年金改革関連法案 衆院本会議で可決 参院へ

年金制度改革の関連法案は、基礎年金の底上げ措置を法案の付則に盛り込む修正が行われた上で、衆議院本会議で賛成多数で可決され、参議院に送られました。いまの国会で成立する見通しです。

年金制度改革の関連法案と、自民・公明両党と立憲民主党が共同で提出した修正案は、30日の衆議院厚生労働委員会で採決が行われ、賛成多数で可決されました。

これを受けて、年金制度改革の関連法案は、基礎年金の底上げ措置を法案の付則に盛り込む修正が行われた上で、午後の衆議院本会議に緊急上程されました。

討論で日本維新の会の阿部圭史氏は反対の立場から「基礎年金の底上げという表現はあまりにきれいに装飾された表現だ。財源は明らかにされておらず、無責任で、不適切以外のなにものでもない。いまからでも年金制度全体をどうするのかという議論を直ちに始めなければならない」と訴えました。

このあと採決が行われ、自民・公明両党と立憲民主党などの賛成多数で可決され、参議院に送られました。

日本維新の会、国民民主党、共産党、れいわ新選組などは反対しました。

関連法案はいまの国会で成立する見通しです。

法案には、パートなどで働く人が厚生年金に加入しやすくなるよう「年収106万円の壁」と呼ばれる賃金要件や、従業員51人以上としている企業規模の要件の撤廃などが明記されています。

また、法案の付則には4年後の公的年金の財政検証で、将来的に基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合などに厚生年金の積立金を活用して底上げ措置を講じ、その際、厚生年金の給付水準が一時的に下がることへの影響を緩和する対応もとることが盛り込まれました。

30日午前の衆議院厚生労働委員会で石破総理大臣は、基礎年金を底上げする措置について「幅広い世代の基礎年金の給付水準の確保を可能にするもので、最終的には99.9%を超えるほぼすべての厚生年金受給者の給付水準が上昇すると見込まれている」と強調しました。

立民 野田代表「大事なのは基礎年金の底上げ」

立憲民主党の野田代表は記者会見で「一番大事なのは基礎年金の底上げなので、最低限の修正に合意した。ほかの論点があることは間違いないが、この国会ではまずやらなければいけないことに解決の道を見出す必要がある」と述べました。

維新 前原共同代表「抜本的な改革訴えていく」

日本維新の会の前原共同代表は党の代議士会で「重要法案であるにも関わらず非常に短い審議時間であり、しかも与党と野党の第一党が密室で修正の合意をした。財政検証が非常に楽観的であるし厚生年金の積立金を基礎年金の引き上げに使うことは流用だ。われわれは抜本的な改革を堂々と訴えていく」と述べました。

国民 玉木代表「強行採決は裏切りだ」

国民民主党の玉木代表は党の代議士会で「まだまだ議論すべき論点はいっぱいあるのに、十分な審議時間をとらずに強行採決するのは国民にとっても裏切りだ。われわれは自民党、公明党、立憲民主党とは違う、本当に安心して十分な年金額を確保し、いわゆる『就職氷河期世代』の対策にもなるような年金制度を提案していきたい」と述べました。

共産 山添政策委員長「もっと論じる必要があった」

共産党の山添政策委員長は記者会見で「『マクロ経済スライド』を速やかになくすことを盛り込んだ党の修正案は否決されたが、あるべき方向性はこういうものだった。『熟議の国会』という意味では3党の合意だけで進めるのではなく年金改革のあるべき姿について もっと論じる必要があったのではないか。引き続き参議院で徹底した審議を求めたい」と述べました。

【専門家Q&A】 “措置は評価 効果は今後検証を”

年金制度改革の関連法案は基礎年金の底上げ措置を法案の付則に盛り込む修正が行われました。この修正について、年金制度に詳しい慶應義塾大学の駒村康平教授に聞きました。

Q 基礎年金の底上げ措置が法案の付則に盛り込まれる修正が行われましたが、どのような意味を持ちますか?

基礎年金は所得保障の要でもあり貧困の問題が将来広がると懸念されていた。特に就職氷河期世代は就職した時から最近まで非常に経済状態がよくなくて年金額も低くなる可能性があったので措置が行われたということで評価できる。
氷河期世代は人数も多いので低年金の人を増やしてしまい社会の不安要因にもなる可能性もあったのでそれを防ぐことも期待できる。
不利な経済状況が続いた『世代ガチャ』のような目にあった氷河期世代に対して少し余裕のある世代や所得層の人から支援を行い、氷河期世代より若い世代の老後を守るのも年金の役割だと思う。

Q 今後のポイントは?

今回の修正は基礎年金を今あるものより大幅に充実するというよりは悪くなるのを抑えているということなので『余裕のある年金』とまでは言えないとは思う。ほかの政策手段も組み合わせて底上げ政策がどのくらい効果が出てくるのか今後の検証を見なければいけない。

Q 政府はどのような対応が必要ですか?

氷河期世代はまだ働いて年金を積み上げていくチャンスはある。年金が中核になるが政府には賃金の引き上げや良好な労働条件の保障など可能な限りの氷河期の労働条件がよくなるような政策も同時に打ってもらいたい。60歳以降も働くことができるようなチャンスやリスキリングなど自身の能力が高まるような支援も必要になる。

Q 給付水準が上がると国庫負担も追加で必要となり、厚生労働省によると将来的に年間1兆円から2兆円程度と見込まれています。

このまま何もせずに放っておいたら貧困が広がり生活保護などで国庫負担が増えるという点も考慮してほしい。財源をどう確保していくかはまだ時間があるのでじっくりと国民的な合意をとっていってもらいたい。

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