三角初華、祥子と同じ顔をした双子の“豊川初音”だったけど整形して三角初華として生きざるを得なくなった説
「祥子と睦が双子」だなどというデタラメ考察をした大たわけが、性懲りもなくリベンジ考察をしに帰ってきた!!
ハイ、というわけで大たわけこと春剣防具です。はてなでは毎週感想記事を書いているのですが、noteではお久しぶりですね。
ちなみに10話の感想記事もはてなの方で執筆済みなのですが、初華と豊川家の関係については敢えて触れずに残しました。そのため前後編という体裁になっており、本記事はその後編という位置づけとなります。
さて、前後編なのに後編だけをnoteに書くのも不自然ではあるのですが、何を隠そう祥子と睦の双子説をきちんと否定するためです。読み物として面白いものには出来たと思いますが、やはりデタラメな説を流布してしまったことについての罪悪感と、そしてやはりリベンジしたい気持ちは僕の中にもありました。
ただ、10話も終わって全ての情報が出揃ったと言って良く、It's MyGO!!!!!終了時点とは見える景色も様変わりしています。その時が来たと言っていいでしょう。11話では解答編が提示されるであろう予告になっていますから、その前に僕の解釈を一旦まとめておきたい気持ちもありました。
……なお、一つだけ残念なお知らせがあります。
祥子と睦の双子説は、元々中国で盛んに取り沙汰されていたものでした。僕のもとにこの説を持ち込んできてくれたFazeorさんとの議論の時間は、たとえ説が間違いだったとしても、僕にとって非常に楽しい、かけがえのない時間でした。
ご存知の方もいるかと思いますが、中国ではAve Mujicaの展開に不満を持つ視聴者が多く発生しており、半ば炎上のようになっています。そして、僕と一時は真剣に作品について語り合っていた朋友も、現在では失望しているという声が届いています。
僕は全くこの考えには賛同できません。Ave Mujicaはやはり重厚に練られた傑作だと考えていますし、彼の失望への共感も不可能です。
なので今回の記事は、前回のような合作ではなく、僕1人で考察して作り上げたものになります。
そもそも祥子&睦の双子説は完全にあり得ないのか
完全にあり得ません。
元よりずっと怪しかったものの否定するに足る決定打には欠いていたのですが、10話をもって確実にあり得ないと断言できるようになりました。
根拠としては、初華(初音)が豊川家の屋敷に近づくことを拒絶していたことが挙げられます。祥子と睦が元は双子で、片方が別の家へと養子に出されたとするならば、両家の関係は今も深いはずですよね。
いや、両家の交友自体はそれなりにあるのが伺えます。2話でも森みなみが祥子を歓待していましたし、幼馴染みの2人が家族ぐるみの付き合いであることは疑いようがありません。ただ、問題は養子を預けるほど関係が深かったのかどうかです。
同じく2話からですが、初華(初音)はこの時点で平気な顔して家に入り込んでおり、この態度の違いから、豊川家と若葉家の繋がりは初華(初音)の出生と関係あるレベルには深くないと言えます。ちょっと歯に物が挟まったような表現になっているのは本記事を読んで頂ければ理解していただけると思いますが、とりあえず初華(初音)と豊川家の関係において睦はほぼ無関係と考えて良いわけです。このため、自動的に祥子と睦の双子説は消滅します。
ただ、瑞穂の葬儀にて一親等の祥子の真後ろに睦がいました。双子説は完全に潰えたと言えますが、睦と祥子に血縁関係があること自体はこのシーンからも確定的です。これについてはまた後述します。
豊川定治の役割について
さて、Twitter上で優勢なのは初音=定治の隠し子なのではないかという説ですね。どこぞのジョースター家や右代宮家を彷彿とさせますが、根拠として定治と初音の瞳の色が一致していることなどが挙げられており、正直に言って僕もこれを完全に否定するような根拠は持っていません。
ただ、バンドリという作品を振り返ると宇田川姉妹という髪色も瞳の色もまるで別物な実の姉妹が存在しており、この前例がある以上、瞳の色ごときでは親子の根拠たり得ないというのが古参バンドリオタクとしての正直な見解です。反証するほどの根拠にもならないんですけどね。
