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【反AI】反AIとAI信者の勘違い、弁護士が全部切ります【AI信者】

■無断AI学習は権利侵害である

A.違います。というかこの「権利」って何の話をしてるんでしょうか?

 「権利」というのは法的立場の事です。根拠法のないお気持ちの話ではありません。何法の何に基づく何権が侵害されているんでしょうか?

 著作権や所有権のように、有形・無形問わず「モノ」を排他的に支配し、契約関係にない者に対しても主張できる権利を「物権(的性質)」と言いますが、「物権法定主義」(民法175条)という決まりがあり、物権はあらかじめ法律で制定しないと絶対に他人に主張することが出来ません。著作権は物権じゃないらしいですが、いずれにせよ物権の性質をもつ権利であり、物権的性質は法律で定めないと付与できません。

 物権法定主義があるため、認められない権利の代表例は「転売禁止権」や「馬主の馬キャラクター化権」等があります(オタク君達が認められると勘違いしてそうな権利を挙げてみました)。

 例えば契約関係にない第三者に対して転売禁止命令を出すのは全部無効ですし、馬主は、馬を擬人化したキャラクターにつき一切の法的権利を持ちません。
 馬主が無権利であることについては最高裁判例で確定しています(ギャロップレーサー事件)。当たり前ですよね、馬は馬という動物であり、馬が何しようが馬本人の関心事です。馬のやる事につき、人間である馬主が独占的・排他的権利を主張するのは、馬を奴隷売買してるのと変わりませんから。
 これは犬や猫の飼い主についても同じです。厳しいことを言いますが、彼ら動物は飼い主のために生きてるわけじゃないので、自分のペットを他人が無断でキャラクター化して利益を得ても、何も言えません。動物は飼い主のために生きてるわけじゃないので、その動物の私生活で生み出されたキャラクター性は単なる公共財だからです。これを所有者が独占することは許されません。
 民法175条に反する、取引慣習による物権(パブリシティ権)を定めるべきと主張する弁護士もいましたが、当然、違法なので、最高裁は認めませんでしたね。

 「私の書いた同人誌を転売・転買した者は罰金50万円を払え」とか「馬主が、馬の擬人化キャラのエロ同人作者に損害賠償請求をする」とか、そういう規約を宣言しても一切認められないという事です。
 それにもかかわらず、馬主のお声のままに、馬の擬人化キャラクター側の権利者として、本来認めてはならないはずの馬主の物権を間接的に実現する事に加担している企業がいるらしいですね。

 生成AIにまつわる絵師界隈(オタク界隈)の反感、結局全て、物権法定主義に対する理解を根本的に欠いている事に起因している気がします。

 物権法定主義があるということは、著作権として主張できるのは、著作権法に明記されている範囲内に限定されるという意味です。

 そして、「AI学習権」なるものは、著作権法に規定がありません

 なので、他人の絵を無断でAI学習しても、一切権利侵害はありません。なお、今後著作権法に「無制限のAI学習権」を明記するというのも、無理です。日本よりAI規制に躍起になっているEUすら、無断AI学習に対する無制限な法規制を裁判所から否定されているからです。なので、「今規定がないだけで将来的には権利侵害だ」という反AIの言い分も無理があります。
 当たり前ですよね、AIってコンピュータプログラム(法的にはパソコンと同じ電子計算機)でしかないので、AIがやって駄目って事は、人がパソコン使って行う行動も本来アウトになるわけです。この区別は厳密にはできないので、AI学習を禁じれば、人によるパソコンでの学習も当然禁止になり、一切の創作活動ができなくなるからです。

 まずそこをスタートラインとして理解してほしいですね。

 当然、「私の絵を無断でAI学習した者には罰金50万円請求します」等の声明も全部無効です。実際に実行しようものなら、不当請求として逆に絵師側が損害賠償義務を負うか、訴訟をチラつかせれば恐喝罪に該当する危険すらあります。

 反AIがやってる事は、本来物権法定主義により認められないはずの「AI学習権」を集団クレームや誹謗中傷や名誉棄損で実現する行為であり、法の支配の観点から絶対に許されませんし、許す気もありません。
 反AIがやってる事は、近代法治国家に対する重大な攻撃であると認識しています。

 無断AI学習は一切法に抵触しませんが、反AIがAI使用者に吐きつけている「盗人」等の言葉は全部名誉棄損です。警察に通報されれば捕まるような犯罪行為に加担している自覚を持った方がいいと思いますよ。

 弁護士は、守るべき法の支配を捻じ曲げて、お友達と仲良くして、それに従わないような者を排除する旧来のオタク因習村仕草が、大っ嫌いですのでね。99%の人間が「偉い人が言ってるんだから従え!」「空気が悪くなるから従え!」と言っても、法的に間違ってるなら絶対に従わないので。

 つい最近でも、宇山佳佑先生が表紙にfirefly使用者のイラストレーター作品を用いた事で、「小説もAIに書かせてるんじゃないんですか」等という名誉棄損そのものな誹謗中傷リプライを反AIから行われていました
 fireflyはZUN氏も今回用いたほど、法的に「問題がない」生成AIであり(AI法規制が厳しいEUですらオプトアウトされていない画像への無断学習は合法だから)、普通、いくら反AIでもfireflyを燃やす事は許されません。それに対し上記反AIの発言は明確な名誉棄損であり犯罪です。生成AIは将来的にも合法ですが、反AIのやってる事は殆どが犯罪でしょう。


■海外で無断AI学習の法規制が進んでいる

A.違います。

 そもそも無断AI学習に対する法規制って何を指すんでしょうか?米国では現在もAI学習への法規制は進んでおらず、Stability AIに対して「無断AI学習自体が圧縮コピーである」と訴えたものについても、法律要件を満たさないものとして即座に棄却されています。
 その後、「AI学習だけでなく、学習元データと類似する圧縮コピーである」と理論を変えて再度訴え、現在裁判所が調査している最中ですが、逆に言えば、学習元データと類似する余地のない生成AIには、権利侵害がないという結論が出てしまっていることを意味します。

 そして、学習元データと著作権法上類似するものが出力されるとは考え難いので、Stability AIへの訴訟で原告が勝てるとは思えません

 規制大国であるEUすら、DSM著作権指令によりAI学習を規制しようとしたのですが、結局、「商用学習に限り」「オプトアウトの権利を認める(つまり事前許可なしの無断学習はOKで、事後的に除外を求められるだけ)」という極限定的な規制しかできませんでした。非商用も含めた広範な無断AI学習の規制には、失敗しています。
 本来パソコンを使った学習と生成AIによる学習を区別できないほど理論的根拠が危うい規制法なんですから、規制に失敗したのは当然です。根拠が危ういからって限定的な規制に留める、というのは不当な立法方法そのものではあるんですが…。
 絵を練習するのに他人の絵を参考にしなかった絵描きなんて一人もいないはずですが、AIによる無断学習は権利侵害だと述べている方々、自分が絵を練習するのに他人の絵を参考にした際、許諾とったんですか?

