TBS『報道特集』のとても気になるというか、ある意味、衝撃の動き
兵庫県政をめぐる攻防戦のピーク時になんと…
激しい攻撃を受けながらがんばっていると評価の高いTBS『報道特集』をめぐって気になるというか、いささか衝撃的な動きがあるので書いておこう。7月1日付の人事で、曺(チョウ)琴袖編集長が異動するというのだ。旧統一教会批判で激しい攻撃を受けた時も、そして昨年来、兵庫県政をめぐるデマ情報を追及して斎藤元彦知事支持者らしい人たちから猛攻撃を受けてもひるむことなく報道を続けているのも、この曺編集長の意思によるところが大きいと言われてきた。それが攻防戦のピークと言うべきこの時期に現場を去るというのは、驚きを禁じ得ない。
ちなみに前回、5月24日の放送でも特集で兵庫県の問題を追及していたが、とても興味深い内容だった。この問題について同番組がかなり食い込んでいることは誰もが認めるところだろう。
一方で兵庫県の斎藤知事をめぐる動きについては現在、第三者委員会の調査が出揃い、斎藤知事が追い詰められているのは明らかだ。
そのタイミングでのこの人事が、『報道特集』を攻撃してきた人たちに、自分たちの攻撃が功を奏しているのかと勘違いの印象を与えることにならないか気になる。もしかするとそうした経緯と別に以前から検討されていた人事なのかもしれないが、なぜよりによってこの時期に、という感じは否めない。
局長への昇進人事ではあるのだが…
曺編集長は情報制作局長に異動するという。局長就任だから明らかな昇進で、少なくともTBS上層部が圧力に屈して『報道特集』編集長を異動させたわけではないといえる。平日朝の情報番組を強化しようという局の狙いが背景にある可能性も少なくない。
ただ、昇進という形で現場を離れることになる異動というのは、これまで微妙な局面でよくなされてきたものでもある。例えば思い出されるのは2015年、テレビ朝日の『報道ステーション』で政権批判を行うことで知られたプロデューサーが、経済部長に異動になった例だ。当時は「Mプロデューサー」として週刊誌などに盛んに書かれた松原文枝さんのケースだ。この場合も一応、部長職への昇進ではあるのだが、それよりもプロデューサーという現場を離脱させる意味が大きいのではないかと当時話題になった。この異動を安倍政権の圧力に屈した人事ではないかと考えたコメンテーターの古賀茂明が激しく反発し、生放送中に抗議して騒動になった。
ちなみにこの2015年から翌年にかけて、NHK『クローズアップ現代』の国谷裕子さんや『報道ステーション』の古舘伊知郎さんら著名キャスターが次々と番組を去ることになって話題になった。TBS『news23』でも政権に厳しいコメントで知られた岸井成格さんが、アンカーを降板し、スペシャルコメンテーターになった。肩書の違いはわかりにくいが、要は毎日のように出演することがなくなった。2015年に岸井さんは右派グループから激しい攻撃を受けていたから、この変更も当時、いろいろな見方が飛び交った。
『報道ステーション』のプロデューサーやキャスターの異動については、局の上層部がどう考えていたかはわからない。安倍政権から圧力がかかっていたことは確かで、いわゆる「総合的判断」をしたということなのだろう。
『報道特集』現場からの熱い思いは…
今回の『報道特集』の曺さんの異動も、局の上層部がどう考えたのかはわからない。曺さん自身は、この間の攻撃に対しては、屈する意思はないことを表明していたし、6月に発売される『世界』『地平』の両誌で『報道特集』側から一連の攻撃に対する意思表示の原稿も載る予定だという。
私が編集する月刊『創』(つくる)でも既に4月号で「TBS『報道特集』の兵庫県関連報道に強まる攻撃」という記事を掲載しており、このヤフーニュースでもそれを公開した。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/1dcac617d4a047fc543a0fba37c44f56c74dc4f1
かつての嫌な動きを思い出す…TBS『報道特集』へこのところ強まる攻撃
その中で曺さんはインタビューに答えてこう語っていた。
《以前から『報道特集』や『サンデーモーニング』に対してネトウヨと言われる人たちからの攻撃はあったのですが、昨年の兵庫県知事選では、右とか左とか関係なく、マスコミに不信感を持った市民にも反響が広がっていったわけです。これまでと違う動きでした。
その後、竹内元県議の自殺という衝撃の事態もありましたが、その時も逮捕が予定されていたから自殺したんだというような中傷がネットにあふれていたのを見て、これはもう何かせざるを得ないと感じたのです。
そうしたら同じ日の夕方近くに朝日・読売・産経がそれぞれ兵庫県警に取材して、逮捕が迫っているとか、事情聴取していたとかいう事実はないと、兵庫県警の言葉をデジタル版で報道したんですよ。そうしたら、それまでネット上に竹内県議を誹謗する投稿があふれていたのが、一気に変わっていったのです。
ファクトチェックの大切さを改めて見せつけられた気がしました。そして、その週の『報道特集』では、元県議の死を受けてファクトチェックをテーマにしようと決めたのです。》
こうした『報道特集』の姿勢に対しては、ジャーナリズム界の中で支持・応援する動きが広がっていた。
とても大事な局面なのでTBS上層部にお願い
7月1日付人事はもう決定事項だろうが、大きな問題は、その後任を含め『報道特集』の態勢が今後どうなるかということだ。それもいずれ発表になるのだろうが、今が大事な局面だと考えて、急きょ本記事をこのタイミングで公表することにした。TBSは報道を重視している局だから、この間の『報道特集』の姿勢を尊重するような次の態勢づくりをお願いしたいし、上層部もちゃんとそれを考えていると信じたい。
昨年来のネットからの「オールドメディア批判」は加速しており、既存メディアの報道姿勢が問われている局面だけに、これにどう対応していくかはジャーナリズム界全体で大事な問題だ。どんな態勢になるにせよ、『報道特集』を今後も市民やジャーナリストが応援していくことが重要だと思う。