「心の糧」は、以前ラジオで放送した内容を、朗読を聞きながら文章でお読み頂けるコーナーです。

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坪井木の実さんの朗読で今日のお話が(約5分間)お聞きになれます。

私の拠り所

越前 喜六 神父

今日の心の糧イメージ

 正直に自分自身のことをいえば、わたしは1931年に、東北のある小さな町に生まれました。日本海側で曇りや雨や雪が多かった上に、戦時中でもあったので、山々や川の景色を見ても楽しいと感じたことがありませんでした。その上、大家族の中に生まれ育ったとはいえ、両親が早く亡くなっていたので、いつも不安で寂しい思いをしながら生きていました。学校も荒んで、友達と楽しく過ごしたという記憶もあまりありませんでした。その上、中学校に行くと、軍事教練があって、ビンタや体罰もあり、本当に学校に行くのが嫌でした。

 そんな中、都会の専門学校に入っていた姉がカトリックの洗礼を受けて、冬休みに帰省してきました。その姉が炬燵に入りながら、神さまがいらっしゃること、よくお祈りして、良い子になれば、天国に入れるというお話をしてくれました。

 それを聞いた私は、小学生ながらに素直に信じ、姉がくれた「み教えの本」を読んで、熱心にお祈りしました。やっと神さまという拠り所を見いだした私は、心の安らぎと生きる元気を頂くために、熱心に祈り、キリスト教の本を夢中になって読みました。これが私の生きる拠り所となったので、嫌な学校にもなんとか通い、戦時中の不安や恐怖を乗り越えることができました。神さまというと、「苦しい時の神頼み」と言われそうですが、洗礼を受けて信者になったときは、これで僕もいちにん前の人間になったのだなあ、と感じたものでした。ある聖人の言葉ではないが、人は神の似姿だから、神を知ってはじめて、真の人間らしい人間になれるのではないでしょうか。そう私は信じています。