 この話には続きがあります。更にドイツの裁判所が、AI学習を行ってる団体自体が非営利であれば、例えそのデータセットを企業が商用利用しようとも、規制の対象にならないと判決したのです。

 市民と政府が感情論で不当な規制法を作り、それを裁判所が抑制する、というのは適切に独立司法が機能している証拠ですが、AI規制法についても、同じ結末を辿っているわけです。

 ところで、日本で私より遥かに著作権法に詳しい弁護士の先生が、著作権法30条の4や47条の5を理由に、行政規則によるAI規制が可能である等と解説しているらしく、ドン引きしています。

 著作権法30条の4や47条の4(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用、等)は、著作権法の権利の根拠規定ではないため、これらの規定を根拠に著作権侵害を主張することは出来ません
 これらはむしろ、逆に、複製権侵害等の著作権侵害があった場合に、それらを否定する制限規定であって、当たり前ですが、複製権等の著作権侵害がないものにつき、利用享受目的であるからと訴えることは出来ません

 当然、これらの規定を根拠に、行政が生成AI業者に対し不当なガイドラインを強制するなんて出来ませんし、そんな真似をしたら国家賠償責任を負うことになると思います。

 理論上は、画像ファイルをPC上で閲覧する際にすら、ストレージ上の画像ファイルをメモリ上に「複製」しているので、そういった細かなプログラム上の処理を「複製権侵害である」と解釈した上、上記の例外規定で除外されている、という滅茶苦茶な解釈をしているのだと思われますが、そんな判例は聞いた事がありません。
 そんな理屈が通るなら、手描き絵師が自分の絵の参考にする為にネット上の画像を閲覧したりダウンロードしたりする行為さえ、「個人利用の範囲外なので」複製権侵害だという話になるでしょう。同弁護士は、別のコラムでは、ネット上の他人の絵を参考にしただけでは、(結果としてできた絵が類似してない限り)著作権侵害にならないという趣旨のコメントを残しているので、明らかに矛盾しています。

 何度でも繰り返しますが、「生成AIが学習して違法なら、人間による学習も当然に違法である」という基本に立ち返る必要があります。
 日本で無断AI学習が適法なのは、著作権法30条の4が存在するからではなく、そもそも「外形的に」複製とみなせる行為を行っていないからです。これは他国でも変わらないため、著作権法30条の4を削除しても無断AI学習が適法である事に変わりはありません。

 こんなものまで複製権侵害とみなせるなら、画像閲覧は著作権侵害に当たる事になるので、著作権者は自分の作った画像の「閲覧権」という著作権法上規定のないものまで規定してライセンス化する事が可能という事になり、物権法定主義に反します。

 上に書いた通り、著作権のような物権的性質を、法律以外で付与することは民法175条(物権法定主義)で禁止されているので、そんなものを認めるガイドラインを作れるわけがないです。「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」なんて誤った条文まで持ち出すのは、本当に、「無断でAI学習されたという被害感情」は、ここまで人の目を狂わせるのかと感じます。
 私より遥かに知財法に詳しい弁護士のはずですが、結局、如何に法律に詳しかろうと、自ら絵の練習をした事がない(つまり他人の絵を参考にして絵を上手くなるという手順を踏んだ事がない)人間には、正確な判断なんかできないんです。

 ホントよく言われますけど、反AIの言い分は日本で漫画アニメを法規制しろと喚きたてているフェミジェンダー界隈の言い分によく似ています。AI憎しのために反ポルノ団体に迎合しているような連中を私は激しく見下しています


■生成AIがやれば違法だが、手描きでやれば合法である

A.違います。

 既に書きましたが、AIは法律上「電子計算機」であり、パソコンと同様です。つまり、生成AIが規制されるなら人間がパソコンを使って行う行為も当然禁止であり、「生成AIがやれば違法だが手描きなら適法」なんて範囲は、デジタルイラストではあり得ません。

 ただし、逆に、手描きでやれば違法なものが、生成AIを介する事で適法になりうる範囲というのは一部あります

 後述するように、トレスしなくとも、手描きで他人の作品を参考にしたり模写する行為も著作権侵害になりうるわけですが、生成AIを介することで誰の作品ともわからなくなった一般出力を参考にする限り、著作権侵害にはならない範囲があります。
 著作権侵害で問題になるのは結局「類似性」、つまり学習元データのうち誰か単独の作品との類似性でしかないので。

 ①誰かの作品 → 人の手で直接参考にする
  が、
 ②不特定多数の作者の作品 → AIで学習・生成 → 人の手で参考に

 とAIを挟む事で、元作品に「類似した」作品ではないものを参考に出来るので、誰かの作品への著作権侵害になるリスクは、軽減されるでしょう。

 これをおかしいと感じる方がおかしいように思います。だって、生成AIがなくとも、絵描きは、普段見てるアニメやゲームや漫画の絵を、無意識的に参考として「学習してる」からです。自分が普段仕事の外で見てる絵に、無意識的に学習する許諾なんかとってるんですか?とってないでしょう。
 お絵描きSNSで大量に流れてきた神絵の細かなテクニックを盗む行為、やってないんですか?私は日常的にやってますよ。絵師ってそういうものじゃないんですか。

 商業、非商業問わず、絵描きは、仕事外で目に映る全てを学習し、勝手に審美眼に応用し、テクニックを盗み、自らの作品に生かしています。表現行為ってそういうものです。お互いがお互いを無意識に無断学習することを許容することなしに創作活動は成り立たないので、これに納得できないなら今すぐ筆をおくべきです。
 「人が自分の作品を学ぶのは許すが、生成AIが自分の作品を学ぶのは許さない」という理屈は通りません。何故なら、結局生成AIだろうとそれを最終的にチェックし修正するのは人間であるため、最終的に学んでいるのはAIじゃなく人間だからです。これを人間による学習とみなせないのは、結局「AI支援を受けるなんてズルい」という思考が根底にあるからです。