もう一つ、これは「メタ読み」と呼ばれるやり方(作中のキャラクターの行動ではなく作り手の意図から考察する手法。あまり褒められたものではない)になるのですが、本作における豊川定治の役割ってものがあると思うんですよ。
168億の損失を出した清告を追放し、無責任な行動を取った祥子を諌めつつ損害を賠償してきたこれまでの行動を思うと、この男の存在は本作における責任の権化であるように僕の目には映っています。だから、そんな彼が隠し子作ってましたなんて判明したら、これまでの清告や祥子への態度に説得力が持てなくなると思います。お前どの口で言ってたん?となるというか。
なので、定治の隠し子という考え方に対しては、否定はできないまでも賛同もしかねるという立場です。否定する根拠がないだけで、心情としては全面的に否定寄りです。
何より、親以上の世代で無責任を働いた人物がいるとすれば、もっと適任がいるわけなんですよ。それが定治をしてじゃじゃ馬と言わしめた豊川瑞穂です。隠し子について考えるなら、彼女を軸に考える方が、僕にはよっぽど自然に思えます。
そして本記事でこれから語っていく説も、豊川瑞穂の行動が発端という考えに立脚しています。
誕生日について真剣に考えてみる
そもそも、祥子と睦の双子説において一番の痛手だったのは2人の誕生日が違うことでした。じゃあその時点で双子説終わってただろと言われれば全く返す言葉もないのですが、ただきっかり1ヶ月違いという点に作為を感じないではいられなかったんですよね。そのため、誕生日が違っても戸籍を誤魔化したなどの考えは出来てしまう状態でした。丁度1年くらい前に悪徳弁護士に戸籍を偽造させるアニメもありましたし。
ただ、祥子と睦の双子説が完全に否定された以上、この誕生日情報はきちんと信じなくてはいけない真実となりました。というよりは、この誕生日情報は、むしろ公式から与えられた重大ヒントなのだと考えるべきなのです。
本記事では初音および初華の母親が豊川瑞穂という前提で考察を進めます。そうすると、まずは名前も似通っていることから初音と初華は双子だったと考えたいところです。
ただ、初音と初華、そして祥子が両方とも豊川瑞穂から生まれたとするならば、確実に祥子とは学年の差が生まれるのが厄介です。具体的には以下のような感じ。
祥子が初音・初華より先に生まれていた場合は2学年差、後に生まれていた場合には1学年差が最小でも生じます。特に祥子が姉であった場合が大問題で、花咲川に飛び級制度があるなんてこれまで語られたことがないわけですから(飛び級の描写があったのはチュチュ様のセロシアだけです)、急にそんな新設定が出されるのは流石に物語的なタブーと言っていいと思います。提示されない手掛かりでの解決を禁ずとは十戒にも書かれています。
祥子が妹である場合は単なる留年になるので設定上の問題は全くありません。ただ、花咲川って北沢はぐみでも進級できる学校ですし(失礼だろコラ!)、白鷺千聖が無理なく学業を両立できたくらいなので出席日数についても融通は効くと思われます。無論、可能性がゼロとまでは言えないのですが。
ただ、ひとまずですが、「島で生まれた少女」と祥子の産まれた順序についてだけは、この誕生日情報から断定できます。「島で生まれた少女」が先、祥子が後です。上の表だと後者、つまりは1学年違いになりますね。その理由は次の項で解説していきます。
家督から逃げた姉、逃げられなかった妹
出産するのは母親なのですから、ここは豊川瑞穂の行動から考えてみるべきでしょう。彼女に、祥子を睦の1ヶ月後に出産しなければならない事情があったということです。
さて、僕も未婚男性なのでネットで調べた程度の知識しかないのですが、一般的に性行為をしてから妊娠が発覚するまで概ね4~5週間なのだそうです。妊娠症状が出始めるのが3週間ほど。そこから月経の遅れなども含めて違和感を抱いて検査するまでにラグがあるため、4~5週間ほどの時期に発覚することが多いそうです。なるほど、ほぼ1ヶ月ですよね?
