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七十一話 ライオンマン ネイア


「俺が国王のシグフリード・フローラ・モンテリーゾ・ジョヴァンネッティだ。シグルドでいいぞ」


「ユウト・レイセンです。よろしくお願いします」


「よく来たな。お前が来たおかげで俺もウルスラとドンパチできそうで楽しみだぜ」


「シグルドさんも戦うんですか?」


「見て分からないか? この筋肉、まさに闘士といった肉体だろう。俺はミスリル級の魔物でもソロでタコ殴りにできるぞ。アダマンクラスはソロだと厳しいかもだが」


「へぇー、かなりの強者じゃないですか、国王なのにそれだけ強いんですか」


「国王だからこそよ。この国では強いやつがトップに立つ。定期的に貴族内で闘技会が催されて頭がすげかわるからな。まあ俺は十年優勝し続けているが。ちなみに平民も優秀な奴はたまに参加するぞ」


「なるほどなぁ、まさに百獣の王って感じですね」


「おお、いいなそれ、今度から名乗るわ」


 シグルドさんはライオンマンである。マッスルボディのライオン顔だ。確かに強そうな感じがする。キングレオとかライオンキングといった方が合っているかもしれないな。


「お前達もそこそこ強いんだろ? 当たる気はないが、お前の切断を食らったら俺も魔法耐性を貫通されて即死しそうだしな。希少金属入りのゴーレムは俺でも骨が折れそうなのによ」


「まあそこそこですね。切断は当てられれば大抵なんとかなりそうな感じはします」


「事が起きたら頼りにしてるぜ。飯は食ってきたか?」


「はい、さっき食べてきました」


「なんだそうか。まあ時間的にそうだよな。でも夕食なら大丈夫だろう。夜まで王城を見学してな。部屋でゆっくりしててもいいが、結構見どころがあるぜここは」


「じゃあそうさせてもらいます。パッツォは彫刻とか凄いですよね」


「昔から器用なやつらがそれで飯を食っているからな。獣人以外にもそれ専門のドワーフとかハーフリングとか色々いるし」


 それから案内を用意され、王城の見学をさせてもらった。確かに言うだけあって見どころが多い。壁や天井の彫刻なんかに加えて、多種多様な動物の彫刻された像なんかがあり、脈動感もあった。後は闘士らしき獣人達の像もあった。


 ちなみにパッツォの騎士は武器を携行したり、しなかったり、金属鎧だったり、革鎧だったりマチマチだ。大体の国の騎士は基本紋章入りの金属鎧だが、パッツォは紋章がない場合もある。胸に付いている騎士章が無ければ冒険者と勘違いしそうになるところだった。


 案内の者は色々美術品に詳しいらしい騎士の一人だった。革鎧に剣を備えた若干梟っぽい顔で羽根が生えた人だ。色々と解説をしてくれる。彫刻以外の美術品の解説もしてくれた。


 見学を終えるまでは結構な時間がかかったが、まだ夜には時間があるので、待機用に用意された部屋でトランプをして遊んだ。


 夕食はなんというか豪華だった。大量に食え食えと言う感じではなく、少し料理が盛り付けられた皿が沢山ある感じである。元の世界風に言えばどの形式なのか分からないが。


 それぞれさすが宮廷料理人、といった感じの味わいで、一度全て食べ終えた後におかわりが可能か聞いたら可能だったので頼んでしまったりした。


 この世界に来てから諸事情あって大食いになっているからな。カロリーを貯蓄しないと干からびて死にそうになる。


 メニューはアリシアさんやタルトにも配慮されたものになっていた。アリシアさんには肉類は鶏肉中心で、タルトにはオムレツである。事前に話していたからな。


 シグルドさんは意外にテーブルマナーはしっかりしていた。脳筋っぽく見えるが元貴族だもんな。それなりの教育を受けているんだろう。


 皆が一通り食べ終えると、シグルドさんが合図をして、長期熟成させたらしい高級ワインを用意してくれた。皆のグラスにそそがれる。食前酒もあったがそれとは別のようだ。


 飲んでみる。小学生並みの感想だが、すごい酒だ。伯爵秘蔵の酒並に美味しいかもしれない。皆もとろけた顔をしている。


「客をもてなす時は必ずこれって決めてんだ。パッツォの土着種のブドウからしか作れないワインだぜ。美味いだろ」


「美味しいですねぇ」

 