 後述の通り、人の手を入れないと生成AI画像に著作権を主張できないので、特に権利関係が問題となる場面であればあるほど、ポン出し生成AIイラストは使えません。だから結局、学習してるのはAIじゃなく人間なんです。

 多分、もはや「1枚1枚絵を吟味して参考にするのはリスペクトがあるが、生成AIに絵をサマリーさせて参考にするのはリスペクトがない」みたいなお気持ちの発想でしかないんでしょうけど、そんなの言われたら、大昔の美術館に比べて、お絵描きSNSで大量に絵を収集できる今すでに十分リスペクトなんかないわけですよ。
 インターネットがなく、出版もなく、美術館くらいでしか他人の絵を参考に出来なかった時代の人から、「ネットで大量の絵を流し見して参考にするのはリスペクトがない」なんて言われたら、納得できます?反AIの言い分ってこれそのものですよ。

 法的には、他人の単一の絵を無断で参考にするより、そのテクニックを学習した生成AIを介して、もはや誰の絵とも分からなくなった生成AIイラストを参考にする方が遥かにリスクが低い行為なので、前者を賛美するくせに後者を叩いて筆を折らせる、というのは、理解に苦しみます。


■トレスは違法だが、模写や参考にするだけなら違法ではない

A.違います。

 「トレスは違法だが模写は適法である」というのは反AIの代表的な勘違いの一つです。法的には、模写したり構図を参考にしたりするだけでも、簡単に著作権侵害に該当します。

 特に画力の高い昨今のコミックイラストについては、軽く参考にしただけで簡単に著作権侵害を認める傾向にあり、関谷先生・藤崎先生の訴訟でも、1枚絵や漫画の1コマでありきたりな構図を参考にしただけで簡単に著作権侵害が通っています。

 著作権侵害を最終的に判定するのは文化庁でも非弁知財コンサルタントでもなく裁判所ですので、その辺は注意する必要があります。文化庁がOKといっても、裁判例で著作権侵害が認められてるならアウトになる可能性があります。

 生成AIが法的に不安だからといって、手描きで描けば法的に安全になるわけではないんです。だって、生成AIが出てくる前から、手描きイラストについて腐る程訴訟は起きてるわけですからね。


■生成AIを使用すると、作品全体の著作権がなくなる

A.違います。

 まず、生成AIイラストの著作権は、原初的にはAIイラスト生成サービス事業者に帰属すると思われます。プログラムの名義が最終的にサービス事業者にある以上、そのプログラムから生成されたイラストについても、日本の判例ならプログラム作成者に帰属するからです(ウェストサイド・テクモ・セーブデータ改造訴訟判例)
 これについて、米国の行政庁や裁判所の判断等を理由に「生成AIイラストには著作権がない」と説明する人がいますが、日本の判例じゃないので、どっちかというとウェストサイド・テクモ判例のが妥当する気がします。

 なので、AIイラスト生成サービス事業者が、生成イラストについて、その著作権を、サービス利用者(プロンプト作成者)に無条件即時譲渡するとの規約を作ってれば、生成AIイラストの著作権は、「AI絵師」に帰属します。しかし、そんなサービスは聞いたことがない気がします(生成AIイラストは学習元作品の特定のどれかに類似すれば著作権侵害の恐れがあるので、このように著作権をプロンプト作者に丸投げする「無責任な」サービスは今後も現れないと思われます)。

 では、生成AI支援を受けた場合、常にその利用者に著作権が認められないのか?といったら、それはありえません。
 生成AIでゼロからポン出しした場合、「AI絵師の」著作権が認められないのは、正しいです。プロンプト作ったのがAI絵師でも、それは単なる命令であり、描いたの自分じゃないので(この辺、もっと詳しく説明した方がいいと思うので、後述します)。

 ただ、ポン出しを超えて、絵描き側の著作性が認められる位に手を加えたり、そもそも絵描きの著作物にAI修正した程度の絵であれば、生成AIを使ってたとしても、当然、それはAIアシスト絵師に著作権があります

 無許諾の二次創作同人誌にも、きちんと二次創作者の著作権が認められるのと、同じ理屈です。当たり前ですよね。原権利者に許諾とってない無許諾同人誌でも、当然、違法アップロードすれば犯罪なんで。たまに、無許諾二次創作同人誌は違法アップロードしてもいいとか言い出す輩がいますが、大間違いです。
 ちなみに無許諾の二次創作同人誌は、著作権法上、原権利者と同人作家の共同著作扱いになると思います。

 ポン出し自称AI絵師に発注するリスクがこれで、殆どをAI生成に頼ってる自称AI絵師は、そのAI出力イラストに著作権を主張できないので、こんなものを企業で使うのは将来的にリスクあります。誰かに無断転載されても訴える事すらできないって事なんで。

 結局、だから「ポン出しAI絵師のせいで手描き絵師の仕事がなくなる」なんてのは、法的根拠のない妄想そのものなんですよ。ポン出しAI絵師は著作権を主張できないので。法的リスクを考えたら、結局発注者は「生成AIに著作権を加えられる程の腕をもつイラストレーターに」発注せざるを得ないんです。
 手描き絵師は、「自作部分に著作権を主張できる」という圧倒的な法的アドンバンテージを持つので、ポン出しAI絵師に比べて、仕事失うなんてありえない話です。

 反AIの言う、「生成AIイラストは、既存の画像を学習しないと成立しえないのに、学習元の許諾が不要だったり、学習元への利益還元がないのはおかしいのではないか」という理屈は、「生成AIイラストには(十分手を加えない限り)著作権主張できない」という制約によって、十分解決されているものと思われます。
 生成AIは、無断でイラストを学習しても許されるが、生成されたイラストに著作権を得る事が出来ない。これだけで利益バランスは十分とれているはずなんです。結局、手描き絵師だって他人の絵を無断で学習してる以上、学習自体を権利侵害と捉えるのは不可能であり、「無断で学習したAIが生成した絵で利益を得るのはおかしい」という利益衡量の話でしかないわけですから。出力結果たるAIイラストの利益関係なら、著作権の有無という利益差でバランスが取れています

