日本国憲法は、基本的人権として自由権と、平等権を、続いて社会権として生存権、教育を受ける権利、労働基本権を定めている。教育を受ける権利については、第26条で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と定めている。ここで「法律に定めるところ」とは、教育基本法や学校教育法、私立学校法などの法律によって、教育を受ける権利を具体化するとの意味である。
「ひとしく」とは、日本国憲法第14条の法の下の平等とともに、教育を受ける機会が国民に均等に提供されることを意味する。このことについて、教育基本法第4条では、「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって教育上差別されない」としている。教育を受ける機会は、人種や信条、性別などによって教育上差別されないとの意味である。
「経済的地位」については、経済的理由によって教育を受ける機会に差別がもたらされないよう、就学援助や奨学金などの制度が設けられている。就学援助については、学校教育法第19条で「経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない」としている。就学援助や奨学金の制度は、教育基本法の教育の機会均等の理念に基づくことを確認しておきたい。
日本国憲法第26条2で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする」と定めている。教育基本法でも第5条で「国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う」と定める。「普通教育」とは、全国民に共通の、専門教育や職業教育でない基礎的・一般的な教育のことを指している。
保護者の子の教育についての責任や義務については、同じく教育基本法第10条で「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」と定めている。また民法820条では、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」とし、保護者の教育に関する権利と義務について定めている。
「普通教育を受けさせる義務」の規定を受けて、学校教育法第16条で、義務教育は9年間であること、第17条では、保護者は小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校前期課程、特別支援学校小学部・中学部に就学させる義務を負うことが示されている。
義務教育の無償については、教育基本法第5条4で国公立学校の義務教育については「授業料を徴収しない」としている。学校教育法第6条でも同じ内容を示している。教科用図書(教科書)については、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律において、国公私立とも無償とされている。
教育を受ける権利、教育の機会均等、教育を受けさせる義務、義務教育の無償がどのような関係にあり、制度として具体化されているかを確認しておきたい。これらの規定や考え方は、不登校の児童生徒の支援の在り方とも関連しており、さらに調べてみていただきたい。