 皆もそれぞれ想い想いに感想を伝えていた。その後、しばし世間話になった。途中、ウルスラが召喚したものが何だったら一番面白いか、みたいな話になった。


「異世界の人間とかどうですかね?」


「おっ、それ面白いな、異世界のいろんな知識が手に入るんだろ、殺さないで済ませたいな」


「異世界……」


「あ」


 シーラとアリシアさんは何かに勘付いたのかこちらを見ていた。やべっ、薮から蛇だ。


「あー、あと超強いスライムやゴブリンとかですかね。見た目はショボイのに強さはアダマン級みたいな」


「ははは、そいつも確かに面白いな。適当に提案したがユウトは結構良いセンスしてるな。俺はシンプルにドラゴンだが。戦い甲斐がありそうだしな」


「被害を受けない分には一度戦ってみたくはありますねぇ」


 その後、世間話を終え、王城を後にした。泊まって行くか聞かれたが、転移で帰れると言うとなるほどな、と言っていた。


 ちなみに夕食の席にはシグルドさんだけだったが、妻と娘がいるらしい。それぞれ猫とライオンの半獣人だとか。しかし基本的に接待はシグルドさん一人で行うことが多いらしかった。シンプルさが好みだからかな。


 イースタスの屋敷に戻り、ちょうどカレーを食べていたらしいアラクネに出迎えられた。使用人さんがカレーの作り方を覚えたらしい。まあ粉と食材と調味料があればできるよな。そんなに難しくないし。


 そこで使用人さんが、そろそろ名前をつけてあげたらいかがですかと言うので考える事になった。色々案が出たが、最終的に俺の案のネイアとなった。


 アラクネからアイネクライネナハトムジークを連想して、そこのアイネからとったものだ。モーツァルトの有名な曲が由来だとは言えなかったので、記憶に何故か残っていた曲の名前ということにした。


 タッタ、タッタ、タララララーとメロディーを説明するハメになったが、皆良い曲だね、と褒めていた。


「わたし、ネイア」


 その後、唐突にアラクネが喋ったのには皆びっくりしていた。使用人さんが言うには少し前から簡単な単語などは話せるようになっていたそうである。


「ワタシハメアチャンダヨ」


「メアちゃん」


 その後ナイトメアと少し語学の練習をさせた。なんかほのぼの系の雰囲気が漂っていた。


 通いで来ている使用人さんが帰ると、シーラとアリシアさんに詰め寄られて色々聞かれた。異世界の事である。やはりというか俺の不用意な発言で気づかれたらしかった。今まで色んなものを発明したり、元素関係の知識があったり、常識にうとかったりで察したらしかった。前々から怪しいとは思っていたらしいが。


 せっかくなので皆には俺がこの世界の人間ではない事を話しておいた。皆それぞれ食いつきはよかった。リアナは俺の世界の神話や伝説の話。シーラは医薬品や錬金術についての話、アリシアさんは歴史や文化、マギーは沢山の見知らぬ菓子類にである。

 

 マギーには残念だが諦めてもらう事になったが。だって俺ももう簡単に作れそうなものはないからである。サクサクの生地に生クリームに似たやつが入ったものが食べたい、とか言えばシュークリームを開発できるかもだが。ザックさんと話し合ってみるかな。


 一応俺が異世界人という事は他言しないように皆に言っておいた。特に嫌な予感はしないが、面倒は避けた方がいいからな。いろんな人から異世界の話をせがまれるのは疲れそうだ。身内だけならいいが。


 シーラとアリシアさんは二人でなにやらコソコソ話している。耳を傾けると、子供はちゃんとできるのか、とかそんな話だった。結構深刻そうな雰囲気だったので、鑑定した時に交配可能と出たと伝えると、パッと緊張感が緩和された。


 アリシアさんだけじゃなくてシーラも結構乗り気なんだな。最近はシーラも積極的に求めてきていたが本気で子供が欲しいとは思わなかった。一応今も薬は飲んでいるが。ちなみにリアナは可愛がってもらえればそれでいい、と前に言っていた。産めるのなら産みたいそうだが。


 奴隷の子は基本的にその奴隷の所有者が奴隷にするかどうか選べる。奴隷にしない場合は市民権を申請したりだな。


 流石に自分の子供を奴隷にしたりはしないつもりだ。リアナやシーラは隷属の魔法がかかっていた方が意思の疎通に便利なのでどうするかは未定だ。嘘をついているかとか分かるしイメージをやりとりできるしな。今まで二人が嘘をついた事は隷属魔法のテストでわざとついてもらった時以来ないが。


 まあ解放して浮気されたら悲しいし、不便がないならそのままにしよう。二人とも特に解放されたがってもないしな。たまにその辺りを聞いたりしているが、別にこのままでいいとの事だった。リアナは一生面倒を見るつもりだったが、シーラはある程度実績もあるので解放してもいいかな、と思っていたのだが。


 シーラを解放しても一緒に生活してくれそうだったが、手放さなくていいならそのままにする。かなり好みだし、今更何処かに行かれたら流石にダメージを受けるしな。


 明日は大量に溜まったネイアの糸をペイルーンに卸しに行くかな。アスラン様が喜んでくれるといいが。

 

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