母親である豊川瑞穂の立場から考えると、つまりは森みなみの妊娠が発覚してから即座に祥子を孕んだということになるわけです。もっと噛み砕いて言うならば、森みなみの妊娠が豊川瑞穂が祥子を妊娠するきっかけになったと言うことができます。
祥子と睦が双子であることは否定されましたが、血縁関係は葬式の席次からも明らかなのですから、もう残るは森みなみと豊川瑞穂は姉妹で、若葉睦と豊川祥子は従姉妹だったという線でしょう。TGWグループのCMに森みなみが出演していたのもそういうコネである可能性が高いと思われます。
姉妹である森みなみの妊娠が豊川瑞穂にとって妊娠のきっかけになったとするなら、やはり考えるべきは家督相続についてです。本来、姉の森みなみが家督を継ぐはずだった。ところがみなみが隆文とデキ婚した上に若葉家に嫁いだことで、家督の相続権が瑞穂に移った……そういう物語が浮かんできます。
ここからは祥子が先に生まれたケースと後に生まれたケースで事情が変わってきます。
どちらのパターンであれ、「島で生まれた少女」の父親は島に住む三角家の男でしょう。祥子が先に生まれていたとすれば、既に夫と娘を持っていたのに三角家の男と不倫をしたことになります。
一方、祥子が後に生まれたケースでは、三角家の男との間にやましいものはありません。本当に純愛で、けれども親からは認められない関係だったのです。ただ、森みなみの電撃結婚を受けてそこにやって来たのが豊川定治です。本当はみなみの結婚を反対したかったのでしょうが、有名人同士の結婚を引き裂けば、世間での豊川家のイメージに傷がつくでしょう。そこで、妹である瑞穂が家督を継ぎ、世継ぎを産むように頼み込んだ……こういう物語が考えられます。
どちらもケースもあり得ないとは言えませんが、物語として美しいのは後者ではないでしょうか。言わば祥子の誕生は定治の見栄によるものであり、本作のテーマと合致します。何より、前者の物語には、愛がありません。
愛したはずのモーティスを失って悲しみに暮れるにゃむの姿もありました。本作で最も重要視すべきテーマは愛と見て相違ないでしょう。瑞穂が浮気していたなどという言説はその点で失格です。愛なき考察に価値なし。本記事でもその点を重視して考察を進めたいと思います。
1学年差を解決する裏技
さて、そうは言っても初華・初音が先に生まれていたとするなら、祥子と1学年差が存在する問題が未だに残ります。勿論、留年していればいいだけの話なのですが、古参バンドリオタクとしては花女の校風をよく知るだけにやはりモヤモヤが残ります。
初華と祥子の学年差をどう埋めればいいのか……と思案していたのですが、そんな折にジョースターの血統が僕に語りかけてきました。逆に考えるんだ、学年差があってもいいやって考えるんだと。
初華(初音)の誕生日が6月26日、豊川祥子の誕生日が2月14日なのはもはや信じるしかありません。ただ、もう1人の初華の誕生日って未確定ですよね? 言ってしまえばワイルドカードなわけです。
そうなると、一つの説が浮かび上がります。双子だったのは祥子と初華で、そして何らかの事情で初音が初華に成り代わって高校1年生をやっているのではないかと。こう考えれば、初音の実年齢が1つ上であろうとも全ての辻褄が合います。
つまり、倉田ましろ世代である初音が、本来高松燈世代である初華の身分で高校1年生として花咲川に通っているというわけです(*)。我ながら完璧な考察だぜダーッハッハ!!
……と、これを思いついた時は思っていました。ところが、やはり愛がなければ視えないのでしょう。この設定だけでは、成り代わられた豊川初華の事情が説明できないのです。
ただ、ひとまず我々の知らない初華という少女が別に存在したことを踏まえると色々なものが見えてきます。
*注:
本作では半年以上時間が経過していますし、それにより6月26日生まれの初華は誕生日を過ぎていますので、年齢ベースで語ると混乱が生じます。そのため、バンドリ的に扱いやすい倉田ましろ世代、高松燈世代で学年の表記は統一したいと思います。
なお、バンドリの世代は上から、湊友希那世代(現大1)>戸山香澄世代(現高3)>倉田ましろ世代(現高2)>高松燈世代(現高1)>チュチュ世代(現中3)、となります。
三角初華が消えた理由
今まで三角初華だったと思っていた少女が初音という偽物で、本当の三角初華は別にいた……という衝撃の事実が明かされたわけですが、実を言うと我々はもう本物の三角初華の姿を見たことがあります。
4月下旬に開催されるMyGO!!!!!とAve Mujicaの合同ライブにsumimiの参戦が告知された際の、キービジュアルの初華の表情に僕は度肝を抜かれました。お前っ、何でsumimiやるのそんなめっちゃ嬉しそうなの!?