 逆に、新たに著作性が付与されるほど手が加えられた「元」AIイラストであれば、そこに学習元の権利者が口を出す程の寄与率は、存在しないように思います。ちょっと一部の破綻を直したくらいじゃ著作権は付与できないので。
 著作権すら主張できないポン出しAIイラストに、そこまで目くじら立てる理由って何なんでしょうか?もちろん、手描き絵を見たいのに、生成AIを公言しない「偽装AIイラスト」ばかりが流れてくるのがウザい、というのは分かります。しかしその原因は、反AIが生成AIを違法に誹謗中傷するせいで、AI使用を公言出来ないからですよね?結局全部反AIのせいじゃないですか。
 そこまで要求するなら、手描きイラストだって普段接してる全ての絵や写真に、無意識に学習してることについて許可とるべきじゃないかというのが通常の感覚です。


■他人のお絵描き配信やラフをAIで清書してパクる行為は、現行法だと合法である

A.違います。

 反AIの人らはこれを理由に「AIツールを潰す事は許される」と喚いてるんですが、意味不明です。何を根拠に?

 お絵描き配信やラフにも著作権が認められるため、それをAI加工して清書しようが、その著作権はラフの作者に帰属します。当然現行法でも違法です。現行法でも違法なので生成AIへの批判理由になりません

 そもそも、お絵描き配信やラフを清書して流用するのは、手作業でやっても違法です。生成AI全然関係がないし、ごめん、反AIの方々が何が言いたいのかよくわかんない。


■海外で生成AIが敗訴しているので、生成AIは違法である

A.違います。このご主張には2点、間違いがあります。

◎ 海外の著作権法が日本の著作物に適用されることはない

 著作権法は、国ごとの単位で存在しているものです。例えば、日本で生まれた著作物なら、日本国著作権法によって著作権が付与されますし、米国で生まれた著作物なら、米国著作権法によって著作権が付与されます。
 著作権は当然に海外まで影響を及ぼすわけではありません。もし、日本の著作物を米国で侵害した者がいたとしたら、「日本の著作権法に基づき」「米国民を相手に」訴訟を起こす事になります。その訴訟を米国で受け付けてくれるかは、事案によります。ただ、日本と米国は著作権について条約を結んでいるので、一般には受け入れてくれます。

 ただ、日本の著作物には日本の著作権法が、海外の著作物には海外の著作権法が適用され、著作権法は国によって異なるので、海外で生成AIが敗訴しても、それは日本に一切の影響を及ぼしません
 各国とも著作権について条約を結んでいるので、ある程度は同じなのですが、結構違う部分があるのです。

 例えば、米国は著作権侵害に該当しやすい代わり、フェアユースの概念があるため、最終的に「フェアユースか否か」に論点が転がりがちです。一方、日本はフェアユースの概念がない代わり、ある程度の著作物性・類似性・依拠性が求められるので、そもそも著作権侵害自体に該当しないとの判断がされがちです。

 だから、海外での生成AI敗訴事例を、日本の著作権法の判断に持ってくるのは、極めてナンセンスです。


◎ 類似性のない生成AIの敗訴例はない

 国ごとの著作権法の違いを無視するとしても、「類似性」が認められない事例で生成AIが敗訴した事例はありません

 分かりやすくいうなら、

 ①多数の元データ学習 → ②画像生成 → ③特定の元データと類似

 という3段階が全て立証されて初めて生成AIは敗訴するのであり、単に元データ学習しただけで、③が認められてないのに敗訴した事例はないのです。
 なお、米国Stability AIに対する訴訟で、③を一切主張せず提訴したところ、即座に棄却され画像権利者が敗訴してますので、「類似性がない生成AIは権利的に問題がない」というのは確定しています。

 その後、裁判所が修正を促したことで、画像権利者が「③」を追加して新たに提訴したため、米国裁判所は改めて、生成AI技術に、特定の元データと類似するリスクがあるのか、調査に入って訴訟継続しています。結論は出ていませんが、個人的には③が高頻度で起こり、生成AIサービス事業者が③の防止策を怠ったとの立証は不可能であり、画像権利者は相当不利と見ています。

 前に反AIが持ち上げてたトムソン・ロイターの対AI企業に対する勝訴判決でも、勝訴理由については「出力結果が学習元の特定のTIPSと極めて類似しており、非変形的利用に当たるため、もはや生成AIとすら言えない単なる法律TIPSのパクりである」と認定されたからです。

 これはそもそも、特定企業の特定サービス「だけ」を集中学習させるという、生成AIの悪用としか言いようがない使い方であって、このように単なるデッドコピーを、生成AIを使ってるかのように見せかける、AIと言うにもおこがましい使い方をすれば、敗訴するのは当たり前です。
 十分にランダム性ある膨大な多種多様の情報を学習させ、もはや出力から特定の単一作品との関連性を見つける事さえ難しい状況になって、初めて生成AIは合法になるわけですから。

 結局、生成AIを使うのであれば、学習データ内の「どれか特定の作品に」類似しないような使い方をするのが前提であり、どれか特定の作品に類似する使い方をすれば、手描きだろうと生成AIだろうと著作権侵害になるのは当然です。

 また、いずれか「特定の」作品と類似した出力がされないように生成AIを調整する、というのは生成AIサービス側の当然の企業倫理ですので、生成AI技術が進歩し、学習元のいずれか特定の作風に偏らないように進化すれば、類似リスクは低減していくだろうと予想されます。


■生成AIは学習データに児童ポルノや猥褻物等やリベンジポルノ等の禁制品を含む可能性があるので、違法である

A.違います。

 学習データに、医療記録等の児童ポルノが含まれた場合、これを規制すべきとの感覚(お気持ち)は、分からなくもないです。ただ、我々は獣でなく人間なわけですので、感覚的に拒絶したいものでも、理論上法規制すべきでないなら行ってはなりませんお気持ちのままに公権力による規制を求めるなら、理性のない獣と同レベルでしょう。

 上に書いた通り、パソコンもAIも法律上は同じ「電子計算機」なので、AIによる学習も、人がパソコンを使って行う学習も、区別がつきません。それを前提に、「人権侵害に関係する画像を学習したAIなら規制しても許される」という理屈が通るのであれば、我々だって全員一度は必ず児童ポルノを見た事があるわけですから、未成年が含まれるフィクション作品は一切作れないことになるでしょう。
 なぜ全員見た事があると断言できるのか?我々は全員生まれた時は子供だったからです。つまり自分の体自体が児童ポルノだったのに、自分や異性の子供の裸を一度たりとも見た事がないなんて人、ありえますか?

