大阪大学「米国から優秀な頭脳流出」 研究者100人受け入れで会見
大阪大学は29日、米国にいる研究者の受け入れについて記者会見を開いた。100人規模の受け入れを目指す医学系研究科トップの石井優科長は「米国から優秀な頭脳が流出している」と話し、阪大での活躍に期待を示した。日本語による事務手続きの改善など大学の国際化が課題になる。
阪大の大学院医学系研究科は28日、国内の大学として初めて具体的な数値目標を掲げて米国の研究者を受け入れる方針を打ち出した。今後2〜3カ月をメドに、トランプ米政権によって研究費を削減されたり、解雇されたりして苦境の若手研究者を主な対象とした国際公募を始める。
医学系研究科内の研究室で、博士研究員として雇用する。阪大の若手研究者とほぼ同水準の報酬で雇用する。詳細な条件は採用者のキャリアや業績を勘案して個別に詰める。財源として6億〜10億円をあてる。
課題も多い。米国の給与水準に見劣りしているほか、確保できる資金は研究者を1年間雇うための予算にとどまる。石井氏は「継続して雇用するには、政府の支援が必要になる」と訴えた。
また、石井氏は「大学での事務手続きなどは日本語が基本となっており、受け入れの課題になるかもしれない」と話した。今回、海外人材を多く招くことによって、大学の国際化を促す。
米国の若手研究者を受け入れれば、日本の研究力の底上げにつながると期待される。国内の大学では阪大のほか、東北大学が研究者を獲得するため現地での採用活動を始めた。同大幹部らが米スタンフォード大などで研究者ら180人に接触した。京都大学も独自に若手研究者の受け入れ策を検討している。
国立の有力大学が私立大学などに先んじて人材の受け入れに乗り出した。国立の有力大学が科学研究を支えてきた歴史があり、国内の私立大に比べれば外国人材を受け入れやすい土壌があるためだ。
英調査会社クラリベイトが質の高い論文数を基に作成した24年の日本の研究機関ランキングの上位20大学・機関のうち、国立大が過半数の12校を占めた。東大が1位、京大が2位で、旧七帝大すべてが10位以内に入った。
国立大は歴史的に国策に基づく政府からの資金をもとに、高額の実験設備などを整えてきたため、科学研究を進める素地がある。国立大学は経営に競争原理が導入され、人材獲得のための独自戦略を打ち出す必要にもさらされている。
私立大でランクインしたのは慶応義塾大(13位)、早稲田大(18位)、近畿大(20位)の3校にとどまった。いずれの大学も米研究者の受け入れに対して具体的な方針を示していない。慶応大は「現時点では静観しており、必要に応じて適切に対応する」(同大広報)としている。有力大学を軸に米国の優秀な人材を受け入れられる環境を官学が協力して整えていく必要がある。