我々のよく知る初華(初音)であれば絶対しない表情をしています。ただ、初音と初華が別人と分かればその疑問も氷解しますよね。初音じゃなくて初華なんですよコレ。つまり、元々初華はsumimiの活動が大好きで、そしてまなちゃんしゅきしゅきだいしゅきだった可能性が濃厚です。
本物の初華が現在どういう状態にあるかは定かでありませんが、もしステージに戻ってこれるようなことがあれば、相思相愛ラブラブ甘々のsumimiなんてものが実現するかもしれません。ちなみに新曲のタイトルはSweet Escapeだそうです。ゲロ甘な愛の逃避行、期待しております。
さて、何はともあれ、初音と共に島で育ちながらギターと歌唱力を磨いた初華は、芸能事務所にもその実力を認められるまでになりました。かつて祥子に語ったように、念願のプロデビューを果たします。初音がsumimiの活動をつまらなさそうにしているのが印象的ですが、初華にとってsumimiは本望そのものの活動だったわけです。
9話の事務所社長の口ぶりからもWin-Wing Productionは明らかにTGWグループの傘下です。そこに血族の娘が所属しているのですから、定治としてはいずれ初華にこの事務所を継がせる心積もりさえあったでしょう。血縁も実力も申し分のない跡継ぎ……定治にとっては求めていた存在のはずです。
ていうか、芸能人が所属事務所の名前をIDに冠するってそうそう無くないですか? このことからも三角初華がWin-Wingを背負って立つような存在であるかのような印象を受けます。少なくとも、会社名かそれに類するものをIDに入れている芸能人は、僕の知る限りではamene_bushiしかいません。割と近くにいるじゃねーか。
とはいえ、今の“三角初華”は我々のよく知る、嫉妬深い初音です。将来を約束され、プロデビューが決まった初華は、島に残される初音に向かって、何の悪気もなくこんなことを口走ってしまったのではないでしょうか。
「東京生活、さきちゃんといつでも会えるようになるの楽しみだな~!」
初音の逆鱗に触れた者の末路は9話で見てきた通りです。
画像のシーン自体は初音のイメージ映像に過ぎなかったのですが、もし過去に同じことをして取り返しのつかない事態になったから思いとどまったとしたらどうでしょう?
初音が暴力で突き飛ばしたせいで初華が病院生活になって、その代役として三角初華を演じて生きているのなら……これまでの描写の全てが通ります。ムジカの練習になかなか来なかった理由が長らく明かされなかったのですが、初華を見舞うなど定期的にケアする必要があったからだとすれば納得できてしまうところです。
そして、sumimiの活動をしていても、自分が加害した相手を演じて生きているのですから鏡を見てこう言うわけですよね、「酷い顔」と。
豊川初音の素顔
……さあ、「顔」の話題が出たところで、本記事のメインディッシュを務める項を執筆する準備が整いました。
これまでの考察の流れを今一度ビジュアル化してみようと思います。エクセルの表だけだといまいちイメージしにくかったかと思いますが、図にするだけで理解が明快になるはずです。
最初は初音・初華が双子なのだと無邪気に考えていました。初の字を持つ2人が共に島生まれで、きっと同じ顔をしているのだろうなとぼんやり考えていたわけです。
ただ、それだと学年の問題から無理があるということで、結局祥子と初華が双子であれば理屈が通るという形で方針転換したのでした。
遺伝子バグってんだろとしか言いようがない図になってしまいました。あれー、おっかしーなー。でも、学年の問題もあるんで、これだと論理的には問題ないんですよ。
というか、我々って初華の顔をまだ見てないじゃないですか?(お前さっきsumimiのキービジュで何つった!?)まあ、細かいことは置いといて、初華の顔が違うと考えれば解決しませんか?
さっきよりは締まった図になったのではないかと思います。あとは、この初華が何らかの事情で島で育つようになって、初華を傷つけてしまったことで初音が初華に成り代われば……あれ?
