二百五十三話 執筆
アリシアさんは最近凄い勢いで小説を書いている。どうやらルーペでの神秘体験の結果、筆を持つだけで後はほとんど考えずにスラスラと書けるらしい。あらかじめ書くべき事が全て決まっていて、それに従うだけだと言っていた。自動書記だな。
最初に書いていた、アリシアさんと俺がモデルの恋愛小説は既に書き終わったらしく。今は新作を書く合間に手直しをしているらしい。
手直しが必要とはいえ一旦完結したのなら読ませて欲しいと言うと、しぶしぶといった様子だったが読ませてくれた。
まず俺とアリシアさんの関係だが、好みの相手だから一晩どうですか、みたいな感じで付き合うようになった訳ではなかった。
故郷から追放されたアリシアさんが旅の途中、結構な強さの盗賊に襲われた時に颯爽と現れる俺。盗賊を俺が片付け、事なきを得る。
俺はかなりの実力の魔術師ではあったが記憶を無くしていて、たまたま通りがかったという設定だった。
主人公は魔神に憧れがあったので、それと同じ黒髪の男性に助けられてときめく。主人公も里以外の事はそこまで詳しくはないが、故郷から出る前に、いずれは追放されるだろうと、それなりに外界の知識を身につけていた。
それで記憶が無く右も左も分からない俺のガイド役を申し出る。俺はそれを承諾し、二人で旅をする事になった。そこから次第に仲を深め、という感じである。
物語には他の家族も出てくる。仲間になる経緯はリアルと色々違うが、描写なんかは本人達に似ている。
仲間になった皆と様々な活躍をし、成り上がる。俺が発明品で稼ぐ描写もあった。基本はアリシアさんと俺とのイチャラブがメインだったが、物語が進むと他のメンバーとも俺は関係を持っていた。
物語の中とはいえ、俺を独占はしないらしい。普通の女性向け恋愛小説なら、ヒーロー役が他の異性とも結ばれるなんてほぼ無さそうだが。
一応家族仲は良好なので、物語の中とはいえ俺を独占するのは気が咎めたのかもしれない。
まあ俺に多数の相手ができても、一番愛されているのは主人公という感じの描写だったが。そこは譲れなかったらしい。
主人公と俺のイチャラブ描写といい、アリシアさんの願望がよく分かるな。参考にしよう。
後、アリシアさんはリアルよりかなり強くなり、リアルの何倍も活躍していた。俺のピンチを何度か救ったりもしている。まあ主人公だからな。
物語の終盤では魔王が復活し、それと戦う事になる。かなり苦戦をしていたが、絶望的な局面で俺とアリシアさんの強い愛がよく分からない奇跡を起こし、魔王に勝つ事ができた。
よく分からない奇跡は、設定では愛の神が一時的に力を貸した、というものだった。愛の神が他の神々にも神力を借りての神術の発動をしたらしい。
そういやアリシアさんや他の皆も、この前から一斉に愛の神を信仰し始めたんだよな。信仰する者の愛が一途で強い程強力な加護が貰えるらしい。御利益がなんなのかは詳しくは知らないが、恋愛運上昇とか家庭円満とか子宝に恵まれるとかそんなんだろうか。
その愛が強いほど、愛を貫くために強くなるとかもあるかもしれない。アクセル様が話していた愛の神の信徒の女性はかなり強かったらしいからな。
俺が信仰したら怒られるだろうな。一途じゃないし。もしかしたらベタンクールの男性は信者が多いかも。ベタンクールの英雄であるオリエストも湖の精霊に一途だったし。
俺には主に色事師が信仰する、絶倫の神サリュークがお似合いである。まだ祭壇を見に行っていないが。
アリシアさんが書いた小説を読み終え、面白かったと感想を伝える。するとアリシアさんは恥ずかしそうにしながらも嬉しそうにしていた。
「しかし主人公の子供は五人ですか。頑張らないといけませんね」
「私は孕みづらいエルフですが、ユウトさんの精力なら多分もっといけますよ。私も頑張って産みます」
アリシアさんが下腹部を撫でながら言う。少々夜を思い出してしまうな。ちなみに避妊薬は市販のだと俺の精力に負けてしまうかもという事で、前にシーラが作り始めた。魔法のせいで、並のエロ漫画の主役も真っ青なくらいの精力だからな、我ながら。
「この屋敷、無駄に広くて空き部屋が沢山ありますけど、子供が増える事を考えるとよかったかもしれませんね」
「そうですね。それでも足りなくなって増築をする必要が出るかもしれませんし、ルーペの屋敷を貰ったのもよかったですね」
「確かに」
そんな話をし終わって、アリシアさんは小説の執筆を再開した。俺は魔導書執筆作業に戻る。
最近は大体の魔法なら魔導書を作成する事ができるまでになっている。転移はまだ無理だが。
執筆した魔導書は基本的に身内用にしようと思っている。気軽に量産できないからな。転移に関してはもし作れたら完全に身内用で、いずれは家宝扱いにする。
カミーラさん、アリシアさんあたりは使えるかな。もしかしたらシーラも。後はいずれできる子孫に魔法の才能がある者が現れる事を祈ろう。
魔導書は読めても、本人の能力が足りなければ魔法を使えないからな。そこだけがネックである。
この前会った時に、フランさんは俺の子供なら大体は優れた魔法の才能が発現するんじゃないかと言っていたが。
後話のついでに、魔道具で種族を変えたアルクさんと子供を作りたいか聞くと、複雑な顔をしていた。
なんか自分の研究の成果で生まれてくるアルクさんとの子供の種族を変える事にやりがいも感じているらしい。
もしそれが上手くいかなくても、俺が始めた慈善事業で吸血鬼は前より暮らしやすくなったから、大して心配はないんじゃないかと言っていた。なるほどな。
まあナシェルがアレコレ上手く回しているうちはいいが、次代以降がどうなるか分からないから、懸念材料はあるが。
プルメリアもいたか。龍人族はヒューマンより長生きらしいので、保険になるかもしれない。
俺は自分や嫁には若返りのポーションなんかを使って皆で長生きする予定であるので、プルメリアもさらに長生きするだろう。
アンチエイジングには世界樹の葉のお茶とか、龍泉の効果も出るかもしれない。そういやマルコメンコから多少の若返り効果のある蜂蜜を貰えるっていう話もあったな。
アムブロシアなんかを目当てに迷宮を巡るのもいいな、と思ったが、金の力でオークションとかで無双できそうなので、その必要があるかは分からない。前にアムブロシアとか若返り関係の品はオークションで見かけたしな。
迷宮ではアムブロシア以外にも色々面白いものが手に入るので、潜らない事はないと思うが。ヴィンスさんが前に言ってた不老の付与付きの装飾品とかも夢があるかもしれない。
さて、執筆の続きだ。かなり集中しないと簡単に失敗作になるので神経を使う。頑張って集中しよう。