 実際、この「人間誰しも自分の体が児童ポルノであった時代があるから、その記憶を無意識に保持してる以上、フィクションであってもそういった作品を作る事は許されない」という理屈は、海外で漫画やアニメが規制されてる法的根拠の一つなわけですよ。こんな理屈に肩入れする人間を、私はクリエイターとして心底軽蔑します

 リベンジポルノだろうと児童ポルノだろうと、その規制根拠は「被写体の利益を守るため」なわけです。そしたら、被写体と全く似ても似つかない別の画像が出力された時点で、これを知財法で規制してはならない、これが「理性的な市民の」議論のスタートラインでしょう。
 欧州やオーストラリア等の国の一部によっては、もはや児童ポルノ禁止法は被写体の利益を守るものでなく、ロリコン禁止法というべき違憲な思想警察法になってるわけですが、日本はそんなバカな獣の道を歩んではならないと思います。米国だって、そんな思想警察法は作れなかったわけですので(フィクションを児童ポルノとして規制する法律について、米国で2003年に違憲無効の判決が出ています)。

 無論、日本にも「CG児童ポルノ事件」という、実際に存在する児童ポルノを、トレスでなく精巧な模写と「アイコラ」で描いた作品について、有罪判決が出た事例があります。
 学習元データと精巧に類似した児童ポルノと思わしき禁制品が出力された場合、それが将来的に法規制される余地はあるでしょう。ただ、それは「児童ポルノ禁止法」で規制される話題であり、知財法で禁止してよいものではありません
 そういった理屈は、実在児童ポルノ等の極めて禁止根拠の強い特殊な事例でのみ認められる理屈であり、知財法の保護法益において、学習元データの違法性が出力にも承継されるなんて理屈は、あってはならないからです。


■「画風」は著作権で保護されないので、生成AIに他人の画風を真似させるのは適法である

A.違います。

 確かに、「画風」は著作権法で保護されません。しかし、AI信者さんの思ってるほど「純粋な画風の問題」と判断される範囲は広くありません

 確かに、「フワっとした~~風の絵」みたいな概念に著作物性は認められませんが、絵の構成物である衣装、顔、目の描き方、ラインの一つ一つ、顔の構成物、構図、装飾品、ポーズ、そういったもの一つ一つに著作物性が認められることがあるので、結局「著作物性の認められない純粋な画風」の範囲というのは、思いのほか狭いです。

 LoRAを使おうが使うまいが、生成AIに対し、「Aさんの画風のイラストを描いて」と命じた場合、その出力が、Aさんの過去作の著作物性部分と類似する可能性が高く、その場合、当然著作権侵害の責任を負います。
 これは生成AIだから駄目というのでなく、そもそも手描きで誰かの画風を真似た場合でも、著作権侵害に当たる危険は大きいのです。ただ、手描きのファンアートなら権利者からお目こぼしをもらえるものが、生成AIによる画風のパクリだとお目こぼしされる可能性が極めて低いので、法的リスクが高いわけです。

 仮に、運良く「Aさんの画風をAIに真似させたイラスト」が、Aさんの過去作に類似しなかったとしても、商業の場合、他の商業作品を真似て作品を出すと不正競争防止法違反に問われる可能性があります。
 端的に、生成AIに他人の画風をパクらせるなんてのは、バカの発想だなという印象です。これを「生成AIの悪用」と言わずに何というんでしょうか?

 生成AIというのは、特定の誰の作品とも著作権法上類似させていない時に限り、合法なんだという事を、肝に銘じておくべきです。

 一方で、「塗り」については、残念ながら、著作物性が認められる可能性が低いと言わざるを得ないです。全くないとは言い切れませんが、「この塗りは誰々しかありえない!」みたいなよっぽど特徴的な塗りでも…「単なるアイデアやテクニックの範囲では?」とされる可能性は高いです。
 「塗り」単独に著作物性を認めた判例、あります?私は聞いた事ないです。

 前の記事で、copainterに塗り、トーン貼り、陰影位置の判断、全体仕上げなどの一部工程のみ任せるのを推奨したのは、これらがイラスト作成の中で最も著作物性の認められづらい分野であり、法的な安全性が最も高いからです。

 生成AIを使うなら、「誰か特定の作品の著作物性と類似しないように注意して使う」というのが大前提です。生成AI自体の問題でなく、使う人の問題だと言えます。塗り等の著作物性が認められにくい範囲で、誰のものとも言えない一般的な塗りスキルで塗ってもらう、というのは、画像生成AIを支援ツールとして使うにおいて、最も安全な使い方といっていいです。

 この辺、著作物性の認められない「塗り」や、認められるか微妙なアニメーションの「中割り」についても、立派な職人技であり、法的に問題ないとしても、それを無断学習したAIを使わないのが倫理である、と強弁している反AI絵師がいました。端的に恥知らずだと思います。
 だって、それらが職人技であり無断AI学習したものを使用してはならないものだ、と言ってるなら、普段目にして無意識に手描きの参考にしている他人の絵について、許諾とったり参考手数料支払ったりしたんですか?実際には自分が無意識に普段無断で参考にしている作品群に何ら許諾なんてとってないにもかかわらず、無断学習を許さないなんて言うのは、端的にダブスタだし人気取りの卑怯者の発言じゃないですか。

 絵描いた事あったら全員知ってる話ですけど、誰かの絵を無断で模写して学んでいない絵師なんて存在しないんです。その口でAI学習を叩くのは、「私の手描きの無断学習は無罪だが無断AI学習は有罪だ」という恥知らずなダブスタ以外で、説明付かないわけですよね。
 AI学習の方が、robot.txtによるクローリング拒否でオプトアウトを認めている分、まだ誠実ですよ。無断で他人の絵を手描きの学習に使ってる事を隠しながらAI学習を批判してる人よりは。


