ドンキ、コメ流通で小泉農相に意見書 「5次問屋が高騰の要因」
ディスカウント店「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は28日、小泉進次郎農相宛てにコメ流通の問題点に関する意見書を提出した。集荷業者であるJAグループとの直接取引の参入障壁が高い点や、多数の卸売業者が介入する複雑な流通経路がコメの価格高騰や供給不足を招いていると指摘した。
吉田直樹社長の名義で送った。意見書ではコメ流通の問題点として「(集荷業者である)JAグループと取引する1次問屋は実質的に特約店のように決めているので新規参入ができない」と指摘。また、「最大5次問屋まで存在するなど多重構造により、中間コストに加えてマージンがそれぞれ発生する」とした。「市場競争が生まれない卸構造が仕入れ価格や販売価格の高騰の要因になっている」と訴えた。
その上で、小売業者が直接JAと卸価格を交渉し、卸業者に仕入れを依頼することで中間コストが可視化できて仕入れ原価の削減につながると提案した。投機目的の買い占めを防ぐために、コメの保管設備や販売量の証明などの届け出制や業者の許認可制を導入するといった仕組みづくりが必要だとした。
PPIHは政府備蓄米の随意契約を申請し、1万5000トンを仕入れる予定だ。まずは都内の一部店舗で早ければ週明けにも5キロ2000円程度で発売し、順次、販売店舗を広げていく。
29日、PPIHで食品部門の責任者を務める百崎竜太郎氏が日本経済新聞の取材に応じ、「精米や袋詰めなどを終え、製品化された状態でコメを仕入れており、取引した卸が5次問屋だったこともある」と明かした。「供給に責任がない業者がどんどん増えていった」ことがコメ価格の高騰の背景にあるとみる。
コメの適正価格での販売や品質の担保に向けて明確なルール作りの必要性も訴えた。「既に袋詰めされた状態で問屋から仕入れているので、生鮮品でありながら記載の内容や提示された価格を信じるしかない」と指摘した。
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(更新)- 田中道昭日本工業大学大学院技術経営研究科教授ひとこと解説
今回の備蓄米の随意契約による小売企業への販売に伴うドン・キホーテによる小泉農相宛の意見書提出は、米流通における「パンドラの箱」が開いた象徴的な出来事である。長年“聖域”とされてきたコメの流通構造に、流通大手が正面からメスを入れた。特約店化した一次問屋と、最大五次にも及ぶ多重構造が、価格の不透明さと中間コストを増幅させてきた実態を明示し、JAを中心としたコメ市場に競争原理の欠如を訴えた点は極めて画期的だ。政府備蓄米の随意契約を契機に、今後はコメ流通全体の“見える化”と“競争化”が加速し、制度の再設計が求められる転機となって欲しい。
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(更新)
2024年に表面化したコメ価格の高騰を受け、農林水産省は備蓄米放出などの対策に乗り出しました。その過程で、政府の農業政策や流通経路における目詰まりなど、コメの生産・流通を巡る課題が顕在化しています。最新ニュースや解説記事をまとめています。
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