しているセリナとハナエの方へと駆けてゆき

次のケーキをちょうだい、と手を伸ばす。


「つぎねー、いちかの。いちかどこー」


きょろきょろと周囲を見渡して、首を傾げるスズラン。

今日はイチカさんは遠方にいるとのことで不在

そこにはいないはずの人を探して歩き出す。


「スズラン、今日はイチカさんはお出かけ中らしいのです。

今度、また帰って来た時にケーキを作ってあげましょうね」


「いちかいないのねー。さみしいねー」


手に持ったケーキを見ながらしょんぼり顔

さてこのケーキをどうしようか、と悩むスズランの前に現れたのは先生


"そのケーキ、私が食べてもいいかな。"


「ぱぱー!はい、あげるー!」


スズランによる先生のパパ呼びもある程度は慣れたものだが

まだそれを知らなかった生徒達が「えっ!?」と言わんばかりにこちらを見る

「いや、違うのです!」なんて久しぶりのリアクションを返していると

先生が少しふざけて笑って見せる。


"そうそう、ママはひどいんだから"

"この前こうなったときもいつの間にか逃げちゃって…"


「あれは!スズランが寝ていたので仕方がなかったのです!

せっかく寝付いた子供が起きてしまったらどれだけ大変か!」


"冗談だよ。生徒達はみんな私の大切な子供みたいなものだからね。それだけだよ"


先生はスズランからケーキを受け取って、私からフォークを受け取る。

その言葉に、何人かの生徒が残念がったり、ため息をついたり

自分に向けられている感情にも気付いていないのか、気づかないふりをしているのか


私も少し辟易としながらそれを眺めていると

ひとくちケーキを食べた無邪気な笑顔に、そんな考えも吹き飛んでしまう


"うん、とってもおいしいよ。"

"ケーキ屋さんにもなれるね"


その言葉にスズランは喜んで飛び跳ねる。

周囲でもケーキを食べ始めて、みんなが幸せそうにしているその顔を見て

にっこり笑顔で羽をぱたつかせていた。


しかし、それも長くは続かず

「ふう」とひと息、床に座りこんでしまう


「スズラン、どうしましたか?」


「あのねー、おなかすいたー」


きっとこのために朝から動き通しだったのだろう

ちょっと疲れた顔をしているスズランを抱きかかえて

私はまだ料理が多く残っているテーブルに着く


そこから料理を取り分けて、スズランの目の前に置くと

店員さんが子供用のフォークを持ってきてくれた。


「いただきまー!」


もぐもぐと料理を食べるスズランはすぐに囲まれて

色々な生徒から「これもおいしいよ」「こっちも食べる?」

と色々なテーブルから残っていた料理がかき集められる。


普段は食べないような豪華な料理に舌鼓

取り分けた料理をすぐに食べ尽くしてしまった。


ひとしきり食べて、満足をした様子のスズランは

また元気いっぱいになったようで

ぴょんと床に降り立って歩き出す。


何かを探しているのか、ぴょん、と大きく飛び跳ねてテーブルを覗き込む

そしてまた次のテーブルで同じようにぴょんと飛び跳ねる

なるほど、まだ食べていない料理がないかを探しているのか

と納得しながら後ろをついていると、スズランは何かを見つけてそちらへと駆けだす


先生とハナエがおしゃべりをするそのテーブルへと駆け寄って

ジャンプして何かを手に取った

それはヘルファイアチキン、不良生徒謹製の激辛チキンだ


普段スズランと接することのない生徒達が

きっとその姿を撮っていたであろう向けていたカメラを降ろして

先生とハナエもそれを食べようとするスズランへと飛び掛かる


「スゥちゃん、まってー!それを食べちゃ…」


"まってスズラン!"


