「心の糧」は、以前ラジオで放送した内容を、朗読を聞きながら文章でお読み頂けるコーナーです。
「今日の心の糧」のお話しをメールで配信しております。ご希望の方はこちらからお申し込みください。
坪井木の実さんの朗読で今日のお話が(約5分間)お聞きになれます。
「狐には穴があり、空の鳥には巣がある。だが、人の子には枕する所もない」とは、聖書に記されているイエス・キリストの言葉です(ルカ9・58)。
イエスは、弟子たちと寝食を共にし、多くの人々も彼に従っていました。そんなイエスが「枕する所がない」と言われるのはどうしてでしょう。私はこの言葉を味わう度に、イエスの疲れきった心情を想像し、イエスの「枕する所」、安心して心身共にくつろげるような「居場所」、言い換えるなら「心の拠り所」とはどういう意味なのかと考えさせられ、できれば私自身がイエスの拠り所になれないだろうかと感じます。
それは、嘘偽りのない私の望みです。
近年の世界では、大きな自然災害や戦争、紛争等で、住む家を失い、安定した日常生活を奪われてしまった多くの人々がいます。文字通り「枕する所もない」人々、貧困や飢餓で苦しむ人々も大勢います。
飢餓と云うと、日本ではあまり差し迫った現実として実感できないかもしれません。しかし、飢えに苦しむ人々が少なからずとも存在し、子どもの貧困等が大きな社会問題になっています。安心して過ごせる居場所や勉強の機会を失い、将来に夢を描くこともゆるされない子どもたち、生きる力や希望も失ったようなたくさんの人々の現実に目を向けると、そこにイエスの深い嘆きが重なるように感じられます。
ともすると、一方ではそんな人々を忘れがちな私の日常があります。しかし、イエスは「わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたこと」と諭され(マタイ25・40)、私もイエスの「枕する」拠り所となるよう促してくださいます。そして、それが私自身の拠り所でもあると感じるのです。