メンタルヘルスの危機
今回の報告書で最も悲痛な予測の1つは、2030年には精神障害や自殺によって4200万年分の健康寿命が失われるというもので、2015年に比べて200万年分の増加だ。報告書によれば、メンタルヘルスの問題は「すべての国の青少年における疾病負荷(病気や障害がもたらす負担)の最大の原因」だという。
デジタル技術や気候変動といった長期的な傾向やコロナ禍に代表される最近の惨事によって、世界の若者にメンタルヘルスの危機が広がっていることは以前から指摘されているが、報告書の数字はそれを裏付けるものだ。
「思春期という大切な時期に、こうした大規模な混乱が起こることを想像してみてください」とベアード氏は言う。「彼らは教育を受ける機会や人々と交流する能力を失い、経済危機もいくつか重なりました。潜在的に、彼らはより貧しく、よりストレスの多い世界で生きています」
報告書は、青少年へのメンタルヘルスサービスを拡充し、彼らのストレスや不安や抑うつの原因に対処できるよう地域社会に権限を与えることを提言している。(参考記事:「うつやADHDも改善、メンタルヘルスにいい食べ物とは、研究続々」)
「若者たちは希望を持っています」
青少年の健康を専門とする英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の疫学准教授のイーファ・ドイル氏は、今回の報告書には関与していないが、青少年の健康と幸福が岐路に差し掛かっていることに同意する。
「ランセット委員会の報告書は、第一に、青少年の健康と幸福への投資が少なすぎること、第二に、その投資が青少年の疾病負荷の大きさに見合っていないことを示すデータを提供しています」とドイル氏は説明する。
「これらの説得力のあるデータは、各国政府や支援団体に対して、すべての人に健康を保障する『ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)』の公約を果たし、より適切で包括的な保健サービスを青少年に提供するための措置を講じさせるはずです」
これらの傾向が単独で起こっているわけではないことも忘れてはならない。例えば、肥満やメンタルヘルスは、デジタル技術や気候ストレスから大きな影響を受けている。それでもベアード氏は、こうした複雑な課題に立ち向かう若者たちのしなやかな強さと決意の固さに頼もしさを感じている。
「若者たちは楽観的で、希望を持っています。まだ多くの若者たちが、未来を非常に楽観的に捉え、未来をより良くするために自分にできることをしたいと思っているのです」