しかし、スズランがそれを口に運んだほうが速かった

ぱくりと一口、すぐに吐き出すだろう、と私は飲み物を探す

手近にあったミルクティー用の牛乳を手にとって

慌てて駆け寄ると、スズランは目をまん丸に見開いて

口をもぐもぐさせていた


「んーん!!」


「スゥちゃん、ぺーしてください!」


"ほら、スズラン、これに吐き出して。"


ハナエは相変わらずにもぐもぐとしているスズランの背中をさすり

先生はスズランの前に空のお皿を準備してスズランが吐き出すように促している

しかし、スズランは吐き出す様子もなく

もぐもぐもぐもぐ、ずっと口の中のチキンを咀嚼している。

その顔は、辛さに苦しむというよりも、初めて食べる味を楽しんでいる顔

ようやく嚙み砕き終えたのか、ごくりとそれを呑み込んだ。


「もしかして、もしかしてですが、スズラン?」


「おいしーねー!」


「やはりですか…」


その言葉に唖然としている先生とハナエ

私も同様にきっと唖然とした顔をしているのだろう。

それをさておいて、チキンの二口目をもぐもく。

しかし、その後ろではなんだか口喧嘩が始まってしまっているようだ。

ハスミさんが周囲を見渡して大きな声を上げる


「誰ですか、あんなところにあんな危ないものを置いたのは!」


「すみません、私です…激辛好きな子が食べるかなって…」


「あのチキンはなんなのですか?」


「不良生徒が作った上段みたいな激辛のチキンです」


その騒ぎを聞きつけて、生徒会の生徒も周囲に集まり

それを置いたという正義実現委員会の生徒に対して叱責をする


「辛いものが苦手な小さい子に与えたらショック症状が起きると聞いたことがあります」


「でも誰かが食べるなんて思ってなくて…」


「あんな一件の後だし

このチキンのことを知らない奴なんているわけないと思うじゃない!」


言い争いをする様子を見ながら、スズランは相変わらずもぐもぐとチキンを食べる

うーん、と首を傾げながら、なんの争いなのかを見ている様子だ

そんな中加熱してゆく言い争い


もぐもぐむしゃむしゃ。

ようやく一本のチキンを食べ終えて、先生が準備してくれていたお皿に

骨をぽん、と預けると、そちらへと歩んでゆく。


「きゅうごのてを!」


ぴょーん、と大きく飛び跳ねて、その中心になっている二人へと同時にげんこつ。

着地をしたあとに、その周囲の生徒一人一人へとげんこつをしてゆく。

ひとしきり、その争いに関わった生徒達へとげんこつをし終えると

びしり、と床を指さして一言


「そこ!すわる!…はい!」


怒るスズランに気圧されて、ハスミさんをはじめとする生徒達がその場に正座

なのかと思ったが、その後ろにはツルギ委員長

ぎろり、と睨みを効かせて、スズランの指示に従うようにと無言の圧力だ。


「けんか、わるいこ。わるいこのとこ、さんたさんこない!」


「…そうだ。サンタさんに、嫌われてしまう」


「だからけんか、めっ!