 ところで、最初に「物権法定主義」があるので「AI学習禁止規約」等というものは認められないと言いましたが、既に存在する著作権の範囲で、生成AIに対し許諾を制限する(著作権の許諾に条件を付ける)という事は可能です。
 例えば一次創作者が、自身の作品について二次創作ガイドラインを出し、その中で、「生成AIを使用しないファンアートは認めるが、生成AIを使用したファンアートには利用許諾を出さない」と規約に入れる、等です。これは法的に完全に有効なガイドラインです。

 本来、生成AIを受け入れるか否かは、各一次創作者が、各界隈が、自らの著作権の範囲内で自治ルールとして処理すべき問題です。市民が自ら自治ルールとして決めるべきことを、不可能な法律に丸投げして「各自治界隈に関係なく全体を法規制してほしい」なんて発想は、言語道断です。

 本来、各自治界隈が、それぞれの価値観で「ここまでのAI関与は認める」「これ以上のAI関与は認めない」と内部ルールを決めるべきものを、法律に丸投げして全規制してもらおう等というのは、自律した高度な判断力と尊厳を有するはずの個人として終わりであり、そのような堕落した発想を、立憲主義は許しません。自分の頭と価値観と筋道立った論理できちんと物を考えましょう


■生成AIは、手描き絵に比べて権利関係が不透明である

A.違います。

 上に書いた通り、物権法定主義があるため、反AIクレーマーのお気持ちなんぞに法的効力は認められません。むしろ、反AIクレーマー達相手に開示請求を行ったり、名誉棄損で損害賠償請求を行えば、普通に訴訟で勝つことが出来ます。

 そもそも、物権(的性質)の範囲の不透明性を避けるために「物権法定主義」があるわけで、著作権において、権利関係が不透明だというのは、物権法定主義を理解していないのです。

 もし、それでも権利関係が不透明だというなら、それは著作権法自体の問題なので、AIだからではなく手描きでも同じです。生成AIが生まれる前、手描きイラストでもパクりだ何だって訴訟は何度も起きてるわけですけど、そしたら生成AIかどうかなんて訴訟リスクに関係ないですよね。

 生成AIについて注意しなくてはならないのは、物権法定主義があるので、著作権法に明示されてる部分のみです。つまり、複製権侵害として、特定の誰かの過去作に類似しかねないような使い方は避ける(~の作風を真似てとAIに指示してはならない、狙い撃ちLoRA等は行ってはならない)、というだけです。


■生成AIは、手描きに比べ法的リスクが高い

A.違います。

 何度も言う通り、物権法定主義があるので、著作権に明記されてる以上の生成AIのリスクについて検討する必要はなく、手描きに比べて生成AIに過大な法的リスクがあるとは思われません。

 もし、生成AIが手描きに比べて危険だと思っているなら、それは「手描き無罪」という誤った認識を持っているからにほかなりません。なぜなら生成AIが危険なら、それを手描きで描いても危険であり、実際、手描きイラストでも腐るほど訴訟は起きてるからです。

 手描きだろうと、生成AIだろうと、こういう記事を読んできちんと著作権法上のリスクに備えましょうねというだけです。


■画像生成AIによって絵描きは仕事を失う

A.違います。

 ありえないでしょう。上に書いたように、生成AIにプロンプト指示してポン出し画像を1枚出させても、この1枚絵に著作権を主張することは出来ません。結局、手描き絵師には「著作権を主張できる」という最強の価値が残るため、生成AIで仕事を失うなんてのは、法律を理解してない発想なのです。
 著作権は、現行でも文化を破壊しかねないほど強力な権利です。その著作権を主張できる絵師と、著作権を主張できないポン出しAI絵師では、価値のレベルが違います。

 逆に、AI信者が「これからは絵師が不要になる!」とか言ってるのも、全く法律を理解してないわけです。生成AI「だけ」で作った画像には一切著作権を主張できないので、貴方が商業リリースする作品の絵を生成AIやポン出しAI絵師に任せた場合、その画像部分をいくら無断転用されても盗用されても著作権侵害に問えません。マトモに事業やったことあったら、このリスクは理解できますよね?
 生成AIは「誰が作っても問題ないし、丸ごと盗用されてもいい部分」にしか使えないのです。アセットと同様ですね。不正競争防止法は存在しますが、はたして生成AIポン出し画像を丸ごと盗まれたとしても、不正競争防止法に問えるか、疑問です。

 時折、「イキリAI絵師」の人が、生成AIのプロンプトで創作的寄与をすればAI絵師にも著作権が認められる!と主張していますが、無理です。手描きの絵師に発注した依頼主に著作権が認められないように、生成AIに対する創作的寄与、というのは、共同著作と認められるほどの寄与が必要です。プロンプトを何100時間練っても、それは「プロンプトというアイデアを生み出すのに費やした時間」であり、絵(画像の作成)に対する直接的・画像的な創作的寄与ではありません。
 少なくともcopainterのペン入れ機能のように、ラフ位は自分で描く必要があります。ただし、単に構図を指定するだけでの殆ど描きこみのないラフでは、これも著作権を主張するには厳しいように思います。手描き絵師に構図指定するときだって簡単なラフを描きますが、その程度で依頼主に著作権が認められるとは思えませんので。
 生成AIだと考えるから難しくなるのであり、仮に手描き絵師にラフを渡して清書を依頼するとき、どこまで描きこめば依頼主との共同著作になるだろうか?というのが、一つの判断基準になろうと思われます。
 もうちょっと別な例で説明しましょうか。

 イキリAI絵師が、「カメラの撮影ボタンをポチった人間にすら写真の著作権が認められるんだから、生成AIのプロンプト作者にも著作権は認められる」という法的に誤った主張を行っている場面が散見されます
 前記の通り利益バランス論からいって、生成AIが許されるのは、生成AIに著作権が認められないからです。生成AIイラストに著作権を認めるなら、当然、その学習元については厳しい法規制が必要になります。
 なので、「生成AIを認める」と「生成AIイラストに著作権を認める」というのは二律背反です。そのため、生成AIイラストに著作権を主張するというのは今すぐ即座にやめるべきです。

 「アイデアに著作権は認められない」というのは根本的なスタートラインです。現実世界でカメラをどの場所でどの位置に向けるのかは、「アイデア」に該当せず、直接画像獲得に向けられた人間の動作そのものですが、プロンプトはテキストであり、生成画像との関係ではアイデアそのもの(コピペすれば誰でも同じ結果が得られる)なので、何万時間プロンプト作成に苦心しても、出来上がったプロンプトはアイデアでしかありません(逆に、写真をとるカメラマンの人間的動作にコピペという概念はありません。アイデアじゃないからです)。

