逮捕、起訴に根拠はなかった――。
警視庁公安部による冤罪(えんざい)事件「大川原化工機事件」について、28日の東京高裁判決は1審よりも踏み込み、公安部と東京地検の捜査を批判した。
「シロ」を「クロ」にしようとした捜査はなぜ止まらなかったのか。
ゆがんだ捜査の実態に迫る。
大川原化工機冤罪事件で、東京高裁は1審よりも踏み込んだ認定で、警視庁公安部と東京地検の捜査を違法と断じました。連載「暴走した権力」(全3回)は31日まで連日6時に配信予定です。
1回目 ゆがめた捜査
2回目 検証しない警察・検察
3回目 「人質司法」は変わるのか
狙われた理由
警視庁公安部外事1課5係。
海外への不正輸出に目を光らせるこの部署が、大川原化工機の捜査を担った。
当時5係の捜査員約20人を率いていた宮園勇人係長(警部)は日ごろ、こんな言葉で部下に発破をかけていたという。
「大企業だと警察OBがいる。会社が小さすぎると輸出自体をあまりやっていない。100人ぐらいの中小企業を狙うんだ」
この言葉を聞いた捜査関係者は、発言の意図をこう解説する。
「うちのOBがいると、事件をやろうとしても上に潰されると考えたんだろう」
大川原化工機は社員約90人の中小企業で、警察OBも雇っていない。条件に一致していた。
大川原化工機はなぜ、狙われたのか。
その捜査をさかのぼると、2017年春にあった民間企業の輸出管理担当者向けの講習会にたどりつく。
財団法人が開いた講習会に5係の捜査員も参加し、噴霧乾燥器が13年から国…
東京高裁で東京都と国に賠償を命じる判決が出され、報道陣の取材に応じる大川原化工機の大川原正明社長(中央奥左から3人目)ら=東京都千代田区で2025年5月28日午後2時38分、宮武祐希撮影