ごめんなさいする!」


「はい、ごめんなさい」と声を重ねてスズランに叱られる生徒達。

ハスミさんもそこに巻き込まれているのが後ろのツルギさんには面白いのか

睨みを効かせるその威圧顔の口元は、少しぴくぴくと笑いが混じっていた。


「ツルギ、笑わなくてもいいでしょう!?」


「ギヒャハハハ、そうは言うが、お前がこのザマでは…」


ハスミさんの反論にいよいよ耐えられなかったのか

壊れたように笑い始めたツルギさん

そんなツルギさんの頭にも、スズランのげんこつが炸裂した。


――――――――――――――――――――――――――――


わたしはスズラン。救護騎士団のスズラン。

今日はクリスマス、とてもたのしかった。

いっぱいプレゼントをあげて

いっぱいケーキをつくって

黒い人といっしょにクリスマスパーティーした。


とってもつかれて、とってもねむい。

そして体がとってもおもい。

だっこしているサンタのリュックがとっても重い。


パーティの帰りにナギがわたしてくれた。

ママたちのクリスマスプレゼントがはいっているのだ。

お部屋に帰ったらママたちに渡すのだ。


車から降りて、眠るおうちの前へつく。

ママが「抱っこしましょうか?」と言うが

抱っこするときはリュックはセリママにおねがいしないといけない


ママのだっこは気持ちいいので寝てしまうかもしれない。

今日がクリスマスなのだ。

眠ってしまったらクリスマスが終わってしまう。


「やー、あるくー」


首を振ると世界がふわふわ揺れる。

それでもママと手を繋いで歩いて、なんとか眠るお部屋までたどり着く。


自分のほっぺたをぺちぺちとしながら、サクラコと練習した順番を思い出す。

おへやにはいる、ツリーの前に行く、おうたを歌う

ウイとシミコと描いた絵をあげる。


かんぺき。ままとってもよろこぶってみんなが言っていた。

きっといっぱいニコニコになるに間違いない。


ミネママがお部屋のドアを開ける。

はやくしないとおやすみが来てしまうので、クリスマスツリーへと急ぐ。


ママたちに秘密でリュックに入れた絵を取り出す。

ちょっと見てみるが、私の翼に見とれて気付いていない。

セリママがお部屋の電気をつけようとした。


明るいと隠れられない。

ツリーのピカピカのスイッチをつける。

作戦成功、セリママはとまった。


よし、気づかれてない。次はおうただ。

頭の中でサクラコの声を思い出す。


(We wish you a merry Christmas)


「うぃー、うぃしゅあくりすます、めりくりすます!」


お歌を一生懸命に歌っているとママたちがニコニコしている。

うん、作戦は大成功している。

ナギが言っていた、クリスマス大作戦の成功はわたしにかかっていると。

セイアが言っていた、一生懸命にすれば、きっと喜んでくれると。

ケーキ部が言っていた。失敗するはずがないと。


お歌を歌い終わって、ママたちのもとへと駆けてゆく。

そしてそれぞれへとプレゼントを渡してあげる。


ひとつ、ビグさんのシール、これはミネママの。

ふたつ、ピンさんのシール、これはハナママの。

みっつ、パカさんのシール、これはハナママの。


ひみつのクリスマスプレゼントなのに、ひみつで渡さないのは不思議。

でも、サクラコが言っていた。

「きっとそれはひみつで渡すより、私が渡した方が喜ぶ」と。

きっとサクラコはとっても頭がいいのでなんでも知ってる。

マリーとヒナタもうんうん、と言っていた。間違いない。


喜ぶならそうする。

でもママたちは不思議そうな顔をしているので説明してあげる


「みねまま、せりまま、はなまま、だいすき。」


だからプレゼントをあげるのだ。

私が言うと、3人の目がまっすぐこっちを見ている。

そうじっとみられると、少し恥ずかしい。


「開けていいんですか?」


訊ねるミネママに私は頷く。


シミコがしてくれた包をそれぞれ開いてゆく。

ミネママとセリママは上手、ハナママちょっと下手ね。


袋を開け終わると、ママたちは絵を見てじっとしている。

ここでとってもニコニコになるはずだったのに

こまった、とても失敗してしまったかもしれない。


ミネママが泣き始めて、ハナママ、セリママも泣く。

どうしよう、うれしくなかったみたいだ。

悲しいをしているママたちを見て、とてもつらい。

なんでそんなに泣いているのだろう。


「…うれしくない?」


みんなは喜んでくれるよ、と言っていた。

でもママたちを泣かせてしまった。


どうしよう、不安になる私に、ママたちが答える


「「「とっても、嬉しいんです」」」


ぐずぐずずびずび、涙をいっぱい流しているママたちだが

ミネママも、セリママも、ハナママも

とっても、とっても嬉しいときのニコニコをしている。


よかった、とっても喜んでくれた。

わたしもとっても嬉しくなる。

ぎゅーっと胸の中が温かくなって、私の目からも涙が出てきた

なるほど、ママたちが泣いているのはこういうことか。


じぶんの羽根がばさばさするのが分かる。

はやくママのとこに行こう、と言っていたので

私はママたちに飛び込んだ。



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