虎のソナタ

伝説の「江夏の21球」は衣笠氏の一言から 怒りの江夏に「俺も一緒に辞めてやる」

 しかし…赤ヘルのリーグ優勝をもたらしたのも江夏豊なのだ。そのリーグV決定の試合を広島市民球場の放送席で解説していた阪神元監督村山実はハラハラと落涙する。「俺は江夏を優勝させてやれなかった…」と。

 だが…最終戦の最終回の江夏の怒りは尋常ではなかった。と、そこにスッと一塁手の衣笠祥雄が江夏に近づいてきて、ゾクリとこう言った。

 「おい、ベンチをみるな!(おまえが野球を)辞めるなら、俺も一緒に辞めてやる…」

 このひと言で江夏はハッとわれにかえった。いまやるべきことは何かを悟った。その言葉に救われた。

 そして球史に残る『江夏の21球』は広島に日本一をもたらした。

 気がつくといつの間にか大阪球場に降り注ぐ秋雨は悲運の将・西本幸雄の肩を情け容赦なく濡らしていた…。

 もちろんルーゲーリッグ(ヤンキース)の世界記録を更新する連続出場達成への数々の金字塔と努力と汗…何よりも人間くさく挑み続けた結果、衣笠祥雄は「国民栄誉賞」にも輝いた…。

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