 あと、プロンプトはテキストであるため、テキストとして著作権が認められる、という勘違いも存在しているようです。テキスト自体に著作権は認められません。著作権が認められるのは「物語」に対してです。よく言われますが短いキャッチコピー・キャッチフレーズには著作権が認められないことが多いです。
 物語や長い文献全体に著作権が発生すれば、その構成物である各フレーズにも著作権が認められますが、物語等の構成物ではない短い文字列に著作物性が認められることはありません。
 プロンプトの、単なるAIに対する指示命令、という特徴を考えるに、これに著作物性を認めるのは、無理です。

 プロンプト本体は特許権等を取得しない限り保護されないものです。加えて、そのプロンプトを入力する身体的動作自体は、ctrl + Vすれば誰でも同じ結果が起こるものなので、創作的とは見做されません。
 text to imageで生成したAI画像に、プロンプト作者は原則として著作権を主張できません。imageの著作権を取得したいなら、基本的に画像獲得に対する直接的な創作的寄与をする、つまり最低限ラフを描いてimage to imageすべきです。「絵を作る」という基幹的部分をAIと共同著作しないといけないわけです。AIにいくら斬新な言葉(プロンプト)で依頼しても、それはAIとの関係ではアイデア出しの域を出ないんです。

 まぁこの場合、「どこまでラフ本体に著作性が認められるほど描きこんだか」という評価の話になってしまうので、権利関係が不安定であり、個人的にペン入れ部分を生成AIに「丸投げ」するのはお勧め出来ませんがね…。
 手描きの絵師にいかに斬新なアイデアと構図で発注をしたとしても、当然に、その手描き絵師が描いた絵について、発注者は共同著作権を主張できないでしょう?

 もしイキリAI絵師の言うように、プロンプト作者に、生成AI画像への著作権まで認められるとしたら、販売アセットを「選択する」行為にも著作性が認められることになるので、既存のアセットを作って作品を作った作者に、アセット本体に対する共同著作権の主張が認められることになります。そんなのありえないってちょっと考えたら分かるでしょう。
 米国の裁判所はこのような判断で、プロンプト作者の著作権を否定したと思われますが、日本でもこの理屈は妥当するでしょう。

 もっと分かりやすい例を出しましょうか。ゲーム内の3D空間上でスクリーンショットを撮影したところで、そのスクショの著作権はゲーム制作者に単独帰属し、「3D空間上で撮影した写真なんだからプレイヤーとの共同著作である」なんて話にはなりませんよね?写真の著作権が撮影者に帰属するのは、それが仮想3D空間上の撮影でなく、現実世界でカメラを向けて撮影した写真だからだと考えられます。
 現実世界でのカメラの向きや位置はコピペ不可能であり、「アイデア」に当たりませんが、仮想3D空間上のカメラの向きや位置は、何らかの外部ツールで座標数値を入力すればコピペ可能なアイデアに過ぎず、著作権で保護されない、という理解が妥当でしょう。

 任天堂作品に対するパクりだ何だという論争にも共通しますが、知財の法理念としては「著作物はその人のもの、アイデアは皆のもの」が基本です。アイデアは特許取らない限り公共財ですし、特許取ったとしても20年で消滅し、その後は公共財になります。
 どんなに、絵を描くのと同じくらい苦労して生産されたアイデアだろうと、それがアイデアである以上、保護されません。著作権は「アイデアではない著作物に」特権的に付与された特別な物権的性質なんです。
 AI信者の言う「このプロンプトを試行するのに、絵師と同じ位苦労したんだから、排他的な権利が認められるべきだ!」という発想は、法的には通らないものと思われます。

 今後は、AI使ってようが使ってまいが、絵師に仕事を頼むのであれば、「十分に著作権を付与できるほど自力で手を加えた絵なのか」を必ず確認する必要があります。
 だって生成AIを使っていようがいまいが、高度に発達しすぎたペイントツールの自動機能で作品をポン出しした場合、著作権が認められないというのは当然ありうる話だからです。生成AIのせいではなく、そもそも今後ペイントツールの自動化が進めば、いずれは確認しなくてはならなくなる話なんですよ。生成AIを使ってなかろうが、便利な3D素材やブラシツールのコピペに過ぎない作品、腐る程ありますからね。
 生成AIを使ってなかろうが、トレスだの模写だのって過去何度も炎上してるでしょう?生成AI使わなくても、模写絵師に頼めば模写が発覚して炎上する可能性があるので、模写絵師より生成AIアシスト絵師に頼んだ方が安全だという時代は、当然来ますよ。AIより模写・参考の方が遥かに法的に危ないからです。


■今後、生成AIは法規制される可能性が高い

A.違います。

 無理です。上に書いたように、日本より遥かにAI規制と研究が進んでいるEUでも、「営利性のあるAI学習について」「オプトアウトの権利を」認めたものにすぎません。
 非営利の生成AIは存在していますし、OpenAIも結局営利化を断念しました。前記の通り、生成AI学習自体が非営利であれば、その生成AIの利用者が営利であっても適法であるという判例が出てしまっていますし、仮に営利のAI学習であっても、オプトアウトしかできません
 つまり、昔のアニメ・ゲーム作品とか、数年以上前の古いイラストとか、もはや原権利者が口を出さなくなってしまった古いイラストだけでも、十分な学習効果が得られるので、「今後の法規制により生成AIを抑制する」なんてのは不可能なわけです。

 これはよく言われる話ですが、生成AIの学習元というのは「今まで作られた古いイラスト」でしかないのです。反AIの勘違いとして、AIが今後の未来の絵も無制限に学習し続けるという誤った認識があります。そうでなく、もはやオプトアウトを期待できないような古いイラストだけでも十分な学習データになり、これほど高度なイラスト生成を行えるようになってしまっているので、これから未来に作られる手描きイラスト全てが、生成AI学習禁止を明示したところで、無駄なのです。もう「既に」学習してしまったから。
 前記のドイツ判例でも言及されていますが、生成AIによる学習を拒否するというのは、robot.txt等のクロール拒否で可能であり、別に生成AI側だってクロール拒否データを無理に学習したりする必要はないのです。拒絶を明言していない古いイラストだけで十分だから。


■学習元のイラスト作者に利益還元は?