ちょっと待って下さい。初音が初華のフリをして生きているのですから、元の顔が不明なのは初音の方が自然じゃないですか? そう考えると、初華と初音の立ち位置は逆であった方が良いようにも思えます。文字列だけだとややこしいですが、図をお見せしますのでご安心下さい。
島で生まれたのは今病院送りになっている初華の方で、その初華を傷つけてしまったことで、初音が顔面を初華そっくりに整形したような物語が浮かんできます。つまりはそう、豊川初音は素顔そのものが仮面と言って良いのではないでしょうか。何だかメインテーマとも合致してきました。学年の問題が再燃したことを除けば、これで問題がないように思えます。
……いいえ、ここはもっと踏み込んでみましょう。
初音の本来の顔が今の初華の顔とは違っていてもいいのなら、そして豊川祥子と双子だとするならば、この図には改良の余地があります。
豊川初音の本当の素顔、ズバリこうじゃないですか?
三角初華の学年問題を解決する
とはいえ、この考察では結局初華の学年問題が再び持ち上がってしまったことが大きな穴ではあります。
祥子と初華を双子とした先程までの想定では、初音(ましろ世代)が初華(燈世代)の立場と偽れば書類上の問題なく高校1年生を演じられるという考えに立脚していました。
ところが、祥子と初音が双子だとすると初音は本当に高校1年生燈世代です。だったら初華の学年通り普通に高2のクラスに入ればいいはずなのですが、わざわざ留年したことになります。それをする必要性が全く見当たらない……。
ここで暗礁に乗り上げました。これまでの考察にはかなりの自信があります。なのに、かなり最初の段階で解決したはずの学年問題が、最後の最後で軛になるだなんて……。
気が狂いそうになりながら、Ave Mujicaの第1話を見返しました。CRYCHICのライブに来た時点で、初華はおそらく高1です。初音がこのライブに来ていたかは定かでないですが(初音=あのさーならば来てるでしょう)、彼女はまだ中学3年生。祥子と同学年です。
まだ初華が健在だとするならば、初音の激情から悲劇が起きたのはこの後の話になるでしょう。高校1年生で大怪我をした初華がどうなるか……あれ? 普通に休学からの留年で良くないですか?
定治の働きかけで、表向きは「芸能活動が忙しいから」などにして体裁を取り繕ったのでしょう(見栄だよ!)。つまり、初華は書類上本当に留年をしていて、その翌年に15歳の春を迎えた三角初音が初華の肩書でそのまま高校1年生になった……こう考えるのが最も自然です。
そう、逆に考えてよかったのです。留年しちゃってもいいやと。
同じ顔をした少女の苦悩
ここまで来れば、It's MyGO!!!!! 8話の回想シーンが2人で共有できる思い出でも何でもなかったのが分かるでしょう。全て祥子視点からの一方的な回想です。初音が祥子の話に合わせられたのは、初華から祥子の話を又聞きしていたからに相違ありません。だから、お互いの記憶が微妙に食い違い、話も噛み合っていなかったのです。
おそらく、初音は祥子の前に姿を現すことすらできませんでした。同じ顔をしているからです。元より一年に一度、夏にしか会えない関係であった上に、初音は祥子と初華が仲良く遊ぶのを見守ることしかできない立場にあったのです。
……けど、そう考えるとちょっとおかしいんですよ。だったら初音は祥子と直接会話したことがないくらいまで関係が薄い存在になってしまいます。それであの一途な愛を持ち得るものでしょうか? まあ一目惚れしたとかでも理由にはなるのですが、見た目は自分と同じ相手なわけですから、それもちょっと違う気がします。
だったら、初音にも何かしら祥子と話すためのコミュニケーションツールがあって、それを通しての語らいから祥子に惹かれていった……そう考えた方が自然です。
そして、Ave Mujicaというバンドなのですから、初音が素顔を隠して祥子と触れ合う手段は……もう、自明じゃないですか?
