非常勤講師が“労組”を結成したら「契約打ち切り・懲戒処分」に? 東京音大の「不当行為」を都労委が認定
労働組合を結成した非常勤講師に対し翌年度以降の授業委託を行わず懲戒処分を下したのは、組合の弱体化を目的とする支配介入および不利益取り扱いにあたるとして、5月21日、東京都労働委員会(都労委)は東京音楽大学附属高校(豊島区)に対し未払い賃金の支払いなどを命じる命令書を交付した。
給与が減額されたので労組を結成したが…
非常勤講師の大石康彦さんは、2009年から毎年、学校法人東京音楽大学と契約を交わし、附属高校で理科の科目を教えていた。 2022年4月、学校法人は同年度の給与を減額する旨を非常勤講師らに通知。同月26日、大石さんはユニオン東京に加入。また10月には大石さんを執行委員長として、8名の非常勤講師からなる東京音楽大学ユニオンが結成された。 両ユニオンは計3回にわたる団体交渉を行った。学校側は一定の譲歩を行ったものの、給与減額などの根拠となる資料を開示しなかったため、ユニオンらは2023年2月に都労委に不当労働行為救済申し立てを行う。 新年度の授業が始まる一週間前にあたる同年3月27日、学校法人は大石さんに「2023年度の授業を委託しない」と通知。さらに4月4日、保護者からのクレームを理由として、大石さんにけん責処分を下した。 同年4月から6月にかけて、大石さんの労働条件や処分を議題に、3回の団体交渉が開かれる。しかし、これらの議題についても学校側からは具体的な説明がなかったという。 6月15日、ユニオンらは大石さんに授業を担当させること、けん責処分の撤回、またこの2点の問題について団体交渉へ誠実に応じることを求めて、追加申し立てを行った。
「不誠実な団体交渉」「支配介入」と認定
命令書交付の2日後となる今日(5月23日)開かれた会見で、ユニオンらの代理人である伊久間勇星弁護士は命令書について「こちら側の申し立てが全部認められた」と評価した。 学校法人側は減額の理由として「大学と高校とのバランスや労働と給与とのバランスを図り、非常勤講師の給与体系を均一化するため」「実授業時間に過誤があったので是正した」などと説明していたという。 しかし、都労委は「18年間続けてきた給与の支給方法について、44・5%もの減額となる大幅な不利益変更を行う合理的な理由の説明になっていない」と判断。 また法人側は具体的な数字を示して説明することが可能であるのにそれを怠っているとして、「誠実交渉義務」に違反する不誠実な団体交渉にあたると認定した。さらに、大石さんの労働条件や処分に関する交渉においても、同様に具体的な説明を怠ったことから不誠実な団体交渉にあたると認定。 2023年度の授業を大石さんに委託しなかったことや大石さんに対するけん責処分に関しては、不自然な点が多いことから、大石さんが組合員であることを理由とする不利益取り扱いやユニオンの弱体化を企図した支配介入にあたると認定された。