南房総市和田地区の和田地域センター内にある「勇魚(いさな)文庫」と、道の駅和田浦WA・O!のクジラにまつわる展示の一部が入れ替えられた。いずれも日本屈指のクジラコレクター、細田徹さん(81)=東京都=が収集したコレクションで、両所合わせて1万点超のクジラグッズが並んでいる。
関東唯一の沿岸捕鯨基地がある和田地区。毎年7月上旬ごろからツチクジラ漁が始まり、和田漁港での解体作業には多くの人が見物に訪れている他、同センター前には全国的にも珍しいシロナガスクジラの骨格標本、壁面にはトリックアートが描かれているなど、クジラに関連するスポットがある。
細田さんは、クジラグッズコレクターとして国内外で広く知られ、所有しているコレクションは2万点を超える。捕鯨道具や郷土玩具をはじめ、書籍などの資料、クジラの髭(ひげ)や骨を使った日用品など、幅広いジャンルを収集しており、大学や全国の博物館から資料提供を求められている。
細田さんと和田地区の縁は、約20年前に「クジラ料理がうまい店」として紹介された「ぴーまん」(2023年に閉店)を訪れたのが始まり。それ以来、同店の櫟原(いちはら)八千代さんとの交流が続いている。「クジラがつないだ縁。シロナガスクジラの骨格標本も、細田さんが間に入ってくれて和田に展示された」と櫟原さん。現在は、道の駅和田浦WA・O!を経営しており、店内にも細田さんのコレクションやクジラグッズを展示している。
勇魚文庫は、2012年に同センター内にオープン。南房総市職員が東京へ細田さんを訪ね、「クジラで町おこしをしたい」と話を持ち掛けたのがきっかけ。東京にあった同文庫が和田に移った。「下関などからも声が掛かっていたが、職員の熱量や自宅からの距離など、いろいろ考えて和田にコレクションを寄託することに決めた」と当時を振り返る。
今回の入れ替えには、クジラを題材にした映画を製作している八木景子さんも協力。捕鯨問題を題材にした映画「ビハインド・ザ・コーヴ」(2010年)の製作時に細田さんに協力を求めるなど、クジラを縁につながったクジラ仲間だ。
細田さんと八木さん、同センター職員らによる作業を終えた勇魚文庫には、髭を編み込んだ花籠や髭と歯で作った将棋の駒などの工芸品をはじめ、弓と矢受けに髭を用いた江戸時代の「李満弓(りまゆみ)」といった歴史的な品などを新たに陳列。戦時中の金属供出で現存しているものが少ない「万銛(よろずもり)」などの捕鯨道具も並んでいる。
一方のWA・Oには、クジラを模したガラスオブジェを新たに展示。ヴェネチアングラスやボヘミアングラスなどの品が並ぶ。クジラのガラスオブジェは他の動物に比べて数が少なく、市場に出回るとコレクターがすぐに買い付けてしまうため、非常に珍しいという。
細田さんは、現在も国内外のクジラグッズの収集を続けていて、「クジラで町おこしをしようという思いから始まった勇魚文庫が、地域の活性化につながれば。今も趣味として収集を楽しんでいるが、展示を通して、捕鯨のまちで養われてきた文化を幅広い世代に楽しんでもらえたら」と話していた。
時間は、勇魚文庫が平日午前9時~午後5時、WA・O!が午前9時~午後5時半。
詳しい問い合わせは、和田地域センター(0470・47・3111)、WA・O!(0470・47・3100)へ。
(清水利浩)
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