仮面以外、あるわけないでしょう。
“三角初音”の誕生
さて、残った問題は何故初音が島に移り住んだのかです。
瑞穂と清告の間に、祥子と共に産まれた以上、彼女がわざわざ豊川の屋敷を離れて不便な島に移住する理由があるように思えません。
ここから先の内容は全く本編に根拠がありません。妄想と切り捨てていただいても結構です。
ただ、今まで我々が三角初華だと思っていた少女は、どこかポンコツで、嫉妬深くて、言動全てが性欲まみれではありましたが、その慈愛の深さは本物だと思います。
ならば、初音と呼ばれた彼女の愛を、そしてこの作品に通底する愛を、本気で信じてみたいと思います。
初音がまだ幼く、名前も豊川初音だった頃、瑞穂や祥子と一緒に島に訪れる機会も何度かあったのでしょう。そこで自分より1つ年上の“ういか”おねえさんと出会います。野生児のように島を駆け回る初華に翻弄されつつも、双子の姉妹は次第に彼女と打ち解けていきます。ただ、島から帰還すべく迎えに来たお母様こと瑞穂を見つめる初華の顔には、何やら複雑そうな感情が伺えました。
屋敷に戻ってからお母様とお祖父様が口論しているのを聞いて、初音はあの娘の事情を察します。そして、本来愛情深い初音は、こう言ったのではないでしょうか。
「だったらわたしが、ういかちゃんといっしょにいてあげる!」
裕福な家庭に産まれた少女は、島で産まれた忌み子に寄り添うことを決意しました。当然お祖父様からは猛反対されたでしょうが、母のじゃじゃ馬っぷりを受け継ぎ、初華からも暴れる術を教わった初音は、存分に駄々をこねてお祖父様を参らせたのでしょう。
こうして、初音は初華と姉妹になることを決意しました。おそらくこの時2歳です。ですが、豊川家にはもう1人、娘がいました。
「はつねは……どこに行ってしまいましたの?」
双子の片割れが突然いなくなったことに気づき、祥子は困惑と悲しみで途方に暮れてしまいます。そんな彼女を可哀想に思った幼馴染みの少女が、泣きじゃくる祥子にこんな言葉をかけてくれました。
「もう、大丈夫だよ」
祥子を悲しみから救うため、持ち前の才能であんな役、こんな役を演じ分けてお芝居をしてみせます。祥子の笑顔こそが、睦の喜びとなりました。こうして才能を開花させた睦は、3歳の誕生日パーティを機にお母さんから嫌われてしまいました。
以降、睦を心の支えとした祥子は、初音の存在を忘却してしまいます。でも、初音はずっと祥子のことを覚えていました。初華とばかり遊ぶ彼女の間に少しでも割り入ろうと、お手製の仮面を使って遊ぶことを覚えたのです。祥子と触れ合う内に、初音の中で祥子への思いが、どんどん押さえられないほど募っていきました。そして、直接さきちゃんと触れ合える初華への嫉妬も、どんどん巨大になっていったのです。
結論
……以上。考察を終わります。
それでは、この愛に溢れた悲しき物語の全貌を、以下に記します。
豊川瑞穂は元々離島にいる三角家の男と恋仲だった
祥子が生まれる前々年の6月26日、家族にも内緒で初華を出産
森みなみが隆文とデキ婚(妊娠判明は4月)。若葉家に嫁ぐ。これにより相続権が瑞穂に移る
みなみの駆け落ちに焦った定治が、瑞穂に世継ぎを産ませようと当時社内で若手有望株だった清告を宛てがう
急な婚約から、望まないまま清告に抱かれる瑞穂。即座に祥子を身籠る
翌年1月14日、若葉睦誕生。2月14日、豊川祥子&豊川初音誕生
三角家の男との関係が定治にバレる。激怒した定治から恋仲の男とは関係解消を余儀なくされるが、島にいる娘とは一年に一度の面会を許される
初華に同情した初音が島への移住を決意。以後、三角初音として生きる
双子の片割れを失って悲しむ祥子を救うために、睦が一人芝居を体得。睦の尽力もあって祥子が初華の存在を忘れる(当時2歳)
清告が瑞穂の愛を勝ち取る(※)
睦が3歳の誕生日を迎える。森みなみがその才能に気づく
物心がついてきた祥子が島に通うようになり、初華と関係を深める
初音も仮面を付けて祥子と会話し祥子への想いを募らせていくが、同時に直接祥子と触れ合える初華に対して次第に嫉妬心を募らせていく
豊川瑞穂が死亡
初華が高1の頃、sumimiとしてプロデビュー決定。「初華」としては本望の活動だった
非嫡子ではあるが己の血を継ぐ初華に才能を認めた定治、彼女に事務所を継がせることを決意
CRYCHICの初ライブに、初華・初音ともに参戦。初華は“音華”として好意的な感想を、初音は“あのさー”として否定的な感想を投稿
清告が詐欺被害に遭う。CRYCHIC解散
東京生活に浮かれて「さきちゃんといつでも会えるの楽しみだな~!」などと口走ってしまったせいで初華が、初音から突き飛ばされる。重症を負い、芸能活動は困難に
事態を揉み消すため、初華に成り代わることを定治に強要される初音。整形手術で初華の顔に変えられ、三角初華として生きることになる
怪我で出席日数が足りなくなった初華が留年(表向きは芸能活動のため)。その学籍を利用し初音が花咲川に入学
初華は重症だが作詞は可能な状態だった。そのため、作詞は全面的に彼女に委任する
<この間は本編で見てきたとおり>
初音としての初めての作詞をImprisoned XIIにて手掛ける。病室にいる初華に向けての曲だったが、上手いこと祥子のための曲と勘違いされた。Crucifix Xはおそらく初華の作詞
Imprisoned XIIは初華という知られたくない部分を曝け出す歌詞なので他人に見られたくなどなかったが、さきちゃんが素敵すぎるメロディーを付けてくれたので世に出す決意が持てた
以上!!
