「わたくし数十億年ぶりにオリジナル漫画を描きますわよ!」の感想
https://kashicomcom.fanbox.cc/posts/7976869
「わたくし数十億年ぶりにオリジナル漫画を描きますわよ!」(黒淵かしこ・HAPPINESS)
(タイトル画像は上記fanboxより引用)
先日話題になった「中世ラブロマンスのコミカライズをしているが全然興味ない」というエッセイ風漫画。私も形態は違えど他者のアイデアを託されて小説風の物語を書くという経験がありますが、何が面白いのか全然わからないアイデアを形にしなければならないこともありました。
結果として楽しんでもらえたこともあり、上手くいかなかったこともあります。私がやったのはバイトみたいなものですが、プロとして「感覚で理解できないものをロジックで組み直して読者に評価されるものを作る」のがどれだけ困難であるか、容易に代えがたい能力、技術であるか、想像くらいはできるつもりです。
私は「好きなことを仕事にするのが良いことだ」という価値観を持っていません。この考え方は、裏を返せば「やりがい搾取」につながります。「できることの中で満足な報酬が得られるからその仕事をしている」のであって、好きかどうかは関係ありません。
それはいわゆるクリエイターにおいても通じると思っています。例えばアニメーターの中でも動画はオリジナリティよりもコンテ通りに描くのが役割であるし、コミカライズというのもこれに近い技術職のような印象です。
「ダッセェ設計だなあ」と思いつつも設計図通りに作り上げる大工と、「素晴らしい設計だ! もっと良くしてやる!」と称賛しつつ勝手に図面にない造作を付加する大工と、どちらが優秀か、あるいは、設計士ないし発注者がどちらを望むか、という話です。
コミカライズやアニメ化、ドラマ化は原作とは別の作品だから、改変含めてお任せします、という原作者がいれば、極力原作のイメージに忠実に再現して欲しい、という原作者も(それらの中間に位置する原作者も)いるわけです。
本作は一応フィクションということになっていますが、仮に作者が過去に携わったコミカライズを指しているのだとしても、少なくとも連載中はおくびにも出さず、原作者も読者も満足していたのであれば、それは優秀なコミカライズ作家である証左でしょう。
それに本作は今年の五月にはすでに公開されているのであって、原作者が今になって知ったということは、自作をコミカライズしてくれた作家の動向に興味を持ってなかったということなのですから、無関心はお互い様ではないでしょうか。
コンビ作家のように常に共同制作しているならともかく、ある企画のために集まったメンバーならば、必ずしも「好き」を必要としない、ビジネスライクな関係性があってもよいと、私は改めて思いました。
この件は、「映像研には手を出すな!」の作者である大童澄瞳氏がfanboxで語ったことに通じるものもある気はしますが、かなり長くなりそうなので今宵はこれまでにいたしとうござりまする。
※20241119追記
アニメが大好きで仕事にしている方々は一点の曇もなく素晴らしい。一方、私のようにあまり興味がなく、嫌いではないが好きでもないが仕事にしている人もいる。後者は視点が没入することなくニュートラルで(冷めていて)ユーザーが求めていることが客観視できる点もあるだろう。どちらも有りだ。
https://x.com/TkashiWatanabe/status/1858305459616153990
このような見方は昔からあって、私はどちらかというとこれ寄りの考え方(めちゃくちゃ好きな人がエンジンになり、好きというわけではないが技術を持つ人が車輪となり、プロデューサーがハンドルになり、みたいな分業)なので、本件がなぜ燃えるのかよくわからない、というのが正直なところだった。


コメント
5コミカライズ作家さんは「興味ない」としか言ってないんで、別に罵倒はしてないんです。変に自分の色を出されるより、興味がなくて完全にビジネスライクに徹してくれる方がありがたいって依頼主はいると思いますよ。
そんな個人的感情はプロなら墓場までもっていくべき
個人事業主が個人的感情を吐露して何か問題でも?
森口博子はガンダムの歌の仕事が来たときたいそう不服だったようで、その後のトーク番組でも「代表曲がアニソンなんて」と自虐ネタにしていたのは周知の話ですが、それでも「ETERNAL WIND」は名曲として今に至るまで歌い継がれています。
同意は求めませんが、プロなら好きでやってるかどうかよりも成果で評価されるという考え方もあるということです。