【シンガポール=竹之内秀介】日米豪比4カ国の防衛相が31日、シンガポールで会談した。米国第一主義を掲げる第2次トランプ政権との間でも、多国間連携を継続する姿勢をアピールするためだ。中国の国防費が日本の4倍以上に膨らむ中、抑止力を維持するには日米同盟のみならず、共通の脅威を抱える豪比との連携強化が欠かせない。
2月に「海上協同活動」
「日米豪比の連携はかつてないレベルにあり、地域の平和と安定への貢献を深めている」
中谷元・防衛相は日米豪比4カ国の防衛相会談に先立って行ったアジア安全保障会議の講演で、こう強調した。
日米豪比は今年2月、南シナ海で「海上協同活動」を行った。南シナ海では中国が人工島建設などの軍事拠点化を進めており、フィリピンが対峙している。また、豪州近海では中国海軍が実弾演習を行った。両国とも尖閣諸島(沖縄県)で領海侵入や領空侵犯を受ける日本と同様、中国の脅威に直面している。
日米豪比の枠組みはバイデン前米政権で始まった。トランプ大統領は米国が主導権を発揮しにくい多国間連携に後ろ向きとされる。日豪比としては足並みをそろえて米国と向き合い、トランプ氏の関心を引き寄せたい思惑も透ける。
不可欠な韓国の協力
日本はオーストラリア、フィリピンとの2国間の防衛協力も進めている。豪州を米国に次ぐ「準同盟国」と位置付け、「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の整備などで連携する。フィリピンには防空レーダーを供与した。将来的にレーダー情報が自衛隊に共有されるようになれば「中国軍の動きが丸見えになる」(防衛相経験者)。
一方で、今回欠けたのが韓国だ。台湾有事の際は北朝鮮の挑発や暴発を防ぐため韓国の協力が不可欠になる。ただ、新政権発足前の韓国は安全保障会議への大臣級の派遣を見送った。日米豪比韓5カ国は昨年11月に初めて会談を行っただけに、防衛省幹部は「できれば今回も5カ国で集まりたかった」と漏らす。
尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領が昨年12月に「非常戒厳」を宣布して以降、日韓の防衛協力は事実上停止している。再始動に向け、中谷氏は6月3日の韓国大統領選投開票後、早期の訪韓を模索している。