この説を張って11話を待ちたいと思います。
なお、家系図もあった方がいいかと思ったので作成しておきました。こんな感じです。
補足:豊川清告の愛
ただ、本考察については、もう一つだけ補足をさせて下さい。
上記のフローチャートにて、10番に(※)として太字のパートを設けました。本項はこの部分の補足となります。
本記事は基本的に本編の描写から論理を組み立てているのですが、どうしてもそれだけでは足りないのがこの部分だったからです。愛を本気で信じるのなら、豊川清告の愛がこの考察には足りていません。
さて、本記事の考察が正しいとすると、清告からすれば愛する妻は婚前に三角家の男と関係を持っていて……もしかすると、結婚してからもその男のことが頭から離れなかった可能性があるわけです。定治に引き裂かれたと考える方が自然ですし。
そして、祥子と初華を身籠った際にも、妻は彼を愛してはいなかった……そういう辛い現実が浮かび上がります。そしてこの後、清告は双子の娘の片割れを手放す経験までしています。誰からも愛されることなく、大富豪のお家事情に振り回されるような人生を送っているように感じられます。
ただ、少なくとも幼き祥子が見た光景が嘘だとは思えません。後に巨額の詐欺に遭うとしても、この時点での彼は幸せを勝ち取っていました。それまでの経緯はどうあれ、祥子が物心ついた頃には清告が瑞穂から愛される存在になっていたのは幻想でも何でもない真実のはずなのです。
大事なのは、豊川瑞穂が欲した言葉を清告が言えたかどうかだと思います。瑞穂はお腹を痛めて3人の娘を産みました。けれども1人は己の罪から、そしてもう1人は娘自身の意志から母である彼女の元から去りました。残されたのは祥子1人。瑞穂の心情からすれば、祥子だっていずれ去っていくかもしれない渡り鳥に映ったのではないでしょうか。
たった2~3年の内に3人の娘のうち2人を失った瑞穂に対して、お人好しの清告くんが突き刺せる言葉があったとすれば、おそらくはこうです。
「祥子だけは、絶対離さないから!」
離さないでくれて、ありがとう……
事実上の政略結婚だった夫婦が本心から結ばれるとすれば、これしかないんじゃないかと思います。そしてまさに有言実行、結局その意志は祥子を自身の介護に費やさせるほどの呪いとなりました。
だから、清告の「頼むから、いなくなってくれ!」は彼なりの解呪だったとは今にして思うんですよね。それが祥子に伝わるかはともかくとして。
……今度こそ本当に以上、愛と悲しみに満ちた本考察を終わります。
本記事では、僕なりに本気でこの作品が描こうとしている愛について向き合ったつもりです。
もしかすると11話にてそれが全く見当違いだったことが明かされるかもしれませんし、僕の解釈が間違っている可能性は全然ありますが、とりあえず、Ave Mujicaという作品が愛を本気で描こうとしていることだけは疑わなくていいと思います。
本記事は、その愛に本気でぶつかった結果の一形態として、きちんと価値あるものになったと自負しております。


コメント
2えっ主男だったの……
実は詐欺被害が爺の責任で、清告に責任をなすりつけ、罪に問われず最低限の生活は保証するし、初華のプロデビューも約束するから、三角の男と瑞穂を消せ...とかだったら凄いですね
2人とも事情を知っていますし、カミングアウトされたら豊川の名に傷が付く
特に三角の男を野放しにするのは危険すぎますし、自身の生活や初華まで盾にされたら...
全ては「見栄」のために
祥子は清告と住んでいましたが出生の事情を知りませんし、出て行ったのは爺の勝手にしなさい、ということで。