 まぁ別に否定はしませんが…。意味あるんですか?

 学習データというのは発生する利益に比べ膨大です。仮に利益の10%(かなり大きいライセンス料)を、学習元の絵師全員に分配したとしましょう。1人あたり0.00000000001円とかにしかならないと思いますよ。そんなものを受け取ったら満足なんですか?

 そんな事より、もっと現実的に、無断学習された絵師が生成AIから利益還元を受ける方法を教えましょう。それは今すぐ手描きイラストに、生成AIアシストを取り入れる事です。これによる効率化と作品のクオリティアップは、バカげた無意味な学習元への利益還元論より、遥かに利益が大きいですよ。

 何度も言いますけど、生成AIアシストを受けながら、更に著作権まで主張するというのは、手描き絵師の特権なんですよ。絵が描けない人間が生成AIに何100時間かけてプロンプト練ってポン出しさせたって、その生成AIイラストに著作権なんか主張できないんです。これほど大きな特権もってるのに、手描き絵師が生成AI支援を受けない理由、あります?

 だから、反AIは手描き絵師にとんでもない損害を加えている利敵行為でしかないんですよ。生成AIに無断学習された利益の還元を受けたいなら、自ら生成AIのアシストを受け入れるしかないんです。手描きの味を残したまま生成AIのアシストを受けるのは、手描き絵師にしかできないから。手描き絵師が生成AIをクリエイティブに使う限り、AIによる創作性の喪失なんか起きないから。

 ここから目をそらして、AIに反対すれば創作文化を守れてると勘違いしてるのは、無責任にも程があると思いますよ。創作文化を守りたいなら、生成AIを「手描きの味が残しながら」活用するという、手描き絵師にしか果たせない責任を、果たすべきだと思いますが。反AIほど創作文化に対して無責任な行動はないと思いますがね。


■無断AI学習に嫌悪感覚えてる人に思う事

 これは法律論じゃないですが…。

 ソース忘れましたが、絵、3D、プログラミング、作曲、文章など、全ての創作分野の比較で、「絵」という分野はかなり「才能より努力で何とかなる部分が大きい」ものであるとの報告があったはずです。そして、殆ど全ての創作分野に中途半端に手を出してきた私の感想としても同意見です。一番努力でどうにもならなかった創作分野は作曲でしたね…。本当に作曲はセンスが必須で、かつ、センスのある人でも、一度の人生で作曲できる発想の数に限りがあるんじゃないかと錯覚する位、リソースに限度を感じます。
 つまり、才能がなくても努力でどうにかなってしまうので、正直「ネット絵師」というのは飽和気味であり、「多少絵が上手い」程度では見向きもされませんでした。これは生成AIが出る前からそうです。

 だからこそ、何らかの特定の二次創作界隈に属して価値を高めたり、少し下手な歪みをあえて入れて「性癖」を伸ばしてきたわけじゃないですか。そういう付加価値は、結局ポン出し生成AIイラストには出来ないんです。

 ポン出し生成AIと手描きとの住み分けが出来てないSNSの現状は問題ですが、それはSNS側のせいであり、生成AIのせいではないですし、法規制でどうにかする話でも、まして批判して炎上させていい話でもありません。
 それでも、自分の絵が無断で学習されたどーのと騒ぐのは、結局、生成AIより「下手な」自分の絵の価値を、信じられないからではないんですか?

 生成AIが進歩し、これからどんどん、絵は「単純な上手さの問題ではない」「性癖の問題」になってきます。生成AIに負けない「ヘキ」の強さで勝負する時代になるんです。それでも、生成AIに自分の「ヘキ」が負けてしまうかもと恐れるのは、「客の舌」を信じられてないからなんじゃないですかね?自分が「ヘキ」を感じるものについて、客も「ヘキ」を味わってくれるはずだという信頼感が…。

 単に美麗なだけで味がしないポン出し生成AIイラストには、これからどんどん価値がなくなっていくでしょう。そして「あえて」下手な線を加えて味を出し、性癖でこれでもかとドラミングする、性癖マウンティングの時代になる。この人間の創作性が、生成AIで失われるなんて危惧するのは、結局、「ヘキ」の味を感じる人間の舌に自信がないからですよ。

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コメント

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Yunomix
Yunomix

気合が入った文章ですごいと思いました!
1点だけ気になったのですが、
>「AI学習権」なるものは、著作権法に規定がありません。
>なので、他人の絵を無断でAI学習しても、一切権利侵害はありません。
これは日本においてAI学習が権利侵害にならないという結論は同じなのですが、論理としては違っています。日本の著作権法では、基本的に著作物を無断利用できないことを定めていますが、著作権法第30条の4で情報解析を行う場合は複製その他の利用をすることができることを例外として定めています。著作権法などの民法の範囲では「定義が無い=規制対象外」は誤解です。
また、アメリカの場合だと無断学習は合法か?は、現在進行形で訴訟中で不確定です。AI学習がフェアユースの範囲内と認められるかどうか次第となります。

(。╹◡╹。)@
(。╹◡╹。)@

> ■「画風」は著作権で保護されないので、生成AIに他人の画風を真似させるのは適法である
>A.違います。

画風で違法判決を出した裁判例を教えてください、ちょっと調べたくらいだと画風は著作権で保護しないという情報しか出てきません

(。╹◡╹。)@
(。╹◡╹。)@

> 画像生成AIによって絵描きは仕事を失う

これは主張を根本的に主張を勘違いしている
× 絵描きの仕事が完全にAIに置き換わるので絵描きが0人になる
⚪︎ 絵描きの効率が上がるので10人必要だった仕事が1人でできるようになる
江戸時代には90%が農家だったが農業機械が導入されて激減した
昭和初期は人間が船に積荷を載せていたが、クレーンで載せるようになって港湾作業員が激減した
ソシャゲで100体のキャラクターが必要だが1人の絵描きでは描けないので10人で分担していたが1人でできるようになったので9人が仕事を失った
パクられてもどうでもいいイラストはいらすとやに奪われてる

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【反AI】反AIとAI信者の勘違い、弁護士が全部切ります【AI信者】|MT
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